契約及び契約書の基本的知識 要 旨 1. 外注(下請)取引とは、一部の売買契約(市販品と称されるものに何らかの加工・ 手直しをさせたもの)、請負契約及び製作物供給契約といわれる契約のいずれかの 類型に属する取引である。 2. 外注(下請)取引契約を理解するためには、契約一般に通じる取引の基本原理を 理解することが必要である。 3. 取引の基本には、私的自治の原則があり、これが契約面では「契約自由の原則」 として現われている。すなわち、契約は、誰と、いかなる内容で、どんな方式で締結し ようと自由で、公序良俗に反しない限りその契約は有効に成立する。 4. しかし、余りにも自由に任せることは、反面、取引上の優位な立場を利用して公正 な取引を阻害するおそれなしとしないので、社会的衡平を保つため、一定の取引に ついては、内容の法的規制、国の許可監督など公的な介入が必要となっている。 5. 外注(下請)取引の面でも、独占禁止法及び下請代金法が不公正な取引を規制 するほか、下請振興法は取引が適正に推進されるよう指針を示している。 6. 外注(下請)取引基本契約書を作成する親事業者も、その掲示を受ける下請事業 者も、契約についての基本的理念と関係法令を十分理解されて、公正な取引に役 立たせていただくことを期待する。 1 1 外注(下請)取引基本契約書の意義 外 注 (下 請 )取引 基 本 契 約 書 (以 下 、必 要 な場 合 を除 き「取 引 基 本 契 約 書 」とい う。)は、企業者間において、2以上の外注(下請)取引を継続して行うために作成さ れる契約書で、その継続的な取引に共通して適用される取引条件を定めるものと定 義することができる。 2 外注(下請)取引基本契約締結の目的 取引基本契約書は、親事業者と下請事業者との間に作成される契約書であるが、 おおむね親事業者の準備した契約書案を中心として行われる。 親事業者が取引基本契約を締結する目的は、この契約によって、下請事業者と の間の外注(下請)取引が適正かつ円滑に行われるよう、個別取引に共通して適用 される取引条件をあらかじめ明確にしておくことにある。 3 外注(下請)取引の契約としての効力 外注(下請)取引が成立すると、親事業者と下請事業との間には、前述のいずれ かの契 約 が締 結 されたことになる。その契 約 上 の効 力 として、親 事 業 者 は、仕 事 の 注文者又は物品の買主の立場に立ち、下請事業者は、仕事の請負人又は物品の 売主の立場に立つ。そして、各事業者は、その取引条件に従って、それぞれの契約 上の義務を履行しなければならない。 4 契約に適用される諸法規 1)法の適用順序 外注(下請)取引は、親事業者と下請事業者との間に締結される契約であり、 民法の諸規定、特に債権編の規定が、また、商人間の商行為なので商法の諸規 定、特に商行為編の規定が適用されることになる(契約の締結の権限に関する会 社編の規定については、第1項で述べたとおりである。)。その他に、商慣習法や 商慣習がある。 外注(下請)取引に適用される規定の順序は、まず商法の規定、次に商慣習 法、その次に民法の規定となる(商法第1条)。 2)特約のある場合 契約の内容や効力を定めているこれらの規定は、おおむね任意法規といわれ るものなので、契 約 の当 事 者 である親 事 業 者 と下 請 事 業 者 との間で、法 令 中 の 公の秩序に関する規定に反しない限り、これと異なる合意をしたときには、その合 意が有効な契約の内容となる(民法第91条)。 契約の内 容を詳細に取り決めておかないときは、その不足した部分について は、商法、商慣習法及び民法の規定がその順序で補充的に、また、解釈の基準 として適用される。 2 3)商慣習 契約の当事者間で、法令中の公の秩序に関する規定に反しない商慣習によ る旨の合意があると、その商慣習が契約の内容となる(民法第92条)。 5 契約自由の原則 特に明文はないが、現行の私法制度には、いわゆる私的自治の原則があるといわ れている。社会生活上の単位である個人でも法人でも、めいめいの責任において、お 互いの間 に私法上の法律関係を自由に決定し、規律することができるとの原則であ る。 その原則は、契約については契約自由の原則といわれる。この原則の内容は次の とおりである。 1)契約の相手方を選択する自由 2)契約を締結するか否かの自由 3)契約の内容を決定する自由 4)契約を締結する方式の自由 3
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