小学校複式理科カリキュラムの現状とモデル作成

小学校複式理科カリキュラムの現状とモデル作成
小学校複式理科カリキュラムの現状とモデル作成
柳
田
英
俊
(長沼町立北長沼小学校)
校中
実
(北海道教育大学札幌校)
校を対象に
学校
が集中し児童数も増加している
札幌市を除くと道内の複式学級を有する小学校数は,
年度で
中
つ学校のうち,複式学級を
はじめに
北海道の人口の約
田
校あり,約
%もの学校が複式
カリキュラムを部分的にでも考慮しなければならない状
況にある。こうした状況をうけて北海道では,へき地・
複式に関する教育の研究が古くから活発に行われてき
年
クラス以上設置している小
月
年
月の間に
による返信方式で単元配当表を収集した。なお,複式学
級が
学級である学校は,その大部分が単式からの移行
途中で複式カリキュラムを実施していないため調査対象
から除外した。調査依頼を行った
校中,
%)
回答があり,そのうち完全に
(
ている
校
(
校から
カ年分作成され
%)
分を調査対象とした。
た。しかし,その内容は少人数・複式学級における指導
複式理科の学習形態
法や地域の特性を生かした指導法に関するものが多く,
教科指導に関する研究においても,国語や算数をベース
に,複式授業の特徴である
わたり
ずらし
などの
図
複式理科の学習形態
指導過程に関する研究が多く,それ以外の教科に関する
研究はきわめて数少ない。
特に最近では学習指導要領の改訂に伴う総合的な学習
の新設によって,従来から行われている地域学習や集合
学習,体験学習に関する研究が主となっており,教科内
容やカリキュラムに関する研究自体が少なくなってい
る。また,数少ない理科に関する研究においても,地域
や環境をテーマとしているものが主で,指導計画や学習
形態,指導法など理科そのものに関する研究はほとんど
見ることができない。理科の場合,通常の単式学級であ
れば季節に関する単元の移動を行えば,学習指導要領に
まず,複式理科の学習形態の集計結果を図
に示す。
おいては,季節に関する単元を踏まえながらも,学校の
図中の学年別とは,例えば 年生の内容は
年生が,
実態や学級編成に応じて完全に自主編成しなければなら
年生の内容は
基づいた学習内容を学年毎に編成できるが,複式学級に
ないという実情があるにもかかわらず,研究や資料が少
ないのが,理科のおかれている実態である。
年生が,それぞれ同一教室内で平行し
て学習する形態を示す。
年度方式
は,それぞれ平行して
年度と 年度という名称のもとに
小学校における複式理科カリキュラムの調査
まず,複式理科のカリキュラムが,実際の学校現場で
どのように編成されているかを,
校の複式学級を持
学年の内容を
年に分配する方法
の中で,学年の配当内容を変えずに 年度を
容, 年度を
年生の内
年生の内容としたものである。この方式
では, 年生のときに
年生の内容を学習し,
時に 年生の内容を学習する子どもと,
年生の
年生の時に
柳
年生の内容を,
年生の時に
田 英 俊・田 中
年生の内容を学習する子
実
図
使用教科書
どもが出現することになる。
年度方式
は,季節に関わる内容や学級の実態を
考慮して,単元を再配分した
年度方式である。よっ
年生の内
て,子どもから見ると,学年にかかわらず,
容を学習したり, 年生の内容を学習したりすることに
なる。
年度方式
混合型は,基本的には
の形態をとるが,
単元によって学年別の学習形態をとるもので,カリキュ
ラム編成はより複雑化する。
学習形態を,カリキュラム編成という観点からみると,
年度方式
と
年度方式
は単元の配列の仕方が
異なるだけで, 学年分の内容を
本の指導計画を作成し,
年度と呼ばれる
るため,大きな違いはない。天体や自然を扱う単元を
年間で学習するいうことに関
して違いはない。つまり,調査対象のほぼ
割(
%)
つにまとめるか,季節毎に細分しているかなどの違い程
度である。
年度方式で授業を実施していると言える。
が
複式理科の単元構成
図
児童数別学習形態
年度方式で理科のカリキュラムを編成する場合,
地域性や季節を考慮して単元を配置するとともに,発達
年度で内容が均等となるようになども考慮す
段階や
学年分の内容を扱うため,単元を学習する
る。また,
系統性や順序性を考慮する必要もある。
理科の場合,単元の構成を考えていく上で系統性や順
序性は特段に重要な視点である。学年別のカリキュラム
の場合,通常の単式と同じであるため,系統性や順序性
に関わる問題はふつう生じない。
図 に示した複式理科の学習形態の調査結果から,道
次に,児童数別に学習形態を見てみると,図
に示す
ように 人以上の複式校の中では児童数の多い学校と,
児童数
が多く,
人以下の極小規模校において学年別の学習形態
人以上
人未満の複式校では
年度の学習
内の複式校では,
年度方式によるカリキュラム編成
が多い。そこで,
年度方式の学校において系統性や
順序性の視点から単元構成を調査した。なお,複式のカ
リキュラムは通常, 年と
せで編成されることから, ・
形態が多いことがわかる。この理由として, 人以上の
考察した。
複式校では複式学級が 学級しかないと推定され,単式
・
年の単元構成
・
年では, 植物
から複式への移行中で,複式カリキュラムが未編成と考
えられる。また,
人以下の極小規模校では,欠学年や
年,
昆虫
年と
年と
年の組み合わ
・
季節と生物
年に分けて
月と星
の各単元が,
教科書会社毎に単元構成に工夫が見られる。
統廃合を控えてカリキュラムを学年別に戻している学校
これらの単元は,年間を通して,季節の変化に応じて各
が数校認められた。こうした背景から,中規模複式小学
教科書の配列順に学習できるよう内容編成されているか
年度方式のカリキュラムを採用
らである。このような一連の単元は,同一年度内に学習
校における理科は,
することが望ましいと考える。そこで, 植物
していることが多いことを示している。
節と生物
使用教科書
昆虫
季
月と星 の各単元がどのように複式カリキュ
ラムとして扱われているかを調べた。
調査した各複式校の理科カリキュラムでは,ほぼすべ
これらの単元構成は図
に示すように,ほとんどの学
ての小学校が,使用教科書の単元を元にして編成されて
校で,同一年度内に一連性が壊されずに順番通り配置さ
種
れており,教科書にある系統性,順序性は保持されてい
いることがわかる。また,使用されている教科書は
類でその内訳を図 に示す。教科書は
種類であるが,
各教科書の単元構成は学習指導要領に基づいて作成され
ることがわかる。
次に, ・
年の単元において順序性が特に重要であ
小学校複式理科カリキュラムの現状とモデル作成
図
植物
昆虫
季節と生物
月と星 の順序性
る考えられる単元の組み合わせとして, 豆電球と乾電
池( 年) と
電気の働き(
同一年度内に
図
図
年)
電気の
働き( 年) の順に配置されているものを 順序通り ,
年度に分けて配置された学校では,隔年で学習順が
逆になるため, 隔年で逆転
物の燃え方( 年)
人と動物の体( 年)
人と動物の体( 年)
生物と環境( 年)
物のとけ方( 年)
水溶液の性質( 年)
流水のはたらき( 年)
土地のつくりと変化( 年)
としてまとめた。
まず, については,図
図
土地のつくりと変化
順序性が必要である単元の組み合わせ( ・ 年)
年) がある。
豆電球と乾電池(
生物と環境
天気の変化
各単元内の順序性
電気単元の系統性( ・ 年)
で示したように,すべての
子どもが順序通りに学習できる学校は
%であり,隔年
で順序が逆転して学習する子どもがいる学校が
%と,
同一年度内でも単元配置が逆順のため,すべての子こど
もが逆順に学習する学校 %をあわせた
%の学校で学
習順序に問題が発生している。
図
図 に示すように,複式校全体の
物の燃え方と人と動物の体の順序性
%の学校で順序通
り学習できるように配置されているが,
%の学校で,
隔年で順序が逆転して学習する子どもがいることがわ
かった。学年別のカリキュラムを編成している学校を除
き,
年度方式だけの学校で考えても
%の学校が順
序通り学習するが, %で,隔年に順序が逆転して学習
については,図
するという割合である。
・
年の単元構成
・
年の時と同様に,生物と環境
で示すように,すべての子どもが
順序通りに学習できる学校が
天気の変化
%あり,隔年で順序が逆
土
転して学習する子どもがいる学校 %と,同一年度内で
地のつくりと変化 の各単元が教科書会社毎に単元構成
も単元配置が逆順のため,すべての子どもが逆順で学習
が工夫されているため,これらの単元が,各教科書に応
する学校 %をあわせた
じて,一連性を保った順番になっているかを調べた。
が発生している。しかし, %の学校が順序通りに学習
これらの単元は図
に示すように,
ほとんどの学校で,
同一年度内に一連性を壊さず順番通り配置されているこ
次に, ・
と考えられる
できるように編成されており,この単元については多く
の学校で順序性を考慮していることがわかる。
については,図
とがわかる。
%の学校で,学習順序に問題
で示すように,すべての子どもが
年の単元の中で特に順序性が重要である
順序通りに学習できる学校は
単元の組み合わせを図
転して学習する子どもがいる学校 %と,同一年度内で
に表した。
%あり,隔年で順序が逆
も単元配置が逆順のため,すべての子どもが逆順に学習
柳
図
田 英 俊・田 中
実
この単元についての系統性を考慮していない学校が多い
人と動物の体と生物と環境の系統性
ことがわかる。
調査結果の考察
調査結果をまとめると,
北海道における複式小学校での理科カリキュラム
は,各学校で使用している教科書単元をもとに構成さ
れている。
児童数が比較的に多い学校や,欠学年のある学校,
年度方式の学習形態
それに極少人数校以外では,
で複式理科カリキュラムを編成している学校が多い。
順序性において重要な意味を持つ上下学年の単元の
組み合わせにおいて,順序が逆転してしまうものが,
図
単元によって
物のとけ方と水溶液の性質の系統性
割
割の学校で存在していた。
.複式理科カリキュラムの作成を考える
系統性や順序性が特に重要であると考える単元の組み
合わせにおいて,逆の順序で単元を学習した場合,単元
の目標を十分に達成することが難しく,また,順序が逆
転して学習する場合は,下学年の子どもが上学年の内容
から学習する場面であることを考えると,なるべく,順
序が守られるようにカリキュラムを作成することが望ま
しいと考える。
一方,複式理科のカリキュラムを作成する時に参考と
する学校
%をあわせた
%の学校で,学習順序に問題
%の学校が順序通りに学習
が発生している。しかし,
分の の学校で単元の
できるように編成されており,
順序性を考慮していることがわかる。
については,図
なる資料が少ないことも現場での悩みの一つである。北
海道では,北海道へき地・複式教育研究連盟(
作成した北海道小学校複式基底教育課程
)が
))
の中で,各
教科書別の単元一覧表と年間指導計画のモデル案が提示
で示すように,すべての子どもが
されている。しかし,このモデル案では順序性が特に重
順序通りに学習できる学校は
%,隔年で順序が逆転し
要だと考える単元の組み合わせが
て学習する子どもがいる学校
年度に分かれて配
%もあり,学習順序に問
置されているため,隔年で順序が逆転して学習する子ど
題を抱えている学校が多い。学年別のカリキュラムを除
もがでてくる場合がある。また,地域性を考慮して順序
年度方式だけの学校で考えると,すべての子ど
を入れ替えたりすることはあまり考慮されていない。も
%しかなく,隔年で
ちろん,学習指導要領や教科書会社の資料を使用して,
%となり,
系統性・順序性などを考慮しつつ複式理科カリキュラム
き,
もが順序通りに学習できる学校は
順序が逆転して学習する子どもがいる学校
を作成すれば良いのであるが,これら,従来の方法では,
図
流水のはたらきと大地のつくりと変化の系統性
調査結果からわかるように,多くの学校で問題が生じて
いるのである。
次に,複式学級での理科の学習形態としては,指導者
として担任 人しかいない場合が多く,実験や観察など
を行う場合学年別でそれぞれの学年が別な内容で学習す
ると,安全確保や移動手段,実験・観察道具など物理的
条件で困難が生じるため,
年度方式で一斉指導する
ことが現実的な選択となると思われる。
これらの問題点を考慮した上で,複式理科のカリキュ
ラムを組む上での基本を,
小学校複式理科カリキュラムの現状とモデル作成
年度方式で作成する。
く上で,教科書会社毎に異なる単元名を
特に順序性が重視されなければならない単元の組
み合わせを明確にする。
に, ・
年生は表
の表の単元,例えば
季節や地域性を考慮して単元が構成できるように
する。
・
年生は表
にまとめて比較した。この
.植物
つ
では,各教科書で単元
が,それぞれいくつかの項目に分かれているが,これら
は,それぞれの季節に対応して学習できるように細分化
年度の各年度で内容や発達段階で大きな差が
させているためであり,年度をまたいで配置しない方が
よい単元であることから つにまとめている。したがっ
できないようにする。
基本的にどの教科書でも作成できるようにする。
て,実際にモデルから各教科書の複式理科カリキュラム
具体的なカリキュラム作成を手引き形式にする。
を作成するときは,同一年度内で各教科書の順番で,季
節や地域性を考慮して配置することとなる。
・
としして考える。特に系統性や順序性を保ちながら,
季節や地域性などを考慮してカリキュラムを編成できる
複式理科のカリキュラム作成のための手引き
ように
が必要であると考える。複式学級を有する学校では,教
年では
.植物
.昆虫
物
.月と星 , ・
年では
長
.生物と環境
.天気の変化
.季節と生
.植物の発芽と成
.土地の
つくりと変化 も同様の配慮が必要である。
職員数がわずか数名のため,研修時間が十分にとれない
手引き
場合でも,この
系統性・順序性を重視した単元の組み合わせ
に沿えば,系統性や順序性を
系統
踏まえ,学校や地域の実態に則した理科カリキュラムの
には大きく,知識の系統的教授という意味合
いと子どもの発達段階に即する・認識の発達段階に即す
編成に役立つものと考える。
るという意味合いがある。子どもの興味,関心,経験な
どのいわゆる“心理的系統”を考慮しつつ,教科の系統,
.複式理科カリキュラム作成
諸科学の法則や学問の系統を重視した教育課程を作成す
カリキュラムの類型
・
年,
・
ることが望ましいと考える。
年を組み合わせた複式学級とし,
系統性
しかし,本研究における
年度案で作成する。その理由として,
ラムを考えるため, ・
年,
・
は,複式カリキュ
年というそれぞれ
年間の中での 系統性 であるため, 原因となるもの
直接指導の機会が増えるため少人数の特長を生か
と 結果となるもの のような順序性をさすことになる。
した細かい指導が可能となる。
また,
順序性が必要であるということには,
例えば,物
一斉指導を行うことによって実験や観察の時間を
の燃え方 の単元で酸素や二酸化炭素を学習してから 人
と動物の体 で,呼吸を学習した方が,より理解できる
十分にとることができる。
少ないながらも集団化できるため,話し合い活動
ということも含まれると考える。
の場を設けることができる。
そこで,特に順序性が重要だと考える単元の組み合わ
複式ならではのメリットである上学年と下学年の
協力関係を実験や観察を通して生かすことができ
る。
指導者の負担が減り,準備などが効率的に行うこ
とができる。
などがあげられる。
各学年の時数
せを,図 とした。
図
順序性が必要である単元の組み合わせ(
年)
豆電球と乾電池( 年)
電気の働き( 年)
物の燃え方( 年)
人と動物の体( 年)
人と動物の体( 年)
生物と環境( 年)
物のとけ方( 年)
水溶液の性質( 年)
流水のはたらき( 年)
土地のつくりと変化( 年)
の
.豆電球と乾電池
と
.電気の働き
の
学校教育法施行規則別表第
の標準時数にもとづき,
単元は,エネルギー概念を形成するための下位概念であ
・
年生の 時間にあわせ,
る電磁気的エネルギー関連の概念のうち,回路概念と作
年生は,上学年である
年度
時間,
度 時間,
年度
年度
時で編成し,
・
年は,
年
時で編成する。
作成上での配慮事項
複式理科のカリキュラムを各教科書の単元で考えてい
用概念を形成するための単元である。そのなかでも,回
路概念は最も基礎的な学習内容である。
そのため, 豆電球と乾電池
で,回路概念をある程
度形成してから, 電気の働き
を学習することが望ま
しい。
地球と宇宙
物質とエネルギー
年
年
年
年
.流水の働き
.土地のつくりと変化
.物のとけ方
.てこのはたらき
.物の運動
.水溶液の性質
.物の燃え方
.電気の働き
.天気の変化
.花から実へ
.動物の発生と成長
.人と動物の体
.植物と日光
.生物と環境
年
単元のくくり
.植物の発芽と成長
教科書別単元比較表
.水の変化
.光の性質
.豆電球と乾電池
.磁石の性質
.空気や水の性質
.物の温度とかさ
.物のあたたまり方
.電気の働き
.日なたと日かげ
.月と星
学年
年
・ 年理科
年
年
年
年
.季節と生物
植物の発芽と成長
花から実へ
生命のたんじょう
動物のからだのはたらき
植物のからだのはたらき
地球と生き物のくらし
生き物のくらしとかんきょう
人とかんきょう
もののとけかた
てこのはたらき
おもりのはたらき
水よう液の性質とはたらき
ものの燃えかたと空気
電流のはたらき
天気と気温の変化
台風と天気の変化
流れる水のはたらき
大地のつくりと変化
東京書籍の単元名
あたたかくなると
暑くなると
すずしくなると
寒くなると
生き物の 年をふりかえって
光を当てよう
明かりをつけよう
じしゃくにつけよう
もののかさと力
もののかさと温度
もののあたたまりかた
電気のはたらき
日なたと日かげをくらべよう
月の動き
星の動き
夏の星
冬の星
水のすがたとゆくえ
東京書籍の単元名
しぜんたんけんをしよう
植物をそだてよう
植物のからだをしらべよう
花と実をしらべよう
チョウをそだてよう
こん虫をしらべよう
時数
時数
教育出版の単元名
春になって
発芽と成長
花から身へ
新しい生命
生きていくための体の仕組み
日光と植物
宇宙船 地球号 にのって
生き物どうしのかかわり
生物とかんきょう
もののとけ方
左右のつりあい
おもりの動きとはたらき
水よう液の性質
ものの燃え方と空気
電流が生み出す力
気温の変化・天気の変化
台風接近
流水による土地の変化
土地のつくり
変化する大地
夏の星
冬の星
水のすがたのふしぎ
教育出版の単元名
わくわく、ふしぎ発見!
植物を育てよう
植物を育てよう
植物の育ちと花
チョウを育てよう
こん虫をさがそう
季節と生き物
芽ばえのころ
葉がしげるころ
葉が色づくころ
芽ばえにそなえるころ
生き物の 年
光をはね返そう
明かりをつけよう
じしゃくのひみつをさがそう
空気と水のふしぎ
温度ともののかさ
もののあたたまり方
電気のはたらき
日なたと日かげをくらべよう
月と星
時数
時数
もののとけ方
てんびんとてこ
おもりが動くとき
水よう液の性質
ものが燃えるとき
電磁石のはたらき
わたしたちの気象台
台風と気象情報
流れる水のはたらき
大地をさぐる
大地の変化
啓林館の単元名
受けつがれる生命
植物の発芽と成長
花から実へ
動物のたんじょう
ヒトや動物の体
生物とかんきょう
わたしたちの地球
自然とともに生きる
夜空を見よう
冬の夜空
水のすがた
啓林館の単元名
生き物たんけんにしゅっぱつだ
たねをまこう
植物のつくりとそだち
植物の一生
チョウをそだてよう
こん虫をさがそう
生き物のくらしを感じよう
春のしぜん
夏のしぜん
秋のしぜん
冬のしぜん
生き物の 年間
あたたかさと太陽の光
電気であかりをつけよう
じしゃくのふしぎをさぐろう
空気や水をとじこめると
ものの温度とかさ
もののあたたまり方
電気のはたらき
かげのでき方と太陽の光
月や星
時数
時数
田 英 俊・田 中
領
域
生物と環境
表
地球と宇宙
物質とエネルギー
年
.昆虫
単元のくくり
.植物
教科書別単元比較表
学年
年
・ 年理科
領
域
生物と環境
表
柳
実
小学校複式理科カリキュラムの現状とモデル作成
については,人と動物の体 で呼吸を学習する上で,
物の燃え方
で空気の学習をしていないと,実験が理
解できないなどの問題が生じるため,物の燃え方
変化(
人
流水のはたらき(
年) と
土地のつくりと
年) は地質概念を形成するための単元で,そ
れぞれ,流水の作用の概念と地層の概念を形成するため
と動物の体 の順序で学習することが望ましい。
の単元である。地層の概念には構造と成因があり,地層
の場合,生物に関しては,多種多様な概念が含まれ,
)
それらが立体的に関連しているため,構造化が難しい 。
しかし, 人と動物の体(
の
年) の学習では,個体レ
の成因はその構造から推理するため,流水の作用の概念
が必要となる。
よって, 流水のはたらき(
ベルの機能と構造の下位概念である,動物のつくりとは
地のつくりと変化(
たらきと,集団レベルの下位概念である環境要因の一部
と考える。
年) を学習してから 土
年) を学習することが望ましい
を含むため, 人と動物の体( 年) を学習してから, 生
これらの系統性や順序性が特に重要だと考える単元の
物と環境( 年) を学習することが望ましいと考える。
組み合わせについては,
四角い線で囲み, つのモジュー
また, 生物と環境(
年) の単元は,
年までの学
ルとして同一年度内に順番に学習できるように配置する
習事項すべてを使って自然のつながりを考えるため,ほ
ようにした。
とんどの単元とつながりがあるが,特に気体を通しての
表
物質のやりとりが重要であるため, 人と動物の体(
年)
生物と環境(
年) で学習することが望まし
と表
の単元に基づく複式カリキュラム
なるべく学習内容の領域,分野,ジャンルを両年次に
いと考えた。
平均的に配列し,各年度の内容の分量,難易の程度の均
の 物のとけ方(
年) と 水溶液の性質( 年)
衡を図ることを基本とし,
は,ともに化学的変化の下位概念である溶解・溶液を扱
う単元である。溶液の基本的な概念は均一性であり
や
件を加味して作成したのが表
物
で述べた配慮事項や条
と表
のモデル案であ
る。このモデル案を基本に,表 と表
を参照して自分
年) で扱うが,指導要領では変化の概念
の学校で使用している教科書での単元に変換してカリ
が主となっている。しかし,溶液の概念がなければ, 水
キュラムを作成する。このとき,季節や地域性が関係す
年) で扱う多様性と同一性を考えるこ
る単元は で述べたように一つの単元にまとめてあるた
のとけ方(
溶液の性質(
とは難しい。よって, 物のとけ方(
から
水溶液の性質(
年) を学習して
め,他の単元への影響も少なく,系統性や順序性が崩れ
年) を学習することが望まし
ないという特徴がある。
いと考える。
表
・
年
複式理科カリキュラムのモデル案
年度
年度
標準時数
.植物
( )
.月と星
( )
.光の性質
.季節と生物
標準時数
( )
( 年間)
.昆虫
( )
.豆電球と乾電池
( )
.空気や水の性質
( )
.もののかさと温度
( )
.電気の働き
( )
.物のあたたまり方
( )
.磁石の性質
( )
.日なたと日かげ
( )
.水の変化
( )
総時数
( )
時期
( )
(春 夏)
(適時)
柳
表
・ 年
田 英 俊・田 中
実
複式理科カリキュラムのモデル案
年度
年度
標準時数
標準時数
.植物の発芽と成長
(
)
.花から実へ
(
)
)
.植物と日光
(
)
(
)
.物のとけ方
(
)
.水溶液の性質
(
)
.物の燃え方
(
)
.人と動物の体
(
)
.動物の発生と成長
(
.流水の働き
.大地のつくりと変化
.物の運動
.てこのはたらき
(
)
.電気の働き
(
)
.生物と環境
(
)
.天気の変化
(
)
(
)
(
)
総時数
考える。
.お わ り に
また,
小学校複式理科のカリキュラムを,系統性や順序性が
特に重要と考える単元の組み合わせを
つのモジュール
年などのサイクルで教科書の部分改訂やそれ
に伴う教科書選定などがあり,教科書が変わるたびに複
式カリキュラムは大きな影響を受ける。
として示すことで,同じ年度内に配置し,地域性を考慮
このように様々な問題点を考慮しながら,今後,小学
して作成できるように,一覧表の形式で示した。本研究
校複式理科のカリキュラムの改善を,継続して研究して
で作成した 複式理科のカリキュラム作成の手引き
行く必要がある。
に
おける方法は,従来の教科別にそれぞれモデル案だけを
示していた方法と違い,
引用・参考文献
基本的にどの教科書でも作成可能
)北海道へき地・複式教育研究連盟
季節や地域性を考慮しても特に系統性や順序性が
必要だと思われる単元の組み合わせは崩れない
複式基底教育課程
年度に
改訂される北海道で使われている 社の教科書にあわせ
て単元を作成しており,各学校では改訂に向けて指導計
画を修正する際,大いに参考になるであろう。今後は,
このカリキュラムに案に沿った実践を積み上げ,その効
果を検証していく必要があると考えられる。
年度方式の指導計画を検証していくためには,
年間以上の期間が必要であり,また,少人数のために個
人差や,前学年までの先行知識や経験が大きく影響する。
そのため,多様な地域の複式校からデータを多数集め,
一般化を図りつつ,しかも
人の子どもが授業によって
どのように変化したかを追って行く調査も必要であると
北海道小学校
.
)北海道へき地・複式教育研究連盟
複式基底教育課程
という特徴をもつ。ここで使用した項目は
中学年 ,
高学年 ,
)教員養成基礎教養研究会
育研究 ,
,
新訂
北海道小学校
.
小学校
,教育出版
理科教