企業・産業動向レポート

企業・産業動向レポート
= 2014年10月1日~31日の報道内容 =
Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況
◎JMU関連
◆JMU/スワイヤ向けPSV2隻竣工 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)は9月29日、横浜事業所鶴見工場で建造してい
た3,600総㌧型プラットフォーム・サプライ・ベッセル(PSV)“Paciflc Gamet’’を引き渡した。30日にも舞鶴事業所で建造し
ていた5,200総㌧型PSV“PacificLegend”を引き渡した。契約船主はいずれもシンガポールのSWIRE PACIFICOFFSHORE O
PERATIONS(Pte)Ltd。新造船は、広いデッキ面積と多種なタンクを持ち、液体や粉体、固体などの多種多様な貨物をリ
グや海洋構造物に輸送できる。電気推進による旋回式推進装置や船首スラスタの搭載で高い位置保持能力を有してお
り、荷役時の安全性も確保している。両船の主要目は次のとおり。<Pacific Gannet>約3,585総㌧、4,078重量㌧、全長
84.65m、幅18.00m、深さ7.60m、喫水6.44m、主機関:ヤンマー6EY26LW/ヤンマー6EY18LW、定員48人、航海速力12.0ノ
ット、船級DNV-GL、船籍シンガポール。<Pacific Legend>約5,179総㌧、5,248重量㌧、全長97.29m、幅20.00m、探さ9.0
0m、喫力6.815m、主機関:MAN6L27/38、定員37人、航海速力12.0ノット、船級DNV-GL、船籍NIS。
◎いすゞ自動車関連
◆いすゞ/営業益14%減 ≪4-9月780億円 減益幅が縮小≫いすゞ自動車の2014年4-9月期の連結営業利益は前年同
期比14%減の780億円前後になったようだ。従来予想より減益幅が80億円縮小する。主力のタイ市場で販売減少が続
いているが、国内の販売が好調を維持したほか、中近東やアフリカで想定よりも販売が伸びた。アフターサービス事業
も好調でタイの落ち込みを補った。≪復興需要で国内販売好調≫売上高は1%減の8,700億円前後だったようだ。従来
予想は8,600億円。売上高の2-3割を占めるタイ市場は政変の影響で設備投資や消費が低迷した。いすゞが販売してい
るトラックやピックアップトラックも落ち込んでいる。一方で国内販売は好調だった。東日本大震災の復興需要や都市部
の再開発案件の増加などで、トラックの需要が底堅く推移したためだ。車両整備などのアフターサービス事業も堅調
で、昨年設立したリース会社「いすゞリーシングサービス」(東京・品川)を通じて車検や整備をセットにしたリース商品の
販売などが増えている。海外では中近東やアフリカが好調だ。特に公共投資が活発なサウジアラビアやエジプトに早
期に進出していたこともあり、高い知名度をいかして販売を伸ばした。同社の想定為替レートは1㌦=100円で、円安・㌦
高も利益を押し上げた。10月以降は国内や中近東の販売が好調を維持するものの、タイは引き続き苦戦する見通しだ。
15年3月期通期は売上高が前期比4%増の1兆8,400億円、営業利益が5%減の1,650億円を計画しており、11月5日に予
定する4-9月期の決算発表では従来計画を維持する公算が大きい。
◎住友重機械工業関連
◆住重船舶/通期営業赤字20億円 ≪従来予想比5億円増 資材費増織り込む≫住友重機械工業の2015年3月期連
結業績は、船舶事業の営業損益が20億円の赤字(前期は30億円の赤字)となる見通しだ。従来予想は15億円の赤字だ
った。資材費などのコスト増を織り込んだことが主因。船舶の通期連結売上高は、前期比62%増の240億円となる見込
みで、前回予想を変更していない。連結受注高は、26%増の400億円となる見通し。新造船受注は、上期の5隻に加え、
下期に1隻の計6隻を見込む。最終引き渡しは17年第1四半期。住重が30日発表した14年4-9月期連結決算は、船舶事業
の営業損益が11億円の赤字(前年同期は20億円の赤字)だった。売上高は、前年同期比86%増の115億円。新造船は、ア
フラマックスタンカー1隻を引き渡した。受注高は、新造船受注を漸増させたことを反映し、2・7倍の321億円だった。新造
船は第1四半期に3隻、第2四半期2隻の計5隻を受注。9月末現在の新造船受注残は、アフラマックス10隻。住重全社ベー
スの14年4-9月期連結決算は、売上高が12%増の3,063億円、営業利益は2・3倍の199億円、経常利益は2・5倍の200億
円、純利益は3・6倍の122億円となった。建設機械部門の油圧ショベルが国内で、精密機械部門のプラスチック射出成形
機がアジアでそれぞれ売り上げを増やしたのに加え、為替の円安傾向が利益を押し上げた。通期の連結業績予想は、
売上高が前期比5・6%増の6,500億円、営業利益は22%増の420億円、経常利益は16%増の385億円、純利益は17%増
の210億円。営業利益と経常利益は前回予想を50億円、純利益は20億円それぞれ上方修正した。配当は、中間配当を
従来予想より1円増の5円と前期に比べ2円増配する。期末配当は前回予想の5円を据え置き、年間配当は前期比3円増
配の10円を予定。
◆住友重機械/アフラ5隻受注 ≪4-9月、営業損失11億円≫住友重機械が30日発表した2014年4-9月期の船舶部門
の連結営業損益は11億円の赤字(前年同期20億円の赤字)だった。また、期中にアフラマックス・タンカー5隻を受注し
た。4-9月期の売上高は前年同期比86%増の115億円だった。受注高は、2隻だった前年同期に比べて2.7倍の321億円
になった。この結果、期末時点での受注残高は487億円で、今年3月末時点に比べて205億円増加。新造船受注残は10
隻で、最終船の引き渡しは2017年第1四半期(4-6月)内となる。通期業績は受注高を400億円(従来予想は270億円)に
上方修正したが、営業損益を20億円の赤字(従来予想は15億円の赤字)に下方修正した。売上高は従来予想の240億円
を据え置いた。
◆客船引き渡し、来秋に遅れる/三菱重、仕様変更で
三菱重工業が長崎造船所(長崎市)で建造している大型客船の
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引き渡しが当初より半年遅れ、2015年9月を予定していることか分かった。設計や仕様の変更により、資材調達や建造
工程に影響が出ていた。同社はクルーズ客船世界最大手の米カーニバルから11年11月に大型客船2隻を約1,000億円で
受注。1隻目は15年3月の引き渡しを予定し、13年6月に起工した。だが、船主から内装などの仕様変更を求められたため
作業が遅れ、設計費や調達費なども膨らんだ。引き渡しに向け、プラントや鉄道といった大規模プロジェクトで豊富な経
験を持つ人材を投入するなど、工程管理のてこ入れを図っている。三菱重工は今年3月に、客船の引き渡しが遅れる可
能性があることを示唆し、14年3月期に客船事業で約600億円の特別損失を計上した。
Ⅱ.国内造船・造機関係の動向
◆9月受注6割減/船舶輸組まとめ ≪1-9月は駆け込みで20%増≫日本船舶輸出組合(船舶輸組)が15日発表した9月
の輸出船契約(受注)実績は、45万総㌧(22万CGT=標準貨物船換算㌧)となり、前年同月比62%減(CGTベースで63%
減)だった。隻数は21隻減の12隻。7月以降、単月実績で2桁減の状況が続く。為替の円高修正、7月1日以降の契約船に適
用される船内騒音規制前の駆け込み発注などで6月までは好調だったこともあり、1-9月累計では20%増だった。9月
に受注した12隻の船種別内訳は、ハンディサイズバルカー5隻▽ハンディマックスバルカー2隻▽パナマックスバルカー
3隻▽ケープサイズバルカー1隻▽LPG(液化石油ガス)船1隻。12隻のうち、外国船主向けの純輸出船は6隻だった。契約
は全て現金払いで、契約形態内訳は円建て11%、外貨建て89%。商社契約は13%となった。納期別では、15年度56%▽
16年度37%▽17年度8%。輸出船の竣工量を示す通関実績は130万総㌧(64万CGT)で15%増(CGTベースで28%増)、
隻数は5隻増の31隻だった。9月末の輸出船手持ち工事量は678隻、2,846万総㌧(1,365万CGT)で、前年9月末の586隻、
2,525万総㌧(1,174万CGT)を上回った。7月以降の単月実績では低迷しているものの、1-9月累計の受注実績は、1,207
万総㌧(585万CGT)で前年同期比20%増(CGTベースで22%増)。1-9月の受注隻数は32隻増の285隻。船種別内訳は、
ばら積み船が225隻、コンテナ船や自動車船などの貨物船が22隻、油送船は37隻、その他(貨客船)が1隻だった。14年
度上半期(4-9月)の受注実績は、678万総㌧(332万CGT)と前年同期比2%増(CGTベースで3%減)。隻数は24隻減の1
65隻だった。受注船の船主系列別割合では、邦船系が68%と前年同期の54%から14ポイント上昇。一方、欧米系11%
(前年同期15%)、ギリシャ系7%(同9%)、香港系3%(同6%)、その他11%(同16%)と、邦船系以外はシェアを落とした。
契約形態別内訳は円建て契約10%▽円・外貨ミックス4%▽外貨建て86%。全て現金払い契約となる。商社契約は16%
を占めた。納期別では、14年度6%▽15年度20%▽16年度36%▽17年度35%▽18年度3%。
◆国内造船/新造受注の失速鮮明 ≪輸組統計、1-9月は前年比2割増も≫日本船舶輸出組合(輸組)が15日発表した
1-9月の輸出船契約実績は計285隻・1,207万総㌧で、㌧数ベースで前年同期比20%増だった。ただ、1-9月の累計実績
は好調だったものの、7-9月は日本全体の受注がわずか31隻にとどまっている。新造船の新規制「改正騒音コード」(騒
音規制)が適用された7月以降は、規制前の駆け込みの反動減などで受注量は大幅に減少。失速が鮮明となっている。
今年の日本の新造船受注量を四半期別に見ると、1-3月は529万総㌧、4-6月は532万総㌧、7-9月は146万総㌧だった。
7-9月は前年同期比7割減となっている。今年上半期(1-6月)は受注量が1,000万総㌧を超え、リーマン・ショック前の造
船ブーム期以来の水準だったが、7-9月はリーマン・ショック以降でも低い水準となった。1-9月の受注船を船種別に見
ると、中小型のバルカーが大半を占めている。ハンディマックスが87隻、パナマックスが60隻、ハンディサイズが52隻と
群を抜いて多かった。また、LPG船が13隻、ケミカル船が16隻と例年に比べて多いのが特徴的だが、9月に受注したLPG
船1隻を除くと、全て騒音規制適用前の6月までに契約されている。285隻のうち純輸出船が110隻を占めており、引き続
き海外船主向けの案件が多かった。なお14年度上半期(4-9月)の実績で見ると、欧米系向けが23隻、ギリシャ系が13
隻、香港系が6隻、その他海外が22隻、邦船系が101隻となっている。1-9月の竣工量に相当する通関実績は、222隻・917
万総㌧で、前年同期比10%減だった。
◆9月の受注量/前年同月比6割減 ≪12隻・45万総㌧と低調続く≫日本船舶輸出組合(輸組)がまとめた9月の輸出
船契約実績は12隻・45万総㌧で、総㌧ベースで前年同月比62%減だった。9月の契約船の内訳はバルカー11隻(ハンデ
ィ5隻、ハンディマックス2隻、パナマックス3隻、ケープサイズ1隻)、LPG船1隻となっている。12隻のうち純輸出船は6隻
だった。9月の受注船の契約態様は、㌧数べ-スで円建て契約10.6%、外貨建てが89.4%だった。現金払い契約は100
%、商社契約が12.7%。納期別では2015年度もの56%、16年度もの37%、17年度もの8%だった。竣工量に相当する通
関実績は、前年同月比15%増の31隻・130万総㌧だった。
◆手持ち工事量/2,846万総㌧に減少 日本船舶輸出組合がまとめた今年9月末時点の手持ち工事量は678隻・2,84
6万総㌧(1,365万CGT)で、8月末時点から減少した。手持ち工事は3カ月連続で減少が続いている。納期別の内訳は、20
14年度引渡分158隻・710万総㌧、15年度263隻・9,983万総㌧、16年度166隻・729万総㌧、17年度86隻・388万総㌧、18年
度以降5隻・20万総㌧だった。
◎日本造船工業会
◆人員が5年連続減/9年前水準に ≪国内主要造船所、5%減の4.4万人≫日本造船工業会がこのほど取りまとめた
統計によると、国内造船所の造船部門の総人員数(造工会員)は、今年4月時点で前年同月比5%減の4万4,340人だっ
た。減少は5年連続。団塊世代のリタイアや、操業減に伴う協力工の縮小で、造船ブーム初期の2005年頃と同じ規模に
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まで減った。造工会員16社(34工場)の人員のうち、造船部門の社員と協力工が対象。職制別では、事務・技術職が1%減
の8,972人、技能職が11%減の1万1,867人、協力工が3%減の2万3,501人だった。技能職と協力工は引き続き大きく減っ
ている。これに対して、事務・技術職はこれまでも減少ペースが緩やかだったが、今年も大きくは減らなかった。省エネ
船開発や規制対応などで技術者が繁忙を極めていることなどが背景にありそうだ。造船業の人員数は造船ブーム期
に増え続け、ピーク時の2009年には5万3,896人に達した。増産のために人を増やしただけでなく、将来の団塊世代の
退職に備えた採用で膨らんだ面もあった。その後、需要低迷に加えて、大量退職が実際に始まったことから2010年以降
に減少に転じている。今年はピーク時の2009年に比べて9,556人減少した。
◆造船この1カ月<上> ≪円安進展、赤字船の採算改善か、設備投資や操業が戻り始めた日本造船≫対ドルの為替で
急激に円安が進み、一時は6年ぶりの1ドル=110円に達した。日本の造船業では今期から採算割れの赤字船の建造が本
格化しているが、この円安水準が続けば採算が改善に向かうのは間違いなく、赤字回避への期待すら出てきた。昨年
までの大量受注の効果で、これまで落としていた操業を戻す動きや、設備投資を再開する動きなども徐々に広がって
きた。≪円安に期待してよいか≫司会 いきなり1ドル=110円近辺への円安が進んだ。― 新造船の営業に当然、影響が
出てくるだろう。いまは商談全般が低調だけれど、この水準が続くとわからない。― 商談への影響は、後でマーケット
のところで話そう。もう1つは採算面への影響だ。船価がボトム期の受注船の建造が続いているが、この円安が救いに
なるかどうか。― 日本造船所では今期の竣工船のうち、7-8割がドル建て契約だ。円安はダイレクトに採算改善に効い
てくるはずだ。今年は「“2014年問題”は手持ち不足の問題ではなく、採算の問題」ともいわれていたが、ずいぶん助か
るのではないか。― ただ今期の入金分は、各社とももう既に為替予約を終えていると思う。― 予約の方針は会社に
よって違うようだ。流しているところもある。― 一方では、ドルのコストも以前より増えている。数年前の超円高の際に
海外調達を増やしたところもあるし、海洋関連の工事ではドルによる調達が少なくないとも聞く。― それでも、ドルコ
ストが全体に占める割合は微々たるものだよ。やはり円安は採算改善に働く方が大きいはずだ。この円安水準が期末
まで続けば、会計上は損失引当金の戻りも相当出てくるだろう。赤字予想が、黒字に転じる造船所もあるかもしれな
い。― そこまで楽観できるかどうか。もともとが採算割れの船価で、外注費なども高騰している。この円安でコストアッ
プもあるだろう。水面上にまで浮上できるかどうかは、微妙なところじゃないかな。― 造船所によって反応も違う。必
ずしも手放しで喜んでいるわけではない。― もう少し様子を見ようということだろう。そもそもコストダウンを粛々と
進めているのだし、円安で緩みかねない面もあるね。≪設備投資、大型化≫司会 円安もそうだが、日本としてはやは
り昨年の大量受注もあってか、上向きのムードになっているような気がする。設備投資や操業が戻るというニュースが
多い。― 設備投資は、建造ドックへの大型クレーン導入のような、規模の大きい投資が始まっている。大島造船が1,200
㌧クレーンを導入するほか、三井造船が千葉事業所に、IHIが愛知工場に、大型のクレーンを設置する方向だ。― 大型の
投資としては、ドックや船台を拡張する動きが一昨年ごろから既に出ていた。今治造船の広島工場(旧幸陽船渠)や、あ
いえす造船、佐伯重工、檜垣造船、北日本造船などで、それぞれ拡張工事が進んでいる。― ドック拡張といっても、建造
量を増やすという狙いではないようだ。むしろ、世の中の船型大型化に対応した投資だった。今治造船・広島は、得意の
コンテナ船でメガコンテナ船に対応するためのドック延伸だったし、佐伯重工の船台拡幅はスモールハンディの幅広化
への対応、檜垣造船の船台拡幅は近海船の幅広化に備えたものだ。船の大型化傾向が、設備投資を迫ったともいえる。
一方、最近の三井・千葉やIHI愛知は、海洋など新しい市場に対応するための設備投資だ。― 常石造船が検討している
海外新工場も、やはり新市場といえるね。― 各社ともリーマン・ショック後は、基本的に設備投資は抑制していた。それ
までにPSPC(バラストタンクの塗装基準)に対応した塗装設備を揃えたところで、大型投資を一段落していた。― うん。
いまも老朽設備の代替更新が中心という造船所は多いはずだ。建設費も高くなってきたので、以前のように、大型の
設備投資に皆が動き出すということではないだろう。― 老朽化更新といってもそれなりに大きい。40年前の造船ブー
ム期の設備が日本の造船所にはまだ多く残っている。こうした設備を入れ替えるだけでも、金額も少なくないし、生産
性もずいぶん良くなるだろう。≪操業回復の弊害≫司会 日本の造船所の操業も戻ってきた。― 昨年をボトムにして、
今年から戻り始めている。主要な造船所の話を聞くと、今期から数%程度のレベルで徐々に戻すというところが多い。
ピーク時からはまだ10%以上少ないようだけれど。― 数年前のピーク操業は、工場としても無理をしていたところも
多かった。残業や外注などを増やして増産していた。いまはそこまで戻さず、適正操業のレベルに戻そうという流れ
だ。― 最大手の今治造船が操業回復を進め始めたのが大きい。ただ、人手不足もあり、「いったん下げてしまうと戻す
のが難しい」と檜垣幸人社長が話していた。― 今治は比較的人手などで手を打っていたと聞くが、それでも難しいと
いうことだろう。― 全国一律に操業と投資が戻っているわけではない。例えばJMU(ジャパンマリンユナイテッド)は、操
業は当面1,250万時間で、ピーク比10%減を維持するし、設備投資も絞り込んでいる。むしろ、技術開発や新規船種など
に力を入れて力を蓄えるという方針のようだ。― 無理をして操業を戻そうとして工程が混乱している造船所もあると
聞く。人手不足や技量の低下などが影響しているのか、品質などをはじめ、いろいろトラブルも聞こえるようになって
きた。― 円安や受注拡大の明るいニュースはあったが、足元では新規商談も採算も厳しい状況だ。むしろ、人手の問題
などで足元が揺らぎかねない。気は抜けない。14
◆造船この1カ月<下> ≪新造船市場、円安進むも動き鈍く キャメロンLNG商談、韓国も受注≫新造船市場は、9月に
入っても船主・造船所ともに様子見の状況が続いており、動きは低調だ。為替相場の円安が進んでおり、日本の造船所
にとっては㌦建て船価の競争力が高まるが、商談そのものが冷え込んでいることから、新造船市場への影響は今のと
ころ小さい。-方、日本が関係しているシェールガス関連のLNG船商談は、キャメロンプロジェクトの三井物産向けの一
部が正式に決まるなど佳境を迎えている。三井物産向けの調達商談では、動向が注目されていた韓国造船所もー部受
注を獲得した。≪円安で新造商談は動くか≫司会 新造船商談は相変わらず9月も低調だったが、為替相場の円安が急
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激に進み、一時1㌦=110円を付けた。日本の造船所を中心とした新造船市場の動きはどうか。― 約6年ぶりのこの円安
水準は、日本の造船所にとっては大きなアドバンテージになる。ただ、今のところ円安の恩恵は業績面だけだろう。日
本造船所の㌦建て船価の競争力が高まることも事実だが、残念ながら新造商談そのものが冷え込んでおり、足元での
商談への影響は少ない。― でも、水面下では船価チェックのような形での引き合いは一部であるようだ。やはり、これ
だけ円安になれば、日本のヤードからどれくらいの船価が出てくるかは気になるところだろう。― そうはいっても、真
剣な引き合いではなく、サウンディングだろう。大勢としては、船主・造船所ともに商談に動いていない。これまで新造
発注を牽引してきた海外船主には警戒感が広がっており、新造発注の動きは鈍くなっている。用船市況が回復して、船
主の発注意欲が戻るまでは、大きな動きはなさそうだ。― 確かに、ドライ市況がこんな状況だからね。秋口以降、海運
市況が盛り上がれば、新造商談にも動きが出てくると期待する関係者は多かったが、大前提の海運市況がこれではど
うしようもない。― 造船所側も、17-18年まで線表を進めているから、㌦建ての船価を下げてまで受注しに行くとは現
時点では考えにくい。納期が先物になるから、先々の為替が円高に振れる可能性もあるし、為替予約するにしても、こ
れほど先物だとレートは悪い。― 一方では、今後の規制も影響するはずだ。来年7月発効のH-CSR(調和型共通構造規
則)で建造コストは大幅に上がるし、NOx(窒素酸化物)3次規制も引っかかってくる。となると、それまでに船主・造船所
ともある程度決めておきたいという思いはあるはずだ。そこで今回の円安が、きっかけにならないかな。― 騒音規制
に対応できる船種ならそうかもしれない。でも、そもそも今の船価水準では造船所にとって採算的にそれほど良くはな
い。そのうえ資機材や人件費が上がる可能性が高い。人件費は人手不足で早くも上がってきた。こういったリスクを考
えると、円安だから安値で受注へ、とはいかないだろう。― そこは、仕事がなくなるリスクとの見合いだと思う。司会
1㌦ル=110円まで進めば造船所も受注に動くという業界関係者の声もあったが。― 110円超の円安水準が定着してく
れば、受注に動く造船所も出てくるだろう。エコシップへのリプレースが必要な海外船主も、日本の造船所に発注しや
すい環境になると思う。― 多くの造船所が今のところ焦る必要もないから、すぐ受注に動くということはないだろう
が、115円、120円とさらに円安が進んでくれば、状況は変わるだろう。このまま待っていても船価は上がらないという
見方もある。もちろん円高に振れるリスクもあるが、80円や70円台といった展開は今のところ考えにくい。それを考え
ればある程度円安を考慮して受注するのではないか。― 船主側もそれを見越して沈黙を守っているのかもしれない
ね。≪低迷はいつまで≫司会 それにしても、新造マーケットはさっばりだね。― 日本だけでなく、中国も受注ペースは
スローダウンしている。CANSI(中国船舶工業協会)の統計を見ると、8月の中国造船所の受注量は前年同期比で7割近
く減少した。成約は散見されるが、春先の勢いと比べると減速は明らかだ。― 用船市況が回復せず、このまま商談が
下火なまま続いて、再び仕事不足の不況に突入するという状況もあるのだろうか。― 考えたくはないが、昨年の大量
発注で、一気に数年分の必要船腹量が発注されてしまったという見方もできるから、世界的に商談がしばらく低迷する
可能性はある。― ただ、まだリプレースなどに動いていない船社や船主もいるから、発注がゼロになることはないだ
ろう。船社間の競争の面で、少なくともエコシップへの切り替えは必須だろう。― ただ、エコシップも続々と竣工が始
まっている。これだけの発注残があるので、さらに新造船で調達せずに、買船などを通して新鋭船を市場から調達すれ
ば良いという考えもあるだろう。昨年来の大量発注では、投機マネーの流入もかなりあったので、当然フリー船も多く
なっているはずだ。― そうなると造船所も辛いな。≪シェールのLNG船商談が佳境≫司会 LNG船では日本勢が絡ん
でいるシュールガス関連の商談が一部決まるなど盛り上がっている。― 大型プロジェクトとして注目されているキャメ
ロンLNGの新造LNG船調達商談で、三井物産が調達する8隻のうち5隻が明らかになった。商船三井が保有する2隻を川
崎重工業、日本郵船が保有する1隻と三井物産が保有する計3隻が韓国造船所での建造となった。川重が建造するのは
新開発の15万5,300㎥のモス型、韓国造船所は17万4,000㎥ のメンブレン型だ。― 日本勢は三菱重工業と今治造船のMI
LNGカンパニー、川崎重工、三井造船が日本連合を組んで商談に参加していた。三井物産が調達する残り3隻でも日本
の造船所が絡んでくることは間違いないだろう。韓国造船所の起用が大きな焦点だったが、韓国も一部を受注するこ
とになった。― 韓国造船大手は、日本市場ではLNG船受注を最重点目標としていたから、今回の商談はかなり気合が
入っていた。得意とするメガコンテナ船は、日本には案件がそれほど多くないうえ、いずれも今治造船やJMU(ジャパン
マリンユナイテッド)が受注したからね。― 電力やガス会社など日本のユーティリティが調達するLNG船商談では日本
の造船所の受注が有力視されていることから、韓国造船所としてはキャメロンで日本市場に食い込めるかどうかが1つ
のポイントになっていた。― シェールガス向けの商談では短期間に調達する隻数が多く、建造キャパシティなどの問題
もあり、一部では韓国造船所が起用される可能性も示唆されていたが、KOGAS向けなどがある中で、ここまで頑張って
くるのは日本の造船関係者にとっては想定外だったかもしれない。― 韓国造船所も海洋部門の低迷で受注不振だか
ら、是が非でもLNG船で受注を積み上げたいという思いもあったのだろう。― 当たり前だが、これで商談が終わったわ
けではない。キャメロンで生産されるLNGは年間約1,200万㌧で、三井物産のほか、三菱商事やGDFスエズの調達分もあ
る。いずれもLNG船調達作業を進めている。三菱商事は郵船と組んでキャメロンに出資しているので、船社は郵船を軸
に検討しているのだろう。― キャメロンと並ぶ注目プロジェクトがフリーポートLNGプロジェクトだ。大阪ガスと中部電力
が年間各220万㌧引き取る。隻数は計9隻程度とみられているが、海外企業への販売分が出て数隻減るともいわれて
いる。― コープポイントもまだ残っているな。― コープポイントは、東京ガスの140万㌧分はJMUが受注した。関西電力
の80万㌧分で2隻の調達が予定されている。― こうして改めて考えると、LNG船商談は今後もまだまだ出てくるね。し
ばらく目が離せない展開が続くだろう。
◎新造船船価
◆新造船価相場/大・中型バルカー小幅続落 ≪市況低迷や発注減を反映か≫新造船マーケットで、大・中型バルカー
の船価レベルが小幅続落した。大型バルカーのケープサイズは直近と比べ50万㌦安、中型バルカーのパナマックスは3
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0万㌦安となった。ドライ市況の低迷、新造発注減少を反映したものとみられる。マーケット筋によると、足元のバルカー
の新造船価レベルは、ケープサイズが50万㌦安の5,500万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは30万㌦安の2,950万㌦
(7万6,000重量㌧型)を付けている。ドライ市況の低迷、昨年から今年6月まで続いた新造発注ブームの反動減により、
発注そのものが激減していることが影響している模様だ。ハンディマックス、ハンディサイズは横ばいで、それぞれ2,78
0万㌦(6万2,000重量㌧型)、2,330万㌦(3万5,000重量㌧型)となっている。タンカーの足元の新造船価レベルは、全船
型で弱含み横ばい。VLCC(大型原油タンカー)は9,800万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは6,600万㌦(15万7,000重
量㌧型)、アフラマックスは5,400万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは
3,700万㌦(5万1,000重量㌧型)。
◆バルカー・タンカー横ばい ≪新造船価相場 目先は下げ止まる可能性≫新造船価相場がバルカー、タンカーともに
弱含み横ばいで推移している。ただし、タンカーは海運市況の先行指標となる中古船価が足元で小幅続騰しており、弱
含みの新造船価も目先は下げ止まる可能性が出てきた。マーケット筋によると、バルカーの足元の新造船価レベルは、
ケープサイズ5,500万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス2,950万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックス2,780万㌦(6
万2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,330万㌦(3万5,000重量㌧型)。いずれも横ばいながら、ケープサイズが他船型
に比べ軟基調となっている。タンカーの新造船価レベルは、VLCC(大型原油タンカー)9,800万㌦(32万重量㌧型)、スエ
ズマックス6,600万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックス5,400万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型
プロダクト(石油製品)タンカー3,700万㌦(5万1,000重量㌧型)。タンカーの新造船価相場もバルカ一同様、今年夏場以
降、じり安基調が続いてきたが、ここへ来て横ばいながら小じっかりした基調となっている。
◎中古船船価
◆中古船価、タンカー小反発/バルカーは中型船小安い 中古船マーケットでタンカーの中古船価が小反発した。VLCC
(大型原油タンカー)の中古船価レベルは直近と比べ100万-300万㌦上昇した。タンカーマーケットの反発、原油価格下
落局面での貯蔵用の船腹需要増加観測が主因。バルカーの中古船価レベルは、中型バルカーのハンディマックスが50
万㌦続落し、小安い展開が続いている。ドライ市況の低迷を反映したものとみられる。マーケット筋によると、タンカーの
足元の中古船価レベルは、VLCCが新造リセールは横ばいの1億400万㌦、船齢5年物は200万㌦高の7,600万㌦、船齢10
年物は300万㌦高の5,100万㌦、船齢15年物は100万㌦高の2,900万㌦をつけている。このところ強含み基調のスエズマ
ックスは小幅続騰。新造リセールは200万㌦高の7,00万㌦、船齢5年物は200万㌦高の5,200万㌦、船齢10年物は100万
㌦高の3,500万㌦となっている。アフラマックスは強含み横ばい。新造リセールは5,600万㌦、船齢5年物は4,200万㌦、
船齢10年物は2,700万㌦。バルカーの中古船価レベルは、ケープサイズが新造リセール、船齢5年物、船齢10年物は横ば
いで、それぞれ6,000万㌦、4,800万㌦、3,500万㌦。船齢15年物は50万㌦安の2,000万㌦となった。パナマックスは弱含
み横ばい。新造リセールは3,300万㌦、船齢5年物は2,200万㌦、船齢10年物は1,550万㌦。ハンディマックスは、新造リセ
ール、船齢5年物、船齢10年物が50万㌦安で、それぞれ3,100万㌦、2,250万㌦、1,500万㌦となった。ハンディサイズは弱
含み横ばい。新造リセールは2,500万㌦、船齢5年物は1,850万㌦、船齢10年物は1,300万㌦、船齢15年物は950万㌦。
◆タンカー反発/VL100万㌦高 ≪中古船価 バルカー弱含み横ばい≫中古船マーケットで、タンカーの中古船価が反
発し、VLCC(大型原油タンカー)は幅広い船齢で直近レベルと比べ100万㌦高となった。スエズマックスも一部舶齢で20
0万㌦高。アフラマックスは横ばいながら強含み。タンカー市況が冬場需要期の船腹手当てを前に基調を強めているこ
とが主因とみられる。バルカーは、ほぼ全船型で弱含み横ばい。タンカーの足元の中古船価レベルは、VLCCが新造リセ
ールで100万㌦高の1億500万㌦、船齢5年物は100万㌦高の7,700万㌦、船齢10年物は100万㌦高の5,200万㌦、船齢15
年物は横ばいの2,900万㌦となっている。スエズマックスは、新造リセールが横ばいの7,200万㌦、船齢5年物は200万㌦
高の5,400万㌦、船齢10年物は横ばいの3,500万㌦。アフラマックスは強含み横ばい。新造リセールは5,600万㌦、船齢5
年物は4,200万㌦、船齢10年物は2,700万㌦。目先は小幅上昇も予想される。バルカーは、ケープサイズが新造リセール
6,000万㌦、船齢5年物4,800万㌦、船齢10年物3,500万㌦、船齢15年物2,000万㌦と横ばい。足元のドライ市況はケープ
サイズを中心に反発しており、弱含みの中古船価も目先は地合いが底堅くなる可能性もある。パナマックスは、新造リ
セールが横ばいの3,300万㌦、船齢5年物は横ばいの2,200万㌦、船齢10年物は50万㌦安の1,500万㌦、船齢15年物は
横ばいの1,050万㌦。ハンディマックス、ハンディサイズは全般的に弱含み横ばい。ハンディマックスは、新造リセール3,10
0万㌦、船齢5年物2,250万㌦、船齢10年物1,500万㌦、船齢15年物950万㌦で推移している。ハンディサイズは、新造リセ
ール2,500万㌦、船齢5年物1,850万㌦、船齢10年物1,300万㌦、船齢15年物950万㌦。
◆造船所の工程混乱/構造的問題か ≪操業増と設計増に、人手不足が拍車≫中小規模の造船所を中心に、国内造
船所で建造工程が乱れる例が広がっている。設計作業の遅れが生産工程にずれ込んだり、これまで落としていた操業
を急激に戻した影響で現場が混乱するといった事態が発生しており、これに加えて協力工と加工外注のひっ迫が状況
を悪化させているようだ。採算改善や新規制への対応など重要な課題を抱えているにも関わらず、足元の混乱収拾に
集中せざるを得ない状況。-時的な現象との見方もあるが、人材不足や技量低下など日本造船業の構造的な問題が
顕在化したものだとすると、影響は長期化する懸念もある。国内の造船所では、昨年から工程が乱れる例が-部にあっ
たが、複数の関係者によると、状況は改善に向かわず、むしろ中小規模の造船所を中心に広がっているようだ。要因は
いくつかある。1つは設計作業の遅れ。造船各社はここ数年、不況対策として省エネ船の新開発や製品多角化などを進
めたことで、設計業務が多忙を極めている。だが、これまで標準船型の連続建造が長らく続いていたため、設計人員
が十分でない造船所では設計負荷の急激な増大に対応しきれず、徐々に設計が遅れているようだ。これに加えて、新
たな国際規則で設計工数も増大。社外の設計会社もひっ迫しており、外注による挽回も困難となっている。こうした設
計の遅れが、生産にまでずれ込んでいるケースが見られる。また、生産現場では操業アップに伴う混乱も見られてい
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る。これまで各社とも不況対策として操業を落としていたが、昨年来の受注拡大で今期から徐々に操業を戻し始めて
いる。とはいえ、リードタイム短縮やスピード化などを急いだことで、現場ではミスによる手戻りなどが相次ぎ、工数が
増大している例がみられている。こうした状況に、人手不足が追い打ちをかけている。受注時に見込んでいた協力工の
召集が、東北の建設需要などに取られて思うように進まない。さらに、工程挽回のため加工業者への船体ブロックなど
の外注工事を増やそうにも、業者も人手不足で工事需要に応じられない状況。このため造船各社が人集めと外注先確
保を急ぎ、玉突き的にひっ迫感が強まっている。社内外ともに、ピーク時には設計技術者や生産技能社のベテランを定
年後も再雇用などで確保していたが、ここ数年の操業減などで、こうした団塊世代の人員がリタイアを進めたことも、
人手不足を強めている。一連の混乱は、操業アップという転換点ならではの一時的な現象との見方もある。だが一方
では、根本にあるのが設計・生産の人手不足という構造的な問題である以上、混乱は長期化するとの懸念を示す向き
もある。「ベテラン退職と外注先の後継者不足を考えると、日本で年1,000万総㌧超を建造するために必要な人手の絶
対量が、この数年でもう失われてしまったのではないか」(造船所経営者)との意見もある。外国人研修生制度の緩和
など、生産現場の人手不足を解消する手立てが打たれているが、設計まで含めた人材対策にまで踏み込む必要もある
かもしれない。
◆国内造船/規制見据え商談進める ≪大幅なコスト増は不可避、船主は様子見≫新造船市場の停滞が続く中、日本
の造船所は来年の大型規制の影響を見据えて、規制適用前の契約での新造交渉を進めている。新共通構造規則(調和
化船体構造規則、H-CSR)や窒素酸化物(NOx)3次規制への対応で、建造コストの上昇は不可避な状況で、船型によって
違いはあるものの両規制で計400万㌦程度の増加が見込まれているようだ。このため、国内外の船主にも大型規制の
適用に伴う船価の値上がりを懸念する声が多くある。その一方、多くの船主が用船市況の低迷などの影響から発注に
対してはまだ様子見の姿勢を崩しておらず、依然として商談は停滞したままだ。今年7月に適用された「改正騒音コー
ド」(騒音規制)に続き、来年7月には国際船級協会連合(IACS)のH-CSRが適用される。加えて、2016年1月以降に起工す
る新造船からは、IMOのNOx3次規制に対応する必要もある。今年6月には騒音規制の影響で駆け込み契約が相次いだ
が、規制でのインパクトは騒音規制以上ともいわれており、来年7月の規制適用前の駆け込みも有力視されている。昨
年来の大量受注で当面の手持ち工事を確保していることから、日本の造船所の多くが規制適用による建造コストの増
加分を船価に上乗せしていく考えで、規制適用前の発注を積極的に提案しているようだ。H-CSRは長さ150mのタンカ
ーと同90m以上のバルカーが対象で、従来のタンカーとバルカーの規則を融合した新たな構造規則が適用される。基
準を満たすためには、鋼材重量の増加が不可避で、建造コストの増加に加え、重量の増加による燃費の悪化も指摘され
ている。また、排ガス規制海域(ECA)でNOxを1次規制比80%の削減を義務付けるNOx3次規制に対応するには、脱硝装
置(SCR)や排ガス再循環(EGR)を機関室に搭載するなどの対策が必要だ。船型などによって違いはあるが、建造コスト
の増加分はNOx規制への対応で300万㌦、H-CSR適用に伴う鋼材の増加分で100万㌦程度に上るとみられている。今の
ところ規制適用前の発注を考えている船主は、「話をした感触では7-8割」(国内造船関係者)という。ただ、NOxについ
ては適用船を建造する方針の船主もいるようだ。将来を見据え、既に規制を先取りしてスクラバーを取り付けた船主も
いる。搭載によって300万㌦前後の追加コストが発生したという。現在、日本の造船所が商談を進めているのは2017年
後半あるいは2018年納期の船台で、17年納期はほぼ完売状態の造船所も多くなっている。「18年納期の提示ともなる
と海外船主の反応も鈍い」(市場関係者)という。多くの船主が規制適用前での発注に関心を示す一方、積み上がった
発注残や用船市況の低迷などにより、状況を見極めたいという心理が働いており、船主は発注に対して慎重な姿勢を
崩していないようだ。さらに、船価に先高感が見られないことも商談の停滞につながっているようだ。わずかな変動は
あるものの、船価はほぼ横ばいでの推移が続いている。中期的には新造船価の下落を予想する声もある。昨年来の大
量発注を牽引してきた6万重量㌧超のウルトラマックスを中心とした中型バルカーだが、7月の騒音規制適用以降、発注
の落ち込みが顕著になっている。これまでハンディマックスは用船市況が底堅く、省エネ船需要の高まりもあって需要
が強かったが、発注残は600隻に積み上がり、大量竣工による影響で先行きを不安視する声もある。ただ、一回り船型
の大きいカムサマックスなどのパナマックス船型も用船市況がハンディマックスを下回るような低迷が続いている。パ
ナマックスはハンディマックスが旧式のパナマックスに匹敵する6万重量㌧超に大型化し、穀物など従来のパナマックス
貨物に進出していきており、今後の中型船型のトレード動向をじっくり見極めたいという船主の思惑もあるようだ。ま
た、H-CSRの対象になるタンカーの引き合いも寄せられているものの、韓国造船所が積極的に受注していることもあ
り、海外船主向けで受注につながりそうな案件は少ないという。邦船社も今のところ発注を抑制しており、国内のイン
ダストリアル・キャリアも運賃市況の低迷からリプレースに踏み切れない状況が続いているようだ。いずれは適用しなけ
ればならないH-CSRやNOx規制だが、騒音規制だけでなく全ての規制をフル適用しようとすると、造船所にとっては設
計の全面見直しが必要になることも予想される。日本の造船所は3-4年の手持ち工事を確保し、受注に対する焦りはな
いものの、規制適用前の新造船であれば、建造コストが見えることから商談も進めやすい。さらに現場への混乱回避や
建造効率の維持・向上にもなることから、積極的に営業を展開していく方針のようだ。
Ⅲ.各国造船業の動向
◆フィリピン/造船で台頭 ≪ツネイシ・韓国勢、存在感≫中国、韓国、日本に次ぐ造船の世界4位に浮上したフィリピン
が存在感を高めている。日中韓がシェア9割を握る寡占市場で、フィリピンは2013年で約2%にすぎないとはいえ、日韓
の大規模造船所をけん引役に成長を続け、国内物流向け船舶の新造需要も期待される。政府は製造業育成の先陣とし
て「造船大国」を目指し、外資の誘致に力を入れている。≪外資誘致で世界4位に≫リゾート地として有名なセブ島。空
港やホテルがある東部から西海岸へ車で2時間ほど走ると巨大なクレーンが現れる。ツネイシホールディングス(広島
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県福山市)の現地子会社ツネイシ・ヘビー・インダストリーズ(THI)の造船所だ。敷地面積は147万平方㍍で常石造船常石
工場(広島県福山市)のおよそ3倍。全長450㍍の大型建造ドックを備え、下請け企業を含め約1万3千人が働く。1994年
の設立で総投資額は約600億円に達し、9月末に20周年を迎えた。9月に入社したジェイソン・エンシソさん(22)は大学
で機械工学を専攻していた。「日本は機械で有名。ツネイシなら色々学べてキャリアのチャンスも広がる」。セブ島以外
の島から入社する社員も多く「ツネイシ」は有力なものづくり企業の一つに定着している。≪年30隻めざす≫THIは鉄鉱
石などを運ぶばら積み船を中心に14年に20隻の建造を計画している。建造隻数では日本や中国浙江省の造船所も加
えたツネイシグループの4割近くを占める主力拠点だ。THIの河野仁至社長は「18年をめどに、建造隻数を年30隻に引
き上げたい」ともう一段の成長を目指す。米調査会社IHSによると、フィリピンの建造量(100総㌧以上の船舶が対象)は1
3年に約133万総㌧だった。うちTHIが50・8%を占めた。一方でコンテナ船などを建造する韓国中堅の韓進重工業が48・
9%だった。外航船のほぼ全量を両社が建造している。競い合う両社がフィリピンの建造量を押し上げ、10年には欧州諸
国をかわして4位に立った。韓進重工は06年にルソン島で造船事業を始めている。拠点の敷地面積は約230万平方㍍と
THIを上回る規模だ。THIの日本人従業員は70人程度。現地での教育に加え、延べ1,400人を日本に送り技術やノウハウ
を移管してきた。進出20年で日本と同等の品質や安全レベルを達成したという。今後は「生産効率の改善や従業員数
の最適化(によるコスト削減)を進め」(河野社長)次の段階に入る。その先に見据えるのは「東南アジアのマザー工場に
する」ことだ。アジアで新たな造船所の建設も視野に入れている。日本の造船業を取り巻く状況は厳しい。規模や競争
力で勝る中韓勢に押され、5割を超えていた世界シェアは08年以降3割を切っている。国土交通省が受注力の強化に向
け「戦略的な海外進出を図るべきだ」と提言するなか、ツネイシはアジアシフトを鮮明にし、今年末には常石造船旧多度
津工場(香川県多度津町)を今治造船に売却する。≪製造業を育成≫こうした動きは造船業の振興に力を入れるフィリ
ピン側の思惑とも合致する。約7,100の島で構成される同国では海運が物流の中心だが、内航船は海外から購入した中
古がほとんど。しかも約100カ所ある造船所は大半が中小規模で、改造や修繕しかできないのが実情だ。そのため政府
は外資誘致の優先分野として一定期間の税免除など優遇策を設けている。製造業が育ちにくいとされるフィリピンだ
が、経済区庁が定める特区に進出した輸出型企業の法人税を数年間にわたり全額免除する。造船をモデルに、誘致した
外資の主導で広く育成するシナリオを描いているようだ。フィリピン人は英語が堪能という利点もあり、造船業では外
資の進出が相次いだ。ツネイシや韓進重工のほか、アルミ製客船などを手がけるオーストラリアのオースタル、修理や
改造を主力とするシンガポールのケッベル・コーポレーションも大規模な造船所をフィリピンに構えている。国内海運向
けの小型船も需要が増えそうだ。中古船の老朽化で事故も少なくない。ツネイシでグループの海外戦略を統括する河
野健二・常石造船専務は「フィリピンの船主から内航船の要望がある」と明かす。14年にフィリピンは人口が1億人を超え
た。地元船主の資金繰りが課題だが、新造船需要に期待が高まる。15年末の東南アジア諸国連合(ASEAN)共同体発足
で「海の回廊」と呼ばれる海上輸送は一段と活発になる見通し。フィリピンは日本の造船や船舶機械メーカーが新たな
事業機会を探る主戦場となりそうだ。27
◆韓国/造船の研究開発費280億円 ≪昨年実績、微減も高水準を維持≫韓国造船海洋プラント協会(韓国造工)の統
計によると、韓国造船業の2013年の造船関連の研究開発投資額は2,749億ウォン(280億円)となり、過去最高だった前
年から2%減少した。他の事業分野で研究開発投資を拡大していることが減少の背景にあるとみられる。ただ、引き続
き高水準は維持しており、研究者の人数も増加した。韓国造船所では造船分野への研究開発投資額が毎年増えており、
2009年以降は2,000億ウォン超の水準で推移している。金融危機後にいったん開発費が絞られたが、2012年に再び増
加して過去最高額となった。2013年も減少したとはいえ高水準は維持した。一方で、造船事業の売上高は減少したこと
から、売上に占める研究開発費の比率は上昇し、1.03%にまで高まった。造船所の研究者の人数は、博士、修士とも大幅
に増え、合計で前年比13%増の2,042人となった。政府系研究所と合わせた人数は計2,175人だった。
◆受注目標の達成厳しい見込み ≪韓国造船大手、海洋低迷で商船競争激化≫韓国造船大手3社の受注高は、今年
の受注目標を大幅に下回る見通しだ。韓国現地紙が報じている。韓国造船3社は、海洋部門の商談の低迷などにより、
ここまで昨年の実績や受注目標を大幅に下回る展開が続いている。低迷する受注高と海洋の受注不振を受けて、一般
商船での受注競争が激化しているようだ。韓国の造船大手3社は記録的な受注にわいた昨年の実績をさらに上回る強
気の受注目標を掲げていた。現代重工業は、商船部門で91億5,000万㌦、海洋部門で69億㌦、全体で295億6,500万㌦
を掲げているほか、サムスン重工業や大宇造船海洋は145億㌦を年初の受注目標として設定したようだ。各社の公表資
料や現地紙の情報を総合すると、今年1-9月の受注実績は、現代重工の商船・海洋部門が約100億㌦、大宇が65億㌦、サ
ムスンが55億㌦にとどまっており、年初の受注目標を達成するのはかなり難しい展開となっている。海洋部門の受注が
伸び悩み受注目標を大幅に下回る展開が続く中、一般商船の受注へとシフトする動きが強くなっている。韓国造船所
が得意とするガス船やタンカー、メガコンテナ船などの高付加価値船での競争が激化しているようだ。VLCCをはじめ
としたタンカーや大型LPG船(VLGC)では、日本の造船所にも引き合いが寄せられているものの、現在まで多くを韓国
造船所が受注している。ただ、為替相場の円安が進み、人件費などコスト面では日本と韓国はイーブンあるいは日本の
に分があるとみられる。年末に向けて、韓国造船所が商船の受注に動けば、高付加価値船部門での-層の競争激化も
懸念されると現地紙などでも伝えられている。
Ⅳ.造船・造機以外の産業動向
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◎外航海運
◆ぱら積み舶/用船料7割安 ≪ケープサイズ 中国経済の減速懸念≫ばら積み船のスポット(随時契約)価格が下落し
ている。代表的な船型で、鉄鉱石などを運ぶ大型船ケープサイズの用船料(船会社が船主に支払うチャーター料)は、
直近の高値だった9月上旬の半値に下がった。前年同期比で7割以上安い。秋から冬にかけては例年、天然資源や穀物
の輸送需要が高まるが、今年は世界経済の減速懸念や船舶の供給過剰が頭を抑えている。≪船舶の供給過剰も影響≫
ケープサイズの価格は鉄鉱石輸送の需要期に入った8月中旬から一時的に上昇したが、9月中旬以降は一転して下落
基調となった。現在の用船料は1日あたり約8,000㌦(17万㌧級・主要航路平均)で、3万㌦台で推移していた前年同期の
水準を大きく下回る。荷主が船会社に支払う運賃も下がっている。オーストラリア西部-中国間は鉄鉱石1㌧あたり7㌦台
前半と前年同期に比べて4割近く安い。需要期にもかかわらず、海運業界の採算ラインを下回る。運賃は用船料を基に
算出される。石炭、穀物用などの中小型船を含めたばら積み船全体の運賃水準を示すパルチック海運指数(1985年=1,
000)も16日時点で930と、前年同時期に比べ5割以上低い。鉄鉱石の需要国である中国の輸入量は依然として前年を
上回るが、8月以降は伸び率が純化している。あらかじめ契約条件を決めておく海上運賃先渡し契約(FFA)の用船料を
みると、10-12月期のケープサイズ用船料は8月中旬には2万7千㌦近辺だったが、9月末には1万6千㌦台まで下がった。
「中国の経済成長の減速懸念に反応した」(日本郵船)といい、スポット価格の下落に拍車をかけている。船舶の供給過
剰が加速するとの見方も再び強まっている。資源・穀物メジャーがコスト削減のために自社船を活用するケースが増加
しているためだ。「ばら積み船のスポット需要自体に縮小の兆しがある」(海運調査会社のトランプデータサービス)9月
にはブラジルの資源大手、ヴァーレが世界最大級の専用船「ヴァーレマックス」を中国向けに運航させる準備を進めて
いることが明らかになった。大口荷主のヴァーレが自社船での輸送量を増やした場合、ケープサイズのスポット需要自
体が縮まる可能性があり、運賃市況の心理的な重荷になっている。需要期である11-12月期のケープサイズ用船料につ
いて、日本郵船は3万㌦超、商船三井は3万5千㌦と予想していた。中国が鉄鉱石の備蓄を増やす年末にかけて荷動き
が伸びるとの見通しもあるが、「用船料が上がっても、高値の水準は昨年より低くなりそうだ」(日本郵船)との声も出
始めている。
◆9月スポット、3カ月連続上昇/原油タンカーの運賃堅調 ≪船舶の過剰感やや薄れる≫大型原油タンカーのスポット
(随時契約)運賃が堅調に推移している。代表的な航路である中東-極東間の月間平均運賃は9月まで3カ月連続で前
年同月を上回った。現在は前年同期比で約8%高い。中国が西アフリカからの原油輸入を増やしているのに伴い、西ア
フリカ-極東間などの長距離輸送が増え船舶の過剰感がやや薄れている。堅調原油タンカーの運賃水準を示すワール
ドスケール(WS、基準運賃=100)は現在45前後で推移している。基準運賃は毎年改定されるが、同じ算定基準で前年同
期と比較した場合、今年の方が8%程度高い。スポット運賃は例年、北半球で暖房需要が高まる11月ごろから上昇する傾
向がある。今年は需要期前から運賃が底堅く、海運業界にとって「市場環境は昨年より良くなりそうだ」(日本郵船)と
みる向きが多い。
◎内航海運
◆内航ケミカル船老齢化/安全・安定輸送に支障も 内航ケミカル船の老齢化が継続している。全国内航タンカー海
運組合(内タン)がまとめた9月1日現在の汎用内航ケミカル船の船齢別隻数集計によると、117隻中41隻(35%)が船齢
18年超に達していることが分かった。専用ケミカル船・整合船(全44隻)は、19隻(43.2%)とさらに高水準。老齢船が多
い状況はケミカル製品などの安全・安定輸送維持に支障が出る可能性もあり、代替建造を進めることが必要な状況に
ある。今回の集計は、今月8日に都内で開いた内タンとケミカル貨物の荷主団休に当たる石油化学工業協会(石化協)
との意見交換を目的とした内航ケミカル連絡会で、内タン側が船員不足問題などとともに説明した。ケミカル船のうち
最も隻数が多い汎用ケミカル船では、船齢22年の船が14隻と全船齢の中でトップで、1990年代の好況時に建造された
船が残っている。代替建造期となる船齢16年超船は43隻で全体の4割弱を占めている。一方、船齢6年未満の船は29隻
・25%と全体の4分の1にとどまる。コンスタントに建造されているが、依然として老齢船が目立っている。専用ケミカル
船なども、傾向は同様だ。船齢16年起の船は21隻・48%に達する。一方、船齢6年未満の船は6隻・14%と汎用船より低
水準にある。専用船は荷主の輸送計画によって代替建造が決まるため、今後の需要動向が注目される。全内航ケミカ
ル船の隻数は179隻で前年比9隻、20年前に比べ83隻減った。
◆推定鉄骨需要量は約42万㌧ ≪7カ月連続で前年下回る≫国土交通省の8月の建築着工統計調査報告によると、
全着工床面積は前年同月比10・3%減(前月比0・4%増)の1,130万8,000平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が同
8・6%減(同5・2%減)の405万9,000平方㍍、SRC造は同1・8%増(同19・3%減)の20万4,000平方㍍。全床面積中のS造、S
RC造の比率は37・7%、推定される鉄骨需要量は約41万6,000㌧の水準(前年同月は約45・4万㌧、※表2)と5ヵ月連続で
前年を下回った。
◆工作機械、1兆円超え ≪1-9月受注 業界、年1.4兆円の声も≫工作機械の受注額が2014年9月で1兆円を超えた。
日本工作機械工業会(日工会)が9日発表した14年1-9月の工作機械受注実績(速報値)は、前年同期比35・7%増の1兆9
25億8,400万円となった。ここまで月平均約1,200億円の高い受注水準が続き、1兆円を突破するのは13年より2カ月早
い。日工会が定めた工作機械の年間受注目標額の1兆3,000億円は突破が確実視され、業界内では「1兆4,000億円台は
間違いない。あとは端数がどうなるかだけ」といった大幅な上乗せを見通す声が聞かれる。受注目標の1兆3,000億円
の到達は、残り3カ月を単月約700億円で実現する。月700億円は、9月の外需分だけでも864億4,400万円であること
から、極めて低い水準と言える。現在の月平均約1,200億円のペースが続けば、年間では約1兆4,500億円となる。実際、
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年内は現在の工作機械市場を損なうようなマイナス要因は見当たらない。ロシアや中国、タイなどで「地政学上の不安
材料はなくはないが、受注に直接影響する状況にはない」(工作機械メーカー幹部)としている。9月の国内受注は速報
値で、08年秋に発生したリーマン・ショック後の過去最高額を更新した。こうした中、需要の先食いが懸念される向きも
あるが、期末に向けて「決算のめどを付けたユーザーから新税制を利用した受注が見込める」(同)と、政策効果が一段
強まるとの見方がある。10月末開催の日本国際工作機械見本市「JIMTOF2014」での需要刈り取りにも期待が高まる。
◆工作機械受注、9月 ≪リーマン後で最高≫日本工作機械工業会(日工会)が9日発表した9月の工作機械受注実績
(速報値)は、前年同月比34・8%増の1,357億2,900万円となり、12カ月連続でプラスとなった。全体額は2008年5月以来
となる、5年4カ月ぶりに1,300億円台に到達し、リーマン・ショック後の最高額となった。うち内需は同16・6%増の492億8,
500万円。今年6月に記録したリーマン・ショック後の最高額を更新した。外需は同48・0%増の864億4,400万円だった。
全体のけん引役だったスマートフォン(スマホ)特需が夏にピークを過ぎるとされてきたが、外需は3月から6カ月連続で
800億円台の高水準が続いている。北米を中心に海外市場の伸展する中、9月に米国やドイツで工作機械の主要展示会
が開かれ、全体を押し上げた側面がある。DMG森精機は9月に外需が過去最高となり、全体も過去最高を記録する成果
を得た。10月-15年3月は、4-9月のペースが維持されるとの見方が強まっている。
◆工作機械8社受注/4-9月、15%増2,725億円 ≪本社まとめ 3年ぶりに増加≫日刊工業新聞社が9日まとめた工作機
械主要8社の2014年4-9月の受注実績は、前年同期比15・5%増の2,725億6,100万円となり、3年ぶりに増加した。内需が
同24・2%増の1,039億8,100万円、外需が同10・7%増の1,685億7,800万円と内外需そろって2ケタの増加を遂げ、工作機
械の世界市場は回復基調を鮮明にした。内需、外需ともに3年ぶりの増加となった。内需は国内の景況感が改善する
中、設備投資を支援する補助金制度や税制が導入され、更新需要を喚起した。自動車産業の大手にとどまらず、「幅広
い産業で中堅・中小企業からの受注が増えている」(オークマ営業部)。外需は北米の自動車、航空、エネルギー産業に
加え、中国でのスマートフォン(スマホ)向けの大口受注がけん引した。スマホ向けに強いツガミは同59・5%増の226億2,
400万円に伸び、同期の過去最高額を更新した。半期単位ではスマホとタイ洪水という二つの特需があった11年10月-1
2年3月に次ぐ2位の水準だ。一方、三菱重工業は5月に実施した会計基準の見直しやキャンセルが響いたようだ。ただ、
「9月は内需が車向けに好調。北米向けも勢いが出てきた」(広報部)。9月単月は前年同月比19・4%増で13カ月連続の
増加。内需の政策効果、外需の北米好調といった増加要因が続いている。DMG森精機は合計額が同35・8%増の182億6,
000万円。うち海外だけで13年9月の合計額と同じ134億5,000万円を稼いだ。
◆工作機械受注/9月34%増、1,355億円 ≪日工会 年間目標達成は確実≫日本工作機械工業会(日工会)が15日発
表した9月の工作機械受注実績は、前年同月比34・7%増の1,355億4,800万円と、12カ月連続で増加した。2008年5月以
来となる1,300億円超えで、リーマン・ショック後の最高額。内需もリーマン・ショック後の最高額に達した。外需は中国のス
ポット受注が続き3カ月続いて850億円超の高水準となった。工作機械の世界市況の回復が一段と鮮明になり、日工会
の年間受注日標である1兆3,000億円は達成が確実な情勢だ。内需は同16・3%増の491億4,000万円で15カ月連続増。
設備投資を支援する補助金や税制といった政策が設備更新を主とした投資を呼び込んだ。一般機械、自動車、電気・精
密、航空・造船・輸送用機械の主要4業種がすべて増加。うち自動車は14カ月連続増と好調を維持した。外需は同48%増
の864億800万円で11カ月連続増だった。夏までとされたスマートフォン向けの大口受注が中国であった。米国は9月に
大規模な展示会が開かれ、北米とともに00年以降の最高額を更新した。ドイツは同29・8%増の46億8,200万円。4カ月
連続増だが3カ月ぶりに50億円を割り込んだ。
◆産機受注/8月、16%減3,282億円 日本産業機械工業会(産機工)が9日まとめた8月の産業機械受注実績は、前年
同月比16・3%減の3,282億1,200万円となり、5カ月ぶりのマイナスとなった。内需は同12・6%減の1,818億9,200万円、外
需は同20・5%減の1,463億2,000万円。内需のうち製造業向けは同12・3%減、非製造業向けは同10・4%減、官公需向け
は同21・8%減、代理店向けは同3・7%減。主要70社の輸出契約高は同20・7%減の1,391億5,000万円で5カ月ぶりのマイ
ナス。地域別構成比はアジア80・5%、北米7・5%、中東5・2%、欧州5・0%、ロシア・東欧0・7%、南米0・7%。
◆環境装置受注16.2%減/8月、6カ月ぶリマイナス ≪都市ゴミ処理装置落ち込み≫日本産業機械工業会が9日発表し
た2014年8月の環境装置受注実績は、前年同月比16・2%減の270億7,100万円で6カ月ぶりに前年同月を下回った。全体
の約8割を占めた官公需が、都市ゴミ処理装置の減少で同18・2%減の213億8,400万円と落ち込んだのが響いた。民需
は同8・4%増の54億7,100万円。内訳は製造業がパルプ・紙、機械向けなどの産業廃水処理装置が好調で同56・4%増の
42億9,400万円。非製造業は電力向け排煙脱硝装置が減少し、同48・8%減の11億7,700万円。一方、外需は排煙脱硝装
置と都市ゴミ処理装置が不調で同80・6%減の2億1,600万円。装置別では、大気汚染防止装置が電力および海外向け
の排煙脱硝装置が減少し、同62・3%減の10億2,100万円。水質汚濁防止装置は同20・5%増の174億9,100万円。ゴミ処理
装置は同43・4%減の84億7,300万円。
◆白物家電/5ヵ月ぶり増 ≪9月出荷1・9% 冷蔵庫など伸びる≫日本電機工業会(JEMA)が21日発表した白物家電の
9月の国内出荷額は、前年同月比1・9%増の1,706億400万円だった。4月以来、5カ月ぶりに前年実績を上回った。JEMA
は「個人消費マインドは回復しつつある」とする一方、「単月では判断できず今後を注視する必要がある」と分析してい
る。製品別では冷蔵庫が8・1%増の404億3,700万円だった。401㍑以上の大型タイプも5・8%増の317億8,200万円と好
調だった。洗濯機は19・1%増の284億3,000万円と前年を大きく上回った。冷蔵庫、洗濯機とも4カ月ぶりにプラスに転じ
た。ただ、エアコンは前年に猛暑・残暑の影響で出荷が伸びた反動もあって低迷し、18・4%減の318億8,400万円にとど
まった。マイナスは5カ月連続だった。同日、JEMAがあわせて発表した2014年上期(4-9月)の出荷額は前年同期比6・3
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%減の1兆1,332億円だった。半期としては4期ぶりのマイナス。消費増税に伴う需要減に加え、夏季の台風や天候不順
によりエアコンを中心に出荷が伸び悩んだ。
◆民生用電子機器/国内出荷7%減 ≪9月、減少幅改善≫電子情報技術産業協会(JEITA)が21日に発表した9月の民
生用電子機器の国内出荷額は、前年同月比7・0%減の1,191億円だった。6カ月連続で前年実績を下回ったが減少幅は
前月より9・8ポイント縮んだ。薄型テレビは大型を中心に好調で50型以上の出荷台数は43・3%増と5カ月連続のプラス
だった。映像機器の出荷額は2・2%減の621億円で、3カ月連続でマイナスだった。薄型テレビの出荷台数は5・6%増の51
万5千台で2カ月ぶりにプラスに転じた。ビデオカメラはスマートフォンに需要を奪われ30・7%減の15万6千台だった。
◆電子部品受注額最高に ≪7-9月13%増 アップル向け好調≫村田製作所やTDKなど国内の電子部品大手が好調
な受注を維持している。日本経済新聞が21日までに独白集計した大手6社の2014年7-9月期の受注総額(一部は売上
高)は前年同期比13・1%増の1兆2,600億円と過去最高を更新した。米アップルが9月に発売したスマートフォン(スマホ)
「iPhOne(アイフォーン)」の新型機向けがけん引した。自動車向けなども好調なため、10-12月も高水準になりそうだ。京
セラ、日本電産、アルプス電気、日東電工を含む6社の受注額を集計した。受注総額は過去最高水準だった14年4-6月期
から1,000億円以上も上積みした。4-6月期は前年同期比7%程度の伸びだった。7-9月期は円安が進んだこともあり再
び2ケタ増となった。特に好調だったのは村田製作所とTDKの2社で、それぞれ前年同期比25%増、同15%増だったも
よう。北京小米科技(シャオミ)など中国のスマホメーカー向けも伸びた。村田製は福井県で超小型コンデンサーの工
場棟新設を決めた。TDKもフィルターなどを生産する中国の製造拠点がフル稼働に近い状況にあり増産投資も検討す
る。京セラなど4社はいずれも同10%程度の伸びとなったとみられる。韓国サムスン電子からの受注は低調だったが、
中国メーカーの高速通信サービス「LTE」に対応する機器向けの受注増などが下支えした。37
◆9月の民生用電気機器/出荷額5カ月ぶり増 JEMAまとめ 日本電機工業会(JEMA)がまとめた民生用電気機器の9
月の国内出荷金額は前年同月比1・9%増の1,706億円と、5カ月ぶりにプラスに転じた。4月の消費増税に伴う駆け込み
需要の反動減により減少傾向が続いていたが、冷蔵庫や洗濯機などが好調に伸びた。電機業界では消費マインドの回
復に伴って「反動減の影響は薄まりつつある」(電機メーカー首脳)との声が優勢になっている。主要な家電製品の多く
が伸長した。冷蔵庫の出荷額は同8・1%増の404億円、洗濯機の出荷額は同19・1%増の284億円だった。また掃除機は同
3・8%増の101億円、ジャー炊飯器は同2・0%増の110億円となった。一方、ルームエアコンは今夏の台風や天候不順によ
りへ出荷金額は同18・4%減の318億円だった。2014年度上期(4-9月)の国内出荷金額は、前年同期比6・3%減の1兆1,33
2億円。4月は3月の駆け込み需要の期ズレでプラスだったが、5月以降は反動減の影響が顕在化した。さらに今夏の台
風や天候不順の影響も重なり、減少傾向が続いた。ただ電機各社の間では「反動減の影響は、おおむね想定の範囲内」
(同)とする声が支配的で、業績への影響は限定的になっている。15年10月には消費税率が10%に上がる可能性がある
ものの、消費マインドの回復に伴い、当面の出荷額は堅調を維持する見通しだ。
◆国内4輪生産6・7%減 ≪8月 輸出は2カ月ぶり減≫日本自動車工業会(自工会)が30日発表した2014年8月の生産
・輸出実績は、4輪車の国内生産が前年同月比6・7%減の63万4,747台となり、2カ月連続で減少した。消費増税の反動に
よる販売減少が続いているため。国内生産の前年同月比増減率は、6月の6・6%増から7月に1・7%減、8月に6・7%減と
減少幅が広がっている。店頭での受注回復の見通しは難しい状況で、今秋以降の新車投入により、どの程度回復するか
が注目される。車種別には、乗用車の生産合計が同7・4%減の53万3,903台となった。小型4輪車は反動減に加えて、海
外での現地生産シフトが重なった。同22・8%減の10万8,581台で、統計開始以来下から3番目の台数に落ち込んだ。軽乗
用車は同1・2%減の11万5,023台となったが、軽人気により統計開始以来上から3番目の水準だった。バスも上から3番目
の高水準だった。4輪車の輸出は2カ月ぶりに減少し、同8・1%減の32万2,838台だった。2輪車の生産は同1・9%減で12カ
月ぶりのマイナス、輸出は同3・0%増で3カ月連続のプラスだった。
◆9月の新車販売/「軽」3カ月ぶり増 ≪20万台超えも円安不安視≫日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動
車協会連合会(全軽協)が1日に発表した2014年9月の新車販売台数は、前年同月比0・8%減の51万8,774台となった。軽
自動車の販売が持ち直して3カ月ぶりに増加に転じた。登録車と合わせて8月は同9・1%減と落ち込んだが、今月は微
減にとどまった。軽自動車は同2・5%増の20万3,448台となり、9月単月として初めて20万台の大台を超えた。「ハスラ
ー」が好調なスズキやホンダ、日産自動車がけん引。同15・1%減の大幅減となった8月から持ち直した。全軽協は「決算
期の営業努力が数字に結びついたのではないか」としている。一方、登録車は同2・8%減の31万5,326台と2カ月連続の
減少となった。今後については「今月はたまたまプラスになったが、これが続くかは疑問」(全軽協)、「足元の受注は厳
しい。円安の生活への影響など不安材料がある」(自販連)と慎重な見方をしている。14年度上半期(4-9月)は、前年同
期比2・8%減の247万3,656台だった。乗用車では、小型車「フィット」の販売が好調に推移しているホンダ、スズキを除き
7ブランドが減少した。震災の復興需要に支えられた商用車4社はいずれも増加した。
◆国内4輪生産2・6%減 ≪9月 軽・バスは過去最高≫日本自動車工業会が30日発表した9月の4輪車国内生産は前
年同月比2・6%減の85万1,051台となり、3カ月連続で減少した。円高是正が進み一部企業では輸出が増加傾向だが、輸
出全体は海外生産の拡大により減少。加えて、消費増税後の反動減からの国内市場の回復が遅れているため、生産が
減少した。軽乗用車とバスの生産は9月として過去最高だったが、海外シフトの顕著な小型乗用車は同18・8%減と大幅
に落ち込んだ。7-9月の前年割れを6月までの前年を上回る実績がカバーし、4-9月期の4輪車国内生産は前年同期比0
・8%増の478万2,877台となった。軽乗用車とバスは上半期としても過去最高を記録した。9月の4輪車輸出は前年同月
比3・3%減の41万181台。4-9月期は前年同期比4・9%減の223万5,742台で、このうち小型乗用車は同50・9%減の12万
8,146台だった。台数と前年同期比の下落幅ともに過去最低となった。2輪車の4-9月期国内生産は同6・6%増の26万4,
756台で3年ぶりに前年を上回った。9月は前年同月比1・7%減の5万476台で2カ月連続で減少した。4-9月の輸出は4年
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ぶりの前年同期比プラス、9月は4カ月連続のプラスだった。
◆車8社生産・販売、4-9月 ≪世界生産4.1%増 北米の好調続く≫乗用車メーカー8社が27日に発表した2014年4-9
月期の生産・販売・輸出実績によると、8社合計の世界生産は前年同期比4・1%増の1,302万723台となった。消費増税前
の駆け込み需要の反動減で国内市場は苦戦したが、好調が続く北米を中心に海外市場がカバーした。トヨタ自動車、日
産自動車、ホンダ、富士重工業、スズキの5社は、世界生産が4-9月期として過去最高となった。国内生産は同0・5%増の
450万7,721台とほぼ横ばいだった。ホンダは小型車「フィット」、スポーツ多目的車(SUV)「ヴェゼル」、軽乗用車「N-BO
X」などの車種が寄与し、国内生産が増加した。富士重は北米向けの好調が続き、上期として2期連続で過去最高を更新
した。一方、日産は「ローグ」を米国生産に切り替えた影響で2ケタ減となった。海外生産は同6・2%増の851万3,002台。
トヨタは同21・0%増となった中国をはじめ、北米や欧州、アジアで生産が増え、上期として過去最高を記録した。日産や
ホンダ、スズキ、富士重、マツダも海外生産が過去最高となった。9月単月では、8社合計の世界生産は同2・6%増の231
万3,169台だった。富士重の世界生産はすべての月を通じて過去最高となり、単月として初めて8万台を突破した。トヨ
タとホンダは、海外生産と世界生産が9月として最高を更新した。一方、国内生産は8社中5社がマイナスだった。日産
は国内生産について、「『ローグ』の米国生産への切り替えが1万台規模あり、マイナス幅が拡大した」としている。
◆9月8社3%減海外移管響く ≪車国内生産回復力弱く≫ 自動車の国内生産の回復が遅れている。トヨタ自動車な
ど乗用車8社が27日まとめた9月の国内生産台数は3カ月連続で前年実績を下回った。消費増税後の新車需要が振る
わないうえ、海外生産にシフトし円安でも輸出が伸びないためだ。メーカーの間では今年度下期の生産台数を当初計
画より減らす動きもあり、国内生産の本格回復は当面見込みにくい情勢だ。≪消費低調 年度下期、減産も≫8社の9月
の国内生産台数は前年同月比3・3%減の79万9,984台だった。トヨタやホンダなど5社が前年割れ。プラスとなったダイ
ハツ工業も「9月発売の軽トラック『ハイゼット』を除くと厳しい」。4-6月は増税前の納車が間に合わなかった受注残が国
内生産を下支えしたが、7月以降は前年割れが続く。最大の要因は需要低迷だ。4-9月の国内新車販売台数は8社合計
で前年同期比3%減の226万台と、年間販売計画の45%にとどまる。10月以降の販売もトヨタ、日産自動車、スズキなど
は「新規受注は回復したとはいえない」と話す。2014年度の新車販売台数は2年ぶりに500万台を割り込みそうだ。ホン
ダは今週から、埼玉製作所狭山工場(埼玉県狭山市)で金曜日に操業を止める生産調整に入る。国内生産の回復が遅
れているもう一つの理由は輸出の減少だ。9月の8社の輸出台数は前年同月を4%下回った。4月以降の半年間で見て
も、206万4,454台と5・3%減った。足元では1㌦=108円前後と1年前より10円ほど円安に振れているが、リーマン・ショッ
ク後の円高期に各社が海外に生産をシフトした結果、輸出は増えにくい構造になった。今年度上期も海外生産は前年同
期比6・5%増えた。今年に入りホンダやマツダはメキシコで新工場を稼働させた。日産は月に1万台程度生産していた
多目的スポーツ車(SUV)「ローグ」を昨年10月に米工場に移管したことで、九州の工場で生産を減らしている。自動車の
国内生産の低迷は部品メーカーなど関連産業にも影を落としている。ホンダの部品子会社、八千代工業が27日発表し
た14年4-9月期連結決算で、国内の売上高は498億円と前年同期比13%減り、営業損益はほぼトントンから5億円あまり
の赤字になつた。同社は今年度下期(10月-15年3月)の国内の需要見通しについても引き下げた。比較的好調な中国
事業などでも補えず、下期の連結営業利益見通しを従来の43億円から32億円に引き下げた。トヨタは今年度下期に取
引先の部品メーカーに値下げを求めない方針だ。円安による資材費の上昇や電気料金引き上げに苦しむ中小に配慮
し、本来生じるはずの数百億円の収益改善分を取引先に還元する狙いがある。自動車各社は新型車を投入することで
販売の好転を狙うが、底上げ効果の大きさは不透明だ。ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏は「景気の足腰は
弱く、輸出の増加も見込めない。今年度下期の国内生産は前年同期に比べ7%程度減るだろう」と予想する。44
◆4-9月期販売/普通トラック17%増 ≪下期も堅調予測≫トラック業界関係者がまとめた2014年4-9月期の普通トラッ
ク(積載量4㌧以上)販売台数は、前年同期比17・0%増の3万9,315台だった。4月の消費増税に伴う反動減の影響は6月
までに収束。公共事業が高水準にあり建設業界を中心に販売が伸びたほか、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」
の効果による荷動きの良さも需要を下支えした。14年度下期(10月-15年3月)について業界関係者は引き続き堅調に推
移するが、「8万台弱だった13年度の水準までには届かない」と予測。13年度下期は消費増税前の駆け込み需要などで
販売が好調に推移したため、「14年5月から5カ月連続で前年同月実績を上回る販売台数は14年度下期中にマイナスに
転じる」との見方を示した。車種別では大型トラックが同15・3%増の2万1,930台。中型トラックが同19・2%増の1万7,385
台となった。9月単月の普通トラック販売台数は前年同月比28・5%増の1万1,629台と、5カ月連続で前年同月実績を上
回った。国内向け投資の活発化による建設関連需要の増加が続き、ダンプトラックなどが堅調に推移した。
①
◆造船用鋼材需要/下げ止まりか ≪今期は1%増の324万㌧見込み≫リーマン・ショック以降に減り続けていた国内造
船所の造船用銅材使用量が、ほぼ下げ止まったようだ。日本造船工業会加盟会社の今年度の購入量は、前期に比べて
1%増の324万㌧となる見込み。受注拡大などを背景に造船所が操業を戻しつつあることが反映された。日本造船工業
会が会員各社の状況を取りまとめた。今期の鋼材購入見込みのうち、最も使用量が多い厚中板は、前期比0.5%増の2
81万㌧の見通し。造船ブーム前と同じ300万㌧割れの低水準のままではあるが、減少傾向は止まった。形鋼と鋼管の購
入量も、今期は微増となる見込みだ。国内造船所の鋼材消費量はピーク時の2008年度に463万㌧を記録したが、その
後は造船所が操業を落として建造量を抑制している影響で、下落傾向が続いている。今期は下げ止まるとはいえ、ピ
ーク時に比べると30%少ない水準だ。
◆世界鋼材消費量16億㌧ ≪来年見通し 拡大ペースは鈍る≫世界鉄鋼協会(WSA)がまとめた2015年の世界鋼材見
掛消費量は15億9,400万㌧となり、初の16億㌧の大台に近づく。ただ14-15年の伸び率は前年比2・0%増と、従来の同34%増を下回る見通し。先進国の需要は堅調だが、最大需要国の中国での成長鈍化が影響し、拡大ペースは鈍りそう
だ。先進国の消費量は14年が同4・3%増、15年が同1・7%増となり、13年の同0・2%減から反転。住宅投資や自動車販売
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が好調な米国が伸び、EU28カ国も経済・鉄鋼需要が緩やかに回復する。日本も消費増税後の需要の振れがあるが、お
おむね堅調を維持し、6,500万㌧を上回りそうだ。一方、新興国は14年が同1・2%増、15年が同2・2%増となり、13年の同5
・2%増から減少する。中でも中国は政府の経済構造改革の実施や不動産市場も調整局面を迎え、需要は若干増に止ま
る見通し。また政治的な混乱のあるタイやインフレ・高金利に苦しむブラジルなど、新興国を中心に経済・鉄鋼市場の需
要回復が遅れている。
◆粗鋼生産、4-9月 ≪3年ぶりマイナス、建築分野の反動減響く≫日本鉄鋼連盟が20日発表した4-9月の粗鋼生産量
は、前年同期比0・5%減の5,555万6,000㌧となり、前年同期で3年ぶりのマイナスとなった。造船向けが輸出船契約の
増加を背景に鋼材需要が好調だったが、前年同期に消費増税前の駆け込み需要があった住宅・マンションなど建築分
野は反動減が響き、全体としては減少した。炉別では高炉系の転炉鋼が同1・0%減の4,289万9,000㌧、電炉鋼は同1・2
%増の1,265万7,000㌧だった。特に建設向けの条鋼類の不振が目立つ。H形鋼は同6・8%減、小形棒鋼も同1・7%減。消
費増税後の反動減や、人手不足による建設工事の進捗の遅れなどが影響している模様だ。製造業向けの鋼板類は需
要がまばらだ。造船向けの厚板は同1・5%増、産業機械向けの特殊鋼熱間圧延鋼材も同4・2%増、自動車向けの亜鉛メッ
キ鋼板は同0・3%増と堅調な反面、広幅帯鋼は同0・3%減、普通鋼冷延広幅帯鋼は同0・8%減だった。9月単月は前年同
月比0・5%減の924万4,000㌧で2カ月ぶりのマイナス。1日当たりの粗鋼生産量は30万8,100㌧と前月比2・2%増。転炉
鋼が前年同月比0・4%減の710万6,000㌧、電炉鋼は同0・6%減の213万8,000㌧だった。10月以降は造船向けの鋼材需
要は堅調なものの、住宅・店舗などの建設着工が依然として低調で、「全体の需要を押し上げるには力不足」という指
摘もある。個人消費の回復による自動車、住宅関連の需要の盛り上がりや企業の設備投資の回復を期待している。
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