新刊書「民間大使 ガーナへ行く」に関する意見交換要旨 はじめに 12 月の

新刊書「民間大使
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ガーナへ行く」に関する意見交換要旨
はじめに
12 月の例会で突然浅井氏から新刊書「民間大使
ガーナへ行く」のプレゼントがあり、
メンバー各位強い関心をもって拝読した。メンバーの阿部氏と中村氏からはすぐに読後感
が寄せられ、新刊書紹介のページへ掲載した。幅広い国際経験を土台にガーナで体験した
ことを率直に書かれ、ガーナはもとより、日本、世界の将来の発展を願って書かれたこと
がひしひしと伝わってきて、スマイル会メンバー一同強い感銘を受けた。そして、この本
を単に読むだけではもったいない、メンバーで自由討論をしてみてはとの提案があり、早
速 1 月の例会で取り上げることとした。
予定時間を大幅に超過するほど、活発な意見交換があり非常に有意義であった。
以下に、主な論点について著書の記述順に従って簡単にまとめた。
● 特命全権大使
P16
特命全権大使として天皇陛下からの認証式に出席した浅井氏の夫君が両陛下の優しいお
人柄に接し、それまでの天皇制反対から両陛下を敬愛するようになったとのエピソードは
お人柄の率直さが現れているように感じられた。
●「ガーナでよさこい祭り」
P25
文化交流の一環として「ガーナでよさこい祭り」を立ち上げ、学生の交換プログラムな
ど、現在も継続されガーナとの交流に役立っていることは敬服に値する。
● 日本生まれのガーナ人
P54
ガーナ人になりきってガーナの発展を真剣に考える態度がガーナ人に共鳴し、すばらし
い大使生活を送ったのではないだろうか。ガーナ人の人懐こさ、陽気さ、優しさを見てい
ると人間の幸せにつて、ガーナモデルが将来見直されるのではないだろうか。日本におけ
るいじめ問題、自殺者問題、人殺し問題などを見るにつけ、江戸時代の日本人の明るい顔
と対比してしまう。
● ガーナ独立 50 周年
P65
1957 年イギリスから独立、初代大統領社会主義者エンクルマはイギリス植民地政府か
ら引き継いだ外貨準備を使って、ダム建設、インフラ整備、製造業の創設などガーナは「ア
フリカの希望の星」まで言われたが、10 年後のクーデターで倒され、ガーナの悲劇が始ま
った。ここでよく比較されるのが、独立年も同じ、緯度も同じマレーシアの繁栄である。
その差はおそらくトップのリーダーシップの差ではないかと言うのがメンバーの意見であ
った。
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国づくりに燃えるガーナ
P69
IMF や世界銀行などからの膨大な債務が免除され更に新たな援助資金を獲得し、新しい
国づくりが始まっている。しかし、これらの援助が国家のグランドデザインに基づいて行
われているか疑問がある。石器時代と最先端情報時代が同居している状況がいたるところ
で散見され、ビジョン、ミッション、戦略、戦術が調和した開発が望まれる。欧米のコン
サルタントの提案も多数あるが個別事項に特化しており植民地時代のトラウマから抜け出
せていないのではないか。
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奴隷制と植民地支配
P71
19 世紀後半まで続いたオランダなどによる奴隷売買で 2000 万人がアメリカタイ大陸な
どへ運び出されたと言う。しかも、奴隷売買の仲介に、現地人が関わっており、謝罪問題
を複雑にしている。ガーナの歴史は独立後 50 年について教えているがそれ以前については
あまり語られないのはこの辺の事情があるのかもしれない。
1874 年イギリスが植民地として統治をはじめた。イギリスの統治制度は間接統治、すな
わち現地人に統治を任せる方法で、フランスの直接統治と比較されイギリス方式の方がそ
の後の現地人との紛争が少ないと言われている。
植民地政策について、日本が行った中国、台湾、韓国などについては当初多額の投資を
行いインフラを整備してきており今日までそれらが活用されてきているのに対して、イギ
リスやフランスの方式は宗主国の利益を優先しており、その手法に大きな違いがある。
植民地は境界を自然の山や川によるのではなく、宗主国の都合が優先され、地図に直線
を引いて分断しており、それまでの歴史文化を共有する地域集団を無視している。従って、
国とは別の地域的交流が見られる。一方、国家は団結のため国家や国旗を多くの行事で使
用し、時間の経過とともに、国家の枠組みは固まりつつある。
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輸入経済に苦しむガーナ
P89
IMF や世界銀行などの援助には補助金カット、民営化、公務員削減などの条件がついて
おり、補助金カットによる灌漑農地の疲弊、市場開放による外国製品の輸入増大をもたら
し、援助が国内産業の育成に役立っておらず、援助の方法について再考が望まれる。
金鉱山からの金の輸出は植民地時代の遺産としての契約により、ガーナ政府へ入るお金
は非常に少ないが、国有化するほどの勇気はガーナ政府にはないようである。
ガーナにはアルミの原料であるボーキサイトが豊富で、その採掘と精錬事業計画が具体
化しているようであるは、アルミは電気の缶詰と言われるように精錬には大量の電力が必
要である。そこで赤道直下という太陽エネルギー利用における有利性を活用して太陽電池
による電力の確保がこの計画に、組み込まれることを望みたい。
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グローバリズムは途上国の「壁」P96
グローバリゼーションの名の下で、アメリカのエコノミストは先進国の自由主義経済理
論をガーナなどの発展途上国へ押し付けるがとうてい競争にならないことは明らかである。
グローバリゼーションは格差を拡大する弱肉強食の世界であり、新しい形の植民地経済で
はないか。ガーナの大家族の中で、政府の支援で優秀な医者が生まれると先進国へ出稼ぎ
に行き、その外貨収入で、大家族が生活する出稼ぎ経済が外貨流入に貢献してしるが、植
民地時代以来のカカオ豆の栽培と金採掘以外に外貨を獲得できる産業は育っておらず明る
い未来は見えてこない。
グローバリゼーションを江戸時代の鎖国政策と対比して考察するのも有意義と思われる。
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外務省
P101
著者は本業であった弁護士業と対比して外務省の仕事の仕方について、長期展望がない、
コスト意識がない、見栄えを重視など、再考すべき点と同時に、職員の忙しさも指摘して
いる。このような問題点は外務省に限ったことではなく日本の行政組織全体についていえ
るのではないだろうか。最近、新聞に「ロストジェネレーション」と言う連載があるが、
その中で、
「自分試しへ“霞ヶ関”に見切り」と言う記事がある。そこでは優秀な人材が次々
とスピンアウトしている状況が紹介されているが日本の行政組織に構造疲労が起きつつあ
ることを示しているのではないか。
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ガーナから日本を見て
P117
著者は日本の経済成長の原因について(1)経済活動に専念できた世界政治の幸運、(2)
国民の昼夜を忘れた働き、(3)適正な政府の政策、に加え、(4)江戸時代からの武士道精
神を受け継いだ高い倫理観や学問の尊重と普及をあげているが、まったく同感であり、こ
れらの相乗効果こそ、今後の日本の継続的発展の基礎となると考えられる。
先進国は発展途上国へ多額の援助を続けているが、発展途上国がひとり立ちできる方向
でのグランドデザインの上に、効果的な支援が望まれる。
以上