月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome) 7月4日放送分 Q:月経前症候群とはどんな症状なのですか? A:月経前症候群とは、月経と月経の中間の時期、つまり排卵後から月経開始 の 2 週間ほどの間に続く精神的あるいは身体的症状で、月経が発来すると ともに減退または消失してしまう症状を言います。 Q:どんな症状になるのでしょうか? A:身体的つまりからだの症状としては下腹部痛および膨満感,乳房痛および 緊満感、頭痛および頭の重い感じ、腰痛、足腰のだるさ、浮腫(むくみ) などがあります。精神的症状としてはいらいら、怒りっぽくなる、眠気、 憂うつ感つまり気分の落ち込み、集中力低下、意欲減退、落ち着かない、 情緒不安定などがあります。これらの症状は日常生活にほとんど影響のな いものから、激しい症状のために日常生活に深刻な影響をもたらすものま であります。 Q:どんな特徴があるのでしょうか? A:月経前症候群を月経困難症と比べてみると精神症状と乳房症状が多く、月 経が始まると消失してしまうのが月経前症候群の特徴です。以前は 30 歳か ら更年期に多いとされていましたが、最近は思春期の頃からこれらの症状 を訴える患者さんもみえます。 7月11日放送分 Q:月経前症候群の原因は何ですか? A:月経前症候群が起こる原因としては女性ホルモンの不均衡説、中枢ホルモ ン異常説、精神的葛藤説、社会的不安な説などいろいろな説が考えられま すが、はっきりしたことはわかっていません。 Q:女性ホルモンの不均衡説とはなんですか? A:女性ホルモンの不均衡説とは卵胞ホルモン,黄体ホルモン分泌の排卵に伴 う急激な変化、特に排卵後に分泌してくる黄体ホルモンが強く関係してい ると考えられています。 Q:中枢ホルモン異常説とは何ですか? A:中枢ホルモン異常説とは排卵後の黄体期に中枢神経伝達物質の調節に関係 しているセロトニンの分泌が低下するのではないかという説です。 Q:精神的、ストレスなども原因の一つとしてあるのですよね∼ A:また、神経質な性格の女性に多くみられるという報告もあり、精神的な原 因もあると思われます。さらに、仕事を持つ女性の場合、仕事に対してス トレスを強く感じている女性ほど、症状が強く出るという報告もあり社会 的な原因も考えられます。以上のようにいろいろな原因が考えられていま すが、これらの原因がいろいろと積み重なって月経前症候群という症状が 出るのではないでしょうか。 7月18日放送分 Q:月経前症候群の治療法は何ですか? A:月経前症候群は女性の 20∼50%が経験し.社会的生活に支障をきたすほど 重症のものは 5∼10%程度であるとされています。軽症の方は我慢して様子 をみられている場合も多いのですが、社会的生活に支障をきたすほど重症 な場合は積極的な治療が必要となります。月経前症候群は排卵後のみに起 こるとされているので、挙児希望のない方つまり子供さんを望まれない場 合は排卵抑制、つまり経口避妊薬の投与なども選択肢となりますが、経口 避妊薬の効果には否定的な報告もあります。現在行われている一般的な治 療法はそれぞれの症状に応じた対症療法です。 Q:具体的にはどんな方法があるのですか? A:例えば、腹痛、頭重感・頭痛などの痛みに対しては鎮痛剤すなわち非ステ ロイド性消炎鎮痛剤、いらいらなどの精神的症状に対してはベンゾジアゼピ ン系の精神安定剤、浮腫(むくみ)などに対しては利尿剤が用いられます。 しかし、これらの対症療法では、症状は一時的には軽快しますが、完治せず 周期的に繰り返す場合が多いようです。 7月25日放送分 Q:月経前症候群の最近の話題は? A:抗うつ剤として最近精神科領域にて用いられてきている選択的セロトニン 再取り込み阻害剤(SSRI)が月経前症候群の憂うつ感つまり気分の落ち込 みなどの精神的症状に対して、効果が大きいという報告が欧米でされてい ますが、日本ではまだあまり用いられていません。 Q:どんな効果があるのですか? A:この薬は服用開始のはじめの頃にむかつき感などの消化器症状が出ること がありますが、1 日 1 回就寝前の服用だけで効果が期待でき、今後広く用い られていくと思います。頭痛に関しては片頭痛のリスクが月経の開始前の 2 日間は高くなるという研究報告があります。近年、片頭痛に対しての治 療薬が相次いで発売されており、一般的な鎮痛剤で直らないような難治性 の頭痛に対しては医師と相談して、これらの片頭痛に対する治療薬を試し てみるのもいいかもしれません。 Q:月経前症候群に対して、しっかりとした治療法はあるのですか? A:現在のところ、月経前症候群に対しての確立した治療法はなく,心因性・ 精神的な要素が強いため十分なカウンセリング(精神療法)を行う必要が ある場合もあります。
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