吉村俊祐先生 :BMC Psychiatry. 2014 Dec 3;14(1):327. [Epub ahead of print] 多発性硬化症に合併するうつ病に効く、特効薬とは? Lifestyle factors, demographics and medications associated with depression risk in an international sample of people with multiple sclerosis. 【背景】多発性硬化症(MS)患者と、うつ病は高頻度に合併しますが、うつ病に対して奏功する薬物はまだな く、結果患者のQOLは、著しく阻害されています。今回、MS 患者にうつ病が合併するリスク因子について 検討するために、疾患や薬物だけでなく、生活習慣リスクが評価されました。 【方法】2459 例のMS患者に対し、WEB を介した断片調査が行われ、ライフスタイルリスク、薬物療法、患 者属性や疾患の状態、PHQ-2 を用いたうつ病の評価が行われました。 【結果】平均年齢 45 歳、平均罹病期間 6 年の比較的早期の MS 患者で 19.3%が PHQ-2>3 の陽性であ り、実際には 30%がうつ病の診断、そのうち 7 割が薬物治療を受けていました。うつ病の合併リスクを上昇 させる因子として、患者属性では、学歴が低い、配偶者/同居者がいない、定職がない、などが有意であり、 疾患状態では、中等度以上障害、併存疾患あり、倦怠感合併ありなどが関連したいました。一方、ライフス タイル因子では、うつ病合併のリスク因子は、喫煙、介護者がいない、肥満、悪い食習慣などでしたが、興 味あることに、うつ病合併リスクを、有意に低下させる因子として、中等度のアルコール摂取、適度な運動、 ビタミンD,オメガ 3、特に植物性>魚油、魚摂取量などはリスクを半減させていました。薬剤では、リスクの 減少は認めず、IFN治療は、悪化因子でした。 【結論】このように、多発性硬化症のうつ症状に奏功する薬物療法はまだまだなさそうですが、健康的な食 事、適正な運動、円満な家庭環境など、昨今なかなか手に入りにくい日常こそが、特効薬になる可能性が 示されました。まずは、患者さんが頼りにしている医療者の、ライフスタイルから見直した方がよさそうで す。。(文責 阿比留)
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