平成19年度原子力人材育成プログラム事業成果報告

平成19年度原子力人材育成プログラム事業成果報告
原子力研究促進プログラム(文部科学省事業)
東北大学
多元物質科学研究所: 佐藤 修彰
<提案事業概要>
フロントエンド領域におけるウラン鉱石の湿式処理、酸化物製造、フッ化物製造、再転換に関し
て、ウラン酸化物の酸溶解挙動、ADU から UO2 の調製方法、UO2 や U3O8 の相関係、フッ化物の合成
と性質について理解する。さらに、バックエンド領域においては FP 共存下における UO2 固溶体の
固体化学、また、バックエンド領域においては、酸化物の乾式、湿式処理および酸化物転換の実験
を通して、ウランを取り扱う基礎的実験技術の習得と化学形態への理解を深める。
1. 目的・背景
・
核燃料サイクルを理解するには、ウラン鉱石からの製錬、燃料製造までのフロントエンドお
よび燃焼後の再処理、リサイクル燃料製造、廃棄物処理・処分までのバックエンドにおける
ウランの挙動が必要不可欠である。
・
ウラン化合物の性質や、反応性などの基礎知識やプロセスにおけるウランの化学形態への理
解が重要である。
・
しかし、近年、大学等においては原子力関係学科の減少や教員の不足により、これらの領域
についての実習や講義等が十分になされていない。
・
特に、実験や実習に関してのプログラムが極めて不足しており、フロントエンドに関しては
殆ど対応できていない。
・
本提案では、大学院修士課程 1 年生に核燃料サイクルにおけるウランについて取り扱う基礎
的実験技術の習得と化学形態への理解を深める。
・
フロントエンド領域ではウラン鉱石の湿式処理、酸化物製造、フッ化物製造、再転換に関し
て、ウラン酸化物の酸溶解挙動、ADU から UO2 の調製方法、UO2 や U3O8 の相関係、フッ化物
の合成と性質について理解する。
・
バックエンド領域では FP 共存下における UO2 固溶体の固体化学、酸化物の乾式、湿式処理お
よび酸化物転換について理解する。
2. 実施概要
・
ウラン酸化物の酸溶解実験:種々のウラン酸化物の硝酸溶解における温度、酸濃度等の条件
と溶解性との関係を調べ、溶解挙動について理解する。
・
ADU の合成とウラン酸化物への転換:ウラニル溶液より、ADU の沈殿生成、濾過を経て、ウ
ラン酸化物の調製を理解する。
・
ウラン酸化物の酸化還元挙動:水素を用いた還元や、酸素を用いた酸化処理における UO2 や
UO3、U3O8 などのウラン酸化物の相変化と酸化還元挙動を理解する。
・
UO2 固溶体の固体化学:UO2 の不定比性や希土類元素が共存する場合の UO2 固溶体生成の熱力
学について理解する。
・
ウラン酸化物からフッ化物への転換:ウラン酸化物からフッ化物への転換方法とフッ化物の
H19 事業成果報告(原子力研究促進プログラム)(東北大学) 1/4
性質について理解する。
・
ウランの溶媒抽出挙動:ウランの硝酸溶液から、TBP による溶媒抽出と分離精製特性につい
て理解する。
・
実験は東北大学多元物質科学研究所 RI 使用施設で行った。
・
同施設内の恒温槽や攪拌器など湿式実験設備や特殊ガス反応装置や粉末 X 線回折装置など乾
式実験設備を使用し、ウランは同施設に保有する金属ウランや U3O8 を使用した。
2-1.
ウラン酸化物の酸溶解実験
・ 所定の濃度の硝酸に種々のウラン酸化物を溶解し、溶解挙動を調べた。
・ 試料は金属ウラン、UO2 および U3O8 を用いた。
・ 試料をビーカーに入れ、所定濃度の硝酸を加え、ホットプレート上で加熱溶解した。
・ 溶解とともに、溶液が黄色に変色し、ウラニルイオンが生成していることを理解した。
・ UO2 の溶解においても酸化されてウラニルイオンが生成することが分かった。
2-2.
ADU の合成とウラン酸化物への転換実験
・ ウラニル溶液に、アンモニアを添加し、ADU(重ウラン酸アンモニウム)を沈殿生成させ
た。
・ アンモニア濃度やウラン濃度などの沈殿条件と生成した ADU の状態を調べた。
・ 沈殿した ADU を吸引ろ過により分離し、黄色沈殿を得た。
・ ADU を坩堝に入れ、電気炉にて空気中にて加熱処理してウラン酸化物とした。
・ 生成したウラン酸化物について、焼成条件と生成物(UO3、U3O8)の相関係を調べた。
2-3.
ウラン酸化物の酸化還元実験
・ 金属 U や UO2 を磁性るつぼに入れ、空気中所定温度(~800℃)にて加熱して、ウラン酸
化物を調製した。
・ 生成物について、粉末 X 線回折により生成相を調べ、U3O8 であることを確認した。
・ 水素雰囲気において U3O8 を還元し、生成物が UO2 単相であることを確認し、格子定数を
求めた。
◆
(a) 12h
・ 還元後の UO2 を、空気中において加熱処理し、U4O9
◆
を経て U3O8 へと再酸化されることを確認した。
■
■
■
▼
20
◆
■
30
■
40
◆
50
◆
2-4.
◆
■
60
(b) 24h
UO2 固溶体の調製と相関係解析
◆
・ UO2 と希土類元素(Eu、Nd)酸化物との混合物を空
気中にて加熱し、相関係を調べた。
■
■
■
20
◆
▼
30
◆
40
50
(c) 36h
◆
固溶体生成との関係を求めた。加熱時間とともに UO2
・ UO2 固溶体相について格子定数を求め、添加濃度や加
熱温度依存性を調べた。
・ CeO2 を用いて同様に固溶体生成条件を確認し、Ⅲ価
およびⅣ価希土類元素の違いを理解した。
60
◆
・ 添加濃度や温度、時間を変えて行い、加熱条件と UO2
単相となることが分かった。(図 1)
◆
■
◆
◆
◆
20
30
40
50
60
2 / degree
図 1 U3O82O3 混合物の加熱時間
による相 2(JCPDS 41-1422)
、
■:U3O8(JCPDS47-1439)
▼:Nd2O3 (JCPDS41-1089)
H19 事業成果報告(原子力研究促進プログラム)(東北大学) 2/4
2-5.
ウラン酸化物からフッ化物への転換実験
・ フッ化水素やフッ素の取り扱いを習熟した。
・ UO3 とフッ化水素と反応させ、乾式法によるオキシフッ化物への生成条件を求めた。
・ 高温におけるフッ化反応を行い、UF4 へ転換できることを確認した。
・ フッ素の反応ラインを使用して実験を行い、取り扱い技術を習得した。
・ 遷移金属とフッ素とを反応させ、揮発することを確認した。
2-6.
ウランの溶媒抽出実験
・ 溶媒抽出法によるウランおよびユウロピウムの
2
分離精製を行った。
溶液(100ppm)と市販の Eu 溶液(1000ppm)を
用いた。
1
0.5
logDM
・ 金属ウランを 1M 硝酸に溶解して調製したウラン
y = 1.2086x + 0.9167
R2 = 1
1.5
U
Eu
0
-0.5
-1
・ 試料溶液および抽出溶媒(TBP/dodecane)、硝
-1.5
-1.5
-1
-0.5
0
log[HNO3]T
0.5
1
酸を分液ロートに入れ、平衡させた。
・ 平衡後、水相を分離、有機溶媒相から所定量を別
図2
の硝酸を添加し、逆抽出させた。
ウランとユウロピウムの分配比 D
との硝酸濃度の関係
・ 酸濃度や抽出時間などの抽出条件と U および Eu の分離特性について理解した。(図 2)
2-7.
総括
・ 2-1~2-6 までの実験を通じて得られた知見をまとめた。
・ 核燃料サイクルに関する 7 回の講義(ウランの選鉱製錬、湿式再処理、乾式再処理)を実
験に先立って行った。
・ ウランの酸化状態と化合物の性質、分離精製、転換-再転換について実験および講義より
総合的な理解を深めた。
3. 成果
・
核燃料サイクルについての講義により全般的な知識を深めた。
・
放射性物質を取り扱う化学実験の基本操作に関して、技術を習得した。
・
乾式および湿式プロセスに関して実験的な理解を深めた。
・
ウランの固体化学および溶液化学について、基礎的な理解を得た。
・
実験中の現象を理解し、状況を把握し、対応する力を養うことができた。
・
学生自身が、実験計画を策定し、実施できるようになった。
・
核燃料および放射性物質に関わる法規制について理解するようになった。
4. 取り組みの評価と今後の展開
・
核燃料であるウランについて、燃料サイクルにおける基本反応を理解させることができた。
・
原子力発電のあり方、再処理プロセスの開発の必要性等、現状と問題点および取組について
理解を得た。
・
単年度プログラムであったので、継続したプログラムであればさらに効果的である。
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5. 文献
1)
日本化学会(編):第 5 版実験化学講座
基礎編Ⅰ~Ⅳ(丸善、東京、2006)
2)
日本原子力学会(編):原子力ハンドブック(オーム社、東京、2007)
3)
原子力規制関係法令研究会(編):2007 年原子力規制関係法令集(大成出版社、東京、2007)
4)
労務行政研究所(編):平成 19 年度版労働安全衛生関係法令集(労務行政、東京、2007)
5)
足立吟也監修:希土類とアクチノイドの化学(丸善、東京、2008)
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