(2)渡りによる野鳥の分類 鳥類は「渡り」をすることがよく知られていますが

(2)渡りによる野鳥の分類
鳥類は「渡り」をすることがよく知られていますが、すべての鳥が渡りをするわけでは
ありません。一年中同じ地域に暮らす鳥をその地域の「留鳥」と呼びます。また、夏に渡
ってきて繁殖をする鳥を「夏鳥」
。冬に渡ってきて越冬をする鳥を「冬鳥」。春と秋に渡り
の途中で立ち寄る鳥を「旅鳥」と呼んでいます。前述した、低木層に暮らす野鳥として紹
介したのは留鳥たちです。
オホーツクに見られる代表的な鳥たちを紹介しましょう。
オオワシ(冬鳥)
ハクチョウ(旅鳥)
オオジシギ(夏鳥)
翼を広げると 2.5m、世界最
オオハクチョウとコハク
大級のワシ。夏にアムール川
チョウがある。アムール川流
ラリアまで渡りをする。また、
流域で魚を主食として繁殖す
域の湖沼などで夏に繁殖し、
繁殖期には、上空で「ギーコギ
る。冬になると湖の凍結、流
秋に北海道へ渡ってくるが、
ーコ」と鳴いた後、急降下し、
氷の南下に伴って多くが北海
湖沼が凍るため、多くは更に
「ガガガガガ」という羽音を立
道へと渡ってくる。
南へと渡りをする。
てる特徴を持っている。
ノゴマ(夏鳥)
ノビタキ(夏鳥)
冬には赤道を越え、オースト
ヒバリ(夏鳥)
スズメより 1 回り大きい。
スズメぐらいの大きさ
打ち上げ花火のように上空
のどの赤が特徴であるがメ
で、オスは胸のオレンジ色
に飛び出し、ホバリングをし
スにはない。昆虫を好んで食
が特徴であるが、秋にはき
ながら、けたたましく鳴く姿
べる。やぶを好む野鳥であ
える。昆虫を好んで食べ、
は、まさに春の風物詩である。
る。
やぶを好む野鳥である。
草原の地面に巣を作る。
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(3)種子の移動戦略
植物たちは、春に芽を出しできるだけたくさん光合成をして、葉や茎を伸ばして成長し
ます。そして、多くの植物たちが秋に種をつけます。種が親植物の下に落ちるだけで、う
まく子孫が残るのでしょうか。ほとんどの場合、親植物は根に栄養を蓄えて、来春には芽
をだします。その横で子孫が種から発芽したとしても、親植物のように素早く成長はでき
ません。成長が遅いために日陰に入ってしまうことになるのです。植物にとって光りが得
られないと言うことは致命的なことです。種をただ下に落とすことは、うまく子孫を残
すことにはならないのです。
実際に植物たちがつける種を思い浮かべてみましょう。タンポポの種は綿毛がついてい
ます。ブドウの種は甘い果肉の中に入っています。
種には、ただ下に落ちるのではなく、様々な方法で移動する仕組みがあるのです。
①カエデやウバユリ
羽のついた種で、風によって移動します。
②ススキやタンポポ
綿毛のついた種で、風によって移動します。
③ヤマブドウやナナカマド
果肉をつけた種で、鳥などに食べられ、果肉だけ消化され、種はそのまま排出される
ことで移動しています。(鳥と植物の共生関係)
④ドングリやオニグルミ
ネズミやリスに種そのものを食べられてしまいます。これだけでは子孫を残すことがで
きません。しかし、ネズミやリスは秋にたくさんの木の実を土に埋め、冬に掘り返して食
べるということをします。もちろん埋めたすべての木の実を掘り返すわけではありません。
食べられなかった木の実は春には芽を出すことができるのです。
ネズミやリスは、自分の何代も先の子孫のために、食料をつけてくれる木の植林をして
いることになるのです。(ホ乳類と植物の共生関係)
ナナカマドの実を食べにきたツグミ
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種子の観察
身近な種を観察し、その移動戦略を予測してみよう。
スケッチ
スケッチ
スケッチ
移動戦略
移動戦略
移動戦略
その他
その他
その他
スケッチ
スケッチ
スケッチ
移動戦略
移動戦略
移動戦略
その他
その他
その他
スケッチ
スケッチ
スケッチ
移動戦略
移動戦略
移動戦略
その他
その他
その他
感想
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(4)エゾシカの現状
エゾシカを捕食する動物は、現在ではクマぐらいしかいませんが、クマは雑食性で好ん
で多くのシカを食べることはありません。100 年以上前にはエゾオオカミがいました。北
海道の開拓期にエゾオオカミは、人間に害獣として駆除され、絶滅しました。おそらく、
それ以前は、エゾシカとオオカミの捕食-被食の関係で、ある程度の個体数の安定があっ
たと思われます。オオカミが絶滅後、エゾシカは爆発的に増えることにはならず、ハンタ
ーによって大量に捕獲され一時は絶滅が心配されるほどでした。数が減ると狩猟を禁止し、
増えると解禁するということが繰り返されてきましたが、1970 年代頃から増え始めました。
そして、1990 年代には道東・道北を中心に激増します。狩猟を解禁してもハンターが少な
くなっており、エゾシカの個体数を調節するだけの能力を失っていたのです。
現在のエゾシカの数は、天敵を失いコントロールが効かなくなった状態と言えるでしょ
う。山では、増えすぎたエゾシカに若木が食べられ世代交代ができなくなっています。森
を破壊する状況で、環境を食いつぶしています。さらに、十分なえさがないため、危険で
あっても農地に現れ農作物を荒らす被害も大きくなっています。農地を守るために防鹿柵
を設置する地域も多いですが、かなりの費用がかかります。一方鹿の方も山のえさを食べ
尽くし、冬の間に餓死するものが大変多くなっています。
この問題への対応として、鹿肉を北海道の特産品として売り出し、狩猟をする人たちが
収入を得られるようにする取り組みが進められていますが、ハンターの増加にはつながっ
ていません。また、アラスカなどからオオカミを移入し、天敵を復活させる方法を検討し
ている人たちもいます。
もっとくわしく知りたい!!
北海道森林管理局オホーツクの森
http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/tokorogawa_fc/fieldmap/index.html
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