同 志 社 大 学 会 計 学 研 究 会 OB 会 2013 年 秋 現 役 発 表 (管 理 部 門 ) エンパワーメントのための管理会計システム に関する一考察 発表者:同志社大学 会計学研究会 田口 加奈子 日 時 : 2013 年 11 月 10 日 場所:同志社大学 1 序論 第一章 5 第一節 日本企業の経営と問題点 第二節 エンパワーメント 第三節 会計情報とエンパワーメント 第二章 10 OBM 第一節 OBM と は 第二節 OBM の メ リ ッ ト と デ メ リ ッ ト 第三節 コントロール・システム 第三章 15 エンパワーメントの必要性 アメーバ経営 第一節 MPC 第二節 アメーバ経営 第三節 よりよいエンパワーメント経営を目指して 結論 20 参考文献 25 2 序論 過 去 、日 本 企 業 が 得 意 と し て き た の は 業 務 効 率 の 絶 え 間 な い 改 善 で あ っ た 。 TQC、 か ん ば ん 方 式 、 原 価 企 画 と い っ た 品 質 向 上 、 原 価 向 上 を 志 向 し た 独 自 5 の手法を編み出し経営を行ってきた。そして廉価で高品質な製品を武器に、 1980 年 代 、日 本 経 済 は 高 い 経 済 成 長 率 を 実 現 し 世 界 第 2 位 の 経 済 大 国 と し て の地位を築くに至った。 しかし、韓国、中国などアジアの国々からの安くて高品質な製品の台頭に よって、日本の過去の強みと栄光は急速に陰りをみせ始めてきた。今後の日 10 本企業の発展に求められるのは、廉価で高品質な製品とサービスを提供する ために業務効率の向上を図る経営だけではなく、知的創造力の有効な活用に よって戦略的な経営を行っていくことである。 そこで本稿では、日本企業の現状と問題点を踏まえ、経営戦略を実行する 上でエンパワーメントという概念を取り入れることの有用性を考察する。ま 15 た、エンパワーメントを有効に働かせるための具体的な仕組みとして、オー プ ン ・ ブ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト ( OBM) と ミ ニ ・ プ ロ フ ィ ッ ト セ ン タ ー (MPC) のひとつ、アメーバ経営を取り上げ、日本企業の経営活性化のためにはどの ような仕組みが求められているか考察していく。 なお、本稿は日本の大企業、特に製造業が対象である。 20 25 3 第一章 第一節 5 エンパワーメントの必要性 日本企業の経営と問題点 1980 年 代 ま で は 、 品 質 向 上 、 原 価 改 善 と い っ た 日 本 の 「 も の づ く り 能 力 」 に支えられた機能や品質が顧客価値に結びついていた。日本製のテレビやビ デオレコーダーは、多少高価でも、品質や機能が高かったため、顧客がほし が っ た 。日 本 の も の づ く り が も た ら す 高 い 品 質 が「 メ イ ド・イ ン・ジ ャ パ ン 」 のブランド価値を生み出していたのである。 10 ところが現在では、機能や品質の高さは必ずしも顧客価値につながらず、 日本製のブランドは意味を持たなくなりつつある。例えば、米調査会社のデ ィスプレイサーチ 1 に よ る と 、2011 年の世界の薄型テレビの販売台数シェア 一 位 は 韓 国 の サ ム ス ン 電 子 で 20% 、 二 位 も 韓 国 の LG電 子 で 、 二 社 で 33% に 達 し て い る 。 日 本 勢 は 三 位 が ソ ニ ー の 9 % 、 パ ナ ソ ニ ッ ク が 9% と 続 く が か 15 つての勢いはない。 日本のものづくりの不振の原因は何だろうか。 一点目の理由は、世界的に技術レベルが向上した結果、顧客が基本的に求 める機能や品質を満たすことが簡単になったことである。日本製品以外の商 品でも、自動車やバイクからテレビやパソコンまであまり壊れなくなった。 20 基本的な品質や機能においてはあまり変わらなくなったのだ。技術力のあま り高くない企業でも、購入した標準的な部品を組み合わせるだけで、十分に きれいに映る、壊れないテレビが開発、製造できるのだ。そのようなテレビ で、顧客ニーズを容易に満たしてしまう。そうなると品質や機能はもはや差 別化の要因にならず、顧客はそれに対して追加的な対価を払わなくなる。 1 『 日 本 経 済 新 聞 』 2 012 年 11 月 29 日 朝 刊 4 二点目は、いまだに市場の動向を理解せず、コスト削減や、また逆にコス トをかけて商品機能を上げるといった戦略をとってきたことである。日本企 業は、垂直統合化のもとでガラパゴス化とさえ揶揄される過剰品質・過剰機 能・過剰性能を志向する事業戦略を行ってきたが、機能・スペックで優れて 5 いることが顧客の価値に直結する時代は終わったのだ。 さらに、経営哲学の形骸化も、ものづくりの不振に影響を与えている。ど んなにトップが立派な戦略を策定しても、それを実行する現場からものづく りの哲学が消えてしまっては、戦略は絵に描いた餅にすぎない。 以上のような日本企業の現状を踏まえ、本稿では、今の日本に求められて 10 いる経営は、知的創造力の有効な活用によって戦略的な経営を行っていくこ と で あ る と 主 張 す る 。企 業 に と っ て 最 も 重 要 な 経 営 資 源 と 能 力 は 、 「陳腐化し にくく、競争他社が認識、理解することが難しく、完全に移転することがで きず、容易に模倣することのできないような、明確な所有権と支配力を持っ た資源や能力」である。 15 このような知的創造力をもたらす経営資源を生み出すためにはどのような 組織体制が求められるのであろうか。本稿ではエンパワーメントという概念 が有用であると主張する。 第二節 エンパワーメント 20 エンパワーメントは経営管理だけでなく、ソーシャルワーク・女性学・医 療 な ど 様 々 な 分 野 で 使 わ れ て い る 概 念 で あ る 。「 エ ン パ ワ ー メ ン ト ( Empowermen t)」 と い う 言 葉 を 直 訳 す る と 「 権 限 ( Po wer ) の 付 与 」 と い う こ と で あ る が 、こ の 言 葉 は 単 に 権 限 付 与 を 表 す だ け で は な い 。 「勇気や元気 25 づけ」という意味も含まれている。経営管理においてのエンパワーメントと 5 い う 概 念 の 定 義 は 諸 説 あ る が 、本 稿 で は 、 「 ロ ー ワ ー・マ ネ ー ジ ャ ー あ る い は 第一線の従業員にパワーを付与し、彼らの自立性を高めること」を強調する だけでなく「経営に参画する一員として、みずからが下した意思決定の結果 にも責任を持たせること 5 2」 と 定 義 す る 。 下位の従業員をエンパワーメントすることでどのような効果があるのだろ うか。 一点目は、迅速な意思決定を行えるようになり、企業を取り巻く環境の変 化に即座に対応できるようになることである。組織が拡大すると、組織内部 の状況が複雑になり意思決定を行うことも複雑になる。一般的に、顧客やサ 10 プライヤーなど外部環境との接触機会を持つのは第一線従業員であるが、取 引をする際にたびたび上司の決断を仰いでいたのでは対応が遅れ、せっかく の収益獲得機会を逃してしまいかねない。従業員をエンパワーすることによ ってスピーディーな対応が可能になる。 二 点 目 は 、組 織 を 活 性 化 し 、 「 新 し い 戦 略 を 創 造 し う る 能 力 」を 生 み 出 す こ 15 とが可能となることである。第一節でも述べたように、企業の長期的な競争 優位を確保するためには知識創造が必要不可欠である。ある特定部門の技術 やノウハウの移転ではなく、新しい発想の新製品・新事業を生み出すには、 様々な部門の技術・ノウハウを融合する必要がある。そのためには、組織自 体 が 縦 割 り で は な く 、横 の 連 携 が 常 に 行 わ れ て い る こ と が 必 要 で あ る 。ま た 、 20 新しい発想が生み出されるような組織風土や評価システムが必要となる。 三 点 目 は 、従 業 員 に 大 き な 権 限 を 与 え る こ と で 、任 さ れ た 人 が 意 欲 を 感 じ 、 困難なタスクに対しても積極的にチャレンジするようになることである。従 業員のモチベーションが上がれば価値創造により貢献できるだろう。 本稿ではエンパワーメントのこれらの効果から、企業が新しい戦略を打ち 2 伊 藤 ( 1998) p364 6 出していくのに有効な概念であると考える。次の節では、エンパワーメント と会計情報の関係について触れ、管理会計ではエンパワーメントのために何 を行うべきか考察していく。 5 第三節 会計情報とエンパワーメント 経営学においてエンパワーメントが注目され、その研究が行われるように な っ た の は 、 1980 年 代 後 半 か ら 1990 年 代 に か け て で あ る 3。 そ の 後 、 管 理 会 計 の 分 野 で エ ン パ ワ ー メ ン ト が 注 目 さ れ る よ う に な っ た の は Johnson が 最 10 初である。 Johnson は 著 書 『 レ レ バ ン ス ・ ロ ス ト 』 の 中 で 、 1970 年 代 か ら 80 年 代 に 米国企業が競争力を失っていた原因が会計数字によって業務活動を管理する トップダウン・コントロールにあると考え、ボトムアップのエンパワーメン トに転換すべきであるという主張を行った。彼は、顧客に対する「即応性」 15 と生産プロセスの「柔軟性」こそが競争力をもたらし、それにはエンパワー された従業員が学習と不断のプロセス改善を行うことが重要であると考えた。 Johnson は 、 現 場 の 人 々 へ の エ ン パ ワ ー メ ン ト を 行 う 際 に 、 会 計 情 報 を 使 う のではなく、代わりに非財務指標を使うべきであると主張した 4。 そ の 理 由 はこうである。まず、管理会計は会計知識を持った企業のマネジメントクラ 20 スのみが理解できる専有物で、トップダウン・コントロールのためのツール であること。また、会計情報はアウトプットのタイミングが遅く、数字が集 約されすぎていることである。 だ が 、果 た し て Johns on の 主 張 す る よ う に 会 計 情 報 は エ ン パ ワ ー メ ン ト に 3 4 青 木 ( 2006) p24 Johnson( 1994) p1 35~ 7 は不適なのだろうか。本稿では、エンパワーメントのためには会計情報は有 効であり、必要不可欠であると主張する。会計データはトップや会計スタッ フの専有物であるが、これを全従業員と共有すれば、経営をガラス張りにす ることができ、全員が自分たちの活動の成果を財務的に確認することができ 5 る。彼ら自身に「自分も会社のオーナーの一人なのだ」という気持ちを持た せることができれば自発的なモチベーションも高まる。 また、組織的な知識創造を活性化し、競争優位につながる卓越した技術や ノ ウ ハ ウ 、ア イ デ ア を 創 発 す る 効 果 を 発 揮 す る 際 に も 会 計 情 報 は 必 要 で あ る 。 Nonaka&Takeuchi 5 に よ る と 、組 織 的 な 知 識 創 造 を 促 進 す る に は ① 組 織 的 な 10 意図②自律性③ゆらぎないし創造的なカオス④冗長性⑤最少有効多様性とい う 五 つ の 条 件 が 必 要 と さ れ る 。こ の 中 で 会 計 情 報 が 有 効 に 働 く の は「 冗 長 性 」 である。下位の従業員に、当面は現場が必要としない情報を意図的に与える ことで、情報を組織成員間で重複共有させ、そのことを通じて、他者の職務 に踏み込んで、異なる観点から独創的なアイデアやアドバイスなどが提供さ 15 れやすい環境を生み出すことが可能となる。 このように、エンパワーメントには会計情報が必要であることを踏まえ、 次の章からはエンパワーメントの具体的な方法を挙げていく。 20 5 野 中 ( 1996) p109~ 8 第二章 第一節 5 OBM OBM と は エ ン パ ワ ー メ ン ト に 会 計 情 報 を 用 い る 手 法 の 一 つ と し て 、こ こ で は OBMを 挙 げ る 。 オ ー プ ン ・ ブ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト ( OBM) は 、 19 8 3 年 当 時 、 危 機 的 な 状 況 に 瀕 し て い た Springfield ReMa nufacturing Corpora tion の 経 営 者 で あ っ た Jack Sta ckに よ っ て 確 立 さ れ 、 1 990 年 代 に な り Caseな ど に よ っ て 体 系 化 さ れ た 手 法 で あ る 。OBMと は 文 字 通 り 、オ ー プ ン ・ ブ ッ ク と マ ネ ジ メ 10 ントの二つの要素からなる概念である 6。 「 ブ ッ ク 」と は 帳 簿 ・ 財 務 情 報 ・ 業 績管理指標全般を指し、これらの情報を開示通じた経営管理を行うことを意 味する。ここで注意したいのは「ブック」とは上場企業が行っているような 年 に 4 回 の 財 務 諸 表 の 公 示 と い う よ う な こ と で は な く 、恒 常 的 に 財 務 デ ー タ を公開しておくことである。これらの情報を公開することで、従業員と管理 15 職との間の壁を取り除き、全員が新しいことに立ち向かう同志として、それ ぞ れ が 互 い の 事 上 の パ ー ト ナ ー と な る こ と が OBM 導 入 企 業 の 最 終 目 標 で あ る。 で は 、 OBMを 機 能 さ せ る た め に 必 要 な 要 素 と は 何 で あ ろ う か 7。 第 一 に 、 財 務 情 報 お よ び 非 財 務 情 報 の 公 開 ・ 共 有 化 で あ る 。 OBM 企 業 で 20 は、従業員は、教えられてなくても自分の仕事ぶりが分かってなければなら ないし、自分の仕事が全体の仕事とどう関連しているかを理解し、会社の業 績に対して自分がどう貢献しているのかを知っていなければならないと考え られている。情報を十分に与えることによってのみ従業員が自分の仕事に責 6 7 菅 本 a(2006 )p407 同 上 p409 9 任を持つようになる。財務データも併せて公開・共有するのには二つの理由 がある。まず、何かを行うための理由を人々に示すためである。それと、会 社ができることの範囲を明確にするためだ。たとえば、ある製造分野で不良 品率改善目標を達成しても、ほかの分野で問題があったら意味がない。全体 5 最適を図るために財務数値は必要なのだ。 第二に、ビジネス・リテラシー教育である。せっかく財務情報が公開され て も 、 そ れ を 従 業 員 が 理 解 で き な け れ ば 意 味 が な い 。 そ の た め 、 OBM 企 業 では、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を従業員に理解さ せるために、時間と費用をかけて教育を行っている。利益とは何で、それを 10 どう計算し、在庫回転率を高めるとどう違いがあるのかなど、ビジネスの基 本を知ることで、自分たちの会社がどうやって利益を出しているか、また、 どうしたらもっと利益が出せるようになるのか知ることができる。 第三は、会計情報とリンクした成果報酬を導入することである。 ビジネス・リテラシー教育を受けた従業員は、利益がどのような経営活動か 15 ら生まれ、そのプロセスに自分がどのようにかかわっているかが分かってい る。そこで、財務指標の改善に対する貢献度合いに応じて、ボーナス資金を 与えることで、従業員のモチベーションが上がり、高いパフォーマンスを発 揮することができる。 また、一堂に会して実績を検討し、従業員に責任を持たせることも重要で 20 あ る 。 OBM 導 入 企 業 で は 、 す べ て の 部 門 の 代 表 者 が 集 ま る 「 ハ ド ル 」 な ど と呼ばれるミーティングを週単位で行う。代表者は、各部門に関して責任を 負っている数値を報告し、企業の会計担当者がその場で損益計算書を作成す るのだ。 25 10 第二節 OBM の メ リ ッ ト と デ メ リ ッ ト こ の 説 で は 、 OBMの メ リ ッ ト と デ メ リ ッ ト を 取 り 上 げ る 8。 OBM の よ う に 財 務 情 報 を 活 用 し た エ ン パ ワ ー メ ン ト に は 、 従 業 員 の モ チ 5 ベーションが上がる、知識創造を促進する以外にもメリットがある。 第一に、新しい戦略を実行しやすいことである。現在は、すべての企業に 変革が求められている時代である。どの企業も、新しい製品の開発、これま で以上に効率的な業務プロセスの導入に取り組んでいかなければならない。 従来、新しい戦略を実行する際、従業員がすべきことに関する情報は与えら 10 れ て い て も 、「 な ぜ 」 取 り 組 む べ き な の か が 知 ら さ れ て い な か っ た 。 OBM 企 業では、財務情報を見ることによって「改革の必要性」が認識できるため、 新しい戦略を実行しやすくなる。 第二に、従業員が部分的な問題よりも会社全体の共通目標を重視すること ができることが挙げられる。会社の中には部門間同士、経営者と従業員など 15 と い っ た 様 々 な 利 害 対 立 が 存 在 す る 。 OBM を 導 入 す る こ と で 全 体 的 な 展 望 で考えられるようになり対立が起きにくくなる。 OBM の デ メ リ ッ ト と し て 三 点 挙 げ る 。 一点目は、業績測定尺度と財務諸表を結びつけることの困難さがある。規 模が大きい会社になると、財務諸表の数値は、さまざまな部門・事業部や製 20 品グループから入手した合計値であり、しかも項目の種類もひとまとめにさ れているので、各現場の非財務指標と財務諸表上の数値を結びつけるのは容 易でない。そのため、会社に貢献できているという手ごたえを従業員に実感 さ せ る こ と が 難 し く な る 。 ま た 、 OBM に 必 要 な 要 素 と し て 、 会 計 情 報 と リ ンクした成果報酬を導入することを挙げたが、そのように業績測定システム 8 菅 本 b( 2006) p117 ~ 11 に問題がある場合、従業員の間に不公平感が生じ、逆にモチベーションが下 がる可能性がある。 二点目は、経営者に情報を不利に利用される恐怖感を与えてしまう可能性 が あ る こ と で あ る 。 OBM を 導 入 し 、 か な り 多 く の 情 報 が 従 業 員 に 公 表 さ れ 5 る場合、自社の業務活動や財務状況に関する情報を競争相手が入手する懸念 が生じる。 三点目に、すべての従業員が経営に参加することは、高い意欲と創造性を もたらすが、その一方で彼らが暴走して全体最適を損なうリスクもある。エ ンパワーメントを車のアクセルだとすれば、ブレーキにあたるものも必要と 10 なってくるのだ。 こ の よ う に 、 OBM に よ る エ ン パ ワ ー メ ン ト に は 様 々 な メ リ ッ ト が 存 在 す るが、財務諸表を利用するため業績尺度と結びつけることが難しい点、コン トロール・システムの欠如など致命的な問題点がある。 15 第三節 コントロール・システム 二節の終わりで、エンパワーメントにはブレーキの役割を果たすシステム が 必 要 で あ る と 述 べ た 。こ こ で は そ の 存 在 と し て Simonsの 提 唱 し た コ ン ト ロ ール・システムを挙げる。コントロール・システムとは、ここでは「マネー 20 ジャーが組織行動のパターンを維持または変更するために活用する、情報を ベースとした公式的な手順と手続き 9 」 と 定 義 す る 。 Simons はさらにコン トロールは多元的であると考え、4つのコントロールモードを提示した。そ れぞれ以下のように定義される。 9 三 矢 ( 2004) p66 12 ① 診断型のコントロール・システム 組織の無秩序を防ぐために、どんなにエンパワーメントが進んでいる企業 でも、予算の差異分析などを利用して、目標値と実績との乖離を埋める管理 活動が行われる必要がある。 5 ② 双方向型のコントロール・システム 従業員は、トップが決めた戦略に盲目的に従うよりむしろ、その意を汲ん だ上で創造性を発揮し、革新を起こすことが求められる。 ③ 信条のシステム やるべきことを示して方向づけるもの。 10 ④ 事業倫理境界のシステム やってはいけないことを知らせてそれを抑制するもの。 OBM の デ メ リ ッ ト で あ る 業 績 測 定 尺 度 と 財 務 諸 表 を 結 び つ け る こ と の 困 難 さ 、 ま た 、 こ れ ら コ ン ト ロ ー ル ・ シ ス テ ム を 満 た す 経 営 手 法 と し て MPC、 15 特に、時間当たり採算や独自のフィロソフィを持つアメーバ経営が有用では ないだろうか。第三章では、アメーバ経営を考察し、エンパワーメントのた めにはどのような仕組みが必要なのか明らかにしたい。 20 25 13 第三章 アメーバ経営 第一節 5 MPC ま ず 、前 節 で 挙 げ た M PCを 説 明 す る 。ミ ニ・プ ロ フ ィ ッ ト セ ン タ ー( MPC) と は 「 組 織 単 位 の 括 り を 小 さ く し ( 数 名 か ら 、 多 く て も せ い ぜ い 40~ 50 人 程 度 ま で )、利 益 金 額 を 総 合 的 な 指 標 と し て 現 場 の マ ネ ジ メ ン ト の 効 率 化 と 活 「人間はコストを引き下 性 化 を 図 る 経 営 手 法( 部 門 別 採 算 制 度 ) 1 0 」で あ る 。 げろと命じられるよりも、利益を上げるべく工夫せよと命じられるほうが動 10 機 づ け ら れ る 。」 と い う 考 え の も と 日 本 で 生 ま れ た 。 MPC の 導 入 事 例 と し て は、現時点で廃止されたものまで含めると、キリン京都工場の「職場別利益 管 理 制 度 」、 住 友 電 工 グ ル ー プ ・ NEC埼 玉 の 「 ラ イ ン カ ン パ ニ ー 制 」、 京 セ ラ の「アメーバ経営」などがよく知られている。 こ の 概 念 を 最 初 に 提 唱 し た Cooper は MPC を 小 さ な プ ロ フ ィ ッ ト セ ン タ ー 15 と定義した。彼はプロフィットセンターの中間生産物を買いたいと思う顧客 が存在し、それに販売したいという意思がある場合のものを真ミニ・プロフ ィ ッ ト セ ン タ ー 、そ う で な い も の を 疑 似 ミ ニ・プ ロ フ ィ ッ ト セ ン タ ー と し た 。 例えば、アメーバ経営では社内のアメーバが供給する部品であっても、社外 にもっと安くてすぐれた備品があればそこから買うことができる。社内だか 20 らといって保護されるようなことはない。このように各アメーバに多大な自 律性が認められている組織であるため真ミニ・プロフィットセンターと呼ば れるのだ。 10 廣 本 ( 2012) p171 14 第二節 アメーバ経営 京 セ ラ 株 式 会 社 は 1959 年 に 京 都 市 中 京 区 に フ ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス の 専 門 メーカー「京都セラミック株式会社」として設立された、日本を代表する総 5 合電子部品製造企業である。 京 セ ラ で は 創 業 後 間 も な い 時 期 か ら「 ア メ ー バ 経 営 」と い う 独 自 の 制 度 を 開 発 し 採 用 し 続 け て い る 。ア メ ー バ 経 営 と は 、 「 市 場 に 対 応 し て 、現 場 の 知 恵 (創意工夫)を引き出し、組織を活性化するために、現場の管理者にその職 場(アメーバと呼ばれる)を任せるとともに、利益に責任を持たせる小集団 10 部門別採算制度 11」 で あ る 。 これから、アメーバ経営の要素をコントロール・システムと関連づけなが ら ① 会 計 、 ② 業 績 と 報 酬 の 関 係 、 ③ PDCA サ イ ク ル ④ 京 セ ラ フ ィ ロ ソ フ ィ の 4 点を確認していく。 15 ① 会計の仕組み 1.任せる経営 アメーバ経営の目的 1 2 の 一 つ に「 全 員 参 加 の 経 営 」が 謳 わ れ て い る 。ア メ ーバリーダーに経営を任せることにより、会社の中に企業家精神にあふれた アメーバリーダーを育成して、高収益・高成長を目指して組織を活性化しよ 20 うというのが狙いである。 2.時間当たり採算 アメーバ経営におけるマネジメント指標として、 「 時 間 当 た り 採 算 」と い う 独 自 の 計 算 方 法 が 使 わ れ て い る 。こ れ が 、OBM と の 決 定 的 な 違 い で あ る 。 「任 11 12 谷 ( 2013) p18 稲 盛 ( 2010) p31 15 せる経営」可能にするためには全員が理解できる単純な計算構造が必要とな る。なぜなら経営を任せているのに、業績、つまり目標達成の羅針盤となる 採算表を会計の知識がないと理解できないのでは、現場が自律的組織として 活性化することはできないからだ。 5 時 間 当 た り 採 算 の 目 的 は 、本 来 従 業 員 の 労 働 1 時 間 当 た り で ど れ だ け 付 加 価値を創造したかを計算することである。アメーバごとに算出される「時間 当たり」は営業部門であろうと製造部門であろうと算出可能であり、また、 総 時 間 で 割 っ て 1 時 間 当 た り の 金 額 を 算 出 す る こ と か ら 、全 社 の ア メ ー バ 間 での比較が可能である。時間当たり採算の式は以下の通りである。 10 時 間 当 た り 採 算 = 部 門 別 採 算 ( 売 上 ー 人 件 費 以 外 の 費 用 ) ÷総 労 働 時 間 時間当たり採算によって、ほかのアメーバに負けたくない、少しでも良い 成績を上げたいという競争意識が作られる。また、算出された時間当たりを 15 1 時間当たりの人件費と比較することによって、給料に見合った仕事ができ て い る か を チ ェ ッ ク す る こ と が で き る 。部 門 内 の 1 時 間 当 た り の 人 件 費 と 時 間当たりを比較して、前者のほうが大きすぎるということになれば、業務の やり方を考え直さなければならないことを意味している。各アメーバのコス ト把握のためには棚卸資産勘定を設けていない。つまり、購入した原材料を 20 月末に使い残したとしても、月末の在庫量にかかわりなくすべてを当月の費 用に計上するのである。これによって一般家庭で用いられる家計簿と同じ感 覚でアメーバの費用をとらえることができる。 3.一対一対応の原則 目標を達成するためには採算表が単純な構造であることに加え、採算表が 25 タイムリーに提供されることが必要である。アメーバ経営では、採算表は毎 16 日の成果が翌日に判明する形で経理部門から提供される。しかも、アメーバ 経営では「一対一対応の原則」によりモノの流れには必ず伝票を伴う一方、 それでもって費用・収益を認識することになっている。たとえば製造アメー バが前工程のアメーバからモノを買った場合それを生産目的で使う前に、直 5 ちに売り手の収益、買い手の費用として認識することができる。また現場で も 、伝 票 を 繰 れ ば 経 理 部 門 か ら の 報 告 を 待 た な く て も 自 分 た ち の 費 用・収 益 、 したがって目標達成度をすぐ知ることができることから対応策をすぐに打ち 出すことができる。 10 ② 業績と報酬の関係 ア メ ー バ 経 営 で は OB M と 違 い 、 業 績 と 報 酬 は 結 び つ い て い な い 。 な ぜ な ら、報酬を結びつけると、アメーバリーダーの負担が大きくなったり、自分 のアメーバの利益を追求するようになってしまうからだ。 15 ③ PDCA の 要 素 ア メ ー バ 経 営 で は「 時 間 当 た り 採 算 」に 基 づ き 、徹 底 し た PDCA サ イ ク ル が回されている。京セラでは年間計画をベースとし、月初の会議では、前月 実績が前月予定を上回ったかどうかの検討と、当月の予定組みを行う。目標 設定は「時間当たり採算」の絶対値よりも、前月の実績にどれだけ上乗せし 20 て達成できるかが重要となる。絶対値という、すぐに達成できるような目標 はいつでも達成できるという感覚を生むのに対して、ストレッチな目標は、 現場の斬新なアイデアを喚起できるだろう。なぜならストレッチな目標は、 発想転換を伴う斬新なアイデアを含めて、様々な創意工夫を加えないと達成 できないからだ。また、当月の実績は日次ベースで翌日にフィードバックさ 25 れるため、問題点があれば早めに感知し、スピーディーに是正行動をとるこ 17 と が で き る 。 こ れ は 、「 打 診 型 コ ン ト ロ ー ル ・ シ ス テ ム 」 に 対 応 す る 。 ④ 階層的会議体 年間の目標設定や月次の会議の場で、リーダーが出してきたアイデアは各 5 アメーバ内や関連するアメーバとの間で意見交換される。このような情報交 換 に よ っ て イ ノ ベ ー シ ョ ン が 起 こ さ れ る 。こ れ は「 双 方 向 型 の コ ン ト ロ ー ル・ システム」に該当する。 ⑤ 京セラフィロソフィ 10 京セラフィロソフィのなかには、アメーバ経営に携わる人間として行きべ きこと、行うべきでないことが書かれている。エンパワーされたリーダーが 難しい経営課題に直面する場合も数多くある。そのような場合に備えてあら かじめリーダーには価値観や判断基準を共有させ、彼らが誤った判断を起こ すリスク自体を減らしている。リーダーは困難に直面したとき「京セラフィ 15 ロソフィ」を開き、もしこれが稲盛氏であったらどのような意思決定を行う だ ろ う か と 思 い を 巡 ら す 。こ れ は 、 「 信 条 の シ ス テ ム 」と「 事 業 倫 理 境 界 の シ ステム」に対応するだろう。 第三節 よりよいエンパワーメント経営を目指して 20 第二節のように、アメーバ経営を考察した結果、アメーバ経営がエンパワ ーメントに最も有用であると結論付ける。 そ の 理 由 は 、 第 一 に 、 Simons が 提 示 し た 、 4 つ の コ ン ト ロ ー ル モ ー ド を 満たしたマネジメントシステムである点である。 25 第 二 に 、 OBM で は 財 務 情 報 を 従 業 員 が 理 解 す る た め に ビ ジ ネ ス ・ リ テ ラ 18 シ ー 教 育 を 行 う こ と に 対 し 、ア メ ー バ 経 営 で は 、 「 時 間 当 た り 採 算 」と い う 全 員が理解できる単純な計算構造が使われている点である。 第 三 に 、 OBM で 、 大 企 業 に な る と 、 業 績 測 定 尺 度 と 財 務 諸 表 を 結 び つ け ることが難しくなると述べたが、アメーバ経営では少人数のアメーバに分か 5 れているためリンクしやすいことだ。 だ が 、ア メ ー バ 経 営 に つ い て は ま だ ま だ 課 題 が 残 る 。ア メ ー バ 経 営 は 2002 年 ま で に 200 社 以 上 で 導 入 さ れ て お り 1 3 、事 例 は 多 く あ る が 、ま だ 、体 系 化 された経営手法でないことだ。京セラのアメーバ経営は、これから先の激し い競争時代に対応することのできる、純国産の管理会計システムとしての役 10 割を果たすことができると思う。より、研究がすすんで体系化されたシステ ムになることを望む。 15 20 13 三 矢 ( 2004) p70 19 結論 1980 年 代 ま で は 、 品 質 向 上 、 原 価 改 善 と い っ た 日 本 の 「 も の づ く り 能 力 」 に支えられた機能や品質が顧客価値に結びついていた。だが、世界的に技術 5 レベルが向上したこと、未だにコストや品質を競争優位と捉えていること、 経営哲学の形骸化などの原因により、日本の過去の栄光は陰りを見せ始めて いる。 以上のような日本企業の現状を踏まえ、本稿では、今の日本企業に求めら れていることは、知的創造力の有効な活用によって戦略的な経営を行ってい 10 く こ と で あ る と 主 張 し た 。そ し て 、そ の 知 的 創 造 力 を 生 み 出 す 仕 組 み と し て 、 エンパワーメントを志向した経営を行うことを主張した。 管理会計分野では、エンパワーメントにあたって財務数値を用いるべきか について様々な議論が行われてきた。そして、本稿では、エンパワーメント にあたって財務数値を用いることが不可欠であると主張し、その具体的な方 15 法 と し て OBM を 挙 げ た 。 OBM の メ リ ッ ト と し て 従 業 員 の モ チ ベ ー シ ョ ン が 上 が る 、 知 識 創 造 を 促 進する、新しい戦略を実行しやすくなることなどが挙げられるが、業績測定 尺度と財務諸表を結びつけることの困難さ、経営者に情報を不利に利用され る恐怖感を与えてしまう可能性がある点、コントロール・システムの欠如な 20 どのデメリットがある。 本 稿 で は 、こ れ ら OB M の デ メ リ ッ ト を 解 消 す る 手 段 と し て MP C の 一 つ で あるアメーバ経営を挙げ、アメーバ経営がエンパワーメントに有用な手法で あると結論付けた。 日本企業は今、大きな転換期を迎えている。知的創造力の有効な活用によ 25 って新たな競争優位を生み出していくことを期待したい。 20 参考文献 櫻 井 通 晴 『 管 理 会 計 ( 第 五 版 )』 同 文 館 出 版 株 式 会 社 、 2012 年 延 岡 健 太 郎 『 価 値 づ く り 経 営 の 論 理 』 日 本 経 済 新 聞 社 、 2011 年 5 野 中 郁 次 郎 、 竹 内 弘 高 『 知 識 創 造 企 業 』 東 洋 経 済 新 報 社 、 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Releva nce Regained : From Top-Down Control to Bottom-Up 15 Empowerment, Ne w York: The Free Press .(辻 厚 生 ・ 河 田 信 訳 『 米 国 製 造 業 の 復 活:ト ッ プ ダ ウ ン・コ ン ト ロ ー ル か ら「 ボ ト ム ア ッ プ・エ ン パ ワ メ ン ト 」 へ 』 中 央 経 済 社 、 199 4 年 ) 青 木 幹 善 『 エ ン パ ワ ー メ ン ト 経 営 』 中 央 経 済 社 、 2006 年 20 ジ ョ ン ・ ケ ー ス 『 オ ー プ ン ブ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社 、 2001 年 加 登 豊 『 管 理 会 計 入 門 』 日 本 経 済 新 聞 社 、 2009 年 25 21 三 矢 裕 『 ア メ ー バ 経 営 論 』 東 洋 経 済 新 報 社 、 2003 年 稲 盛 和 夫 『 ア メ ー バ 経 営 』 日 本 経 済 新 聞 社 、 2010 年 5 三 矢 裕 ほ か 『 ア メ ー バ 経 営 が 会 社 を 変 え る 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社 、 1999 年 参考論文・参考記事 櫻 井 通 晴「 企 業 再 編 化 と 分 権 化 の 管 理 会 計 上 の 意 義 」 『 企 業 会 計 』 Vol.56(5 )、 2004 年 10 諸藤裕美「エンパワメントのための管理会計システム設計・運用に関する一 考 察 」『 立 教 経 済 学 研 究 』 第 65 巻 第 4 号 、 2012 年 伊 藤 嘉 博「 管 理 会 計 変 革 の ト リ ガ ー と し て の エ ン パ ワ ー メ ン ト 」 『 会 計 』 153、 15 1998 年 宮 脇 秀 貴「 エ ン パ ワ ー メ ン ト 型 管 理 会 計 の 再 考 」 『 香 川 大 学 經 濟 論 叢 』 76(2 )、 2003 年 20 菅 本 栄 造 a 「 オ ー プ ン ブ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト に 関 す る 一 考 察 -- 論 点 の 整 理 と モ デ ル ケ ー ス の 検 討 」『 會 計 』 170 (3)、 20 06 菅 本 栄 造 b「 オ ー プ ン ブ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト の 論 点 と 実 施 上 の 諸 問 題 」 『産業 経 理 』 Vol.66(2 )、 20 06 年 25 22 Case John,佐 藤 修 訳 ,福 田 靖 浩 訳 「 名 著 論 文 再 掲 現 場 と 財 務 数 値 を 共 有 し 、 経 営 感 覚 を 育 成 す る オ ー プ ン ブ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト 」『 Dia mo nd ハ ー バ ー ド・ビジネス・レビュー』 5 31(1 )、 2006 年 廣 本 敏 郎 「 自 律 的 組 織 と 管 理 会 計 」『 企 業 会 計 』 Vol.57 (12)、 2005 年 谷 武 幸 「 京 セ ラ ア メ ー バ 経 営 」『 企 業 会 計 』 Vol .57(12 )、 2005 年 三 矢 裕「 京 セ ラ の ア メ ー バ 経 営 に よ る エ ン パ ワ ー メ ン ト と コ ン ト ロ ー ル 」 『企 10 業会計』 Vol56(5 )、 2004 年 谷 武 幸 「 ア メ ー バ 経 営 の 概 念 モ デ ル 」『 企 業 会 計 』 Vol.65(2)、 2 013 年 清 水 孝 「 予 測 型 経 営 の 理 論 と 実 務 」『 早 稲 田 商 学 』 第 43 4 号 、 2013 年 15 参 考 URL 京セラ株式会社 http://www.kyoc era.co.j p/ 京セラコミュニケーションシステム株式会社 23 http ://www.kc cs.co .jp/
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