第 時 1枚中の1

平成15年度
教頭選考考査
第
時
1枚中の1
受検
番号
氏
名
新学習指導要領に基づき、各学校では特色ある教育課程の編成が求められています。
そこで、「豊かな人間性や社会性を育成すること」を重視した教育課程を編成するにあたって、あなたの
考えを述べなさい。
次に、実施上の課題を2点あげ、その解決のために教頭としてどのような取り組みをするか、具体的に述
べなさい。
→
論文サンプル
新学習指導要領に基づき、各学校では特色ある教育課程の編成が求められています。
そこで、「豊かな人間性や社会性を育成すること」を重視した教育課程を編成するにあたっ
て、あなたの考えを述べなさい。
次に、実施上の課題を2点あげ、その解決のために教頭としてどのような取り組みをするか、
具体的に述べなさい。
リード文3例。世相(社会問題) → 教育の意義
→ 学校の実態 → (具体的な方策へ続く)
論文
1
今日わが国は物質面では豊かになり、便利で快適な生活を送ることができるようになった。
反面、心の乏しさが指摘されている。特に青少年の犯罪の増加には、目をおおいたくなるも
のがある。さらに児童、生徒のいじめ、非行、自殺等、物質的な豊かさの中で人間のもつ他
の人を思いやり協力するような心の欠けた行動も目立つ。これは社会の急激な変化にともな
う家庭生活、地域社会の様変わりによるものが大きな原因である。また、学校教育における
知識、技能重視の今までの教育のあり方も問題である。21世紀に生きる児童、生徒に豊か
な人間性や社会性を育成することは、今日的な社会の要請であり、学校教育における最重要
課題である。いかに実施上の課題について具体的に述べる。
論文
2
1.
「豊かな人間性や社会性を育成すること」を重視した教育課程編成にあたって
今日の社会は、多様な価値観が入り混じり、混とんとした社会となっている。そのような
中で神戸小学生殺傷事件をはじめとして、十代の若者による事件が数多く発生している。ま
た、それ以外にもチーマーの問題、オヤジ狩り、フリーターの増加など、今後の社会の方向
性を心配することも多い。
「豊かな人間性や社会性」は、人としてよりよく生きる基礎になる
ことで、これは価値観がどのように変化しようとも、不変のものである。
私の勤務校においても、わがままで自己中心的、友だちの気持ちを考えられないなどの特
徴をもつ児童が増加してきている。また山村の小規模校であるために、大勢の前に出ると、
声が小さくなってしまったり、自己表現ができなくなってしまう児童も多い。そこで、学校
の実態を考慮しながら「豊かな人間性や社会性を育成すること」を重視した教育課程の編成
をすることは、学校課題として、全力で取り組む必要があると考える。
論文
3
1.
「豊かな人間性や社会性を育成すること」を重視した教育課程の編成
(1)豊かな人間性や社会性の育成とは
新学習指導要領改訂の重要課題として掲げられた豊かな人間性とは、自己実現を目指した
積極的な生き方、様々な感動を感じ取る感性、そして国際社会に生きる日本人としての自覚
と、国際社会で共に生きようとする心等を含むものと考える。それらを育成するためには、
単に道徳教育のみで行おうとすることでは不可能である。様々な体験を通して、また教科領
域においても、その関連性を意識しながら学校教育のあらゆる場面で指導されなければなら
ないものである。
(2)教育課程編成のために
豊かな人間性や社会性を育成するための教育課程の編成にあたっては、次のような点に特
に配慮する必要があると考える。
学校教育全体を通じて行う、道徳教育、積極的生徒指導の充実。
教科、領域等の関連を意識した計画を全職員の共通理解を得ながら策定する。
様々な体験的学習の場を教科だけでなく、道徳教育や特別活動と関連づけながら計画する。
以上3点を特に配慮しながら編成を進めることが重要であると考える。
長めのリード文。受け売りの文ではなく、吟味されたリード
文なので説得力がある。学校の実態も記述されている。
論文
4
ゆとりの中で「生きる力」の育成を目指す学級において、
「豊かな人間性や社会性を育成す
ること」は学校経営の柱としてとらえなければならない。人が生きていくうえで色々な知識
や技能を必要とするが、人間性や社会性はそれを正しく働かせる源であり、心である。思い
やりの心や協調性は、人が人として生きていく基礎である。学校はこれらの点を深く受けと
め、新しい教育課程の編成にあたって、一番の柱ととらえなければならない、と考える。
また「人間性、社会性」の指導は道徳の指導を中心に行われるが、言うまでもなく学校の
教育活動全体を通して行われなければならない。さらに諸活動で身につけた道徳性を補充深
化、統合するため、道徳の時間の指導の充実、とりわけ、子供の体験をもとにした指導の工
夫が必要である。このような点から本校の実態をみると、①全体的に落ちついた児童が多い
ことから、あまり意識がみられない。②道徳の時間の指導がマンネリ化し工夫が見られない、
等の問題が見られる。次に教頭としての解決策を述べる。
(1)深い児童理解をもとにした、活発な学級経営をうながす
児童の人間性、社会性を培う基盤は、学校においては一番長く時を過ごす学級である。
学級での人間関係や活動が児童に大きな影響をおよぼす。一人ひとりの児童の思いや願いを
生かす学級であって欲しい。このことを職員に伝え、活発な学級経営がおこなわれるよう校
内研修や具体的場面で指導に当る。具体的には、①「心に悩みのない子はいない」という視
点で児童を理解しているか
②学級内の人間関係に問題はないか(担任と児童、児童同士)
③体験や活動をとり入れた授業を行っているか
れているか
④学年やその他で協力的指導が適切に行わ
⑤家庭との連携は適切におこなわれている(情報発信、情報収集)
などであ
る。なお、担任と児童のふれ合う時間を多くとるため、会議等の精選を図り合理化していく。
(2)体験を生かした道徳の時間を工夫して豊かな人間性、社会性をもった児童を育成する
道徳の時間の指導は、児童が本音で語り、児童の心にひびくものでなくてはならない。そ
のため児童の経験、体験を生かした指導が極めて大切である。この点を職員に伝え、校内研
修や授業研究、日常の指導など、機会をとらえて指導にあたる。具体的には、①児童の実態
把握(生活、自然、社会体験などを洗い出す。
)②それを教材に生かす(児童は自分のやった
ことには同感できる)③指導の工夫(読みもの資料、テレビ、ロールプレイや指導の場、T
Tなど子供の気持ちを素直に出させる工夫)④評価の工夫(自己評価、相互評価を工夫し、
道徳的価値を自覚し、実践力にまで高める工夫)
教師の心がかわれば児童の心も変わる。このことを常に訴え、一人ひとりの児童の心が磨
かれるよう、自分自身も授業するなどして指導にあたっていきたい。
豊かな人間性は豊かな体験、豊かな人間関係の中で育まれる。私は教頭として、校長の意
を体して、課題の解決に全力を尽くす覚悟である。(1,234字)
リード文を短く抑え、方策を詳細に示す方法も、
論文
5
読み手に具体的なイメージを与えて効果的。
最近の少年非行や少年犯罪の現状をみても、身の周りの子ども達の様子をみても、道徳的
なモラルや規範意識の低下が強く感じられる。このような傾向を踏まえて、全職員で真剣に
「生きる力」を育む特色ある教育課程の編成に取り組んでいく必要がある。以下に実施上の
課題を2点あげ、教頭としての対応策を述べる。
1.体験活動を重視した教育課程の編成
最近の子ども達は健全な成長に必要な触れ合い体験や自然体験に乏しい。そこで、体験活
動を重視した教育活動の展開が重要である。現任校では、これまでに「米作り」「野菜作り」
「昔の遊び」などの体験活動を行ってきている。これらの活動には、地域の人が来校し、指
導してくださっている。これらの体験を通して、友達とのかかわり方や小さい子とのかかわ
り方を学んでいる様子がみられる。また、体験により得る感動や学ぶ価値も大きい。私は、
これらを単なる「よい体験」で終わらせず、その価値やねらい、体験を通して子どもたちに
育てたい力を明確にして、総合的な学習へと発展させていく。校内研修主任に働きかけ、全
職員で話し合う場を設定し、知恵を出し合い、特色ある教育活動へと充実させていく。さら
にボランティア体験を取り入れたり、お年寄りの多い地域なので、お年寄りとの交流を深め
る福祉体験を取り入れていく。しかし、なんでも体験させればよいというものではない。
「生
きる力」を育むためにどんな体験をさせることが有効か、十分検討していくつもりである。
2.道徳を核にした心の教育の推進
道徳は本年度から完全実施されており、現任校でも新学習指導要領に基づいた年間指導計
画に沿って実施しているが、まだ資料中心の話し合いの授業が主流を占めている。学校、地
域での豊かな体験や生活体験を生かした指導の工夫や、総合単元的な道徳の授業を積極的に
行い、子どもが自分自身で心を耕していけるようにしていく必要がある。現任校には、道徳
の全国大会での発表者がいる。校内研修主任に働きかけ、発表者の実践の成果や研修してき
た内容を全教職員で学び、授業改善を図っていく。また、道徳学習の主題についても検討し、
重点価値項目を段階的に繰り返し指導できるようにし、年間指導計画の改善、充実を図る。
また、豊かな人間性の育成や社会性の育成は、学校だけでなし得るものではないことを踏ま
え、道徳の授業を公開し参観を呼びかけたり、道徳の指導や関連した体験活動に保護者や地
域の人の参加を依頼したりし、共に子どもを育てていく意識の高揚を図っていく。
私は教頭として、校長の意を体し、心豊かなたくましい子どもを育てるために全力をつく
す所存である。そして、子どもたちにとっても、教師にとっても、また保護者や地域の人に
とっても「魅力ある、自慢できる大好きな学校」になるよう、特色ある教育課程の編成に最
善を尽くして取り組む決意である。(1,174字)