ERM Japan Newsletter 2013 年 8 月 22 日 発行 Headline EU 殺生物剤製品規則の施行 メキシコにおける環境影響評価 アジア太平洋地域のパワーセクターにおける主要動向 高解像度フェーズ II 調査 (High-Resolution Site Characterization: HRSC) 日本企業への影響 殺生物剤やその機能を発揮する物質(活性物質)だけでなく、それ らの製品を施された製品(成形品)も規制の対象になったことから、 本規則への対応が必要となる業界は多岐に渡ると考えられます。施 行時期が迫っていますが、一部のガイダンスは7月に発行されたも EU 殺生物剤製品規則の施行 のの、まだ未整備の部分も多く、当局による運用の整備が待たれて EU で は 、 2013 年 9 月 1 日に殺 生物剤規則( Biocidal Product います。ERM では、EU 内の現地事務所との連携により、当規則の Regulation (BPR); Regulation 528/2012)が施行される予定です。こ 最新状況や産業界の対応状況について情報収集を進めています。 れまでの殺生物剤指令(Biocidal Product Directive (BPD); Directive 岩田周子([email protected]) 98/8/EC)は廃止され、上記期日以降は新たな規則に基づく規制・ 取締りが進められることになります。現在定められている「指令」 メキシコにおける環境影響評価 に代えて EU 加盟国に直接適用される「規則」を定めることにより、 メキシコでは 2012 年の実質 GDP 成長率は 3.9%に達しており、日系 殺生物剤の安全性向上、手続き簡素化、域内市場での自由な流通を 企業が関わるプロジェクトが増えてきています。メキシコ国内で工 図ることを目的とされています。規制の対象は、大きく(1)活性物質 場 な ど を 建 設 す る 場 合 、 環 境 影 響 評 価 ( Environmental Impact (Active substance)、(2)殺生物剤製品(Biocidal product)、(3)処 Assessment: EIA)もしくは事前環境影響評価(Preliminary Impact 理成形品(Treated Article)の 3 つに分類されます。新規則に基づ Assessment: PIR)の実施が必須事項となります。PIR とは、通常の く(1)~(3)に対する規制について、その概要を記載します。 EIA よ り も シ ン プ ル な 内 容 で あ り 、 例 え ば 、 環 境 天 然 資 源 省 (1) 活性物質(Active substance) 「有害な生物に対して作用する物質又は微生物」と定義され、今 (SEMARNAT)より許認可を取得している工業団地内で工場建設 を実施する場合には、PIR を実施することもあります。工場建設が 後物質の製造者/輸入者は、EU に上市する活性物質について、 決定した後、まず SEMARNAT、もしくは、州環境局に EIA か PIR ECHA(European Chemicals Agency)から承認を受ける義務が のどちらが必要かを確認します。また、工場の操業内容によって 発生します。また、今後は他社が承認を受けた活性物質であって EIA 報告書の提出先が連邦環境局か州環境局か異なりますので、こ も、ECHA を通した手続きを行なった上に上市する必要がありま の時にどちらに報告書を提出するか確認する必要があります。 す。 EIA の許認可取得までの期間は、工場の操業内容や規模などによっ (2) 殺生物剤製品(Biocidal product) て異なります。EIA 報告書を作成するための全ての情報が揃ってい 殺菌剤や保存料、有害生物駆除剤等が該当します。今後 EU に上 る場合は、その作成に約 2 ヶ月、作成された EIA 報告書に対する行 市する殺生物剤製品については、①含まれる活性物質は承認を受 政からの評価にはさらに 3~6 ヶ月程度必要となります。なお、PIR けたものでなければならず、②当該製品は ECHA 又は自国の当局 の場合は、行政に提出後 20 営業日以内に評価が行われます。また、 から認可を受ける義務が発生します。一度認可を受けると 10 年間 同国の EIA は Regional EIA と Particular EIA の 2 種類に分けられて 有効で、その後更新が必要となります。また、殺生物を主要な機 おり、高速道路、鉄道、ダムなどのインフラ建設の場合は Regional 能とする、活性物質を含有する成形品についても殺生物剤製品と EIA が要求され、それ以外は Particular EIA が要求されます。工場 見なされ、同様の義務が発生することに注意が必要です。 (3) 処理成形品(Treated Article) 建設は通常、Particular EIA が要求されます。 SEMARNAT は鉱山業, 農業, 水産業, 工業, 観光業, 林業, 漁業, 石油業, 「1つ以上の殺生物剤製品により処理された又は意図的に殺生物 廃棄物処理業、および通信業について EIA と PIR のガイドラインを 剤製品を組み込んだ成形品」と定義されており、本規則によって 発行しています。EIA もしくは PIR の許認可を取得した後に、工場 新たに規制の対象となるものです。処理成形品に使用された殺生 建設工事の開始が可能となり、その後操業許可申請が必要となりま 物剤製品に含まれる全ての活性物質は承認を受ける必要がありま す。操業許可取得と同時期に、産業廃棄物排出事業者としての届出 す(2016 年までの移行措置あり)。また、2013 年 9 月以降、処理 も必要となります。また、処理排水を公共用水域に放流する場合 成形品の EU 域内製造者/輸入者は、当該製品にラベルを添付する (河川などに直接放流する場合)は、行政に届出を行い、公共用水 義務が発生します。殺生物剤製品が使用されているという事実や 域への放流に関する許可の取得が必要となります。これらの許認可 活性物質の名称や性能等についての情報をラベルに記載すること を取得した後に、工場は本格的に営業できることになります。 が必要となります。 ERM 日本株式会社 〒220‐8119 横浜市西区みなとみらい 2‐2‐1 横浜ランドマークタワー 19 階 Tel: 045‐640‐3780 Fax: 045‐640‐3781 e‐mail: [email protected] URL: www.erm.co.jp 日本企業への影響 日本では、工場建設時に必ずしも EIA の実施は必要ありませんが、 メキシコでは工場建設前に必ず EIA もしくは PIR の実施が求めらま す。EIA に対する許認可を取得するまでには、数ヶ月から 1 年以上 の期間が必要なことから、同国で工場などを建設する際は EIA に係 る時間を考慮する必要があります。また、金融機関から融資を受け る場合は、金融機関が IFC(国際金融公社)基準を満たすことを条 件とすることもあるため、メキシコの環境関連の法律と IFC 基準に 明るい専門家に相談することが推奨されます。 長尾一平([email protected]) アジア太平洋地域のパワーセクターにおける主要動向 高解像度フェーズ II 調査 (High-Resolution Site Characterization: HRSC) 従来のフェーズ II 調査は、これまでの機器や手法を用い、調査を繰 り返し行い、且つそれでも調査結果には依然として大きな不確実性 が 存 在 し ま し た 。 し か し な が ら 、 高 解 像 度 フ ェ ー ズ II 調 査 (HRSC)の手法を用いることにより、フェーズ I 調査等によって特 定された環境リスクを正しく把握し、不確実性を低減させ、且つ費 用対効果のより高い調査を行うことが可能となります。HRSC は、 効果的な意思決定をサポートするために科学的原則、調査アプロー チ、調査機器を適用することにより、二次元ないし三次元の詳細サ イト概念モデル(Conceptual Site Model: CSM)を作成します。 アジア太平洋地域における新規の電力エネルギー事業の有力な候補 新規調査を行うサイトにおいて、初段階で HRSC を導入することで 地として、主にインドネシア、ベトナム、フィリピンなどの国を挙 複雑なサイトでも数ヶ月の調査で汚染源や汚染プルームの状態を正 げることができます。その中でも最も可能性があるのはインドネシ 確に把握し、様々なリスクを評価することができます。さらに、環 アで、石炭火力を中心に、地熱、水力、ガス火力に関する新しいプ 境リスクの評価、法規制上の要求事項への適合、対策等にかかる費 ロジェクトが期待されています。次に、国際的な投資家が注目する 用の予算化、さらに浄化または汚染軽減対策の着手を、問題の発見 ベトナム市場では、輸入石炭による火力プロジェクトが優位を占め から概ね 1~2 年の期間で終えることができます。HRSC はこれまで ています。ベトナムにおけるプロジェクトの成長ペースは過去緩や に、ビジネスリスク、ステークホルダーの懸念、及びライフサイク かでしたが、Nghi Son 2(ニソン 2 プロジェクト)における進展が、 ルコストの低減に大きな成果を遂げてきており、従来の手法に比べ 他のプロジェクトを後押しするのではないかと考えられています 安全性と持続的可能性を向上させてきています。十数年以上にわた (ERM はこのプロジェクトにおいて環境社会影響評価を実施してい り調査・浄化作業が行われてきたサイトにおいて HRSC を導入した ます)。フィリピンでもこれからの経済成長を支えるために、多く ところ、従来の調査では、たびたび汚染源や人の健康に対する潜在 の発電事業が必要とされていますが、依然として新しい事業者にと 的なリスクの見落としがあり、浄化が上手く行われていないことが って参入が難しい状況にあるようです。したがって、既に発電所を わかりました。場合によっては、このような失敗は訴訟問題に発展 所有している事業者は、現地資本か海外資本であるかに関わらず、 し、重大な損害をもたらす可能性があります。また、失敗した調査 この国の電力市場における競争を理解しているという点でも優位な や対策では全て多額の資金が費やされても、得られる効果はごく僅 立場にあるといえます。ミャンマーでの電力インフラプロジェクト かでしかありません。長期間にわたり調査が行われてきたサイトに も話題になっており、この 1 年で、ガス火力発電プロジェクトに対 おいても、HRSC を導入することで、これまで以上の大きな進展が する融資についての発表、また輸入石炭燃料による発電の報道もさ 期待され、より費用効果に優れた満足のいく結果に繋がることがで れています。しかし現在の社会制度やプロジェクトのストラクチャ きます。HRSC では、地表からの物理探査、スクリーニング用プロ ーはまだ整っておらず、今後の進展には今しばらく時間が係ると考 ーブ、レーザー励起蛍光法を用いた原位置での濃度評価、ウォータ えられます。オーストラリアではニューサウスウェールズ州の発電 ールー・アドバンスト・プロファイリング・システム、ソニック・ 所資産の民営化が行われています(ERM はオーストラリア NSW 州 ドリリング、ボーリング孔を用いた物理探査、基岩のコア試験・分 の財務省に対して環境コンサルティングを提供しています)。この 析などが使われます。上記の機器・手法を効果的に組み合わせて利 民営化の動きに関しては、競争力強化に繋がる可能性のあるインフ 用することで、効率的に高解像度のサイト概要モデルを作成するこ ラ資産の購入を検討している機関投資家が多く存在します。また近 とが可能になります。 年では、アジア太平洋におけるグリーンフィールド(更地)および Sam Fisher ([email protected]) M&A 取引を求めている韓国、インドネシア、マレーシアの投資家 訳・尾藤文弥([email protected]) が増えてきています。 ERM 日本開催セミナー「製造現場・研究試験施設における事故災 害防止対策」の開催 日本企業への影響 エネルギー関係のプロジェクトへの投資は、それぞれの国の成熟度 合いに応じて、インフラ整備や民営化などいくつかの形をとります。 しかしいずれにおいても、投資の判断を行う上で、環境問題(環境 汚染の有無など)や社会問題(天然資源の破壊、人権侵害など)に よる事業リスクの把握は最重要課題の一つであると言えます。 Sean Purdie ([email protected]) 訳・吉住嘉崇([email protected]) 2013 年 9 月 4 日に「製造現場・研究試験施設における事故災害防止 対策」についてセミナーを開催いたします。製造現場・研究試験施 設におけるリスクアセスメントの必要性、また実際に事故が発生し た際の影響の大きさを把握する方法や、職場に潜むリスクの摘出方 法等を、実例を交えてご説明いたします。 ERM では、弊社ホームページに人材の募集情報を掲載しています。 URL: www.erm.co.jp Newsletter 全般に関するお問い合わせ [email protected] 次回の Newsletter は、2013 年 10 月 21 日頃発行予定 ERM 日本株式会社 〒220‐8119 横浜市西区みなとみらい 2‐2‐1 横浜ランドマークタワー 19 階 Tel: 045‐640‐3780 Fax: 045‐640‐3781 e‐mail: [email protected] URL: www.erm.co.jp
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