発達障害児童に対する薬物治療に関する考察

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発達障害児童に対する薬物治療に関する考察
李 文 昇
1.はじめに
近年、発達障害をもつ児童が増加している。とくに、注意欠陥多動性障害
(Attention deficit hyperactivity disorder : ADHD と略す)と診断された児童は、全児
童の 3.0 〜 7.5%にのぼる1)。その治療では、欧米諸国が薬物を中心とした治療
法であるのに比べ、我が国は薬物治療に消極的である。その主な理由は、第一
に薬物治療に用いる薬剤が主に中枢神経刺激薬であり、その乱用による副作用
や依存性を懸念しているからである。第二に ADHD の病態解析や薬物投与によ
る臨床的エビデンスの集積が十分でないこともある。ここ2、3年で我が国に
おいても治療薬が認可され、欧米諸国と同様により一層の薬物治療の普及が予
想できることから、薬物治療の是非について考察することにした。本稿は、最
初に ADHD が及ぼす社会的影響について述べ、次に医学研究の成果について、
主に公衆衛生学的調査を中心に述べる。さらに ADHD の治療法の現状を述べる。
そして最後に、薬物治療の是非について考察を述べることとした。
2.ADHD の社会的影響
ADHD は主に子どもの脳神経機能の異常に起因し、不注意、多動性、衝動性
の症状を特徴とする発達障害の1つである。
ADHD の発見における歴史的経緯は、1902 年に遡る。発見者である Still, D.
G. は小児科医で、医学的視点からこの障害についてランセット誌に論文を発表
している。その論文の中で、「そわそわして落ち着きがない、注意力の散漫な子
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どもたち」として報告し、その行動の原因が生物学的なものであると主張し、
「脳
損傷症候群」と呼んだ。しかし、彼は、障害を引き起こす生物学的マーカーを
特定することができず、その問題は解決されずに今日に至っている。1937 年に
アメリカの Bradley, C. は偶然にも中枢神経刺激薬であるアンフェタミンを多動
性の行動をもつ子どもに投与することにより、その症状が緩和されることを発
見した。1950 年代から 60 年代になるとアンフェタミンの類似薬である塩酸メチ
ルフェニデート(MPH と略す)が多動性をもつ子ども達に投与され、障害を特定
する強力な手段となり、この障害が生物学的原因であるという考え方を生み出
した。1972 年には、Douglas, V. I. が注意力を測定する検査を行うことにより、
多動性のある子どもが注意不足で健常児に比べ学力が統計的に有意に低いこと
を報告した。これらの報告がきっかけとなり、1980 年に米国精神医学会は、「精
神疾患の診断・統計マニユアル第3版(DSM-Ⅲ)」のなかに注意欠陥障害(ADD)
を1つの子どもの障害として位置付けることになった。なお、今日において
DSM-Ⅳは注意欠陥と多動性をもつ症状を一括して ADHD と命名し、生物学的
原因をもつ精神障害として国際的な診断基準書に記載することになった2)。
我が国では、ADHD の障害名が社会的に大きく注目されるに至った背景とし
て2つの出来事がある。その1つが 1997 年 11 月におきた神戸連続児童殺傷事
件で、この事件は社会に対して ADHD が犯罪と結び付くような印象を強く与え
ている。もう1つは、教育の現場で 90 年代から社会問題として急浮上した「学
級崩壊」がある。学級崩壊は我が国の教育の崩壊と連想され、将来の日本の大
きな不安材料となった。その後の調査から神戸連続児童殺傷事件を起こした少
年は ADHD ではないと判明したが、幼児期に発症する発達障害に関する研究の
重要性を再認識することになった。また、多くの教育関係者は、学級崩壊が起
こる原因の1つとして ADHD 児との関連性は否定できないとしている。
発達障害児を診療している精神科医の司馬は、「のび太・ジャイアン症候群友
の会」のアンケート調査において、次のような結果を紹介している3)。例えば、
発症時期を推測するための質問である「問題が起き始めた時期」では、①乳幼
児期(40%)、②幼稚園・保育園(30%)、③小学1−2年(20%)、④小学3−4
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年(10%)の回答がみられる。これは、発症の多くが乳幼児期から幼稚園、保育
園の時期であることを示している。この障害の症状について聞く質問「乳幼児
期の問題点」では、①動きが活発(58%)、②寝かせるのが難しい(36%)、③か
んの強い子(34%)などの回答がみられる。「家庭での様子」は、①楽しく過ご
している(48%)、②興奮しやすい(44%)、③かんしゃくを起こす(42%)、④反
抗的である(33%)、⑤いらいらしている(21%)、⑥暴力をふるう(12%)などの
回答がみられた。このように、ADHD をもつ子どもの症状の特徴、発症時期、
そして社会適合性の欠如などを伺い知ることができる。
この障害児をもつ保護者が一番懸念していることについての質問「現在一番
困っている問題」では、①授業についていけない(38%)、②日常生活がうまく
できない(36%)、③友達ができない(27%)、④学校で授業の妨害をする(24%)、
などが上位の回答であった。子どもの成長過程における社会への適応性につい
ての質問「幼稚園への適応」では、①友達とうまく遊べなかった(42%)、②集
団行動ができなかった(40%)、③なじむのに苦労した(35%)などの回答がみら
れた。さらに、学習障害への懸念についての質問「小学校での様子」では、①
集中できない(75%)、②課題にとりかかるのに時間がかかる(72%)、③忘れ物
が多い(72%)、④いつも机の周りがきたない(65%)、⑤宿題をやらない、いや
いややる(62%)などの回答がみられ、「中学校での様子」では、①授業に集中
できない(80%)、②定期試験のための試験をしない(30%)、③授業についてい
けない(22%)、などの回答がみられた。このような調査結果からも ADHD 児の
もつ社会的適応性の欠如が学級崩壊の原因の1つであると推測できる。
さらに、司馬は自らの調査を踏まえ、この障害が反抗挑戦障害(大人に対する
拒絶的、反抗的、挑戦的な行動:同じ年代の子どもに比べ ADHD 児に顕著に見られる)
や行為障害(他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または規則を侵害す
ることを反復し、それを持続させる行動障害で、人や動物に対する攻撃、所有物の破壊、
うそをつくこと、窃盗、重大な規則違反を起こす)が合併することを指摘し、その割
合は ADHD 児の約半数になると述べている。
なお、最近の報告である世界9カ国の保護者と医師を対象にした調査におい
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て、ADHD 児をもつ保護者は、「ADHD 児が成長していく過程で最も心配して
いること」に関して、「基本的な日常生活が難しい」と答えた人は、最も多く
62%を示し、「自尊心を育てられない」が 49%、「自分自身をコントロールでき
ない」が 45%、などの回答を得ている4)。この調査は複数回答であるが、この
障害児に対する保護者の不安を表した回答とうかがえる。
その他、ADHD が社会に及ぼす影響について、公衆衛生学的調査を重視した
報告がある。例えば、ADHD 児の事故遭遇率は健常児に対して約3倍高いこと
や5)、思春期に入ると薬物濫用に陥りやすい傾向が強いことや6)、うつ病発症
や自殺経験が多くなること7)、あるいは刑事司法制度に抵触する可能性は、健
常児に比べ約5倍も高くなる8)、などの報告がある。さらに、ADHD 児が成人
する過程で、喫煙、カフェイン中毒、十代の妊娠、貧しい食生活など、健康に
有害な行動の発生率は高く、寿命の短縮による社会的、経済的な損失は莫大な
ものになるとの報告9)があり、この障害の社会へ及ぼす影響の大きさを示して
いる。
ADHD 児の増加は、将来において自尊心、協調性や社会的適合性を欠いた人
間社会へと変化する可能性も暗示しているのである。なお、オーストラリア厚
生省は、社会的弱者を対象とした予防戦略として発達異常者の早期発見と予防
を目的として「ハイリスク・インファント」計画を実施している 10)。
3.ADHD の医学研究
(1)有病率
学童期におけるこの障害の有病率は、1994 年の米国精神学会の調査から3〜
5%と推定されている。その有病数は有病率から計算すると、ADHD 児は約
350 万人になる。男女の比率は男性よりも女性の方が少なく、その割合は6対1
である。成人の有病率は2〜4%であり、約3分の2が大人になっても症状を
持ち続けている。なお、1998 年の調査であるが、有病率 20%と推定している調
査もある2)。
日本の有病率を示す調査として、新潟市内で実施したものがある 11)。この調
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査は3歳から5歳児の就学前の保育園児と幼稚園児を対象に行ったもので、調
査方法は ADHD 診断マニュアル DSM- Ⅳに従っている。その結果では、有病率
は、3歳児 3223 人中 181(5.6%)、4歳児 3333 人中 147(4.5%)、5歳児 3400 人
中 101(3.0%)で、男女比は、3歳児で男(8.8%)女(2.1%)、4歳児で男(7.4%)
女(1.4%)、5歳児で男(4.9%)女(1.0%)であった。この障害の有病率は3歳児
における 5.6%が最も高い数値である。また、保育園児と幼稚園児を比較した有
病率は、3歳児で保育園児(7.1%)幼稚園児(3.4%)、4歳児で保育園児(6.3%)
幼稚園児(1.8%)、5歳児で保育園児(3.8%)幼稚園児(1.8%)であり、有意に保
育園児の有病率が幼稚園児に比べ高い数値を示している。
(2)障害を引き起こすリスク要因
ADHD を引き起こすリスク要因として公衆衛生学的研究から数多くの報告を
みることができ、遺伝やその他の生物学的、社会的要因などの関与が考えられ
ている。
1)遺伝の関与
ADHD の発症ではじめに疑われたのは親から子どもへと伝わる遺伝であった。
Sherman, D. K. らは、双生児研究から ADHD の遺伝率は 0.6 から 0.9 の範囲に
あると示唆した 12)。Faraone, S. V. らは、アメリカ、オーストラリアおよびヨー
ロッパで行った 20 例の双生児研究をもとに、平均遺伝率の推定値を 76%である
と報告している 13)。これらの結果からこの障害の発症におけるリスク要因とし
て遺伝子が重要な役割を担っていると考えられている。一方、双生児研究の遺
伝率の結果だけでは発症原因のすべてを説明することはできないとして、その
他の生物学的リスク、生活や社会的リスクなどの環境要因の関与についても研
究が実施されている。
2)生物学的リスク
喫煙はこの障害の発生のリスク要因の1つと考えられている。これは、妊婦
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の日常的な喫煙行為によって、生まれてくる子どもの脳神経に悪影響を与える
というものである 14)。つまり、分子遺伝学的研究によって ADHD 発症のリスク
要因としてドパミントランスポーター(DAT と略す)、ドパミン受容体 D4、D5
(DRD4 および DRD5 と略す)およびドパミン β 水酸化酵素(DBH と略す)、さらに
セロトニントランスポーター(5-HTT と略す)、セロトニン受容体1B(5-HTR1B
と略す)などの関連遺伝子が確認されているが、これら遺伝リスクに喫煙などの
環境因子を加えると発症リスクは飛躍的に高くなるのである 13)。
我が国でも母親の喫煙が胎児に悪影響を及ぼすことを推測できる調査結果が
ある。この調査は、ADHD をもつ子ども 600 人以上を治療している精神科医の
安原が実施したもので、患児をもつ母親 167 人(平均年齢 39.1 歳、出産の年齢 29.0 歳、
患児の平均年齢 10.4 歳) を対象に喫煙歴などを無記名アンケート方式で行ったも
のである。その結果は、ADHD と診断された子どもをもつ母親の喫煙率が
46.7%(一般の出生児を対象にした厚生労働省調査では母親の喫煙率は 17.4%)、妊娠中
の喫煙率が 34.7%と、明らかに厚生労働省調査の母親の喫煙率に比べ高値を示
している。安原は、この結果をもとに遺伝要因のほかに環境因子としての妊婦
の喫煙がこの障害の発症に関係することを示唆している 15)。妊婦の喫煙は胎児
の脳神経系に存在するドパミンやセロトニンなどの分泌を司る神経系の機能不
全を引き起こした可能性が高いと考えられる。
飲食物や化学物質の摂取と ADHD の関連性について大規模レベルで実施した
調査報告も有用なエビデンスと考えられる。ノルウェー政府は、5000 人以上の
規模で砂糖など甘味料の摂取と発症の関連性について詳細な調査を行っている。
その結果は、甘味料の多いソフトドリンクの摂取量に依存して発症率が高くな
るという結果を示している 16)。イギリス政府は、合成着色料や合成保存料と
ADHD 発症の関連性について調査を行っている 17)。合成着色料と保存料を除い
た食事を用いた二重盲検法による比較試験では 70 〜 80%以上の ADHD をもつ
子どもの症状が改善したとし、これら着色料や保存料の摂取は ADHD の発症に
関与すると結論付けている。その後、2007 年 11 月に政府は、合成着色料(赤色
4号、赤色 102 号、黄色4号、黄色5号、キノリン・イエロー、カルモイシンなどタール
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色素)の入った食品が ADHD を引き起こす可能性が高いと判断し、使用規制を
行っている 18)。
我が国でも興味深い研究結果がある。それは、環境化学物質の脳神経に及ぼ
す影響について研究している黒田らの研究であるが、食用油に混入したポリ塩
化ビフェニール、ジベンゾフランが原因となった台湾の油症事件を通して汚染
されて生まれた子どもの IQ(知能指数) が健常児に比べ有意に低いことや、
ADHD 児のなかで甲状腺に異常をもつ子どもの割合が健常児に比べ約5倍も高
い値を示すことなどから、この障害の発症におけるリスク要因の1つとして内
分泌撹乱化学物質を挙げている 19)。
その他の生物学的リスクとしては、体内への鉛の蓄積、頭部外傷、妊娠中、
周産期、出産後の合併症との関連性も指摘されている2)。
ゲーム依存性が ADHD の発症に関与する可能性を示唆する報告も興味深い。
岡田は、中学生・約 2400 人を対象にゲームの時間数と多動性や衝動性の発現に
ついて調べ、以下の結果を示している。具体的には、ゲームをしていないグルー
プは多動性を指標としたスコア値が平均 1.45 に対して1日4時間以上ゲームを
するグループのスコア値が平均 1.75 で、その P 値(有意確率)は 0.0002 であった。
また、小学校低学年時のゲーム時間と衝動性(指標は、あまり考えずに危険な行動
をする)についての検討は、ゲームをしないグループの衝動性が8%に対して3
時間以上するグループは 38%(中学生本人回答、N = 638 人)であった。この結果は、
小学校低学年時にゲーム時間が長かった人は、多動性や衝動性の発現を増加さ
せ、ADHD の症状が引き起こされる可能性が高いことを示した 20)。
さらに、岡田の研究成績を支持するものとして森の研究成果がある。これは、
テレビゲーム時間と集中性との関連性について脳波を測定したものであるが、
幼児期あるいは小学校の低学年からテレビゲームを長時間する人では、前頭前
野からの β 波の出現数が低下するのである。一般に、β 波はストレス波ともい
われ、日常仕事をしている時とか緊張している時に出てくる波長で、β 波の出
現数の減少はニューロン活動が著しく低下している状態を表している。この現
象は物忘れやもの覚えが悪くなったり、集中力が低下する原因とも考えられて
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いる。さらに、彼は、このようなゲーム脳タイプ人間(週4回以上、1日2〜3時間、
10 年以上ゲームをする人) は激情を抑制する前頭前野の活動が低下していて、約
80%の人がよくキレやすいと報告している 21)。
3)社会的リスク
社会状況の急激な変化が、子どもの注意行動などに影響を及ぼすとする研究
報告がある。つまり、リスクとなる原因はライフスタイルの変化、家庭崩壊の
進行、社会構造の変化などであるが、とくに経済的に弱い階層の家庭の子ども
に ADHD と診断される傾向がある 22)。Barkley, R. A. は、この障害の症状をも
つ集団が受け入れざるをえない生活環境や教育的恩恵の低さなどの複数の要因
によって、患者が増加するのではないかと懸念している 23)。これらの報告は、
先に示した新潟市内で行った ADHD の有病率の調査で保育園児の有病率が幼稚
園児に比べ高かったという結果とも一致し、社会的リスクの重要性が示唆され
る。
(3)発症のメカニズム
この障害を引き起こすメカニズムについては未だに不明な点が多いが、脳内
の神経伝達物質の欠乏により発症すると考えられている 24)。米国国立精神保健
研究所は、1990 年代前半において ADHD の病因が家庭環境に起因するものでは
なく、生物学的原因であることを明示している。それ以来、この障害は本格的
な医学研究の対象となっている。
生理・解剖学の研究からこの障害の病態は、次のような生物学的現象を示し
ている。例えば、脳波を測定することによって ADHD 児では、暦年齢に比較し
て著しく未熟で不規則な波形が出現する。その他、周波数は遅く、振幅の大き
な徐波の混入やてんかん患者の脳波に似た棘波や突発波を確認することがしば
しばある。陽電子放射断層撮影装置(PET)を用いた血流量の測定では、この障
害児の前頭葉の血流量は健常児に比べて有意に減少し 25)、線条体および脳室周
囲領域の後部においても血流量が減少している 26)。磁気共鳴画像装置(MRI)の
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測定では、一般に脳の容量は年齢とともに増加するが、ADHD 児の脳容量は健
常児に比べて3〜5%減少している 27)。また、知覚や認知を司り、2つの大脳
を統合する役割を担う脳梁に関して、ADHD 児の脳梁前部の容量は健常児に比
べ低いとされる 28)。また、右ないし両側の前頭葉にも形態異常が見られる 29)。
多動症状の出現に関与する線条体では、その尾状核に容量の減少が認められて
いる 30)。その他、運動のコントロールや反応の抑制、行為の遂行を司る小脳では、
健常児に比べ ADHD 児の両側の小脳半球が小さいことを確認している 31)。
ADHD 発症におけるメカニズムの解明は当初、生理学、薬理学的手法を用い
て経験的な臨床データの蓄積により進んできた。それは、1937 年の Bradley, C. が
多動の症状をもつ患者にアンフェタミンの投与から始まっている。その後、類
似化合物の MPH が 1944 年に合成され、動物実験や臨床試験を経てドイツの製
薬会社が製造発売するようになった。
この薬剤の作用機序はアンフェタミンと同様に、脳内のシナプス前部でドパ
ミンやノルアドレナリンなどのモノアミン類の放出を促進することにより、前
述したモノアミン類の濃度を脳内シナプス間で上昇させ、脳神経の活性化を引
き起こすと考えられている。従って MPH の薬理作用から ADHD の発症のメカ
ニズムは、脳内のシナプス前部におけるドパミンやノルアドレナリン濃度の低
下によるものと考えられた。その後の薬理学的研究では、この薬剤が DAT とノ
ルアドレナリントランスポーター(NAT と略す)に結合して、モノアミンの再取
り込みを阻害し、シナプス間隙におけるモノアミン濃度を上昇させることが解っ
た。MPH は DAT に対する親和性が NET への親和性よりも著しく高く、ドパ
ミン選択的作用を有することが確認された。このような作用から MPH を服用す
ると健常人には劣るものの ADHD 患児でも線条体のドパミンが増加し、不注意
症状が改善すると考えられた。なお、この患児では皮質下のドパミン神経活性
が低いことや、線条体におけるドパミン神経活性と不注意症状との間に有意な
負の相関があることも認められている 32)。
分子遺伝学の研究では ADHD 関連遺伝子としてカテコールアミン系とセロト
ニン系の関与が強く示唆されている。この障害の発症においてカテコールアミ
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ン系のなかで最も有力視されているのが、DRD4 と DAT の関連遺伝子である。
DRD4 の遺伝子に変異が生じるとドパミンに対する感受性が失われ、反対に
DAT の遺伝子が変異することにより非常に効率的な DAT ができあがり、ドパ
ミンの再取り込を行う。Faraone, S. V. らは、ADHD ではドパミンが結合する
DRD4 の発現に関わる DRD4-7 回反復対立遺伝子が存在し、この遺伝子が大脳
皮質、扁桃体、視床下部、海馬、下垂体および大脳基底核に広く分布し、この
病態に関与していることを示唆している 33)。Muglia, P. らは、成人症例でも
DRD4-7 回反復対立遺伝子の関与を見出している。このことは、主に小児の障
害ではある ADHD が 22 から 33%の割合で成人になっても持続することを意味
している 34)。
先にも述べたが、この発症には DAT の関与は大きい。DAT は原形質膜に存
在し、細胞外のスペースからドパミンを取除く働きをもち、ドパミンの細胞内
濃度を調節する役割を担っている。この関連遺伝子は、DAT-10 回反復対立遺
伝子であるが、ADHD では健常児に比べ、この関連遺伝子が存在し、ドパミン
の伝達異常に強く関与していると考えられている 35)。その他、DRD5 の関連遺
伝子である 148-bp 対立遺伝子 36)、DBH の Taq1-A 遺伝子多型などもこの発症
に関与している 35)。
発症のメカニズムに関与すると考えられるセロトニン系では、トランスポー
ターの 5-HTT、受容体の HTR1B の関連遺伝子が注目されている。とくに、衝
動性との関係で 5-HTT は転写調節部位にある遺伝子多型で、高い転写活性をも
つ L 型対立遺伝子(5-HTTLPR) の発現が見出されている 37)。また、5-HTR1B
では G 型対立遺伝子の発現も確認されている 38)。なお、うつ病の治療薬として
用いられているセロトニン再取込み阻害薬が ADHD 患者に有効性を持つことか
ら上記の遺伝子の関与が裏付けられる。その他、ノルアドレナリン再取込み阻
害薬 atomoxetine の有効性も認められている 39)。
ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどのモノアミン類は、情動など
の高次の神経機能に関与し、これらモノアミン拮抗薬あるいは再取り込阻害薬
は、統合失調症の治療薬やうつ症状を改善する抗うつ薬として使用されている。
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4.治療法の現状
(1)診断の実際
診断と治療はアメリカの診断基準(DSM-Ⅳ)および世界保健機構の診断基準
(ICD-10)に準じて行っている。一般に、精神疾患の特定は脳の画像診断や血液
検査などの生物学的な指標があることはまれで、診断は主に問診と精神症状の
評価に基づいて行う。つまり、病名の特定は受診した患者や家族からの主訴(受
診動機)から、生育歴、生活歴、既往歴、家族歴、現病歴などの問診、精神症状、
身体症状などの診察、知能検査および心理テストなどから決定している 40)。
この障害の症状は主に、注意を集中することができない、何かの外的刺激で
容易に気が散り、ひとつの課題を最後までやり遂げることが難しい、ミスが多い、
などの注意欠陥の症状が顕著である。また、過剰に走り回ったり、授業中に自
分の席を離れたり、じっとしていることができない、といった多動の症状が出
る場合も多い。さらに、突発的に不規則な行動が多く、考えずに行動する、しゃ
べりすぎる、他人を邪魔する、妨害する、大人に対して反抗的、規則に従わない、
などの衝動性の症状も出ることから、これらの症状の有無が問われる。また、
他の精神障害と区別するため前述のガイドラインに従って診断、検査を行って
いる。
なお、川谷らは、臨床診断基準に従ってはじめ ADHD と診断した患児におい
て、その後、加齢に伴い約 33%の割合で広汎性発達障害(PDD と略す)と診断変
更をしたことを報告し、ADHD と PDD の鑑別には乳幼児期異常行動歴の綿密
な聴取が有用と述べている 41)。なお、PDD は、心理的発達の障害で、多動のほ
か幼児期に言語発達、コミュニケーション能力の遅滞が顕著である。
(2)我が国の薬物治療の実際
我が国では ADHD の治療法として心理療法と薬物治療を併用するケースが多
い。治療薬としては、MPH を使用しているものの、欧米に比べ使用に制限がある。
何故ならば、この薬剤は使用規制が厳しく、2007 年 10 月まで ADHD に使用す
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ることは保険外適応の管理下にあった。なお、当時、この薬剤の保険適応は軽
度のうつ病とナルコレプシー(睡眠障害)に限られていた。
MPH の小児科における適応と使用基準は、①年齢は原則として6歳以上、②
適応の重症度は症状に全般的尺度を設け、その尺度の 50 よりも重度の大きい患
者に投与する、③投与開始量は6〜 10 歳では1日5mg、10 歳以上では1日
10 mg を投与し、投与方法は朝食後1回あるいは朝食後と昼食後の2回投与で
ある、④留意事項は、夕方以降の投与は避け、学校休日は休薬する、⑤選択基
準は ADHD と診断され、中等症以上の症例に行うことが原則である、となって
いる。軽症例では精神療法などで無効であった症例および重症で依存障害がな
い症例が投与の対象になっている。診断基準を満たしていないが ADHD の傾向
のある症例の場合は、薬物療法を始める前に社会心理療法を行うことが有用で
あるとしている。
その他の治療薬は症状に合わせて抗うつ薬のイミプラミンなどが注意力や集
中力を改善することから使用される場合もある。ADHD とてんかんを合併して
いる症例は抗てんかん薬のカルマセピンなどを使用する。多動や衝動性が激し
い症例に対してはハロペリドールなどの抗精神病薬を用いる。また、MPH 無効
例、あるいは薬物依存性をもつ患者あるいは思春期以降 MPH 投与を終了した症
例については抗精神病薬を使用する場合もある 40)。
なお、MPH 徐放剤が 2007 年 12 月に薬価収載した。この薬剤の用法・用量は、
小児6歳以上 13 歳未満で、本剤として 18 mg を初回用量とし、18 〜4mg を持
続用量とし、1日 1 回朝に経口投与する。増量が必要な場合は、1週間以上の
間隔をあけて1日用量9mg または1mg の増量を行う。なお、症状により適時
増減する。ただし、1日用量は 54 mg を超えないとされる 42)。ただし、MPH
徐放剤の剤型は錠剤のみで投与量の体重換算による調節は難しい。
(3)MPH 使用に関する経緯と動向
欧米諸国の臨床研究から ADHD の治療には薬物治療が不可欠で、MPH が第
一選択薬として使用されている。例えば、アメリカでは 1970 年以降、この薬剤
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の治療効果について数多くの臨床試験が行われた。その多くは短期的投与によ
る効果の成績であるが、ADHD をもつ子どもたちは激的な症状の改善をみてい
る。これは、その患児の親、教師、その他患児との関係をもつ関係者が、MPH
の有効性を認めたものである。さらに、投与を受けて改善した子どもたちは、
より積極的に周囲からの援助を受け入れて社会面、学習面での適応能力を向上
させている 43)。
このような薬物治療の実績をもつアメリカでは、1990 年後半には MPH など
中枢神経刺激薬を処方している子どもの数は約 500 万人に及んでいる。また、
イギリスにおいても 1999 年の時点で MPH と記載した処方箋の数は 15 万 8000
枚に上り、その後も増加傾向にある 44)。
一方、我が国においては MPH が中枢神経刺激薬に類して薬物依存や濫用を懸
念する理由から使用を規制している。厚生労働省は 2007 年 10 月 26 日、これま
でこの薬剤が難治性および遅延性うつ病、ナルコレプシーに対して適応となっ
ていたものをナルコレピシーのみとし、ADHD については保険外適応として管
理した。時期は少し遡るが、この年の 10 月 17 日、日本小児精神学会、日本小
児心身学会、日本小児精神神経学会の3学会は、厚生労働省医薬食品審査管理
課あてに、
「小児における注意欠陥 / 多動性障害の治療に対する見解とメチルフェ
ニデート徐放剤承認について」の要望書を提出している。その内容は、ADHD
が小児に発症し、家族や学校で学業のみならず社会生活に著しい支障をきたす
発達障害であり、適切な治療や支援を必要とするとして、早期に治療薬の承認
をすることを要望している。加えて「本薬剤が ADHD の適応になることで予測
される効果は、早期に病態の特徴が確認でき、予後も良好であり、薬物依存性
や中毒に対しても予防効果があるとし、社会的利益は大きい」と述べている 45)。
その後、MPH 徐放薬が認可され、ADHD の子どもに使用されるに到っている。
5.薬物治療の是非に関する考察
欧米では ADHD に対する治療は、古くからアンフェタミンや MPH などの中
枢神経刺激薬を使用していた。これら薬剤は、服用による爽快感や多幸感が得
214
(74)
られ、食欲抑制作用も有することから、「やせ薬」として使用されてきた経緯も
ある。また、アメリカでは、これら薬剤が注意力向上や学習改善といった効果
があることから精神機能増強剤としても使用されている。さらに、時代を遡れば、
第二次世界大戦を戦う兵士の覚醒状態の持続、勇気の鼓舞のためにも使用され
た 46)。
アメリカでは ADHD の治療の第一選択薬として MPH を使用しているが、
その理由はアンフェタミンに比べ副作用が少なく依存性も低いことにあるが、
中枢神経刺激薬で最も重要な問題は、薬物依存である。薬物依存は薬物乱用に
つながり薬物依存へ移行する割合も高くなるのである。思春期以降の ADHD 患
者群では加齢に伴い乱用のリスクが健常者より高くなるという報告がある 47)。
なお、安易に薬物を使用する傾向があるため MPH の副作用による死亡例があ
る。例えば、FDA(アメリカ食品医薬品局) の調査では、1990 年から 2000 年の
10 年間に 186 人の死亡が確認され、1999 年から 2003 年の4年間での心血管系
イベント(高血圧、心筋梗塞、脳卒中)で死亡した数の報告では、アンフェタミン
製剤が 24 例、MPH が 16 例、その他を含めて合計死亡数は 51 例であった 48)。
その他の副作用として、不眠、食欲不振、不安増大、神経過敏、頭痛、成長
抑制などがある。また、ラットを用いた長期投与試験の結果は報酬系神経回路
に関連した異常行動であり、神経に可塑的変化を生じている可能性が示唆され
ている 39)。人においては認知機能に対して同様の影響があるかは不明であるが、
アンフェタミンと同様に長期間服用によるドパミン神経系が恒久的に損傷を受
ける可能性もある。
また、遺伝子への影響、発がん性に関しては、Selby, J. V. らは、143,574 人の
医療記録に基づいた調査において MPH によって癌罹患率は増加がなったと報告
している 49)。2005 年に El-Zein, R. A. らは、12 人の小児に標準的な量を3カ月
間投与したところ、全員に染色体の変異があったが、小規模な試験であったため、
有意差が認められなかったと報告している 50)。
我が国において MPH 徐放剤が ADHD の治療薬として承認、使用可能になっ
た。しかし、この薬剤の臨床試験における有効性のデータはあるが、臨床現場
213
発達障害児童に対する薬物治療に関する考察
(75)
における ADHD 児に対する有用性の確認はこれからの課題である。とくに、こ
の障害は多動性、衝動性あるいは注意欠陥という3つの症状をもつ障害である。
これらの理由から薬物治療による症状管理の難易度は高いと思われる。また、
前述した副作用の発生について今後も追跡調査する必要がある。なお、使用す
る薬剤は非向精神薬で、非中枢神経刺激性のものが望ましい。
公衆衛生学的調査の結果により、ADHD 発症のリスクは遺伝要因および環境
要因がある。環境要因は種々の生物学的、社会的なリスクなど複数存在する。
生物学的リスクは、妊婦の喫煙、合成着色料、保存料の摂取、テレビゲームの
長期使用であり、社会的リスクは社会構造の急激な変化、家庭崩壊、経済的貧
困層があると考えられる。ADHD 児の増加を抑止するためには、我が国におい
ても適切な公衆衛生学的調査を実施し、その原因となるリスク要因の管理を行
うことが最も重要と考える。
そうした調査には、我が国でも定着してきたバイオエシックスに基づく観点
も重視する必要があると考えられる。とくにインフォームド・コンセント(十分
な説明のもとで納得したならば同意する) の考え方は不可欠である。調査そのもの
がその概念に基づき実施されることはもとより、調査結果の発表に関してもそ
の概念を意識していくことが望まれる。そのほか透明性を確保することや、偏
見を招かないようにするための自己決定権の尊重などを指摘することができる。
調査に平行して、発達障害児への治療が進み、患児の改善と発症リスクの軽減
化を念願するものである。
謝辞
本論文をまとめるにあたり貴重なアドバイスを頂きました生命倫理プロジェ
クトチームの木暮信一氏(東洋哲学研究所・研究員)に深謝致します。
212
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Bunshou Lee
Hereditary determinants and environmental/habitant factors have been suggested to be
linked to the cause of risk for attention deficit hyperactivity disorder (ADHD). Public
health studies showed that those factors include smoking, ingesting artificial colorants
and synthetic preservatives, playing video games for a long time, dysfunctional family
structure, and economic hardship. It is important to do a precise diagnosis and to choose
an appropriate medicine for ADHD treatment. In addition, a large number of pediatric
psychiatrists with a great store of knowledge as well as much practical experience should
be fostered in our country. Furthermore, it is necessary to suppress the specific risks
revealed by biological as well as sociological studies. The obtained results will lead to
reduction in ADHD patients. With these clinical practices and basic medical sciences,
bioethical viewpoints will benefit ADHD patients, because they provide some standards
based on essential concepts such as “informed consent,” “dignity of life” or “protection
of autonomy.”
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