VictorionReport (経済予測編) 2008/02/24/SUN/号

VictorionReport
(経済予測編)
2008/02/24/SUN/号
不動産の状況判断と経済予測は切っても切れない関係である。
不動産を売却する方はそうでもないが、購入する方は殆ど高額のファイナンス
を長期にわたり使うため、将来の景気や金利の動向が非常に気がかりとなる。
その意味でも、経済予測は極めて重要となる。
私は、一昨年(06年)9月18日付で、
「VictorionReport経
済予測編」を書いた。
5項目について書いて、80%は当たったと思う。
その5項目と予測の要点は、下記の通りである。
1.金利上昇について
少しずつ上がるにせよ、大幅には上がらない。
2.アメリカ経済の今後
住宅ローンによる景気上昇が限界にきており、全体としてそろそろ下降線
に入ってきている。
3.為替の変動
原油に告ぐ変動係数として、大きく世界経済に影響する。
4.中国経済
様々な矛盾を孕みながら、拡大していく。
5.法人税と中小企業経営
銀行の金は中小企業にも回っていく。
◯肝心の不動産価格は当面順調に推移していく。
大体上記のように予測し、大体当たっていると思う。しかし、不動産価格に関
しては、昨今ラクダの背中のようにアップダウンする時代に入り、現時点はダ
ウンの流れに入ってきている。
今回改めて経済予測を書くにあたり、まず、アメリカ経済に注目したい。
と同時に、「Victorionreport―060918」
に記載した、アメリカ経済に対して書いたことを再現してみよう。
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―3頁・13行~16行―
日本経済に決定的に影響するのが「アメリカ経済」であるが、アメリカ経済を
下支えしてきた住宅景気(購入による景気刺激と値上がりを見込んで不動産担
保ローンをどんどん増やし、買物をする)も限界に到達してきたようだ。
―3頁・31行~33行―
また、ビジネスにおいても、アメリカの象徴ともいえるGMやフォードが青息
吐息である。そろそろ下降線に入ってきているのではないだろうか。
と書いたが、其の通りになってきている。
ここで、住宅ローンが不良債権化する問題をさらに分析してみたい。
当時の新聞紙上によると、アメリカの低所得者用の住宅ローン=サブプライム
ローンに焦げ付きが発生し、それが拡大して金融不安を招来しそうになり、欧
州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)は2007年8月9日、
10日、13日の3営業日で何と40兆4000億円を投入したという。日本
は日銀が1兆6000億円を投入したそうだ。欧米日の3ヶ国で42兆円を資
金供給して市場の安定化に努めるのだそうだ。最近では、9・11同時テロの
時にやはり大量の資金供給があったというが、それでも42兆円までは投入し
なかった。
アメリカの住宅ローン全体の中で、問題のサブプライムローンの割合は15~
7%位だから心配ないという論調が当時日経新聞等に記載されたが、今それを
信じる人はいないだろう。
このサブプライムローンの割合が現在何%だから安心できて、何%を超えたら
危ないという見方はいわば経済学的見地といえるだろう。しかし、現実の景気
を動かすものは、もう一つの「心理学」という要素抜きには考えられないので
ある。この心理学という要素からこの住宅ローン問題を見てみると、非常に大
きなアメリカの病弊が見えてくる。
それは、「待てなくなったアメリカ人」ということである。
1億円の不動産を所有していて、既に8000万円の住宅ローンがあるとする。
そこに銀行から「後1000万円迄担保余力がありますからお貸ししますよ。
使い道は自由です。」と連絡が入る。(或いは自ら℡して担保余力の拡大を確認
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する)そこで、早速1000万円借金する。これを別のものに再投資するなら
まだいいのだが、その1000万円を消費してしまうわけだ。飲んだり食った
り車を買い替えたり。
暫くしてその不動産がさらに値上がりし、1億3000万円になる。
そこにまた銀行から連絡が入り、「さらに2000万円お貸ししますよ。」
再び飲んだり食ったり着替えたりと。
一言でいえば、待てないのである。この調子でいけば、いつかはおかしくなる
だろう。不動産が多少なりとも下がりはじめると一気に不良債権が拡大してい
く。とにかく、貯金をするとか、欲しいものでも手に入れるまで待つことがで
きない。
この傾向は随所に現れている。例えば、生命保険の死亡保障部分(金額)を自
分がまだ生きている内に第三者に売り渡し、換金するとか。
不動産の評価鑑定などにもこの思考法が使われる。将来価値を算出して現在価
値に置きなおす等とのたまう。そんな、先のこと等わかるわけないではないか。
簡単にいえば、「奇道」だと思う。そして、「奇道は続かず」といわれている。
孫子の兵法に「正を以って合し奇を以って勝つ」というのがある。
勝負は正攻法が大切であるが、正攻法だけではあらゆる相手に勝ち、高い勝率
を追求することはできないだろう。例えば、相撲でいえばその基本は押しであ
り、まず、正面から当たった押し込むことが第一である。そして、相手の体勢
を崩してから足をかければ相手がひっくり返る確率が高くなる。これを「正奇
併用の法」という。
逆に押しが弱く、自分の体制が崩されながら無理に足をかければ見事に自らが
ひっくり返ることだろう。これは、「策士策に溺れる」に共通する。
さて、アメリカ経済の話に戻ると特に「金融機関、金融関係」において、奇に
走りすぎ、策に溺れた感がある。低所得者層を対象にハイリスクの住宅ローン
を組成し、他の金融商品に織り交ぜて実態を不透明とし、証券化して幅広くば
ら撒く等のやり口は、まことにトリッキーということである。
また、先に述べた「待てなくなったアメリカ人」であるが、これは現代人とい
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う言葉にも当てはまる現象ではあるが。
具体的にいうと、広告が発達し過ぎ、あれも欲しくなるこれも欲しくなるとい
う心理状態に常に追い込まれ、
「必要なお金は今すぐご用立てします」というカ
ードローンの台詞に乗せられ、た易く借金するという状況が蔓延し、貯金はほ
とんど無いという状態である。国民の大多数がこういう状態であれば、その国
力は当然落ちていくだろう。これが、現在のアメリカの実態ではなかろうか。
私の見方はかくの通りなので、去年の夏表面化した「サブプライムローンの破
裂」問題なども、オール住宅ローンの20%弱だから、最終的に体勢に影響し
ないなどという立場を当時主張する方が結構いたが、全く同意しなかった。
ここで、日本経済に直結するアメリカについてもう少し考えてみたいが、まず、
アメリカ社会は4つの階層に分かれていることを知ることが必要になる。
この4階層の説明については、経営戦略コンサルタント小林由美氏の-「超・
格差社会アメリカの真実」日経BP社発行・発行日2006年9月25日-に
記載されている基礎的データが大変わかりやすい。
第1階層=超大金持ち。ビル・ゲイツに代表されるような桁外れの金持ち群の
ことであり、資本家等である。アメリカ国内に400所帯前後存在すると推定
されている。純資産10億ドル(1200億円)以上の超大金持ちと5000
所帯と推定されている純資産1億ドル(120億円)以上の金持ち群のことで
ある。
第2階層=超プロフェッショナル&プロフェッショナル。35万所帯位。
弁護士、証券会社のディーラー、プロ経営者等。この階層は第1階層の超大金
持ちをサポートすることにより、非常なる高額報酬を得ている。超大金持ちの
取巻きといってもよい。純資産200万ドル~1000万ドル(2億4000
万円~120億円)程。
第3階層=一般大衆。この一般大衆は、現在確実に所得が減っている。中間層
というより中間下層といった方がよい状態である。60~70%の所帯。
第4階層=下層&極貧階層。日々食うや食わずの生活からホームレスにいたる
までの人たちで、全アメリカ人の25~30%。
そして、この第4階層は日々増えている。
サブプライムローンの融資対象者は第4階層の下層の人達ということになる。
サブプライムローンのワンランク上のローンを「オルト A」というそうだが、
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昨日迄オルト A だったのが、今日から所得水準において実質サブプライムとい
うようなことがおきている筈である。こういう状態を考察すると、アメリカの
未来について、少なくもここ数年は下降線を辿ると思わざるを得ない。
◯故にドルは当面下がると予測する。
ここで、少し今年のアメリカ経済を予測してみたいが、まず、イラク戦争に対
する反戦運動が相当活発化する筈である。
また、今年は大統領選の年であるが、さて、誰が新しい大統領になるか?
民主党のバラク・オバマ氏が当選する可能性は十分にある。
◯ここで、一つ予測をしておくが、オバマ氏がもし大統領になったとすれば、
アメリカの経済状態はさらに相当悪化しているということである。
◯そして、これが非常に重要であるが、
「アメリカが日本に寄りかかってくるだ
ろう!」ということである。
さて、ここでもう一度話を「サブプライムに象徴されるアメリカの住宅ローン
問題」に戻してみよう。そして、一昨年の9月18日時点で、何故私が「アメ
リカの住宅ローンによる景気拡大が限界である」と判断したかである。
◯今、世界は2種類の核爆弾を抱えている!
1980年代後半であると思う。アメリカのサザンメソジスト大学経済学部教
授のラビ・バトラ氏は自著にこう書いた。
1種類の核爆弾はいわゆる「核爆弾」である。それに、対しもう一つの核爆弾
とは何かというと、多国籍金融機関が音頭をとって開発したヘッジファンドに
代表されるようなデリバティブ等の「金融派生商品群」のことである。
ラビ・バトラ氏は今から10数年前に、この金融派生商品群が今後さらに発展
拡大し、世界の金融界、ひいては世界経済そのものを震撼させる核爆弾となる
と予測したのである。バトラ氏が予言した頃は、ジョージ・ソロス率いるクォ
ンタムファンドの全盛期だったと思う。今ほどファンドなる言葉がポピュラー
になる前の、原点の時期のことである。
当時、クォンタムファンドの出資者は筋金入りの全世界大金持ちで、欧州の代々
の貴族や中東の産油国の大富豪が中心であり、個人でありながらキャッシュで
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200億円から300億円の金を動かせる(ビルや土地を多く保有し、資産は
凄いが手元の現金は大したことはないというタイプは入れない)という金持ち
が、300人位メンバーになったという。
そして、今ではお馴染みとなった「レバレッジ(投資倍率)を効かせる」とい
う手法で金に金をうませ莫大な利益を上げた。
最近のヘッジファンドでは、非常に複雑な数理計算と手法により、貪欲に利益
を追求するようであるが、クォンタムファンド・スタート時は、シンプルなレ
バレッジ手法より始まったようだ。
ここで、一例を挙げてみよう。
山田太郎君(仮名)が手元に1億円もっていたとする。この金を元手に他人の
褌を使ってさらに設けることを考える。山田太郎君は金持ちの家に生まれたか
ら家族親族が金持ちであった。まず、親、兄弟、親戚を9人まわり、1億円ず
つ「1年間無利息で借りる」ことに成功したとする。元手は10億円になった
わけだ。次に1年間で年利5%利回りの金融商品に投資する。1年後に500
0万円の金融利益をもたらすから、元手の1億円に対し、50%の利益を生ん
だことになる。そして、9人の家族、親戚には一人1億円ずつ返金する。
年利回り50%ということは大変なことである。
翌年、山田太郎君はもう一度9人の家族、親戚より1人1億1年間、金を預か
ろうとする。しかし、家族、親戚の間で山田太郎君がどうやら大儲けしたらし
いという噂が広がり、今度は無利息ではダメとなった。
そこで、1年間に3%の利回りを保証し、年間6%に回る金融商品を見つけ、
投資した。1年後に6000万円の利益を手に入れ、9人の出資者に1人3%、
300万円ずつ配当を払い(300万円×9=2700万円)、結果手元に33
00万円が残った。今度は利回りが落ちたが、それでも33%に回った。
これでも非常なる高収益である。
さらに、この年間利回りの他に売却益、キャピタルゲインを得ることもある。
例えば、山田太郎君が1年間6%の利回りを得た時にその金融商品を売却した
ら10%アップで売れたとする。身内の投資家には元金を返金して3%、利息
としては計2700万円払うだけだから、13300万円、1億円に対し13
3%の利回りとなる。
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すっかり気を良くした山田太郎君は、
3年目に入り、山田太郎君は再々度同じことにチャレンジした。9人の家族、
親戚も同じように出資した。しかし、今度は投資した金融商品が崩壊し、手金
1億円と集めた9億円がゼロになった。仕方なく、山田太郎君はインターネッ
トで「夜間引越し」専門業者に電話することになった。
しかし、折角夜逃げして到着した転居先に、身内である9人の投資家から、
「ど
うしてくれるんだ。このままでは絶対に済まさないぞ!」という連絡が入った。
さて、山田太郎君はどうしたらいいのだろうか???
この山田太郎君の例え話は、わかりやすくするために現実にかかる様々なコス
トを無視している。「大きな儲け話を吹き上げる」にはハッタリが欠かせない。
一等地にある高い家賃の豪壮なオフィスビルに入居しているとか。また、ヘッ
ジファンドの凄腕ファンドマネージャーには桁外れの成功報酬を支払わねばな
らないといわれている。
そういう経費も相当かかる。故に血眼になって安い金利の金を集め、高い利回
り商品を探すことになる。
何はともあれ、金に金を生ませることは本来非常に難しいことであり、単発的
に大儲けすることはできても、継続的に大儲けすることは至難の業である。
私は、昨年8月に仏バリバ銀行の傘下のヘッジファンドが破綻したことを引き
金に一気にサブプライムローン問題が噴出し、8月9日から僅か1週間の間に
ヨーロッパの中央銀行とアメリカのFRBで40兆4000億円を金融機関宛
の流動資金として、投入したというニュースを見て、とうとう金融核爆弾が1
個、地下で爆発したなと思った。
そして、ここで大事なことは当時ECB(ヨーロッパ中央銀行)とアメリカの
FRB(連邦準備制度理事会)との双方で投入した流動資金のうち、ECBが
90%位を投入したということである。日本の日銀の資金投入量は1兆600
0億円であった。日本が少ないのはよくわかる。日本の金融機関は、金融派生
商品群にあまり手を染めていなかったからである。
しかし、何故ヨーロッパの中央銀行の方が多く資金投入をしたのであろうか?
ヨーロッパ自体が、全体として金融立国を目指し、挫折したということかもし
れない。であるならば、「ヨーロ」は下がる筈である。
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さて、ここで「自動車産業」という観点から世界の経済力を考えてみたい。
私が、一昨年9月にアメリカもそろそろ下降線に入りかかったと考えたのは、
GM、フォード、クライスラーのアメリカ車が売れなくなってきていたからで
ある。まず、自動車産業を有する国は限られている。世界には164ヶ国程の
国家が存在すると思うが、自動車を造り、自国及び全世界で販売している国々
は多くは無い。
ヨーロッパを見ても、オランダ、ベルギー、イスラエル、デンマーク等、車を
造っていない国のほうが多いのである。
自動車を造り自国でまず販売するためにはかなりの国民数が必要である。また、
現代の自動車はハイテク部品の塊だから、工場労働者にも一定以上のインテリ
ジェンスが要求される。しかも、自動車は部品点数も多く、裾野も広い。様々
な分野における工作レベルが高くないと競争力のある車は造れないことになる。
自動車を造って全世界で大量に販売できれば、これは国家のGNPやGDPを
大きく押し上げる要因となる。何故トヨタが利益日本一かといえば、価格の高
い物(車)を大量に(全世界)売っているからということになる。高価格商品
大量販売に成功したからである。
再度アメリカ経済に話を戻すとして、昨年GMが4兆4000億円の赤字を計
上した。4兆4000億円の赤字とは、目茶苦茶な数字ではないだろうか。
つまり、現時点でのアメリカは競争力のある自動車は製造できないということ
である。これも、私がアメリカの衰退を予測する一つの重要な根拠である。
次に、自動車産業という角度からヨーロッパを眺めてみても、こちらもパッと
しない。ドイツだけがベンツ、BMW、フォルクスワーゲン&アウディ、ポル
シェ等の錚々たる自動車メーカーを有するが、フランスのルノー、シトロエン、
プジョー、イタリアのフィアット等は全世界的にはさほど売れていない。
フェラーリの超高性能には誰もが一目置くが、しかし、大した販売ボリューム
とはならない。イギリスでは、過去にロールスロイス、ベントレー、ジャガー、
等と垂涎の的とされる超高級車を製造していたが、今やそれらの名門メーカー
は総て外資の傘下に入った。
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ヨーロッパでは、各地で歴史有る文化的な製造業が、どんどん中国人のものに
なったり、労働者が中国人にとって代わられているようだ。文化と福祉を標榜
する国民国家に、一日15~18時間働くような中国人労働者が押寄せ、共産
国家でありながら労働組合を認められない、過酷労働に耐性を持つ中国人と労
働力競争をしても叶わないのも無理は無い。
◯だから、金融立国を経済の柱にしようとした(特にイギリス)のではないか
と考えるのだが、本当のことはわからない。
ただし、これもまた「ユーロが下がる筈である」という論拠の一つである。
アメリカ経済が不調となるということは、新年早々の有識者のコメント等を見
ても、概ねの論調である。
私は、先にアメリカが日本に寄りかかってくるだろうと予測したが、これは既
に昨年末に現実となった。アメリカ最大の金融機関、シティグループがこのサ
ブプライム不良債権処理を目的とする組織を創立し、日本のメガバンク3行に 1
行5000億円ずつ出資してくれと要請してきたことである。日本の三菱、三
井住友、みずほの3メガバンクは断ったが、今後似たようなことが多分野で起
きる可能性がある。
それに、アメリカが今回の金融危機を通して革命的に変化する可能性がある。
まず、アメリカの金持ちの構造が変わる可能性である。先に「超・格差社会ア
メリカの真実」の引用により、アメリカの金持ち分布図をご紹介したが、これ
も2008年以降変わる可能性がある。2005年~2006年のデータでこ
の本は書かれた。この時期はアメリカ人中1%の超大金持ちがアメリカの富の
40%を占有するという時代であった。つまり、大袈裟にいえば「一将功成り
て万骨枯る」に近い状態である。その一将功成った金融資産家の財産がサブプ
ライムローン問題によってグラついたということだと思う。平成20年2月2
4日時点で、アメリカの大統領候補は、共和党のマケイン、民主党のヒラリー
クリントン、同民主党のオバマの3氏であるが、
「万骨枯れたかなりのアメリカ
人」が問題の深刻さに気づき始め、オバマ氏を支持し始めているということだ
と思う。
重複となるが、オバマが大統領になったとすれば、アメリカの経済不況はより
深刻ということになるだろう。そして、
「ピンチはチャンス」であるから、正し
く対応すれば5年後位には劇的に復活する可能性もある。
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かつて、日経新聞の「私の履歴書」の中で、アメリカ駐日大使であったマンス
フィールド上院議員が、日米関係を世界で最も重要な2国間関係と定義してい
たが、招来寄り掛かることまで考えていたとすれば、驚くべき卓見ということ
になる。
さて、アメリカが風邪を引けば日本は肺炎になるといわれてきたが、果たして
そうだろうか?
私はそうは思わない。日本は今まで主として技術製品を世界で売りまくってき
たが、現在、目に見えないノウハウ等の輸出にも取組んでいるのである。
私が知っている方で、トヨタ自動車の製造ノウハウをモデルケースとし、全世
界の主要製造業関係者に「カイゼン」のノウハウをコンサルティングしている
方がいる。BMWやポルシェの幹部も教えを請うてきている。
中国やインド等の新興発展国に工業製品を輸出することも重要であるが、今後
は製品プラスコンサルティングをセットにして輸出することを通し、日本が伸
びていく可能性は大いにあると思う。
さらに、アメリカが下降線に入っても中国、インド、ロシア、ブラジル等は確
実に伸びてくると思う。それらの国々は皆日本のお客さんでもあり、日本製品
を売込める相手である。但し、アメリカの国力低下と新興国の勃興にはタイム
ラグが発生するから、そのタイムラグが日本の経済状態及び不動産価格と半年
遅れで直結するだろうということである。
それらのことを総合的に考えると、今年、来年辺りと一時的に多少不動産価格
は下がるかもしれないが、大幅に崩れることは無いと思う。
例えば、都心部の高級住宅地にある中古マンションで坪単価が650万円とい
う物件は、現在いくらでもある。それが、20%下がって520万円になった
といって、その価格を安いといえるだろうか。まだまだ、十分に高いのである。
そして、再び値上がりすることになるだろう。しかし、不動産は値が上がれば
いいというものではないこともよく考えるべきだと思う。
いずれにせよ、不動産価格もアップダウンするという至極当たり前の現象が続
いていくだけである。
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◯最後に、日本は今後の5~8年位は、現状の経済力を保てるだろう。
しかし、毎日新聞紙上等に「親が子を殺し、子が親を殺す」或いは孫や祖父母
迄からんだ殺人事件の記事が載り、その数が増えていくような国家が繁栄する
筈がない。
「心の問題、精神世界」をどう立て直すかが、つまるところ不動産価
格にも繋がっていくことになると思う。さらにいえば、日本人が「心の建直し」
に成功すれば、21世紀は日本の時代になるかもしれない。
以上
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