行政処分を理解してますか?

行政処分を理解してますか?
株式会社のぞみ総研 小峰 望
行政側に対する理解が重要
• 役人だから法律を守ることにこだわる
→ 業界に対し甘いことは言えない
• 考え方は人や立場、タイミングによっていろいろ
→ 相手の心の中を想像しながらお付き合い
→ 法律に従えばよいという発想では対応できない
→ 行政への理解と情報と想像力が重要だが高度な判断
→ 研修は「法律知識」だけでは不充分
行政処分の種類
風営法にもとづいて都道府県公安委員会が
風俗営業者に対して行える処分
• 営業許可の取消し処分
• 営業停止処分
• 指示処分
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風営法26条による許可の取消し
第二十六条
公安委員会は、風俗営業者若しくはその代理人等が当該営業に関し
法令若しくはこの法律に基づく条例の規定に違反した場合 にお
いて
著しく善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害し若しくは少年の健全な育成
に障害を及ぼすおそれがあると認めるとき、又は風俗営業者がこの法律に
基づく処分若しくは第三条第二項の規定に基づき付された条件に違反したと
きは、当該風俗営業者に対し、当該風俗営業の
許可を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて
当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
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行政処分の量定(警察庁:措置基準)
法令違反はA~Hの量定に分類されている。
A)
B)
C)
D)
E)
F)
G)
H)
許可取り消しあり 2月以上6月以下の停止
40日以上 6月以下の停止。基準期間 3月
20日以上 6月以下の停止。基準期間 40日
10日以上80日以下の停止。基準期間 20日
5日以上40日以下の停止。基準期間 14日
5日以上20日以下の停止。基準期間 7日
指示処分に限る
5日以上80日以下の停止。基準期間 20日
平成28年4月27日の国会答弁
4月27日の衆議院内閣委員会において国家公安委員会の河野
太郎委員長が、民進党所属の高井崇志衆議院議員の質問を受
け、回答した。
「型式検定を受けた性能と全く違うものしかなかった、というのは
あってはならないことだし、これは由々しき問題だと思っている。
関係団体が早急に全て回収といっているので、警察としては、こ
れがきちんとやられるように監視をしていく」
平成28年6月9日の行政講話
回収対象遊技機は年内に撤去だと行政は思っている!
回収対象遊技機を設置し続けていると・・・
風営法第20条第1項に違反する(遊技機規制違反)となるので、
当該型式ぱちんこ遊技機を年内には撤去してくれると我々は考
えている。(警察庁)
撤去対象遊技機を外しても、新しい基準の遊技機を不正に釘曲
げをするのなら、なんら変わりがないのではないか?
遊技機に関する風営法違反
遊技機規制違反
遊技機の無承認変更
基準に該当する遊技機を
使用していれば違反
遊技機の変更について
承認を受けなければ違反
行政処分はB量定
行政処分はA量定
40日以上6月以下の
営業停止命令
許可取り消し
又は2月以上6月以下の
営業停止命令
基準期間3月
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量定Aは原則取消し 又は営業停止
①
②
③
④
⑤
⑥
構造設備の無承認変更及び承認の不正取得(9条1項)
名義貸し違反(法11条)
遊技機の無承認変更(法20条10項(9条1項))
年少者接客従事禁止違反(22条4項)
営業停止命令違反(法26条1項)
偽りその他不正な手段による遊技機の変更に係る承認の取
得(50条1項2号)
⑦ 一定の刑法犯その他重大な法令違反(※)
※不法就労助長罪
第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三
百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
2 前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知ら
ないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、
過失のないときは、この限りでない。
行政処分 A量定の考え方
量定がAに該当する場合は、原則として許可
取り消し処分となる
ただし、情状により特に処分を軽減すべき事
由があるときに限り営業停止命令を行うこと
ができる→ 2月以上6月以下
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製造業者遊技機流通健全化要綱
• 平成28年2月1日制定 4月1日施行
• 目的
遊技機の型式の同一性の担保
不正改造(釘調整)の防止
• 結果:メーカーが改造していないことが明確になる
• 大枠は「要綱」で定め、業務委託に関する詳細は
「規程」で定めている。
• 中古機の新設はこの要綱の対象ではない。
新台設置の場合
変更承認申請
出荷+運送+納品
設置確認
点検業者
製造
業者
設置確認業務
行政検査
特例風俗
営業者
承認
販売
業者
特定部品変更の場合
変更承認申請
交換作業
設置確認
点検業者
製造
業者
点検確認業務
行政検査
特例風俗
営業者
承認
販売
業者
特定部品以外の部品変更の場合
変更承認申請
交換作業
設置確認
点検業者
製造
業者
点検確認業務
販売
業者
行政検査
管理者
承認
但し、当分の間のみ。
本来は主任者資格が必要
量定Bの違反
40日以上 6月以下の停止。基準期間
①
3月
不正手段による認定の取得(10条の2第1項)
② 広告宣伝規制違反に対する指示処分違反(16条・25条)
※行政処分の履歴を管理していますか?
③
遊技機規制違反(20条1項)
④ 客引き禁止違反・客引き準備行為禁止違反(22条1項2項)
⑤
年少者立ち入らせ(22条5号)
⑥
未成年者への酒類たばこ提供(22条6号)
⑦ 賞品買取禁止違反(23条1項1号)
⑧
現金又は賞品等提供禁止違反(23条1項2号及び3号)
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量定Cの違反
20日以上 6月以下の停止。基準期間 40日
①
許可条件違反(3条2項) ※許可証の裏側を!
②
営業時間制限違反(13条)
③
広告宣伝規制以外の指示処分違反(25条)
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量定Dの違反
10日以上80日以下の停止。基準期間 20日
① 構造設備維持義務違反(12条)※構造設備基準を確認!
② 騒音振動規制違反(15条)
③ 広告宣伝規制違反(16条)
④ 遊技料金等規制違反(19条)※賞品提供方法の規制も含む
⑤ 遊技機変更届出義務違反(20条10項)
⑥ 従業者名簿備え付け義務違反(36条)
※意外と難しい
⑦ 報告資料提出義務違反(37条1項)
⑧ 立入の拒否、妨害、忌避(37条2項)
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量定Eの違反
5日以上40日以下の停止。基準期間 14日
① 特例風俗営業者の営業所の構造設備変更届出義務違反
(12条) ※マルユウのメリットをご存知ですか?
②
照度規制違反(14条) ※調光設備に注意
③
遊技球持ち出し禁止違反(23条1項3号)
※営業所の範囲に注
意
④
遊技球等保管書面発行(23条1項4号)
⑤
管理者選任義務違反(24条1項)
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量定Fの違反
5日以上20日以下の停止。基準期間
①
変更届出義務違反(9条3項)
②
認定証返納義務違反(10条の2第5項)
7日
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量定Gの違反
指示処分に限る
①
許可証及び認定証亡失滅失届出義務違反(5条4項・10条
の2第5項)
②
許可証掲示義務違反(6条) ※原本を掲示してますか
③
許可証書換え義務違反(7条5項ほか)
④ 許可証返納義務違反(10条1項3号)
⑤
料金表示義務違反 (17条) ※各台ごとに表示していますか?
⑥
年少者立入禁止表示義務違反(18条) ※入り口全部に表示
していますか。
⑦
管理者講習受講義務違反(24条7項)
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量定Hの違反
5日以上80日以下の営業停止等命令
① 条例遵守事項違反 ※条例の規制をご存知ですか?
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欠格事由該当による可能性あり
風営法第八条
公安委員会は、第三条第一項の許可を受けた者(略)について、
次の各号に掲げるいずれかの事実が判明したときは、その許可を
取り消すことができる。
一 偽りその他不正の手段により当該許可又は承認を受けたこと。
二 第四条第一項各号に掲げる者のいずれかに該当し
ていること。
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風営法第四条第一項各号に掲げる者とは①
風営法第49条の罪で懲役又は罰金
• 許可または相続承認の不正取得
• 名義貸し違反(法11条)
• 営業停止命令違反(法26条1項)
風営法第50条第1項の罪で懲役又は罰金
• 無承認変更・承認の不正取得
• 不正手段による認定の取得(10条の2第1項)
• 年少者接客従事禁止違反(22条4項)
• 年少者立ち入らせ(22条5号)
• 未成年者への酒類たばこ提供(22条6号)
許可を取り消すことができる
※ ホール営業に関係しそうな違反のみ記載
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風営法第四条第一項各号に掲げる者とは②
◎一定の刑法犯で懲役又は罰金
刑法第百八十五条(賭博)
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽
に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
刑法第百八十六条 (常習賭博及び賭博場開張等図利)
1 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以
下の懲役に処する。
その他、次の場合
• 不法就労助長罪(入管法第七十三条の二)
• 風俗営業許可の取り消し処分
• その他いろいろ
許可を取り消すことができる
※ ホール営業に関係しそうな違反のみ記載
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全滅のリスク
全店
許可取消
罰金刑
確定
または
許可
取り消し
処分
・許可取消処分
A店
B店
C店
・罰金刑(49条と50条1項等)
のいずれかが発生すると
全店舗許可取り消しがありうる
「許可取り消し」と「法人の罰金」は
絶対に回避しなければならない
一発営業停止又は取消しとなる場合とは?
1.
同種の処分事由に当たる法令違反行為であって悪質なもの(法に掲げる罪に当
たる違法な行為及び制令で定める重大な不正行為を含む。)を短期間に繰り返
し又は指導や警告を無視する等、指示処分によっては自主的に法令を遵守する
見込みがないと認められる場合。
2.
指示処分の期間中に、当該指示処分には違反していないが、当該指示処分の
処分事由に係る法令違反行為と同種の法令違反行為を行った場合
3. 罰則の適用がある法令違反行為によって検挙された場合(起訴相当として送致
した場合に限る。)
4. 短期20日以上の量定に相当する処分事由(法に基づく条例の違反に係る処分
事由であって各県において短期20日以上の量定が定められているものを含む。
)に当たる法令違反行為が行われた場合→ 量定A・B・Cの違反のこと
5.
(1)から(4)までに掲げる場合のほか、法令違反行為の態様が悪質で、善良な
風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすお
それがある重大な結果が生じた場合
悪質 とは
たとえば・・・
• 計画的に → ゲージ表などを使って
• 組織的に → 会社で分担を決めて
• 継続的に → 定期的に繰り返して
無承認変更を行った場合のこと?
両罰規定
風俗営業を経営する企業に悪意がなくとも、その企業の代理人
や使用人、委託を受けた業者等が営業に関して行った違反行
為については、原則として営業者である企業も、その違反につ
いて責任を追います。
(風営法49条、50条1項、52条から55条までの違反に限る)
風営法第56条
法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が、法人又
は人の営業に関し、第四十九条、第五十条第一項又は第五十二条から前
条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に
対し、各本条の罰金刑を科する。
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両罰規定の判例解釈
事業主が人である場合の両罰規定については、その代理人、使
用人その他の従業者の違反行為に対し、事業主に右行為者らの
選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さ
なかった過失の存在を推定したものであって、事業主において右
に関する注意を尽したことの証明がなされない限り、事業主もま
た刑責を免れ得ない・・・
選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意をつく
した事を法人がみずから証明できなければ、両罰規定の適用を
受ける
行政処分の結果を分けるポイント
加重事由
• 処分事由に係る行為の態様が著しく悪質であること
• 最近3年間に同一の処分事由により行政処分に処せられたこと
• 従業者の大多数が法令違反行為に加担していること
• 付近の住民からの苦情が多数あること
軽減事由
• 他人に強いられて法令違反行為を行ったこと
• 営業者(法人にあっては役員)の関与がほとんどなく、かつ、処分事由に
係る法令違反行為を防止できなかったことについて過失がないと認めら
れること
• 具体的な営業の改善措置を自主的に行っていること
風営法に基づく営業停止命令等の基準について
警察庁丙生環発第17号 平成18年4月24日
違反処分のながれ
刑事処分
行政処分
摘発
検察庁
書類送検
警察
起訴
聴聞会
裁判所
欠格事由に該当
従業員とともに
法人も罰金刑
都道府県公安委員会
から聴聞会通知
全店舗許可取消し
処分決定
・
営業停止
又は
許可取消
刑 罰
死刑→ 刑事施設内において絞首
懲役刑→ 事施設に拘置して所定の作業を行わせる
禁錮→ 刑事施設に拘置する
罰金→ 原則一万円以上の財産刑
拘留→ 一日以上三十日未満刑事施設に拘置する
科料→ 千円以上一万円未満の財産刑
罪を犯した者に対しては、刑事訴訟法が定める手続
の結果として上記の処分を行います
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逮捕
• 刑法第199条
・・・司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑
うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあら
かじめ発する逮捕状により、これを逮捕することが
できる。ただし・・・
• 逮捕するのは何のため?
被疑者の逃亡と証拠隠滅を防止するため
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現行犯人の逮捕
以下刑事訴訟法から抜粋
212条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を
現行犯人とする。
213条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを
逮捕することができる。
214条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の
者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方
検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員
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に引き渡さなければならない。
捜索
• 被告人の身体、物又は住居その他の場所につき、人や物を
発見するために行われる強制処分である。
• 捜索は、原則として検察官、検察事務官または司法警察職
員の請求により裁判官が発する令状により行われる(刑訴
法218条)。
• 被疑者の逮捕に際して必要な場合、令状無しで、住居等に
おいて被疑者を捜索し、または逮捕の現場について捜索を
行うことができる(刑訴法220条1項)。
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刑事訴訟手続
①犯罪事実の発見
↓
②警察による捜索・逮捕
↓
③検察官送致
↓
④起訴
↓
⑤刑事裁判手続
警察が担当
検察が担当
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対応上の注意
行政と司法 二つの顔
普通の役人
司法警察職員
• 風営法の各種手続の審査
• 犯罪捜査(逮捕・捜索・差押)
• 風営法にもとづく 立ち入り
• 送致
風営法にもとづく権限行使は
刑事訴訟法にもとづく権限行使は
普通のお役所と同じ立場
警察官としての立場
身 分 証 明 書
官職 巡査部長
氏名 日野孝次朗
上記の者は、風営法37条2項の規定により
立入りを行う警察職員であることを証明する。
平成 年 月 日
○○県公安委員会 ㊞
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ハインリッヒの法則
1件の重大事故の背景に、29件の軽傷事故と300件の「ヒヤリ」「ハッと」
する体験があるという労災事故に関する法則。
企業を揺るがす事故や不祥事は決して偶発的な産物ではないという教訓。
1件の重大な事故・災害
29件の軽微な事故・災害
300件の「ヒヤリ」「ハッと」する出来事
ハインリッヒの法則の考え方
1件の重大な法的トラブルの背景に、29件の注意や指導と300件の
「ヒヤリ」「ハッと」「大丈夫かな」などの疑問やドキっとする行為、出来事がある
1件の重大な法的トラブル
(営業停止等行政処分・労働紛争)
29件の注意や指導
(指示処分・退社)
300件の「ヒヤリ」「ハッと」する行為
(潜在している違反行為・職場への不満)
「ヒヤリ」「ハッと」を自覚しない
状態も数多く存在する
「ヒヤリ」「ハッと」した行為や出来事が大きくなった結果、
注意や行政指導、さらには重大な法的トラブルになっていく・・・
総合力が問われます
• ささいな兆しから様々なリスクを想像すること
を重視しましょう
• リスクの軽重を計算できる能力をやしないま
しょう
• 特に、行政との関係を重視しましょう
判断において重要な3つのギョウ
業法
(風営法)
業界
(風俗営業)
行政
(警察)
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ご静聴いただきありがとうございました。
~ ホール営業の総合法務支援 ~
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℡042-701-3010 Fax042-701-3011