富木島中学校 里 貴広

様式8
東海市教職員研修事業報告書(国内指定研修事業)
学 校 名 富木島中学校
職 氏 名 教諭
里
貴広
研 修 名 地元民間企業研修
研 修 期 間 平成27年7月27日(月)
~
7月31日(金)
(5日間)
研 修 主 題 ものづくりを通した人材育成とキャリア教育
研修目的
ものづくりに携わる人のものづくりに対する理念を学ぶことで,学校教育に
おけるキャリア教育の重要性について理解を深める。
研 修 日 程 新日鐵住金株式会社名古屋製鐵所にて研修(7月27日~31日)
研 修 内 容
研究主題「ものづくりを通した人材育成とキャリア教育」をテーマに,中部圏唯一の
銑鋼一貫製鉄所である新日鐵住金株式会社名古屋製鐵所で5日間の研修を行った。以下
に,研修の詳細内容を報告する。
1 日程詳細
1日目 講義(研修説明・企業概要説明・技能系育成の考え方),工場見学,危険体感
2日目 講義(高炉工場概要説明,人材育成について),高炉見学,高炉炉前作業実習
3日目 講義(安全活動,勤務体系,TAC 活動等について),熱延工場見学
4日目 講義(企業研修の実例紹介),製鋼工場見学
5日目 ものづくり体験(技術研究部「文鎮作り」),配管組み立て実習
2
製造工程の見学
(1)製銑工程
鉄の原料である鉄鋼石やコークスなどを高炉に装入することころから,高炉の
出口となる出銑孔から熱せられた溶銑が勢いよく噴出するところまでを見学し
た。熱風炉設備から送られてくる 1300℃の熱風によって高炉内に還元反応を起こ
し,溶けて液体となった溶銑は,1500℃以上
までに熱せられている。炉前では,出銑の度
に欠かさず行われるサンプリング作業を体験
した。ただでさえ気温が異常なほどに高い炉
前で,防護服を着ていると立っているだけで
体力が奪われる。火花の散る炉前で作業を行
う現場の方々の大変さを肌で感じることがで
きた。全ての行程の始まりだからと現場の人
が口をそろえており,温度管理等にも細心の
注意を払っているところが印象的だった。
【サンプリング作業を体験】
(2)製鋼工程
トーピードカーで送られてきた溶銑を取鍋に一旦移す。その後,取鍋をクレー
ンでつり上げ,転炉と呼ばれる大きな鍋に流し込む。溶銑内に含まれる不純物を
除去する精錬工程と,成分調整された鋼を凝固させる鋳造工程を経て,スラブと
呼ばれる大きな板の形になるまでを見学した。高温で赤く光った大量の溶銑が転
炉に流れ込み,火花と煙が上がる風景は圧巻だった。その反面,危険度や成分調
整をする重要性が高いため,クレーンの操縦はどうしても人間の手で行う必要が
あり,自動にはできないという話が印象的だった。
(3)熱延工程
製鋼工程から送られてきたスラブをホットスカーフに通し,表面の疵を取るた
め,ミリ単位で表面を削っていく。その後,改めて加熱し,注文の薄さや長さに
圧延して薄く延ばし,コイルのように巻かれるまでの工程を見学した。より良質
で,かつ同じものをいかに正確に作り出せるかを追求し,機械に頼るのではなく,
微妙な変化に対応できる巧みな技術を習得,向上していかなくてはならない。特
に,温度管理や表面の傷などに細心の注意を払うという。冷却する際,水のかけ
具合で品質が変わってくるため,データを正確に読み取り,かける水の量を微調
整する。また,長く伸びた薄い鉄板を巻き取る工程では,制御室でモニターを見
ながら弛みが出ないようにローラーの速度を微調整している。数kmにも伸ばさ
れた鉄板が次々と流れてくる中,長時間人の目で見て判断しなければならず,経
験と集中力が必要となる。
3
講義を通して学んだこと
研修初日の講義では、育成への考え方や新人教育などの具体的な取り組みについて
教えていただいた。入社1年目の社員は、新日鐵住金学園にて,「心・技・体の調和に
基づく、逞しい人づくり」をテーマに、新日鐵住金で働く社会人としての基礎を、一
年間体験活動や研修を通して学んでいく。はじめはあいさつ,身だしなみなどの社会
のマナー,6S(整理,整頓,清潔,清掃,しつけ,作法)の徹底,メンタルケアやチー
ムワーク,基礎学力の獲得,安全教育などに力を入れている。より効果的な育成を目
指して、豊浜歩行訓練で36kmをチームで闘歩することでチームワークを高めたり、
自衛隊体験入隊を通して集団行動の大切さを学んだりするなど、研修一つに様々な工
夫がされていた。また、指示書の内容を正確に理解するための読解力や自分なりに考
えて働くことができる課題解決力が大きな課題であるということが印象的だった。
2日目以降の各課での講義でも、人材育成について教えていただいた。やはり、育
成の基盤は変わらず、あいさつ、6S、基礎学力など、我々教員が学校教育の中で、教
えている内容と大差はなかった。実際に、新人社員につく指導員から「これは学生の
時に学ぶことではないのか」「学校や家庭で躾けられることではないのか」という現場
の声があるのは確かである。
4
ものづくり体験・配管組み立て実習
ものづくり体験では、計量した銅とすずを混ぜて溶かし、
作製した鋳型に流し込む文鎮づくりを体験した。材料を熱し
て溶かし、型にはめて冷やすという鉄作りの工程を一通り体
験して、ものづくりの大変さと魅力を体感することができた。
また、配管組み立て実習では、様々な工具を用いて、ペア
と協力しながら配管を組み立てた。その際、安全や気を付け
る点を「○○よし!」と大きな声で指差呼称して確認しなが
ら行い、安全への配慮や共通理解の重要性を認識できた。
【配管組み立て実習】
5
今後に向けて
新日鐵住金株式会社は、社会の発展に貢献するため、世界最高の技術とものづくり
の力を追求してきた。そのためには、機械任せにすることはできず、人間の技能や経
験が必要不可欠になってくる。優れた人材を育成するために、新人育成に力を入れて
いる。しかし、その育成現場では、我々が学校教育で意識していることと共通点が多
く,本来ならば会社の新人教育以前に学校で身につけなければならないことばかりで
あった。キャリア教育の定義である「1人1人の社会的・職業的自立に向け、必要な
基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」は、大変重
要な役割を担ってくる。社会的自立の基盤となる能力や態度を育て切れていない教育
現場の現状を知り、危機感とより強い使命感を感じることのできた研修となった。