日本消化器外科学会 第 67 回日本消化器外科学会総会【2012 年 7 月】 1 一般演題 38 : 食道鏡視下 2 司会:吉野 茂文(山口大学大学院医学系研究科消化器・腫瘍外科学) 日時:2012年7月18日(水)14:30∼15:30 会場:第16会場(富山県民会館B1F 地下展示室) O-38-1 腹臥位胸腔鏡下食道癌手術導入を目的とした動物モデルによる O-38-2 胸腔鏡下食道癌根治術における大動脈周囲郭清手技 実習の意義 小澤 壯治:1 奥芝 俊一:1 東野 正幸:1 大杉 治司:1 赤石 隆:1 村上 雅 彦:1 宇山 一朗:2 谷口 桂三:2 能城 浩和:3 1:食道内視鏡外科研究会 2:藤田保健衛生大学 上部消化管外科 3:佐賀大学 一般・消化 器外科 【背景】最近食道癌に対する腹臥位胸腔鏡下手術が注目され,左側臥位から変更する施 設や,新たに胸腔鏡下手術を開始する施設が増加してきた.導入に先駆けて行われる腹 臥位手術の実習用動物モデルはこれまでに存在しなかった.【目的】ブタを用いた腹臥 位胸腔鏡下食道手術モデルを確立し,動物実習の実施可能性と有用性について検討し た.【対象と方法】2010 年 6 月から 2011 年 6 月までに 4 回施行した食道内視鏡外科 を勉強する研究会主催の講習会参加者アンケート 71 件および実習動物 34 頭を対象と して,実習プログラムの実施状況と実習の有用性について検討した.【動物モデル作成 と実習手順】生後 3 か月の雄ブタを気管切開下に左側分離肺換気で,100% 酸素下に イソフルラン 2% で維持し全身麻酔をかけた.体位は腹臥位として,右胸壁の皮膚と 皮下脂肪をフラップ状に剥離した.第 3, 5, 6, 8, 10 肋間からトロッカーを胸腔内に挿 入し,CO2 6mmHg で気胸した.上部気管気管支リンパ節郭清,肋頸静脈切離,右反 回神経周囲リンパ節郭清,中下部食道の剥離授動,左反回神経周囲リンパ節郭清を順次 行った.【結果】一側肺換気と CO2 気胸により右胸腔内では虚脱した肺が腹側へ移動 し,縦隔が広く展開した.上縦隔の肺癒着を認める動物以外では,実習プログラムはほ ぼ完遂し得た.肋間が狭いため上縦隔操作時の鉗子可動性制限が問題となったが,頭側 トロッカーの活用により解決しえた.操作空間は側臥位肋骨牽引モデルと変わらず,操 作性の低下は認めなかった.実習内容の評価では,Excellent68%, Good30% と高い評 価を得た.さらに,腹臥位胸腔鏡下手術の導入予定が 38%,導入検討が 62% と,実習 が腹臥位胸腔鏡下手術の導入に正の効果を示した.【結語】未経験施設への腹臥位胸腔 大杉 治司:1 李 栄柱:1 岸田 哲:1 大河 昌人:1 丹羽 由紀子:1 形部 憲:1 枝川 永二郎:1 1:大阪大学大学院消化器外科学 我々は 1996 年より左側臥位,小開胸を併用した胸腔鏡下食道癌根治術を 420 例に完 遂してきた.カメラ近接による拡大視野下で微細解剖に沿った郭清に努めてきた.今 回,大動脈周囲郭清の要点と手技を述べる.適応と手技:適応は通常開胸とほぼ同じで あるが,照射例は縦隔の繊維化のために微細解剖が不明瞭となるため適応外としてい る.右第 5 肋間に 5 cm の小開胸を置き,これを取り囲む様に 4 ポートを留置する. 30 度斜視のカメラを用い,対面反転画像のモニタを見て手術する.奇静脈壁を露出す る様に右縦隔胸膜を切開する.拡大視野下では,大動脈には血管床を被う様に胸部交感 神経節からの神経枝が走る線維膜が確認出来る.食道に向かう神経枝を切離しながらこ の線維膜を露出するように剥離する.食道固有動脈は,周囲にリンパ節があるため,こ の線維膜を貫く部でクリップし,切離する.食道静脈や大動脈血管床からの小静脈も線 維膜を貫く部で凝固切離する.食道を腹側に圧排し,左側へ剥離を進め,左胸部交感神 経からの枝を切離して,左縦隔胸膜と線維膜の癒合部に至る.この剥離により理論上は 大動脈左側のリンパ節が食道とともに郭清される.我々は正しく左縦隔胸膜との癒合部 に至るため先端が約 25 度屈曲したデュべーキー型の鑷子を独自に考案作成し用いてい る.この操作の前に左縦隔胸膜を切離すると,逆に大動脈左側のリンパ節を取り残すこ ととなる.胸管はこの線維膜の下を大動脈に沿って走るため,合併切除すると大動脈血 管床の小静脈から出血するので,逐一凝固止血が必要となる.成績:緊急開胸を要する 偶発症はない.pStage 1,2,3,4a の 5 年生存率はそれぞれ 92%,88%,69%,52%, 27% であった.領域制御率は 95% であった.我々の行っている手技と大動脈周囲郭 清に理解が必要な微細解剖を供覧する. 鏡下食道手術の導入を目的とした本動物実習は,実施可能であり有用と考えられた. O-38-3 左側臥位胸腔鏡下食道切除術 −当科における術式の工夫と長 O-38-4 食道癌に対する胸腔内低侵襲操作を目指した鏡視下手術の工夫 期成績− と安全性 武野 慎祐:1 山下 眞一:1 山本 聡:1 高橋 良彰:1 小野 潔:1 諸鹿 俊 彦:1 宮脇 美千代:1 亀井 美玲:1 阿南 健太郎:1 川原 克信:1 1:大分大学食道外科 宮崎 達也:1 猪瀬 崇徳:1 田中 成岳:1 小澤 大悟:1 鈴木 茂正:1 横堀 武彦:1 宗田 真:1 福地 稔:1 尾嶋 仁:1 桑野 博行:1 1:群馬大学大学院病態総合外科学 【緒言】当施設における左側臥位胸腔鏡下食道切除術の工夫とその長期成績について発 【背景】近年,食道癌手術の胸部操作における鏡視下手術が一般的になされるように 表する.【手術手技】左側臥位で Broncho-Cath による片肺換気下に,オールポート なってきたが胸壁に対しては低侵襲であるが胸腔内操作は必ずしも低侵襲とは言えない 下,術者,助手共通の画面による 2 モニターで行っている.適応は,術前画像診断上, のが一般的である.【目的】当科で施行している食道癌に対する気管支動脈温存・胸管 周囲臓器に浸潤のない症例とし,画像上リンパ節転移陽性症例には術前化学,化学放射 温存など胸腔内低侵襲手技を目指した鏡視下手術を供覧し,その安全性と妥当性につい 線療法の適応としている.助手が児玉式吸引管を 2 本使用して視野展開を行い,術野 て検討する. 【適応】適応症例は当初は T1bN0M0 までの臨床病期で開始したが,現在 の吸引を行えるように工夫している.両側反回神経周囲の郭清時には,凝固切開装置を は T3N0M0 症例まで適応を拡大している.胸腔内低侵襲手技を目指す意味から cN0 使用せず鏡視下用のメッツェンバームで熱損傷のないように郭清している.また,最近 を対象としている.強度の癒着症例,前治療症例,呼吸機能が片肺操作が不可能な症例 では 6mmHg 程度の右気胸法を導入し,微小出血のコントロールと肺の圧縮による視 は除外して開胸手術を行っている.【方法】標準術式として胸部食道全摘術,3 領域リ 野の展開を行っている.【結果】術前未治療症例において,胸腔鏡手術 98 例と導入以 ンパ節郭清術,後縦隔経路胃管再建術を行っている.操作は第 5 肋間に 35mm の小開 前の開胸手術症例(Historical Control)157 例との比較では,縦隔および左右反回神 胸を置いてアプローチするが,第 3 肋間前腋窩線第 8 肋間前腋窩線に 15mm のソラ 経周囲のリンパ節の平均郭清個数は,胸腔鏡群 23.8 個および 7.2 個,開胸群 19.6 個 コホルダーを挿入し第 5 肋間後腋窩線,第 9 肋間後腋窩線から術者の操作用の 12mm および 4.7 個で,ともに有意に胸腔鏡群で多かった(p < 0.01, p < 0.001).5 年生 のソラコポートを挿入している.胸部操作で食道を一度切離し,右の気管支動脈および 存率は,胸腔鏡群で,Overall,Disease Specific Survival ともに有意に良好であった 胸管は可及的に温存する.当科で開発したミニループリトラクターを用いてポート孔を (p < 0.01) .胸腔鏡手術の長期成績は,胸部上部食道癌症例(p < 0.01) ,進行癌症例 減らし快適な視野展開が可能となる.【結果】(1) 現在までに 10 例の症例を経験した. (p < 0.05),リンパ節転移陽性症例(p < 0.05),リンパ管侵襲陽性例(p < 0.05), ほぼ同等の進行度の開胸手術と比較して手術時間は鏡視下手術が長かった (P < 0.05) 血管侵襲陰性症例(p < 0.01)で予後良好となる傾向が有意に顕著であった.【考察】 が,出血量は鏡視下手術が少量であった (P < 0.001).術後の末梢白血球数は術当日お 側臥位による胸腔鏡下食道切除術の手技上の問題点は,肺と浸出液や出血の貯留が縦隔 よび第 1,3 病日が鏡視下手術で低値であったが CRP は統計学的に差はなかった.挿 側術野の妨げとなることであり,対策として,気胸法の導入と児玉式吸引管を 2 本用 管期間,在院日数は統計学的に差はなかったが,ICU 滞在期間 (P < 0.05) が短かっ いて術野の展開と吸引を同時に行う工夫をしている.【結語】左側臥位胸腔鏡下食道切 た.合併症の発症率は鏡視下手術が低かった (P < 0.05). 【結語】胸腔鏡視下胸部食道 除術は,鏡視下手術の導入にも違和感を最小限度に行え,かつ,良好な長期成績が得ら 全摘術は,適応症例を限定することにより安全にかつ低侵襲で施行できる.長期予後は れる術式であると考える. 今後検討する必要があるが,低侵襲手術としての有用性があると考えられた. 第67回 日本消化器外科学会総会 日本消化器外科学会 The Japanese Society of Gastroenterological Surgery 日本消化器外科学会 第 67 回日本消化器外科学会総会【2012 年 7 月】 2 O-38-5 左側臥位胸腔鏡補助下食道切除術における術野展開の工夫と手 O-38-6 左側臥位鏡視下食道切除における上縦隔リンパ節郭清の工夫と 術成績 実際の手技 福田 俊:1 田中 洋一:1 川島 吉之:1 岡 大嗣:1 山田 達也:1 江原 一 尚:1 八岡 利昌:1 網倉 克己:1 西村 洋治:1 坂本 裕彦:1 1:埼玉県立がんセンター消化器外科 海辺 展明:1 竹村 雅至:1 小澤 りえ:1 山下 英孝:1 松本 友寛:1 大嶋 勉:1 堀 高明:1 菊池 正二郎:1 笹子 三津留:1 1:兵庫医科大学第 2 外科 はじめに)胸腔鏡補助下食道切除術において,術野の展開は極めて重要である.当院で はじめに;我々の施設では気胸併用左側臥位での胸腔鏡下食道切除を行なっており, は,左側臥位手術において,小開胸創より肺圧排鉤を挿入し,上腹部剣状突起下の皮切 2010 年 4 月導入以来術野展開においてさまざまな工夫を行なってきた.現在我々が より出して固定することにより,肺を有効に排除し,さらに右背側より刺入したエンド 行っている左側臥位での上縦隔郭清特に左反回神経周囲郭清の手技を供覧する.手術術 サージリトラクターで食道を牽引することにより,良好な術野を確保している. 術式) 式;左側臥位,対面倒立 2 モニター,完全鏡視下で操作を行う.6mmHg の気胸併用 手術は上縦隔から下縦隔へとすすめていくが,106rL の郭清時からリトラクターを使 し,ポートから挿入可能なように工夫した気管圧排鈎と吸引嘴管とで術野展開,上縦隔 用している.ここでは気管および食道が術野の妨げになるが,食道を右背側に牽引し, 背側より左胸膜が透見できるまで胸管を切除する層で剥離を行っておき,腹側で右迷走 気管左縁より切離した結合織を食道に付着させたまま引き出し,その組織から反回神経 神経に沿って頭側に胸膜を切開し#106recR 郭清を行う.気管鉤で気管膜様部圧排し食 を剥出温存して郭清としている.また中下縦隔の郭清では肺圧排鉤により,肺を腹側に 道を背側に牽引すると,左反回神経を含む気管左側の脂肪組織が食道とともに牽引され よけ,リトラクターのループを移動し,牽引方向を変えることで術野の展開が容易とな てくるので,これを剥離していき左反回神経を同定し脂肪組織を切除側につけるように る.成績)2002.4 から 2010.12 の手術症例は 407 例であった.縦隔 LN 郭清個数は 頸部まで郭清操作をすすめる.ここで気管圧排鈎を気管左端軟骨に掛けるとより深部ま 25.8 個,106rL は 3.4 個で,転移症例は縦隔転移が 51.6%,106rL 転移は 20.4% で あった.2010 年(45 例)では,縫合不全は 4 例,術直後の声帯麻痺を 19 例(うち 両側は 3 例)に認めた.まとめ)腹部から挿入した鉤で肺を有効に圧排し,リトラク で視野が展開され,交感神経心臓枝を温存するように剥離すすめておき中縦隔操作へと ターで食道を様々な方向に牽引することは,術者および助手が縦隔の操作に専念でき, 側 109 を食道に付ける様に郭清する.次いでこの糸を腹側胸壁方向に牽引展開し頭側 良好な術野で安全に縦隔操作ができる手技と考える. へと大動脈外膜を露出させるように剥離操作を左鎖骨下動脈まで行い上縦隔での操作の 移る.剥離操作を腹背側から縦隔左側にむけ行い,左下肺静脈レベルで食道のテーピン グを行う.この糸を背側へ牽引し右迷走神経を肺枝温存する部位で切離のち,107,両 剥離層とをつなげる,大動脈弓内側では左気管支動脈を確認し温存しておく.再度この 糸を背側へ牽引し頭側へ気管と食道とを剥離していき左迷走神経を肺枝温存し切離,大 動脈弓下で左反回神経を同定,106tbL106recL の郭清行い胸管含む脂肪組織を左鎖骨 下動脈と交差する部位で離断,郭清左縁としている.まとめ;左側臥位での鏡視下食道 切除術では食道を牽引した術野展開が有用で,中縦隔から上縦隔へとつなげる手技の定 型化および器具の工夫により,安全かつ精度の高い縦隔郭清が可能である. O-38-7 新しい郭清概念に基づいた気胸併用左側臥位 VATS O-38-8 食道癌に対する胸腔鏡下手術の治療成績 山下 好人:1 森本 純也:1 石川 彰:1 山本 篤:1 井上 透:1 塚本 忠司:1 久保 尚士:2 大平 雅一:2 平川 弘聖:2 西口 幸雄:1 1:大阪市立総合医療センター消化器外科 2:大阪市立大学大学院腫瘍外科学 田仲 徹行:1 高山 智燮:1 松本 壮平:1 若月 幸平:1 榎本 浩士:1 右田 和寛:1 伊藤 眞廣:1 中島 祥介:1 1:奈良県立医科大学消化器・総合外科 【背景】我々は左側臥位 VATS に気胸を併用することを考案し,その有用性を報告し はじめに:頚,胸,腹部に操作がおよぶ食道癌の手術は消化器外科の中でも最も侵襲 てきたが,さらに最近では気管支ブロッカーを用いた分離肺換気に変更することで腹臥 の大きい術式である.近年,胸腔鏡下手術の低侵襲性が報告されており,当施設では 位と同等の視野が得られるようになった.また,Opti 2 L 字型電気メスと LigaSure V 2008 年より同方法を導入しいている.目的:開胸操作による食道亜全摘術を対照とし, 当科での胸腔鏡下手術(VATS)の成績を検証する.対象と方法:2001 年から 20011 年に食道癌に対し施行した食道亜全摘術 110 例を対象とした.VATS 群は同法導入初 期の前期群(b 群)と手技が安定したと考えられる後期群(c 群)の 2 群に分類し,開 胸群(a 群)と比較検討した.結果:a / b /c 群はそれぞれ 70 / 20 / 20 例で,各群間で 性別,年齢の患者背景に差異は認めず,腫瘍因子では T,N,M 各因子と TNM stage に差は認めなかった.手術因子では出血量に差は認めないが,a 群と比較し b,c 群とも 手術時間は有意に延長していた(448 / 634 p < 0.001, 448 / 605min p < 0.001).ま た,リンパ節郭清個数は b,c 群とも増加傾向であった.術後成績では WBC では各群 に差は認めなかったが,CRP 値は a 群に対し b,c 群とも有意に減少していた(12.6 / 7.2 p < 0.001, 12.6 / 5.2 mg/dl p=0.006).術後合併症(循環器関連,呼吸器関連,縫 合不全,反回神経麻痺,乳び胸,その他)の発症率は a 群と比較し b 群では差は認め なかったが,c 群では有意に発症率は減少していた(65.0 / 45.0 % p=0.003) .合併症の 内訳では呼吸器関連合併症が有意に減少していた(21.4 / 10.0 % p=0.049) .さらに,a 群と比較し b 群で ICU 在院日数,術後在院日数に有意な減少は認めなかったが,c 群 ではいずれの在院日数にも有意な減少を認めた(6.5 / 3.2 日 p < 0.001, 53.5 /31.1 日 p=0.002).全生存率は術式間に差は認めなかった.考察:VATS 導入後術後炎症所見 の低減からその低侵襲性が示唆され,術式の安定とともに術後合併症や ICU,術後在 を用いて新しい概念に基づいた No.106recL, 112 の郭清を行っているので報告する. 【方法】左側臥位にて 6 ポートで操作を行う.8mmHg で気胸すると肺は著明に虚脱 し,後縦隔も広がるため良好な視野が得られる.No.106recL の郭清ではチェリーダイ セクターと細型気管鉤で気管を展開し,No.106recL-pre 間を Opti2 で少しずつ切離 していくと左側には線維性の膜が存在する.左鎖骨下動脈を露出する必要はない.リン パ組織を含む脂肪織をこの膜より剥離し反回神経との間を鋭的に切離すれば反回神経 を線維性の膜から浮かすことなく郭清が終了する.この術野では腹臥位同様,胸管と 左反回神経は交差しない.No.112ao の郭清では LigaSure V で大動脈を背側に圧排 しながら左側背側の脂肪組織をしっかり取ることで郭清を行っている.【成績】気胸併 用左側臥位 VATS 52 例の平均 VATS 時間は 225 分,出血は 83ml.進行癌が 41 例 (79%) と多く,NAC:9 例,サルベージ:6 例であった.気胸により最大平均 EtCO2 は 57.7(40-78)mmHg と上昇したが麻酔管理で対応可能であった.気胸することにより出 血量は減少し,術直後の無気肺は有意に減少した. 【結語】気胸併用側臥位 VATS は気 胸と気管支ブロッカー,細型気管鉤により視野展開は格段に改善し,呼吸器合併症の軽 減が期待される.また,No.106recL 左側の線維性の膜を意識した郭清や No.112ao の 徹底郭清に Opti 2 L 字型電気メスと LigaSure V が有用である. 院日数は減少し術後経過の改善に寄与していると考えられた. 第67回 日本消化器外科学会総会 日本消化器外科学会 The Japanese Society of Gastroenterological Surgery 日本消化器外科学会 第 67 回日本消化器外科学会総会【2012 年 7 月】 O-38-9 当院における胸腔鏡下食道癌手術の治療成績 3 O-38-10 一般市中病院における鏡視下食道切除・腹腔鏡補助下胃管作 成術の導入と成績 吉野 敬:1 本山 悟:1 佐藤 雄亮:1 佐々木 智彦:1 脇田 晃行:1 小川 純 一:1 1:秋田大学消化器外科 酒井 真:1 大澤 秀信:1 高田 考大:1 岡田 朗子:1 斎藤 加奈:1 諸原 浩 二:1 和田 渉:1 保田 尚邦:1 田中 司玄文:1 桑野 博行:2 1:伊勢崎市民病院外科 2:群馬大学大学院病態総合外科学 目的:当院では 2000 年より食道癌に対して胸腔鏡下食道切除を取り入れている.術 前治療なし,かつ術前診断において縦隔リンパ節転移陰性(縦隔 N0)症例に限定し 【はじめに】当院では以前より胸部食道癌に対して鏡視下食道切除術を施行している て行っている当院の胸腔鏡下食道切除治療成績を検討した.対象と結果:2000 年から が,より低侵襲な手術を目指し,2007 年 12 月より鏡視下食道切除術に加え,腹腔鏡補 2011 年までに 47 例に胸腔鏡下食道切除(2 または 3 領域リンパ節郭清)を行った. 平均年齢は 66 歳.男性 43 人,女性 4 人.主病巣占居部位は,Ut / Mt / Lt:3 / 32 / 12 例,深達度は cT1a / T1b / T2 / T3:12 / 29 / 2 / 3 例,リンパ節転移は cN0 / N1 / N2 / N3:40 / 1/ 6 / 0 例(N1,N2 はいずれも頚部または腹部のリンパ節転移陽性と診 断した症例)であった.手術は全症例で左側臥位での胸腔鏡下食道切除再建を施行,2 領域リンパ節郭清が 18 例,3 領域リンパ節郭清が 29 例であった.後縦隔経路での胃 管再建を基本とし,胸壁前経路 2 症例(いずれも結腸再建) ,胸骨後経路 1 症例であっ た.再建臓器は結腸再建が 3 例(胃切除後または胃癌合併例) ,他は胃管再建であった. 観察期間中に 6 例は他癌,肺炎などにより他病死しているが,その他の 41 症例はすべ て生存しており現在のところ原病死は認めていない.また,1 症例でのみ傍大動脈リン 助下胃管作成術を導入し定型化を試みている.今回,当院での鏡視下食道切除・腹腔鏡 補助下胃管作成術の治療成績を検討した. 【対象】2007 年 12 月から 2011 年 8 月まで に鏡視下食道切除・腹腔鏡補助下胃管作成術が施行された術前無治療の胸部食道癌 21 例.【結果】(1) 手技の概略:胸部操作は左側臥位とし 6 ポートで完全鏡視下に行って いる.体位変換ののち頸部操作と腹部操作を同時に開始する.腹部操作は腹腔鏡下胃切 除術に準じて臍下のカメラポート以外に左右腹部にそれぞれ 12mm,5mm のポートを 1 個ずつ使用し,完全鏡視下に胃を遊離する.食道を腹腔内へ引き出し食道裂孔を閉鎖 した後,剣状突起下に 6cm の小切開を置き標本を摘出,体外にて胃管を作製する.再 建経路は胸骨後経路とし頚部にて自動吻合器を用いて食道胃管吻合を施行する.また胃 管より経腸栄養用チューブを留置し,術後 2 日後より経腸栄養を開始している.(2) 患 パ節と脾門部リンパ節に再発を認めたが,その他の症例ではリンパ節,多臓器などへの 者背景:平均年齢は 63.7 歳,男性:女性=14:7 例.病期は stage0:1:2:3:4=5:4:4:7:1 再発を認めていない.縦隔郭清範囲での再発は一例も認めていない.結語:術前治療な 例.(3) 成績:胸部操作時間は平均 229 分,腹部操作開始から胃管作成開始までは平均 し,かつ術前縦隔 N0 症例と厳しく適応を限定して行った当院の胸腔鏡下食道切除で 162 分,出血量は平均 189ml であった.平均リンパ節郭清個数は 49.5 個.開胸移行 縦隔リンパ節再発を一例も認めず,予後は良好であった. 例を 1 例認めた(胸腔内高度癒着のため) .周術期合併症は呼吸器系合併症 2 例,反回 神経麻痺(嗄声のみを含む)4 例,循環器系合併症 2 例,縫合不全 3 例を認めた.術 後在院日数の中央値は 20 日で,在院死は認めなかった.術後再発は 5 例に認めた(局 所 2 例,遠隔臓器 3 例).全症例の 3 年生存率は 63.3% であった.【まとめ】鏡視下 食道切除・腹腔鏡補助下胃管作成術は市中病院でも導入可能であった.手技の安定化, 郭清精度の向上,合併症率の低減のため,今後も症例の蓄積が必要である. 第67回 日本消化器外科学会総会 日本消化器外科学会 The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
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