Ⅱ.マーケティングシナリオの構築

Ⅱ.マーケティングシナリオの構築
1.自社のマーケティング戦略の明確化
(企業の座標軸を明確にする)
中小企業のマーケティングの基本は
“選択と集中”です。
マーケティング戦略のイメージ(図3)
を見て下さい。自社商品
やサービスが売れるⅠ∼ⅩⅤまでの市場があるとしますよね。限られた経営資源しかないから、
これをA社みたいに集中で
きると最大の成果が見込めそうですね。C社みたいになると大変!営業マンや広告宣伝が全く的はずれで動いています。
グローバルシステムさんの商品分類別分析表(表3)
を拝見すると、ホームページ作成で創業されたみたいですけど、勘定
系と情報系、人事系のお客様が20.2%の件数で、売上総利益の80%を稼いでいますね。
じゃあ、
これに経営資源が集中さ
れているかどうかが、重要ですね。
図3.マーケティング戦略のイメージ
市場(参入しようとしているお客様が存在するところ)
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
A社
Ⅶ
Ⅷ
Ⅸ
Ⅹ
ⅩⅠ
ⅩⅡ
ⅩⅢ
ⅩⅣ
ⅩⅤ
B社
市場を
細分化
経営資源
の分散
選択と集中
時
間
C社
軸
マーケティング
の間違い
人材
商品
企業体力度指数
資金
(総資本経常利益率×自己資本比率)
グローバルシステムさんの特長やNo.1・オンリーワンポイントを押さえておくことが大事ですよ。つまり、他社にない
点、他社に比べて優れている点、将来に向かってプラスに転じる点です。
でも、貴社は大筋、基幹系に強いことが読めますね。
それに携帯電話を活用したWeb系のノウハウがあるようですね。
表3.商品分類別分析表
(単位:件、千円)
お客様件数 累計構成比
商
品
・
サ
ー
ビ
ス
勘定系
14
8.6%
97,000
33.4%
情報系
12
16.0%
80,000
61.0%
人事系
7
20.2%
55,000
80.0%
5
23.3%
20,000
86.9%
ページ
70
66.3%
18,000
93.1%
セキュリティ
5
69.3%
10,000
96.6%
50
100.0%
10,000
100.0%
163
−
290,000
−
Web系
ホーム
その他
合
28
計
100%
パレートグラフ
売上総利益累計
売上総利益 累計構成比
80%
重点・集中・
徹底戦略
勘
定
系
情
報
系
人
事
系
W
e
b
保
守
件数
成長を目指す従業員30名迄の中小企業経営者のための 経営
“強化”書
Ⅱ.マーケティングシナリオの構築
2.戦略的な事業計画策定ステップ
NO.1の串刺し戦略ってご存知ですか?私は、別名、
“団子3兄弟”戦略とも
自社の経営資源を集
言ってるんですが、攻める細分化された市場に対して、
中させ、その市場でNo.1やオンリーワンの地位を得る。それを3つ持つと
いうことでね、事業のリスク対応戦略でもあるんです。グローバルシステムさ
んは、対象市場のスキマ分析表(表4)
の通り不動産、学校、病院に強いですね。
成長ベクトルの図をみて下さい。今の既存のルートにWeb系の商品化を急
げば、市場のスキマがより埋まって NO.1の串刺し戦略が組める可能性があり
ますね。
これは事業計画策定の大きなステップですよ。 表4.対象市場のスキマ分析表
不動産 学
商
品
・
サ
ー
ビ
ス
校病
市 場
院 量 販 店 専 門 店 ・・・ ・・・
勘定系
情報系
人事系
W e b
系
保 守
セキュリテ
成長
ベクトル
商
品
市場(お客様)
既 存
新 規
既
存
既 存
深 耕
新 規
開 拓
新
規
商 品
開 発
新 規
事 業
対象とする市場を見る視点は大体、次の切り口が参考になるでしょう。
① 地 域・市 場・・
・自社の立地と地場のエリア特性⇒市場調査
② 業
業界全体の市場動向⇒
界・・・
業界情報(但し、
“業界”意識が固定概念化の懸念あり)
③ 得意先・顧客・・・販売先や仕入先の評価と選択⇒信用調査
④ ラ イ バ ル・・・競合他社の特長と最近の動き⇒ライバル調査、定点観測
消費者、
エンドユーザーのニーズ⇒CS・アンケート調査、
⑤ 顧 客 ニ ー ズ・・・
モニター実施、展示会出展、定点観測、先進地視察
新規事業を
行うには
特に、
ノウハウや
能力を持った
人材が必要
⑥ 社 会 動 向・・・人口構造、地域の動向
いずれにしても、
マーケティングとは、
“需要の創造”
とも言うし、
勝てる場に、
自社の強みをぶつけることとも言いますよ。次の視点で貴社を徹底分析され
るといいですね。
とにかく、
“仕事待ち”体質じゃだめですよ。
価格決定権もないし。
①技術・・・自社の固有技術・ノウハウ、資格などを明確にする
②商品・・・ライフサイクル分析、PPM分析などにより商品構成を検討する
③顧客・・・主要顧客の業績と自社に対するロイヤルティを評価する
(ABC分析など)
④資産・・・立地や設備、信用やブランド、免許、特許などの有形・無形のものを評価
⑤人材・・・ヤル気、能力、技術、資格、社風や年齢層などを踏まえた量と質で評価
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Ⅱ.マーケティングシナリオの構築
選択と集中の考え方が明確になれば、今度は提供する商品やサービスの
「価値」
をしっかりと高めて行きましょうね。
ち
「価値」の方程式にある項目のどれを研ぎ澄ますかががポイントで、それが価格に見合っているかという意味で、
なみに、
価格決定が一番難しいですよね。それと、提供する人材と品質が悪いと、商品が良くてもダメになる恐れがありますよ。
(スピード)
+(デリバリー)
+(“不”問題解決力)+(ライフスタイル対応)
価値=
×人材×品質
価 格
ちなみに、
“不”
というのは、不安・不満・不快・不測・不足など市場が抱える問題点で、業態的な視点ですね。それを解決で
きる商品や技術、サービスであるかどうか・
・・が大事。
例 え ば 、グロー バ ルシステムさん だと、
B2Bビジネスだから、情報系のデータ閲覧や
×
×
受発注情報を携帯電話で操作できるように
すると、出張の多い経営者や営業マンとかは
手間が省けてコストダウンになりますよ。お
客様の利益が高まることを念頭において、
提案してみることが大事ですね。
それから、事業計画策定で売上の創り方は次の図を参考にして下さい。
数量(客数) ×
平均単価
×
買上頻度
=
50%上げる
ような無理は
長続きしません。
売上 (マーケティング)
(セールス)
(顧客管理・CRM)
100
×
500,000
×
2
=
100,000,000円・・
・①
150
×
500,000
×
2
=
150,000,000円・・・②
100
×
750,000
×
2
=
150,000,000円・・・③
100
×
500,000
×
3
=
150,000,000円・・・④
115
×
575,000
×
2.3
=
152,087,500円・・・⑤
今、①のケースをベースにして、平均単価を50%増し
(「②」のケース)
で考えておられるようですが、
これは長続きしない
と思いますよ。
「③」のケースは平均単価を50%増し、
「④」のケースは買上頻度を50%増しでこちらもそう。
グローバルシステムさんにはまだまだ、市場のスキマもありますし、それぞれを15%ずつ伸ばす「⑤」のケースが、それ
ぞれを50%伸ばす計画と同様の成果が見込め、
現実的ですよね。
そして、経営の視点でどういう売上が必要かをお話しましょう。私は、従業員30名迄の企業は売上に対して5%の経
常利益が目標。そして、平均月商1ケ月∼3ケ月分のキャッシュ
(現金)を持つようにしようと申し上げています。
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