サービス・マーケティングによる顧客満足形成と再来園意図への影響 ―東京ディズニーランドを事例として― Effect for the formation of customer satisfaction and revisit by service marketing ― A case study of Tokyo Disneyland― 高 橋 ゼ ミ ナ ー ル 19 期 生 α班 第 1章 イントロダクション 今 日 、「 長 崎 オ ラ ン ダ 村 」「 柏 崎 ト ル コ 文 化 村 」 な ど 、 多 く の テ ー マ パ ー ク が 不 況 に 陥 り 閉 園 が 相 次 い で い る 。 2001 年 に 開 園 し た 関 西 の 人 気 テ ー マ パ ー ク 、 「 ユ ニ バ ー サ ル ・ ス タ ジ オ ・ ジ ャ パ ン 」 も 初 年 度 こ そ 入 場 者 数 1000 万 人 ( 11,020,000 人 )を 超 え る が 、そ の 翌 年 2002 年 に は 800 万 人( 7,637,000 人 ) へ と 減 少 、 そ の 後 も 800 万 人 前 後 と 伸 び 悩 ん で お り 、 苦 戦 し 続 け て い る 。 そんな中、日本のテーマパークの中で一人勝ちしているとも言えるのが、 1983 年 に 、千 葉 県 浦 安 市 に 開 園 し た 、オ リ エ ン タ ル ラ ン ド の「 東 京 デ ィ ズ ニ ー ラ ン ド 」( 以 下 TDL と 略 記 ) で あ る 。「 夢 が か な う 場 所 」 を モ ッ ト ー と し て 、 それぞれが明確に異なるテーマと楽しさを持つ個性的な施設の集まりであり、 エリア全体として調和のとれた時間と空間が創出される場所を作り出している。 「 暗 さ と 湿 り 気 は い っ さ い な い 」「 明 る く ク リ ー ン な ユ ー ト ピ ア の セ ッ ト 空 間 」 (電 通 集 客 装 置 研 究 会 1988)と し て 揺 る ぎ な い 地 位 を 確 立 し た の で あ る 。 1 ) で は 、 な ぜ TDL は 人 々 を 魅 了 し 続 け る の か 。 我 々 は 、 TDL が 繰 り 広 げ る サ ービス・マーケティング展開に着目した。サービスという面において、他のテ ー マ パ ー ク か ら TDL が 完 全 に 差 別 化 を 図 る こ と に 成 功 し た 要 素 が 見 え る か ら で あ る 。Christopher H. Lovelock に よ る と 、サ ー ビ ス・マ ー ケ テ ィ ン グ で は 、 従 来 の マ ー ケ テ ィ ン グ ・ ミ ッ ク ス の 4P で あ る 「 製 品 (product)」「 価 格 (price)」 「 プ ロ モ ー シ ョ ン (promotion)」「 流 通 (place)」 に 加 え て 、 サ ー ビ ス ・ マ ー ケ テ ィ ン グ ・ ミ ッ ク ス と し て 「 人 (people)ま た は 参 加 者 (participants) 」「 物 的 な 環 境 (physical evidence) 」「 サ ー ビ ス の 組 み 立 て の プ ロ セ ス (process of service assembly)」の 3 つ の P を 加 え た 7P で サ ー ビ ス・マ ー ケ テ ィ ン グ の 戦 略 を 組 み 立 て る こ と が 必 要 と さ れ る 。 そ こ で 我 々 は 、 TDL の 成 功 要 因 と し て 通 常 の 4P は 基 よ り 、 サ ー ビ ス ・ マ ー ケ テ ィ ン グ に よ っ て 追 加 さ れ る 「 参 加 者 」、「 物 的 な 環 境 」、「 サ ー ビ ス の 組 み 立 て の プ ロ セ ス 」 を 特 に 重 要 視 し 、 研 究 を 進 め る こ と にした。 TDL に お け る サ ー ビ ス・マ ー ケ テ ィ ン グ は 顧 客 満 足 を 形 成 す る の か 、ま た 顧 1 客満足は再来園意図に影響を与えているのかを明らかにするのが本研究の目的 である。 本研究は、以下のように構成される。まず、第 2 章においては顧客満足度と 顧客ロイヤルティに関する先行研究のレビューを行う。第 3 章においては、先 行研究をもとに仮説の提唱と分析枠組みの作成を行う。第 4 章においては、調 査方法について言及し、第 5 章ではそれに基づく分析結果を検証する。最後に 第 6 章では以上の分析からの考察および今後の課題の言及を行う。 第 2章 先行研究のレビュー 本 章 で は 、顧 客 満 足 度 と 顧 客 ロ イ ヤ ル テ ィ と い う 2 つ の 面 か ら 先 行 研 究 の レ ビューを行う。 顧 客 満 足 の 原 点 と な る 概 念 を 打 ち 出 し た の は 、 Peter F. Druckerで あ ろ う 。 彼 は 著 書 「 現 代 の 経 営 」( 1954) に お い て 、 そ れ ま で 経 済 ・ 経 営 の 分 野 で 当 然 の前提とされていたビジネスの目的を、「利潤」ではなく「顧客創造」にこそ 求めるべきであると主張し、マーケティングとイノベーションをその中心機能 と 主 張 し た 。1960年 代 後 半 以 降 の 消 費 者 運 動 で の 製 品 へ の 不 満 を 訴 え る 消 費 者 の登場を経て、顕示的な追求目標である理念としての顧客満足という概念は定 着していった。 一般に顧客満足は、顧客が製品やサービスの購買・使用などの体験を通じて 形成される個人の心情的評価としてとらえられている。現在、顧客満足度形成 の 支 配 的 理 論 モ デ ル で は 、Richard L. Oliver に よ っ て 提 示 さ れ た「 期 待 不 確 認 モ デ ル 」 が 認 知 さ れ て い る 。 こ の モ デ ル は 、「 期 待 ( Expectation )」 と 「 購 入 後 の 効 用 ( Performance)」 を 比 較 し 、 そ の 関 係 は 、 購 入 前 の 期 待 (E) < 購 入 後 の 効 用 ( P) → 満足 購 入 前 の 期 待 (E) > 購 入 後 の 効 用 ( P) → 不満足 と 示 す こ と が で き る 。消 費 者 は 、期 待 以 上 の 効 果 が あ れ ば 大 い に 満 足 し 、 「わく わくする」というようなポジティブな感情が芽生える。このポジティブな感情 2 こそロイヤルティへと結び付けられる。 さ ら に 、 佐 藤 (2001)に よ る と 、 マ ー ケ テ ィ ン グ 研 究 の 分 野 に お い て は , 1970 年代の後半からその理論化、概念化が進められ、とくに自社顧客の再購買率を 高めることを目的とした顧客維持戦略においては、ロイヤルティの先行指標と して研究に関心がもたれている。この背景には新規顧客の獲得費用より既存顧 客の維持費の方が相対的に低く、なおかつ再購買が繰り返されるほど利益が高 まるという知見が導き出されたことにある。 図 1 は Heskett(1998)ら が 提 唱 し た サ ー ビ ス ・ プ ロ フ ィ ッ ト ・ チ ェ ー ン と い う考えを簡略化した図である。これは利益、成長、顧客満足、顧客ロイヤルテ ィや顧客に提供されるサービスやモノの価値、従業員の満足・ロイヤルティな ど の い く つ か の 要 因 が 、相 互 に 直 接・強 力 に 結 び つ い て い る と い う 概 念 で あ る 。 さ ら に Henning-Thurau(2000)は 、 「顧客維持率は顧客満足の影響を受けるため、 高質な顧客満足の醸成が求められている。顧客満足は認識される品質や事業体 へ の 信 頼 な ど 関 係 性 へ の 関 与 に よ っ て 顧 客 維 持 に つ な が る 。」と 述 べ て お り 、顧 客満足とロイヤルティの結びつきが一層重要となっていることが分かる。よっ て 、こ の 点 に つ い て の 効 果 を 検 証 す る こ と の 意 義 は 大 き い と い え る だ ろ う 。我 々 は 図 1 に お け る 「 サ ー ビ ス 価 値 」 が 顧 客 に 与 え る 影 響 を 検 証 す る 。 2) 小 野 (2010)に よ る と 顧 客 ロ イ ヤ ル テ ィ と は 、 製 品 や サ ー ビ ス に 対 す る 、 愛 着 心や信頼度を表す概念である。行動的側面では再購買・再利用率として捉え、 心理的側面では特定のブランドや企業が好きで使い続けたいという態度で捉え ら れ る 。 本 研 究 で は 、 顧 客 ロ イ ヤ ル テ ィ を TDL へ の 再 来 園 と い う 、 行 動 的 側 面から捉えることとする。 3 従業員満足 社内サービスの質向上 サービスの生産性・質の向上 収益性 サービスの価値 売り上げ向上 顧客ロイヤルティ 図 1 第 3章 従業員ロイヤルティ 顧客満足 サービス・プロフィット・チェーン 仮説の提唱 テーマパークの評価の際に必ず取り上げられるのが、物理的な商品と施設、 接客サービスである。そのため、本章では、サービス・マーケティング・ミッ ク ス の 中 の「 価 格 」 「プロモーション」 「 流 通 」を 除 い た 、 「 製 品 」「 参 加 者 」 「物 的な環境」 「 サ ー ビ ス の 組 み 立 て の プ ロ セ ス 」が 顧 客 満 足 度 と 再 来 園 意 図 に 与 え る 影 響 を 分 析 す る た め の モ デ ル を 構 築 す る 。な お 、 「 製 品 」に あ た る グ ッ ズ は 価 格による影響が大きいと考えられるため、本研究では扱わない。したがって、 本研究では「製品」として、アトラクション、イベント、パレードを挙げる。 また、 「 参 加 者 」と し て は 従 業 員 で あ る キ ャ ス ト 、キ ャ ラ ク タ ー (着 ぐ る み )、 「物 的な環境」は、アトラクションも含めた園内の建物、そして、サービスの組み 立てのプロセスにはキャストによるもてなしとし、これらの要因が顧客満足に 影響を与えると仮定した。 4 こ の 仮 定 を も と に 事 前 調 査 (n=34)を 行 い 、 探 索 的 因 子 分 析 を お こ な っ た と こ ろ 5 つ の 因 子 が 得 ら れ た 。そ れ ぞ れ を「 期 間 限 定 」 「非日常感」 「人的サービス」 「 キ ャ ラ ク タ ー ブ ラ ン ド 」「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」 と 名 付 け た 。 期間を限定することで、その時にしか体験できないという特別感を演出し、 それが顧客満足と再来園意図に影響すると考える。園内と園外を視覚的に遮断 することによって非日常感が味わえ、より顧客は満足し、再来園意図にも影響 す る と 考 え る 。人 的 サ ー ビ ス で は 、キ ャ ス ト が 丁 寧 な 対 応 や サ ー ビ ス を す れ ば 、 より顧客は満足し、再来園意図にも影響すると考える。キャラクターブランド で は 、 キ ャ ラ ク タ ー に は TDL な ど の 限 ら れ た 場 所 で し か 会 う こ と が で き な い ため、その特別感が顧客に満足感を与え、再来園意図にも影響すると考える。 アトラクションでは、それぞれに凝った演出が施されており、その世界観を味 わうことで顧客は満足し、再来園意図にも影響すると考える。また、先行研究 から、顧客満足は顧客ロイヤルティに影響を与えるとされ、本研究では顧客ロ イヤルティを行動的側面から、再来園意図として扱うことにする。これらを用 い て 、 以 下 の 仮 説 お よ び 分 析 枠 組 み (図 2)を 提 唱 す る 。 仮 説 1. 期間限定は顧客満足度に正の影響を与える。 仮 説 2. 期間限定は再来園意図に正の影響を与える 仮 説 3. 非日常感は顧客満足度に正の影響を与える 仮 説 4. 非日常感は再来園意図に正の影響を与える 仮 説 5. 人的サービスは顧客満足度に正の影響を与える 仮 説 6. 人的サービスは再来園意図に正の影響を与える 仮 説 7. キャラクターブランドは顧客満足度に正の影響を与える 仮 説 8. キャラクターブランドは再来園意図に正の影響を与える 仮 説 9. アトラクションは顧客満足度に正の影響を与える 仮 説 10. ア ト ラ ク シ ョ ン は 再 来 園 意 図 に 正 の 影 響 を 与 え る 仮 説 11. 顧 客 満 足 は 再 来 園 意 図 に 正 の 影 響 を 与 え る 5 期間限定 非日常感 顧客満足度 人的サービス キャラクターブランド 再来園意図 アトラクション 図 2 第 4章 分析枠組み 調査方法 仮説を検証するために、質問票調査を行った。都内の私立大学生で予備調査 ( n=34) を 2 回 行 い 、 1 回 目 で 測 定 尺 度 の 修 正 、 2 回 目 で 質 問 項 目 の 修 正 を 行 っ た 。 本 調 査 ( n=212) で は 、 全 34 項 目 で 質 問 を 行 っ た 。 調査目的 TDL に 対 す る 満 足 度 調 査 調査場所 都内私立大学 実施期間 2012 年 9 月 上 旬 調査対象 20 代 を 中 心 と し た 男 女 6 201 人 第 5章 分析結果 図 2 に 示 し た 分 析 枠 組 み を 、 統 計 ソ フ ト SPSS Inc PASW Statistics 18 お よ び 、Amos 20 を 用 い て そ れ ぞ れ の 因 子 得 点 を 算 出 し 、 共 分 散 構 造 分 析 に よ り 分 析を行った。因子得点の信頼性分析を行ったところ、クロンバックの α 係数は 表 1 のようになった。すべての潜在変数において高い数値が算出されたため、 こ の ま ま 分 析 に 用 い る 。顧 客 満 足 度 お よ び 再 来 園 意 図 は 質 問 項 目 が 1 つ の た め クロンバックの α 係数は出ていない。 表 1 観 測 変 数 と 信 頼 性 係 数 (n=212) 潜在変数 期間限定 非日常感 人的サービス キャラクターブランド アトラクション 顧客満足度 再来園意図 観測変数(質問項目全て1~7の7点尺度) イベントはわくわくする イベントは新鮮である イベントは季節感があって良い イベント時の装飾が素敵 イベントに満足している パレード・ショーが見たい パレード・ショーの質が高い パレード・ショーは楽しい パレード・ショーは感動する パレード・ショーに満足している 景観・雰囲気にわくわくする 景観・雰囲気に清潔感がある 景観・雰囲気に非日常感がある パークのエリアごとに世界観が作り上げられている 景観・雰囲気に満足している キャストは気が利く キャストの笑顔が素敵 キャストはディズニーの知識が豊富 キャストは親切 キャストに満足している キャラクターに会うと癒される キャラクターに会うと気分が高まる キャラクターとの遭遇はサプライズ感がある キャラクターとの触れ合いに満足している アトラクションは迫力がある アトラクションはストーリー性がある アトラクションはわくわくする アトラクションに癒される アトラクションに異世界観がある アトラクションに満足している ディズニーランドに満足している またディズニーランドに行きたい クロンバックのα 係数 0.929 0.853 0.879 0.907 0.891 次 に モ デ ル の 全 体 的 評 価 を 行 っ た 。 図 3 の モ デ ル に 対 す る X 2 値 は 26.671 で 、自 由 度 は 5、有 意 確 率 は .000 で あ っ た 。適 合 度 指 標 (GFI)は .967、自 由 度 調 整 適 合 指 標 (AGFI)は .813 と な り 、説 明 力 が 高 い モ デ ル と い え る 。ま た 、残 差 平 方 平 均 平 方 根 (RMR)は .129 で あ り 、デ ー タ が モ デ ル に ま ず ま ず 適 合 し て い る と いうことを示している。 続いてモデルの部分的評価を行う。まずは「期間限定」が与える影響として 仮 説 1、 2 を 検 証 す る 。「 期 間 限 定 」 は 「 顧 客 満 足 度 」 へ の 影 響 は 有 意 か つ 正 の 7 影 響 を 与 え て い た (β=.376 t=6.423 p<0.001)。 よ っ て 仮 説 1 は 採 択 さ れ た 。 こ れは、期間が限られているものを体験することで、普段とは違う特別な満足感 を得られたものではないかと考えられる。しかし「期間限定」から「再来園意 図 」へ の 影 響 は 有 意 で は な か っ た (β=-.008 p>0.05)。よ っ て 仮 説 2 は 棄 却 す る 。 次 に 「 非 日 常 感 」 が 与 え る 影 響 と し て 仮 説 3、 4 の 検 証 を す る 。「 非 日 常 感 」 は 「 顧 客 満 足 度 」 へ の 影 響 は 有 意 で は な か っ た (β=.112 p>0.05)。 よ っ て 仮 説 3 は棄却する。 「 非 日 常 感 」は「 再 来 園 意 図 」へ の 影 響 は 有 意 か つ 正 の 影 響 を 与 え て い た (β=.269 t=4.698 p<0.001)。 よ っ て 、 仮 説 4 は 採 択 さ れ る 。 こ れ は 、 顧 客は時々現実から逃れて、環境を変えて楽しみたいという願望があるためと考 えられる。 そ し て 次 に「 人 的 サ ー ビ ス 」が 与 え る 影 響 と し て 仮 説 5、6 の 検 証 を す る 。 「人 的 サ ー ビ ス 」 は 「 顧 客 満 足 度 」 へ の 影 響 は 有 意 か つ 正 の 影 響 を 与 え て い た (β =.178 t=2.906 p<0.01)。 よ っ て 、 仮 説 5 は 採 択 さ れ る 。 こ れ は 、 キ ャ ス ト に よ る丁寧で好感を抱けるような対応により、顧客の満足度が高まったと考えられ る。 「 人 的 サ ー ビ ス 」は「 再 来 園 意 図 」へ の 影 響 も 有 意 か つ 正 の 影 響 を 与 え て い た (β=.214 t=4.233 p<0.001)。 よ っ て 、 仮 説 6 は 採 択 さ れ る 。 キ ャ ス ト の 好 感 を持てる対応が来園後にも顧客の記憶に残り、それがディズニーランドの居心 地の良さの一因となっているからではないかと考えられる。 続 い て 「 キ ャ ラ ク タ ー ブ ラ ン ド 」 が 与 え る 影 響 と し て 、 仮 説 7、 8 を 検 証 す る。 「 キ ャ ラ ク タ ー ブ ラ ン ド 」は「 顧 客 満 足 度 」へ の 影 響 は 有 意 で な か っ た (β=.065 p>0.05)。 よ っ て 、 仮 説 7 は 棄 却 す る 。「 キ ャ ラ ク タ ー ブ ラ ン ド 」 は 「 再 来 園 意 図 」 へ の 影 響 は 有 意 か つ 正 の 影 響 を 与 え て い た (β=.191 t=3.563 p<0.001 )。 実 際 に ミ ッ キ ー ・ マ ウ ス な ど の キ ャ ラ ク タ ー と 触 れ 合 う 機 会 は TDL な ど の 限 ら れた場所になるため、それを目的として再来園をするものと考えられる。 「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」 が 与 え る 影 響 と し て 仮 説 9、 10 を 検 証 す る 。「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」 は 「 顧 客 満 足 度 」 へ の 影 響 は 有 意 か つ 正 の 影 響 を 与 え て い た (β=.312 t =4.698 p<0.001)。ア ト ラ ク シ ョ ン は 、エ リ ア ご と に あ る テ ー マ を も と に し た 演 出や楽しさがあるためと考えられる。 「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」は「 再 来 園 意 図 」へ の 8 影 響 は 有 意 で は な か っ た た め 、 仮 説 10 は 棄 却 す る (β=-.096 p>0.05)。 最 後 に 「 顧 客 満 足 度 」 が 与 え る 影 響 と し て 、 仮 説 11 を 検 証 す る 。「 顧 客 満 足 度 」は「 再 来 園 意 図 」へ の 影 響 は 有 意 か つ 正 の 影 響 を 与 え て い た (β=.326 t=6.046 p<0.001)。 こ れ は 、 満 足 す る こ と で も う 一 度 来 園 し た い と い う 思 い が 強 く な る か ら と 考 え ら れ る 。ま た 、 「 非 日 常 感 」と「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」強 い 相 関 関 係 が あ ることが明らかになった。 以 上 の 分 析 か ら「 顧 客 満 足 度 」へ 最 も 強 い 影 響 を 与 え て い た の は「 期 間 限 定 」 で あ っ た 。「 期 間 限 定 」 の イ ベ ン ト 相 次 い で 行 う こ と で 、 TDL を 飽 き さ せ な い こ と が 、「 顧 客 満 足 度 」 の 維 持 向 上 に 貢 献 し た も の と 考 え ら れ る 。 ま た 、「 再 来 園意図」へ最も強い影響を与えているのは「顧客満足度」である。これはサー ビス・プロフィット・チェーンの概念通り、顧客満足が顧客ロイヤルティを向 上させているということが読み取れる。分析結果を表 2 および図 3 に示す。 表 2 構造方程式モデルの推定結果 期間限定 → 顧客満足度 (+ ) β = 0.376 t = 6.423 期間限定 → 再来園意図 (― ) β = 0.008 t = 0.140 非日常感 → 顧客満足度 (+ ) β = 0.122 t = 2.068 非日常感 → 再来園意図 (+ ) β = 0.269 t = 4.662 *** 人的サービス → 顧客満足度 (+ ) β = 0.178 t = 2.906 ** 人的サービス → 再来園意図 (+ ) β = 0.214 t = 4.233 *** キャラクターブランド → 顧客満足度 (+ ) β = 0.065 t = 1.099 キャラクターブランド → 再来園意図 (+ ) β = 0.191 t = 3.563 *** アトラクション → 顧客満足度 (+ ) β = 0.312 t = 4.698 *** アトラクション → 再来園意図 (― ) β = 0.096 t = 1.764 顧客満足度 → 再来園意図 (+ ) β = 0.326 t = 6.046 9 *** *** ***: 0. 1%水 準 で 有 意 ** : 1%水 準 で 有 意 実 線 :有 意 期間限定 破 線 :非 有 意 .376* ** -. 008 非日常感 .1 2 2 顧客満足度 .2 69* ** .1 7 8* * 人的サービス .2 14* ** .326* ** .0 6 5 .1 9 1* ** 再来園意図 キャラクターブランド .3 1 2* ** -. 096 アトラクション 図 3 分析結果 第 6章 本研究の知見と今後の課題 まず前提として「顧客満足度」は「再来園意図」に正の影響を与えているこ とが分かった。これにより、先行研究における「サービス・プロフィット・チ ェーン」の顧客満足を高めることが再来園意図につながることを再確認した。 次に、 「期間限定」 「非日常感」 「人的サービス」 「キャラクターブランド」 「ア 10 ト ラ ク シ ョ ン 」 5 つ の 各 因 子 が 、「 顧 客 満 足 度 」「 再 来 園 意 図 」 に 与 え る 影 響 に ついて考察する。 「 期 間 限 定 」は 、 「 顧 客 満 足 度 」に は 正 の 影 響 を 与 え る が「 再 来 園 意 図 」に は 直接的な影響はみられなかった。これは「期間限定」の因子は、パレードとイ ベントが主となり構成されるからだと思われる。パレードとイベントは、園内 で の 顧 客 満 足 を 高 め る 要 因 に は な る が 、 園 外 に お い て TDL に 行 く こ と を 誘 発 す る 力 は な い の で あ る 。 仮 に あ る と す る な ら ば 、 そ れ は CM 等 プ ロ モ ー シ ョ ン による影響が強いのであろう。 「 非 日 常 感 」 は 、「 顧 客 満 足 度 」 に 直 接 的 な 影 響 は み ら れ な い が 、「 再 来 園 意 図 」 に は 正 の 影 響 を 与 え る 。 こ れ は TDL の 作 り 出 す 世 界 観 、 つ ま り 非 日 常 感 が、園内に居る時よりも園外に居る時の方が、参加者に対し強い影響力を与え る と い う こ と で あ る 。TDL の 中 に 居 る 時 は 気 付 か な い が 、現 実 世 界 に 戻 っ た 時 こそ非日常感を求めるようになるのではないだろうか。 「 人 的 サ ー ビ ス 」は 、 「 顧 客 満 足 度 」、 「 再 来 園 意 図 」ど ち ら に 対 し て も 正 の 影 響 を 与 え る 。こ れ は 私 た ち の 仮 説 通 り と な っ た が 、 「 顧 客 満 足 度 」よ り「 再 来 園 意図」への影響度が高いことは想定外であった。キャストによるサービスは、 園 内 に 居 て こ そ よ り 強 い 影 響 力 を 発 揮 す る も の と 考 え て い た が 、「 再 来 園 意 図 」 に対する影響度の方が高いことから、顧客の心に残る接客ができていることが 分 か る 。TDL の 成 功 要 因 と し て キ ャ ス ト の 質 の 高 さ が 挙 げ ら れ る こ と が 多 い が 、 それが結果として表れている。 「 キ ャ ラ ク タ ー ブ ラ ン ド 」 は 、「 顧 客 満 足 度 」 に 影 響 は み ら れ な い が 、「 再 来 園意図」には正の影響を与える。今回の分析では、お土産等グッズは価格の影 響が大きいと考えるため、キャラクターブランドの研究対象として扱わなかっ た。このことが結果を左右したのであろう。 「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」は 、 「 顧 客 満 足 度 」に 正 の 影 響 を 与 え る が 、 「再来園意図」 に は 、直 接 的 な 影 響 は み ら れ な か っ た 。 「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」は「 顧 客 満 足 度 」を 高 め る 要 因 で は あ る が 、「 非 日 常 感 」 と 「 ア ト ラ ク シ ョ ン 」 の 相 関 が 強 い た め 、 「非日常感」の構成する要素の1つとしてみなされているのではないかと考え 11 られる。よって「アトラクション」は「再来園意図」に直接的な影響が見られ ないのではないか。 今 回 、 他 の テ ー マ パ ー ク か ら 完 全 に 差 別 化 を 図 り 成 功 を 収 め た TDL に お け るサービス・マーケティングを研究対象とした。テーマパークの評価の際に必 ず取り上げられるのが、物理的な商品と施設、接客サービスであるため、本研 究 で は 、 サ ー ビ ス ・ マ ー ケ テ ィ ン グ の 「 価 格 」「 プ ロ モ ー シ ョ ン 」「 場 所 」 を 除 いた、 「製品」 「参加者」 「物的な環境」 「 サ ー ビ ス の 組 み 立 て の プ ロ セ ス 」が「 顧 客満足度」と「再来園意図」に与える影響を分析するためのモデルを構築し、 それを元に分析を行った。その結果として、顧客満足を高めることが再来園意 図につながることは再確認できたが、影響度を表す数値全体が低くなってしま った。そこに本研究の1番の課題がみられる。これは入園料、お土産、レスト ラ ン 等 の「 価 格 」、あ る い は テ レ ビ CM、イ ン タ ー ネ ッ ト 等 の「 プ ロ モ ー シ ョ ン 」、 この2つの影響が大きいだろう。また、誰と来園したか、どの時期に来園した か に よ っ て TDL に 対 す る 評 価 が 異 な る の で 、 正 確 な 分 析 結 果 が 得 ら れ な か っ た可能性がある。さらに、調査対象が学生に偏ってしまったので、全世代をラ ンダム・サンプリングした、より精度の高い調査が必要であると言える。今後 これらの点を踏まえた研究を行うことが必要である。 12 補足 今回行ったアンケートは以下の通りである。 明治大学 高橋ゼミα 班 久保田・須田・武井・内山・長沼・高野・小林 ディズニーランド についての意識調査 この調査は、ディズニーランドにおけるサービスマーケティングに関する調査です。 1.以下の質問で、最も当てはまる番号に一つそれぞれ○印をつけてください。 7…非常にそう思う 6…そう思う 5…ややそう思う 4…どちらでもない 3…あまり思わない 2…ほとんど思わない 1…全く思わない 【キャストについて】 ①気が利く。 7 6 5 4 3 2 1 ②笑顔が素敵である。 7 6 5 4 3 2 1 ③ディズニーランドに関する知識が豊富である。 7 6 5 4 3 2 1 ④親切である。 7 6 5 4 3 2 1 ⑤キャストに満足している。 7 6 5 4 3 2 1 ①わくわくする。 7 6 5 4 3 2 1 ②清潔感がある。 7 6 5 4 3 2 1 ③非日常感がある。 7 6 5 4 3 2 1 ④エリアごとに世界観が作り上げられている。 7 6 5 4 3 2 1 ⑤景観や雰囲気に満足している。 7 6 5 4 3 2 1 ①迫力がある。 7 6 5 4 3 2 1 ②ストーリー性がある。 7 6 5 4 3 2 1 ③わくわくする。 7 6 5 4 3 2 1 ④癒される。 7 6 5 4 3 2 1 ⑤異世界観がある。 7 6 5 4 3 2 1 ⑥アトラクションに満足している。 7 6 5 4 3 2 1 ①キャラクターに会うと癒される。 7 6 5 4 3 2 1 ②キャラクターに会うと気分が高まる。 7 6 5 4 3 2 1 ③キャラクターとの遭遇はサプライズ感がある。 7 6 5 4 3 2 1 ④キャラクターとの触れ合いに満足している。 7 6 5 4 3 2 1 ①わくわくする。 7 6 5 4 3 2 1 ②新鮮である。 7 6 5 4 3 2 1 ③季節感があって良い。 7 6 5 4 3 2 1 ④装飾が素敵である。 7 6 5 4 3 2 1 ⑤イベントに満足している。 7 6 5 4 3 2 1 ①パレードやショーが行われていたら、見たい。 7 6 5 4 3 2 1 ②パフォーマンスの質が高い。 7 6 5 4 3 2 1 ③楽しい。 7 6 5 4 3 2 1 ④感動する。 7 6 5 4 3 2 1 ⑤パレード・ショーに満足している。 7 6 5 4 3 2 1 ①総合的にディズニーランドに満足している。 7 6 5 4 3 2 1 ②またディズニーランドに行きたい。 7 6 5 4 3 2 1 【パークの景観・雰囲気について】 【アトラクションについて】 【キャラクターについて】 【イベントについて(ハロウィン、クリスマスなど)】 【パレード・ショーについて】 【ディズニーランドについて(総括)】 2.あなたご自身のことについてお尋ねします。 ①あなたの性別は。 男 ②昨年、ディズニーランドに何回行きましたか。 女 ( 回) 質問は以上です。ご協力ありがとうございました。 【注】 1) 2001 年 に は 海 を テ ー マ と し た 「 東 京 デ ィ ズ ニ ー シ ー 」( 以 下 TDS と 略 記 ) が 開 園 し 、 こ の 年 に は TDL、 TDS 併 せ て 入 場 者 数 2200 万 人 ( 22,047,000 人 ) を 記 録 し た 。 昨 年 2011 年 も 入 場 者 数 2500 万 人 ( 25,347,000 人 ) を 超 13 えている。 2) Reichheld と Sasser の サ ー ビ ス 企 業 を 対 象 に 行 っ た 調 査 に よ る と 、 マ ー ケ ットシェアと収益性には関連がなく、どの業界においても顧客ロイヤリティ の高い企業は収益性もまた高いことが明らかになった。具体的には顧客ロイ ヤ リ テ ィ が わ ず か 5% 増 え た だ け で 利 益 は 25~ 85% 増 え る と 推 定 し て い る 。 【参考文献】 @ IT http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/cs.html (情 報 最 終 確 認 日 :2012 年 10 月 2 日 ) 岩本俊彦「ターゲット・マーケティングにおける顧客維持戦略の階層性」 『東京情報大学研究 論集』Vol.13 No.2,2010 年,10-27 頁 小野譲司著『顧客満足[CS]の知識』日本経済新聞出版社,2010 年 オリエンタルランドグループ http://www.olc.co.jp/tdr/guest/ (情報最終確認日:2012 年 9 月 10 日) クリストファー・ラブロック ローレン・ライト著 高畑泰 藤井大拙訳『サービス・マーケ ティング原理』白桃書房,2002 年 小林由弥『モバイルコンテンツサービスにおける顧客ロイヤルティ形成メカニ ズムの解明』 https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/4766/8/paper.pdf (情 報 最 終 確 認 日 :2012 年 10 月 2 日 ) 佐 藤 和 代「 顧 客 満 足 / 不 満 足 経 験 と そ の 後 の 選 択 行 動 『 」日本消費経済学会年報』 第 23 集 , 2001 年 203‐ 208 頁 ジェームス・L・ヘスケット W・アール・サッサー・JR レオナード・A・シュレンジャー 著 島田陽介 訳 『カスタマー・ロイヤルティの経営 企業利益を高める CS 戦略』日本経済 新聞社, 2001 年 嶋口充輝 和田充男 池尾恭一 余田拓郎著『マーケティング戦略』有斐閣,2006 年 高橋秀雄『サービス・マーケティング戦略』中京大学企業研究所,2009 年 東京ディズニーリゾート・オフィシャルサイト 14 http://www.tokyodisneyresort.co.jp/tdl/index.html (情報最終確認日:2012 年 9 月 10 日) 平久保仲人著『消費者行動論』ダイヤモンド社,2005 年,234-238 頁 諸井克英 濱口有希子「テーマパークに対する意識と行動」 『同志社女子大学 学術研究年報』 第 60 巻,2009 年 , 51‐63 頁 山本祐子 圓川隆夫著『顧客満足度とロイヤリティの構造に関する研究』日本 経 営 工 学 会 論 文 誌 , 2000 年 , 143‐ 152 頁 15
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