破壊予知システムの開発と構造部材長期保証システムの構築に関する研究

破壊予知システムの開発と構造部材長期保証システムの構築に関する研究
一第5報,振動および衝撃の解析を目的とした加速度測定システムの組込一
機械金属部金属研究室
玉井富士夫
前年度まで.のAEおよび動ひずみ測定に基づく破壊予知システムに,振動および衝撃の解
析を目的とした加速度測定システムを組込み,高速振動の検出,解析能の向上に努めると
ともに,材料の不安定破壊のような高速破壊挙動に基づく高速振動を対象とした検証実験
を行った.結果,本加速度計測システムはこれまでのシステムでの課題であった高速振動
の評価に十分対応でき,これまでに開発したシステムと併せて,破壊に関する信頼性の高い
総合評価システム機器が開発できた
近年,装置,機械および構造物の高速化・高性能化
および複雑化が進み,機械装置等に破損,破壊事故が
発生した場合の損失は直接的にも間接的にも非常に
⑦
大きくなっているにもかかわらず,疲労破壊や環境破
壊(応力腐食)の発生件数は,機械装置の高速化・高
性能化も手伝って,いっこうに減少する気配を見せな
い.この傾向は県内の機械装置メーカーにおいても
'鷲沙'御、・
加速度センサ
デジタルオシロ(既存)
4)を行ってきた.それらの内容はAE法を応用した
そこで本研究では,本開発システムに振動および
衝撃の解析を目的とした加速度測定システムを組込
DC12V電i原
ロロロロ
去4年間に渡り,機械・構造物の破損,破壊をモニタ
リングするシステムの開発に関する一連の研究1)
これら一連の開発研究の中で,本開発システムは振動
および衝撃といった高速変動の検出,解析に対して不
十分であることが課題として残った
1 1
000
同様であり,疲労破壊や環境破壊に対する効果的対策
力阿金く望まれている.このような背景から,我々は過
破壊予知システムの開発1)匝力ひずみ測定法を応用し
た損傷モニタリングシステムの開発2),開発システム
を用いた損傷データの収集3)および実機を対象とし
た開発システムの実用性の評価4)に整理できるが,
@冒邑
1.はじめに
今年度組込部
図1 既存システムに組込んだ加速度測定システム
おおよそ2 Vの定格出力が得られるようになってい
る.このセンサからの出力端子を既存のデジタルオ
シロスコープの入力部ヘ結線し,容易に加速度の測定
が行えるシステムを構成した
ここで,加速度Gと振動の振幅および振動数には式
a)の関係が成り立つ
G = 4 a π 2 f 2 /" 9800
み,高速振動の検出,解析能の向上に努めた
(1)
ここで,
G :加速度G, a :片振幅 mm ,f :振動数 HZ
2.組込んだ加速度測定システムの概要
図1に組込んだ加速度測定システムの概要を示す.
センサは定格容量= 10OG (980.665m/S2),定格出力
3.システム検証実験
=2.0I V,応答周波数範囲= 0 B50HZ,一方向タイ
3.1 実験方法
検証実験はセンター保有の設備機器の中で最も高
プの欄共和電業製ASV、10OGAであり,X,Y, Z方向の
測定に対応させるため,個数は3とした
速の衝撃がかかる機器のーつである図2に示す材料試
このセンサは増幅器を内蔵しているタイプであり,図
中に示したDC12V電源のみを別途用意するだけで,
験機(島津製作所製UMH・F5Q最大容量50okN)を対
象に行った.鉄鋼材料等の引張試験において,材料試
-11-
験機には,試験片の破断(不安定破壊)に伴い,試験
片破断直前まで作用していた荷重(カ)が瞬時に解放
され,それに伴い高速の振動 q咸衰)が生じる.セン
ター保有機器の中で,本システムの検証実験に最適な
装置と考えられる
図3に加速度センサを取付けた位置を示す3つの
れひずみゲージ貼付用接着剤で取付けた.なお,引張
試験はZ方向単軸の試験であり,それに伴う振動もほ
とんどZ方向単軸と想定できるため,本検証実験もZ
(垂直)方向のみを対象とした
ここで,本検証実験では,検証と併せて,試験片の寸
加速度センサは,試験片を保持しているクロスヘッド
法を変化させて,破断荷重を変化させ,加速度センサ
の出力電圧信号の違いについて検討した.測定およぴ
チャック部近傍に(田,試験機ベッドのクロスヘッド
デジタルオシロスコープ出力条件は以下のとおりで
を支えている支柱近傍に(b),試験機全体を保持して
ある.①検出信号種類:AC,②出カレンジ:士2.5V,③
いるアンカーボルト近傍のべース鉄板に(C)それぞ
チャート送り速度:10omm太,④取込信号(処理方式)
アナログ
3.2結果および考察
鄭
、捻
図4に異牙井奉鋼SD295ADI0試'験片が破断したとき
に得られた電圧信号変化を示す.(田がチャック部近
傍の(b)がベッド部の(d がアンカーボルト近傍の
発
コ、
ミ'.一'J
それぞれ結果である.試.験片の破断に伴う34kNの荷
、一
1
ず.嘉・
クロスヘット
重(カ)解放によって,瞬間的な電圧の発生が認めら
れ,(田部において最大の 126G (1.238km心2)の加
速度を検出している
チャック
ゞ
支井
試験片
券
ここで,本使用加速度センサの許容加速度は20OG
であり,(田部では,これ以上の大きさの試験片を用
いた試験はセンサを破損してしまう恐れがあるため,
以降の試験は(b)および佃部での測定とした
チヤック
1才
珪.
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図ヌこ異形棒鋼SD295A,D19試験片が破断したとき
に(b)および佃部で得られた電圧信号変化を示す
クロスヘット
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^^
一一一
黒荒詠
る.また,減衰までの時問も DI0の試験片の約25mSに
比ベ,約 10omS と長くなっている
表Hこ本検証試験結果の整理をまとめて示す.なお
図2 万能材料試験機
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(b)ベッド支柱近傍
(a)チャック部近傍
図3
加速度センサ取付け位置
-12-
(C)アンカーボルト近傍
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試験片断面積が大きくなったことに伴い,試,験片破
断時の荷重(カ)も 125kN と大きくなり,(b)および
(C)部ともに発生電圧はほぼ比例的に大きくなってい
2.5
2.5
Eヨ
ン
出懐
0
区四
ン
出腰
・2.5
時間
0
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f1
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S
2.5
区四
ン
・2.5
出腰
時問
0
S
2.5
圧ヨ
・2.5
時間
S
2.5
ン
製
団腰
0
・2.5
図4
時問
0
出懐
>
ミ
(C)
・2.5
S
時間
20oms
DI0異形棒鋼破断時に観測された加速度
センサ出力波形
図5
S 20oms
D19異形棒鋼破断時に観測された加速度
センサ出力波形
表1 万能材料試験機による異形棒鋼引張試験を用いて行った検証試験結果
試'験片
種類
平均破断
イ可重 kN イ可重 kN
平均最大
DI0
373
31.0
DB
67.0
56.0
D19
163
(田チャック部
(b)ベース部
(d アンカー部
平均最大加速度m/舒 平均最大加速度m/S. 平均最大加速度 m/S.
1238
125
,表中の数値は種類毎に3本の試験片を実験している
が,その平均値である.試験片の引張試験での試験片
平均減衰
時問
nls
123
153
25
337
129
50
465
950
100
るので,検出される加速度は比例的に大きくなる.本
検証試験においても破断荷重と測定された最大加速度
の破断(不安定破壊)に伴い,試験片破断直前まで作
にはほぼ比例の関係が成立している.また,破断荷重
の大きさと振動減衰までの時間にも比例関係が成立し
用していた荷重(カ)が瞬時に解放されることで高速
ている
の振動が生じ,結果として大きな加速度が検出される
力は質量と加速度の積であるから,破断時の荷重が
以上のように本加速度測定システムはオオ料の不安
定破壊のような高速破壊挙動に基づく高速振動を十分
大きくなると,試験機(構成部分)の質量が一定であ
に評価できており,前年度までの課題をほぼ解決した
破断を利用した本検証試験では,前述のように試験片
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物・プラントメーカーを中心に更なる活用を図って
と考えられる
いきたい
4.おわりに
前年度までのAEおよび動ひずみ測定に基づく破
壊予知システムに,振動および衝撃の解析を目的とし
た加速度測定システムを組込み,高速振動の検出,解
析能の向上に努めるとともに,材料の不安定破壊のよ
うな高速破壊挙動に基づく高速振動を対象とした検
証実験を行った.結果,本加速度計測システムはこれ
までのシステムでの課題であった高速振動の評価に
十分対応でき,これまでに開発したシステムと併せて
,破壊に関する信頼性の高い総合評価システム機器が
開発できた.今後は,県内の機械装置メーカーや構造
参考文献
1)玉井,平成7年度佐賀県工業技術センター研究報
告書, P6 (1995)
2)玉井,平成8年度佐賀県工業技術センター研究報
告書, P5 (1996)
3)玉井,平成9年度佐賀県工業技術センター研究報
告書, P5 (1997)
4)玉井,平成10年度佐賀県工業技術センター研究報
告書, P5 (199幻
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