Unit 1 Reading 「英会話のクラスの文化」 日本や多くのアジア諸国では、「良い生徒」とは、授業を静かに聞いて、しっかりとノート を取り、先生が言ったことを全て覚えようとする生徒です。しかし、英語を話すことは能 力であり、英会話を学ぶことは他の教科の勉強とは違います。スピーキングのクラスでは、 「良い生徒」とは、先生にたくさん質問をして、分からないときは分からないと言い、先 生が聞いていないときも一生懸命に練習する生徒のことです。 教育に対する考え方は国によってそれぞれ違います。このため、日本人学習者と外国人教 師の文化の違いから誤解が生じることがあります。次に挙げる5つの重要なポイントを参考 にしてください。 1.*欧米では、先生が質問すると、答えが分かる生徒は手を挙げます。手を挙げないと、 先生はあなたが授業に興味がない、または答えが分からないのだと思うかもしれません。 2.日本人学習者は、誤った答えを言ったり、間違えることを心配します。しかし、ほとん どの先生にとっては、あなたが興味を示すことが最も大切なことなのです。先生はあなた が答えようとする姿勢を嬉しく思います。答えが間違っていても気にしません。 3.日本人学習者は、英語で答える前によく周りのクラスメイトに確認したがります。これ は、外国人の先生には失礼なことだと思われるかもしれません。先生が質問したら、直接 先生に答えるべきです。友達に先に確認するのはやめましょう。必要なら、いつでも“Sorry?” や“Sorry, I don’t understand.”と言えばいいのです。 4.英語でコミュニケーションをするときは、相手があなたの言っていることを理解してい るのかどうか、気づくことが大切です。これを判断するには、話しているときに相手の表 情をよく見る必要があります。クラスメイトや先生とコミュニケーションをするときは、 相手の顔をしっかりと見るようにしましょう。 5.スピーキングの上達には、誰かと話すことが必要です。英語のクラスでは、クラスメイ トとペアになったり、グループになって練習することが多くなります。この練習に慣れる ことが大切です。練習時間をたくさん取れるように、できるだけ早くパートナーを見つけ たり、グループを作れるようにしましょう。 一番大切なポイントは、英会話のクラスは、高校や大学で受けた授業とは全く違うという ことです。外国人の先生に教えてもらう場合は、先生によって求められることが違ってく ると思います。あなたと先生の両方がお互いの文化を理解する努力をしなければならない のです。 *日本では、ほとんどの外国人英語教師がアメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア・ ニュージーランドの出身なので、 「Western countries」としましたが、ヨーロッパ本土・南 アメリカ・アフリカなどの国でも同じことが言えるかもしれません。 Unit 2 Reading 「魔法の言葉」 たった1つのシンプルなフレーズを覚えるだけで、英語が上達するということを知ってい ましたか?本当ですよ!そのフレーズは“Sorry, I don’t understand.”です。このフレーズ を素早く、自信を持って言うことができたら、ネイティブスピーカーと会話をするのがと ても楽になります。 日本人学習者は英語で質問されると、答えるまでに時間がかかることがよくあります。黙 ってしまうと会話が止まってしまいますが、相手はその理由が下記のどれに当てはまるの か分かりません。 ・質問の意味が分からない ・聞かれた内容は理解しているが答えが分からない ・質問の答えは分かっているが、英語で何と言ったらいいのか分からない 会話が止まってしまった原因が分からないと、質問をした人は次に何と言ったらいいのか 分かりません。 相手の言ったことが聞き取れないときは、文末のイントネーションを上げ調子で“Sorry?”、 または“Excuse me?”と言いましょう。そうすると、相手はもう一度言ってくれます。そ れでも分からないときは、“Sorry, I don’t understand.”と言いましょう。このようにすれ ば慌てることなく、相手に別の言い方で説明する必要があることを分かってもらえます。 「分からない」と言うのは失礼だと思う人もいるようですが、実は何が問題なのかをはっ きり伝えた方が相手はずっと喜びます。質問をしても何も答えてくれない人とコミュニケ ーションをするのはとても難しいです! 英語を上手に話せないことに劣等感を持つ日本人は多いようですが、これはおかしな話で す。あなたは日本人なのだから当然日本語を話します。外国語で少しでもコミュニケーシ ョンができることを喜ぶべきなのです。アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ ニュージーランドなどの英語圏の人の多くは、たった1言語(英語)しか話せません。あ なたはもうすでにその人たちより勝っているのです。英語圏から来た外国人と話すときは、 このことを忘れずに、自信を持ってください。 外国人と英語でコミュニケーションをするとき、意思疎通さえできれば、相手はあなたの 英語の間違いなどは気にしません。相手が英語圏以外の出身なら、その人の英語も完璧で はないはずです。相手が誰であれ、英語があなたの母国語ではないことを分かってくれる でしょう。これから出会う人のほとんどは、あなたとコミュニケーションをするために喜 んで手助けをしてくれると思いますが、あなた自身も、分からないときはそのことをきち んと伝えて、相手の手助けをしなければなりません。 “Sorry, I don’t understand.”という文章を覚えるのは簡単ですが、実際の会話で言うのは 勇気がいると思います。このクラスで会話の練習をするときは、 “Sorry?”と“Sorry, I don’t understand.”をたくさん使ってください。このフレーズをとっさに言えるようになったら、 英会話上達への大きな一歩を踏み出したことになります。がんばってください! Unit 3 Reading 「自然に話すためのテクニック」 英会話を学ぶのと、テストのために英語を勉強するのとは全く違います。例えば、中学校 では、生徒はフルセンテンス(完全な文章)で答えるように教えられます。これは、文法 をしっかり理解するためだと思いますが、実際の会話でいつもフルセンテンスで答えてい ると不自然に聞こえます。次に挙げる1~4のテクニックを参考に、自然な英語になるよう に注意しましょう。 テクニック1 フルセンテンスと単語のみの短い返事を組み合わせる ネイティブスピーカーはよく1、2単語のみの短い文で答えます。 しかし、いつもこのように答えていると、相手に失礼だと思われることもあるので、長い 文と短い文のバランスを考えて答えるようにしましょう。 テクニック2 質問に答えたら相手に聞き返す 質問に答えた後に相手に同じ質問を聞き返したり、新しい質問をすると、会話がより自然 になります。 テクニック3 短い文で答えた後に情報をつけ加える テクニック4 新しい質問をする前に相手が言った最後の部分を上げ調子で繰り返す 自然な英語を話す秘訣は、1~4のテクニックを組み合わせて使うことです。どれか1つだけ を使い過ぎると、かえって不自然になってしまうので気をつけてください。例えば、誰か に何かを聞かれるたびに“How about you?”と言うと、とても不自然に聞こえます。 この本の中の質問と答えを暗記するのが最終目標ではありません。それは自然な英語を話 すための第一歩です。考えなくても全ての質問にスラスラと答えられるようになったら、 さらに自然な英語に近づけるように次のステップに進むことができます。自分の会話例を 作る時は、1~4のテクニックをバランス良く使うようにしましょう。 Unit 4 Reading 「クラス外の練習」 外国語をマスターするのにどれくらい時間がかかるのかは分かりませんが、相当の努力と 練習が必要なことは確かです。週に数時間だけの勉強でも、それなりに上達することはで きるかもしれませんが、それで英語がペラペラになることはありません。本当に話せるよ うになりたいのなら、授業の時間以外にも練習しなければなりません。 外国人の知り合いがいないのに、どうやってクラス外で練習したらいいのでしょうか?答 えは、「日本人同士で練習する」です。授業時間以外にも英語を使い始めたら、上達に大き な違いが生まれるはずです。 多くの日本人学習者は、ネイティブスピーカーと練習しないと上達できないと思っている ようですが、それは間違いです。英語をマスターするには、頭の中に単語やフレーズなど の情報を保存し、その情報(データベース)に素早くアクセスできるようになる必要があ ります。多くの日本人学習者は、すでに素晴らしい英語の知識を持っています。問題は、 そのデータベースにアクセスするスピードです。 データベースにアクセスすればするほど、そのスピードは速くなります。大切なのはアク セスする回数なので、話す相手は関係ありません。ペットやぬいぐるみだっていいのです! プレッシャーをあまり感じずに済むので、かえって相手がネイティブスピーカーではない 方がいい、ということもあります。その方がお互いの言っていることを理解しやすく、会 話もしやすいでしょう。 お互いの間違いが移ってしまうと心配する人もいますが、その可能性は低いと思います。 ネイティブスピーカーと話していても、自動的に「正しい英語」が移ることはないのだか ら、間違いが移ることを心配する必要もないでしょう。 日本人同士で話していると、発音があまり正しくなくても通じてしまうという心配もあり ます。これは本当のことですが、自分の発音に注意して、他の方法できちんと練習すれば 大した問題にはなりません。 最初は、日本人同士で英語で話すことに抵抗があるかもしれませんが、毎日続けていれば すぐに慣れると思います。他の人の目が気になるようなら、誰もいないところで練習して みてください。 英語をマスターするために留学したいという人はたくさんいます。しかし、たとえ留学し たとしても、あなたが会話をする人のほとんどは、ネイティブスピーカーではなく他の国 から来た留学生になると思います。日本人同士で英語を話す練習をすれば、日本にいなが らお金を使わずに、留学するのと同じような効果が得られます。 もちろん授業はとても大切ですが、そこで質問をしたり、積極的に取り組むと、より大き な効果が得られます。日常で英語を使うようになると、色々な疑問にぶつかると思います。 先生にたくさん質問をしてください。本当に英語を話せるようになりたいのなら、練習相 手とやる気さえあればいいのです。毎日続けることができたら、短期間に驚くほど上達で きるでしょう。 (「先生にたくさん質問をしてください」元の英語にはない部分です) Unit 5 Reading 「発音の重要性」 発音とは、言葉の個々の音だけではなく、話すスピードやリズム、全体のメロディー(抑 揚など)も含まれます。これらの点に注意して英語の「音楽」を真似すると、 「ダ・ダ・ダ」 のような音だけで話しても実際の会話のように聞こえます。 スピーキングの上達には、発音練習が大切だということは誰もが知っていることですが、 リスニングの上達にも大きな影響を持っています。空港で初めて会う人を出迎える場面を 想像してみてください。あなたはその人の写真を持っていますが、その写真はとても古い 写真です。その人が写真と全く違っていたら、目の前を通り過ぎても気づかないでしょう。 これと同じことが英単語にも言えます。新しい単語を学習するときは発音も一緒に覚える と思いますが、覚えたものが本当の発音と全く違っていたら、その単語を聞き取ることは できません。 日本人にとって、英語の発音で難しい点は主に3つあります。1つ目は、英語にはth・f・l・ rのような日本語にはない音がたくさんあるということです。このような音を習得するのは とても時間がかかります。難しくて当然なので、あまり気にしないようにしてください。 個々の音よりも正しい音節の数と正しいアクセントで発音する方が重要です。 2つ目は、ほとんどの日本語は母音で終わるのに対し、英単語の多くは子音で終わるという ことです。このため、日本人はよく単語の終わりに余分な音を加えてしまいます。例えば、 bookをbukkuと言ったり、topをtoppuと言ったり、loveをlabuと言う人がたくさんいます。 単語の終わりに余分な音を入れないように気をつけるだけで英語の発音はかなり上達しま す。 3つ目は、日本語と英語のリズムは全く違うということです。英語では、ある単語はとても 速く発音され、ある単語はとてもゆっくり、はっきりと発音されます。このリズムに慣れ ないと口語英語を理解することはできません。 英語の発音を上達するには、目ではなく、耳を使って勉強することが大切です。単語や文 章を眺めていても発音は決して上手くなりません。 英語の歌を歌うのはとても良い練習方法ですが、最初に歌詞を見ないようにしてください。 その歌を何度も聞いて、耳に聞こえた音をそのまま真似してください。意味を気にする必 要はありません。どうしても歌詞の意味が知りたいときは後で確認してもかまいませんが、 何と言っているのか分かっても最初の発音は変えないでください。 大人になってから英語学習を始めたのなら、たとえ何年外国に住んでも日本語のアクセン トが抜けることはないでしょう。これは当然のことなので問題ではありません。あなたの 目標は、相手に理解しやすい英語を習得すること、そしてあなたが相手を理解しやすくな る方法を学ぶことなのです。 Unit 6 Reading 「ボディーランゲージ」 英語を話すときは、文法や語彙、発音よりもずっと大切なことがあります。これはとても 重要なので、正しく使えば誰とでもコミュニケーションができるようになります。しかし、 使い方を間違えると誰も話してくれなくなってしまいます。 それは、ボディーランゲージです。言葉を用いないコミュニケーション、 「NVC」とも呼ば れています。NVCは、体の位置、手のしぐさ、表情、アイコンタクトを含みます。ボディ ーランゲージはお互いのコミュニケーションをスムーズにしてくれます。 NVCのうち最も重要なものの1つは表情です。日本人は英語を話すとき、緊張して表情がこ わばってしまうことがよくあります。しかし、ニコニコしていた方が相手は喜んであなた とコミュニケーションしてくれるはずです。たとえ英語が上手く話せなくても、ニコニコ している人とは話しやすいものです。 アイコンタクトもとても大切です。日本人学習者は、自分の言いたいことに気を取られて、 床や宙をじっと見つめていることがよくあります。英語圏では、会話をするときに相手を 見ないと相手にとても不快感を与えてしまいます。もちろん、相手の目をじろじろと見る のは良くないので、相手の鼻と肩を結んだ三角形の空間を見るようにしてください。 ジェスチャーもとても重要なNVCです。言葉の分からない国へ行ったら、ジェスチャーが 唯一のコミュニケーション方法になるかもしれません。このような状況になったとき、言 葉を使わなくてもどれほどコミュニケーションができるかに驚くでしょう。言いたいこと が言えないときはジャスチャーが役立つことを覚えておいてください。良くないのは、正 しい単語や表現が思いつかないと話すのを止めてしまうことです。これは相手にとても不 快感を与えてしまいます。正しい言い方が分からないときは、別の表現で言い換えたり、 ジェスチャーを交えて意味が通じるようにしてみてください。そして笑顔も忘れずに! ほとんどの学習者はNVCの重要性を知っていても、実際に会話をしているときはよく忘れ てしまいます。だからこそ毎日の練習がとても大切なのです。たとえこの本に載っている 質問と答えを完ぺきに覚えたとしても、練習を止めずに続けてください。言いたいことが 言えるようになったら、会話を自然にすること、発音の改善、NVCなどに気を配るように しましょう。これらの全てを合わせて本当の英会話力と言えます。 Unit 7 Reading 「語学のエスカレーター」 下りのエスカレーターを上ってみたことはありますか?試したことがある人は、意外と難 しいことが分かると思います。エスカレーターと同じスピードで歩いていたら同じ場所に 留まります。前へ進むには、エスカレーターが下るスピードよりも速く上らなければなり ません。スピードを落としたり止まってしまうと、スタート地点に戻ってしまうでしょう。 語学学習はこれに少し似ています。 語学で成功するには次の3つのステップがあります。 1. 学ぶ決心をする 2. 学習を始める 3. 継続する 3つ目が成功の鍵になりますが、一番難しいことでもあり、多くの人が数か月であきらめて しまいます。長い期間勉強を続けている人でさえ、どのくらい学習する必要があるのか分 かっていないことがよくあります。週に2、3回英会話スクールに通うだけでは十分ではあ りません。言語を話すのは技能です。他の技能と同様に、上達したければ毎日練習するし かないのです。 「毎日2時間も英語を勉強する時間がない!」という人もいると思いますが、エスカレータ ーの例を思い出してみてください。エスカレーターが下るスピードと同じ速さで上ってい たら前に進むことはできません。途中でかけ上がると1、2歩先へ進むことができ、それか ら元のスピードに戻ればその位置を保つことができます。英語学習にも同じことが言えま す。例えば、毎日数時間の学習を2、3週間だけ続けてみてください。そうすれば次のレベ ルへ進むことができます。その後、何かしらの勉強や練習を続けていれば、そのレベルを 保つことができます。数週間後、または数か月後に同じように集中学習をすればいいので す。これを繰り返していくうちに、だんだんとレベルアップすることができるでしょう。 現実的な目標を立てるのも大切です。「映画を字幕なしで見れるようになりたい」と言う人 はたくさんいますが、これは全く非現実的な目標です。英語圏に住み、毎日英語を使って いる人でさえ、映画やテレビの内容を全て理解することはできません。もっと実現可能な 目標を設定した方が学習を継続しやすいでしょう。目標を立てるときは先生に相談してみ るのもいいと思います。 ビギナーのうちは、短期間に上達するのは難しいことではありません。毎日勉強と練習を 続けていれば、数か月でほとんどの日常会話を身につけることができるでしょう。しかし、 レベルが高くなれば高くなるほど、上達するにはさらに努力が必要になります。 言語は人間の脳が作り出したものなので、人間はどの言語でも習得することができます。 英語をマスターするのに特別な能力はいりません。勉強が得意である必要もありません。 必要なのは、一生懸命に勉強しようとする意志だけです。それがあれば語学で成功するこ とができます。
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