家庭科教育研究部 主任 紀本 美貴子 部員 【平成 20 年 10 月現在】 村上 咲子 研究主題 家庭や地域とかかわり,生活力を高める家庭科教育 めざす子ども像 家庭生活に主体的にかかわり,工夫・創造する子ども 研 究 目 標 研 究 仮 説 生活力を高めるために,家庭や地域とかかわらせて,多様な直接体験を取り入れた学習 を進めていくことが有効であることを実践的に明らかにする。 児童が家庭生活に主体的にかかわるために,実生活と関連づけた学習過程を工夫するこ とにより,児童は学校で習得した知識・技能を家庭生活などに生かそうとし,生活力を高 めることができる。 1 主題設定の理由 家庭科は,児童の日常の家庭生活を主な学習対象としている。そのため,学んだことを家庭生 活に生かし,家庭生活を一層楽しく,よりよくしようとする実践的な態度を育てることをねらい としている。ただ,社会環境の変化に伴い家庭生活も変化し多様化している中,児童を取り巻く 環境も大きく変化してきている。習い事やクラブ活動等で多忙な生活を過ごしている児童が多く 見られ,家庭の仕事にかかわることが少なく,生活体験が不足している児童が増えてきたと思わ れる。生活体験の不足は,家庭生活に主体的にかかわろうとする意識を乏しいものにするのでは ないかと思われる。それが,ヒト・モノ・コトとのかかわりの不足にもつながり,学校で得られ た知識・技能を家庭において活用したり,自己の家庭生活と関連づけて考えて創意工夫しようと したりする意識の欠如につながるのではないだろうか。よって,家庭生活との関連を図りながら, 家庭生活に主体的にかかわり,よりよい生活を求めようとする意識をもたせることが児童にとっ て必要である。そこで,家庭と連携しながら,家庭科の学びを充実させ,実生活と結び付いた実 践的・体験的な学習を工夫することが求められる。 一年次は,家庭や地域との連携を図りながら,体験活動を重視し,友達との学び合いの場も組 み入れて,単元構成や学習計画を工夫することによって,児童が家庭生活に主体的にかかわろう とする実践的な態度が育てられるであろうと研究を重ねてきた。その結果,児童の学習意欲を高 めることができ,体験したことが自分のものになったという実感を伴った知識や技能の習得が図 られた。そして,そこから次なる課題が明確となったり,自分の体験を生かした考えを見出した りすることができるという成果が得られた。しかし,これまでの学習で得られた知識や技能をう まく活用させることができなかった。よって,教材の与え方や場の設定等の学習展開を工夫する 必要がある。 そこで,本研究部では,児童が家庭生活に主体的にかかわろうとする態度を育成するためには, 家庭や地域とのかかわりを持たせた学習を継続して行うことが重要であると考えた。今後もどの ようにして,他教科・保護者・地域とかかわらせた授業の組み立てをしていけばよいか,6年間 を見通して系統性のある学習過程を工夫することが大事であると捉え,研究の重点とした。 2 家庭科における「学びの力」とは 本校家庭科部では,「学びの力」=「生活力」と捉えた。習得した知識・技能が,家庭生活に おいて実践されることで生きてはたらく知識・技能となり,そこには思考と判断を伴った行為が できる能力も含まれている。西は,家庭科の「生きる力」は「生活実践力」であるとし, 「生活 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実 践 力 」 と は , 具 体 的 な 生 活 の 場 面 で , 生 活 の 状 況 を 認 識 し , 積 極 的 に 人 , も の , こと ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ *1 に関わり,文脈に沿って思考し判断して行動化する能力である と定義している。本研究部が考 える「生活力」は,この「生活実践力」という考えも受けて,児童が今すぐに日常生活において 実践できる力も大切にしながら,将来必要性を感じたときに,学校で学んだ知識・技能が児童の 生きてはたらく実践力になることも大切であるとしている。つまり,家庭科学習で終わりとする のではなく,実生活に生かすことで,行動の結果からさらに課題を見出し,ヒト・モノ・コトと のかかわりで得られた知識・技能から思考し判断を伴って課題を解決していく力を児童に身に付 けさせたいと考えた。加えて,児童は,学校での学び合いから家庭・地域へとかかわりを広げて いくことで,多様な価値観にふれると思われる。そのとき,自分の価値認識を高め,根拠を明ら かにできる思考と判断を伴った行為ができる能力を含めて「生活力」と捉えた。 児童にとって,家庭科学習で自己効力感や自己肯定感を実感する機会が得られることで,主体 的に家庭生活や社会,仲間とかかわろうとする意欲や態度が身に付くと思われる。そして,その ことが,学んだことを実生活に生かそうとし,活用されることで,子どもたちの生きる力となっ ていくであろう。 3 ① ② 検 証 予 定 研究内容 家庭や地域との連携を図りながら,継続した態度育成を目指すための指導計画の工夫 他教科との関連や6年間の系統性を考えた家庭科カリキュラムの構築 発言記録,製作物,ノート,自己評価記録,相互評価,家庭とのアンケート等のやりと り など *1 西敦子『生活実践力を育成する家庭科授業の創造』明治図書,2005,pp.22-24.(傍点は本研究部入)
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