〈メール通信〉 より 「グリーン・エネルギー利用拡大セミナー in 東京」レポートと疑問 「太陽光・風力発電トラスト」運営委員・中川 修治 太陽光や風力等のグリーンエネルギーの導入を促進するためには、ビジネス・産業活動にお けるグリーン電力証書等の利用拡大や、グリーンエネルギーの利用における消費者の一層の参 画などが必要なので、企業、グリーン電力発電事業者、消費者等が連携してグリーンエネル ギーの利用を強力に促進するべく、6月3 0日に設立された、 「グリーン・エネルギー・パート ナーシップ」と経済産業省資源エネルギー庁主催で開かれた「グリーンエネルギー利用拡大セ ミナー in 東京」に行ってきました。 (9月17日 (水) 14:00∼ JA ホール) その理由は、RPS によって日本の太陽光 グリーンエネルギー利用を巡る現状と課題他 発電の普及を妨げてしまったという事だっ このとき、環境価値のダブルブッキング たのだが、その張本人がその責任自体を反 になるのではないかと聞いたら、そうした 省することなく、グリーン証書としてお札 批判もあるようなので、今後の検討課題だ 販売してごまかそうと言う取り組みに見え と答えた。しまった! 肝心の FIT への変 る。米国では日本の80倍も取引されている 更自体をすべきではないのかという質問と と言ってどんどんやろうと宣伝されていた。 いうか肝心のことを聞くのを忘れてしまっ (もう、呆れるばかりでした) た。 (ゴメンナサイ) 当然、この取り組みが持て囃されれば、 殆ど、これは RPS の失敗を糊塗するた FIT でなくてもいいじゃないかという風に めにお札を販売するという取り組みに見え 商売の利権が発生するので流されていって る。グリーン電力証書を売ってしまえば、 しまうのでしょう。公平さと公正さを無視 発電主体には環境価値は残らないのでその した仕組みで…。 (詐欺師まがいの話は立 事を自ら言う権利はなくなるということだ。 て板に水)恥ずかしげもなくお札を販売す つまり、代理で CO2を出さない電気を る口上を述べ立てる、頭のいい詐欺師が 作るよ、という商売をしたというだけのこ 売っているのがグリーン電力証書だという とだと言うのだが、その事をきちんと説明 風にみえる。 はしていない。一番肝心のことをきちんと で、国内で売れないなら海外に売れるの 説明していなくて、頑張って広めていこう じゃないかと聞いたらそういうこともある と煽っているだけのことのように見えた。 でしょうね。それは国際的に取引されるよ お札販売のセミナーであったということで うになるとなれば…。 した。 (ああ、恥ずかしい) はい、それでは、この国に売りたくない 全く、この証書取引というものがもつ問 場合は、全量を海外へと販売しようではあ 題点を議論する、ということでははないよ りませんか、その販売された環境価値分の うでした。当然そういうことでしょう。 排出量=環境価値は海外へと流失するで −12− しょう。 1.グリーン電力証書を海外で買ってくれ 何が言いたいかというと、こんなバカげ るところがあるなら売ることにする。 た政策で環境価値を買い叩かれるならいっ 1.これによって CO2の排出量分だけ海外 そのこと、米国へでも売ってしまおうかな 移転することになる。販売分は日本国内の ということです。しかし、本当に人を馬鹿 削減量からは無くなることになる。でも、 にしているとしか言えないセミナーでした。 問題はないだろう。原子力立国で CO2を つまり、環境価値を差別化商品として売 減らすと豪語している経産省資源エネ庁は ることができるということをニフティーで 決して失敗しないだろう。 は分析をして、しうした電力を使っている で、失敗したところで安く排出量を国際的 というとニフティーの価値が上がると判断 に税金で購入して来れば良いということな して、このグリーン電力証書を取り入れる のだから…。経済合理性から考えて、私た ことにした、という商売になるということ ち自然エネルギー発電事業者は最もその価 でした。差別化商品として売れるのだから 値を高く評価してくれる所へ販売すると言 良いじゃないかと…。 う事だ。 ※これは国を売ることになるだろうか? 環境価値をグリーン電力証書に…外貨獲 多分ならないだろう。新たな外貨獲得の国 得法! 際取引商品が出来たと多分、商売熱心な金 「グリーンエネルギー利用拡大セミナー 儲けが大事と考える経産省のお役人は大喜 in 東京 」 (主催 / グリーンエネルギーパートナー びするだろう。きちんと電力価値は残って シップ / 資源エネ庁)について前回少しレ いるのだからね。それも電力会社が喜ぶ ポートさせていただいたが、そこで話題と ピーク対応電源だ。 なっている環境価値につい て考えてみた。 これについての認証機関は国際的にも認 私たちはこれを買ってくれる所が少ない められるべきものだ。出来れば、国際的に と嘆いているのだけど、世界は広いし地球 も中立的な立場の IPCC とかの機関として 温暖化の問題を考えても CO2のゴミ捨て も良いかも知れない。もちろん、認証料は 場の大気はつながっているのだし、ある政 若干かかるが、これが IPCC の独自財源と 府関係者は「太陽電池はドイツに輸出され して使えるなら積極的に関与されるだろう。 てもそこで CO2 を減らすのだからいい 産油国とかの CO2を大量に排出してし じゃないですか」とのたまわったことから まう石油を販売している人たちがやっぱり、 一つこんなこともかんがえられるのだと思 未来のことを考えれば、余裕がある資金で いついた。 未来を支えようと買ってくれるかもしれな つまり、私たちも国内限定で考えるのを い。安い価格で太陽光発電事業が成り立た よしてもっとグローバルに展開してはと試 ないようにしている日本以外の先進国もあ しに考えてみたのだ。 ともな価格で落としてくれるかもしれない −13− し…。しかし、こんなことを考えなければ 〈疑問点〉 いけない、日本の現状の政策の失敗自体が 1.RPS 法は環境価値と電力価値によって あまりにも悲しいです。 成り立つとしている。 で、その太陽光発電の電力価値をも買い 1.一定量の環境価値の保持を義務付ける 叩いている電力会社が下記の取り組みをす ことになる。最終使用者は電力から購入す るそうな…。これも、将来、事業として成 る比率で CO2排出責任量がカウントされ り立つ以下の価格で太陽光発電事業者から る 買い叩くためのデータ集めに見える。 1.RPS 法における環境価値は総発電量を ここで高いと出た場合は回避可能原価で 考慮しえない。 ほかの事業者から買わねばならないという 1. 環境価値を市場で決めるとするという カリフォルニアで風力発電を支えたような ことは出来るだけ安価にその価値をとどめ 法律が出来なければ結局、金の無駄遣い、 ておこうという意図があるものと考えられ やらない理由をより強固にするだけだろ る。 う。 1.発電原価45円 /Kwh の電力は電力企業 によって電力会社の販売単価の25円分しか 原子力は不良資産と化す 支払われておらず、本来支払われるべき20 放射性廃棄物は副産物として必ず出る。 円分の環境価値?発電原価との差額分が補 見掛け上、安く見える。理由は、これが化 てんされていない。 石燃料と同じだからだ。つまり、燃料資源 1.電力価値自体は一体幾らか?それこそ を使うという点にある。 が市場で決められるべきものだろう。その さらに、確かにエネルギーの量としては 正しいコスト自体が開示されていないので、 大量の熱を取り出せるのは確かだが、これ ピーク対応価値を持つ太陽光発電は正しい は原子核を構成する中性子、陽子などの核 経済的評価を受けていないと考えられる。 力を開放する=核分裂反応によって得られ 〈自家消費分の扱い〉 るエネルギーで使ってしまえばそれまでで 1.自家消費分は電力生産者に環境価値が エントロピー量は増えるだけである。副産 残る 物としての核生成物が出来てしまい。この 1.これを販売してしまったら他の人たち あと始末が手に負えない。 と同じになる。この人の発電原価が45円だ まあ、燃料資源としてウランを使い、こ とするとこの環境価値を10円で売ってし れがまた地下資源で品位の高いものから使 まった場合はこの人は電力価値25円との差 われて、何れは価格の高騰に苦しむことに 額分20円のうちの10円だけがカバーされる なる。これは、燃料資源が自然エネルギー のみで本来支払われるべき残りの10円分を のように更新性のものではないという点が 社会に寄付させられたことになる。 一番の相違点である。 −14−
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