インタープリターの視点 No.44

山ふる解説員通信 No.56
2007 年 4 月 AIJ 小林 毅
インタープリターの視点 No.44
会話で関係を作りだす
インタープリテーションは、
「形を作る」
「関係を作る」
「学びを作る」という三つの重要なステー
ジに分けて考えることもできる。まず、「形を作る」ことについて簡単にふれておくと、申し込ん
できた人の対応、当日の受付、開始時のオリエンテーション、プログラム中に意図的に参加者の
数の把握を行うことをはじめ、
参加者が集まってから話をすることなど、
マズローのヒエラルキー ( * )
の下位段階に当てはまるような部分をクリアすることといってよいだろう。これらが達成されれば、
参加者のとまどいやストレスを少なくすることに結びつく。一般的にいうと、目上の人やとても
大切な人を丁寧にお迎えし対応する、というホスピタリティーの気持ちをもって対応することで
「形を作る」ことができる。
また、三番目の「学びを作る」というのは、どういう体験やプロセスが参加者の学びに効果的
か意識すること、マインドフロー(学びの流れ・効果的な学びになる流れ)の視点をもつこと、
さらに体験学習法の循環過程の段階意識をインタープリテーション時にきちんと実践すること(I
Pの視点 35 参照)、プログラム後によい関係性を保つことなどで達成することができると思われる。
今回のトピックは、2番目の「関係を作る」という段階だ。方法としては、会話(やりとり)
が重要な意味を持つ。インタープリテーションは、「関心が少ない人や参加したり話を聞くことに
義務がない人への効果的なコミュニケーションの方法(Dr. Sam Ham アイダホ大学)」だという。
インタープリテーションでは、やりとりによって話を聴く態度になってもらうこと、会話によっ
て関心を引き出し、興味をもたせること(面白い・楽しいと思ってもらうこと、自分ごとと思っ
てもらうこと)が大切だが、これは、インタープリテーションが単なる情報を伝える方法ではなく、
聞き手と伝え手の関係(聞き手のメッセージを受けとめたり実行しようと思う関係)を作ること
を意味している、ととらえることもできるだろう。
K協会のK氏からの私信では、コミュニケーションの分野(R大学院生の研究)で、インター
プリテーションの様子を全部記録し、やりとりされた会話が参加者とインタープリター(以下、
IP)の間にどんな関係性を作り出しているか分析された(研究されている)という。私はまだ
報告書を見ていないので詳しくは書けないが、聞きかじり部分から想像を大きくふくらませると、
以下のようになるだろう。
(I P) 今日は何を見たいですか?どんな体験がしたいでしょうか?
(参加者) この辺りのことはよく知らないのでおまかせします。
(I P) わかりました。
では、今でしか楽しめない、私のとっておきの自然に招待しますね。
(参加者) おまかせします。
※以上の分析から、参加者のIPへの行動依存(従います)という関係が成立している。
この関係性は、意図的に行われたというよりは、私たちIPが経験的に行っていることであり、
結果的に作られた関係性だ、と捉えてよいと思われるが、私の経験に照らし合わせてみると、I
Pと参加者との関係がインタープリテーションの結果(効果)に大きく影響していることは間違
いないだろう。ジェスチャーをも合わせたコミュニケーションが、こういった関係を作り出して
いることは否めない事実だろう。
※関係ある学問領域としては、「Communication Psychology(会話心理学)」「教育社会学」「民俗学のエスノグラフィー」
などにおける会話分析がある。
*マズローのヒエラルキー:アブラハム・マズロー(アメリカの心理学者)が唱えた欲求段階説。下位段階は、生理的欲求・
安全欲求(人間が生きる上での衣食住等の根源的な欲求)を示す。
発行:東京都立奥多摩湖畔公園 山のふるさと村ビジターセンター
< 編 集 後 記 >
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企画・編集:自然教育研究センター 2007 年 6 月発行
4月末、ハンズオン展示に関する著書で有名な染川
香澄さんを講師に展示研修会が行われました。「展示
の壊れ方やその具合からも学べることがある(参加
者が体験したいことが分かる)」など、ハッ!の連続。
新たな視点をたくさんいただきました。(まゆみ)
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