テーマ エビ すがた エビやカニは、ユニークな 姿 をしているね。ゆでる あか ふ し ぎ と 赤 くなるなど、不思議なところもある。そのうえ どくとく テキスト版 やなぎ た せんせい だい す かんが なエビやカニについて 考 えてみよう。 執筆/柳田理科雄 1 あじ 独 特 の 味 がとてもおいしい。 柳 田 先 生 も 大 好き 制作/空想科学研究所 提供/栄光ゼミナール ちが エビとカニはどう違う? す し てん た お寿司や天ぷらで食べるエビは、とてもおいしいね。 どくとく い もの 独特のスタイルをしているけど、エビとはどんな生き物なのだろ ちが う。カニとどこが違うのだろうか。 からだ かた から つつ あし ぽん じっ エビやカニは、 体 が硬い殻に包まれていて、足が10本ある十 きゃくるい なか ま じっきゃくるい しっ ぽ なが い び るい ちょう び るい しっ ぽ みじか たん イセエビ(長尾類) 脚 類の仲間だ。十 脚 類には、尻尾の長い 長 尾類、尻尾の 短 い短 び るい しっ ぽ さ ゆう ま 尾類、尻尾が左右に曲がっている異尾類がある。 なが び るい ふく たん び るい 長尾類には、イセエビなどのエビと、ザリガニが含まれる。短尾類 よ い び るい よ ほか かい はカニと呼ばれ、異尾類がヤドカリと呼ばれる。ヤドカリは、他の貝 かいがら もぐ こ しっ ぽ ら せん ま の貝殻に潜り込むために、尻尾が螺旋を巻いている。 なか ま しっ ぽ みじか しっ ぽ みじか つまり、カニはエビの仲間の尻尾が 短 いもの、つまり「尻尾の 短 ズワイガニ(短尾類) いエビ」といえる。 今日の1日1科学 しっ ぽ みじか カニは尻尾の 短 いエビ ヤドカリ(異尾類) 2 ザリガニはカニ? お がわ エビ? み い もの 小川などで見かけるザリガニ。どんな生き物なのだろうか。ハサ なか ま ミがあるからカニの仲間? なか ま それとも、エビの仲間? な まえ こと ば はい じっきゃくるい ザリガニの名前には「カニ」という言葉が入っているが、十 脚 類 ちょう び るい なか ま ちょう び るい のなかの 長 尾類で、カニではなく、エビの仲間の 長 尾類だ。その まえ ほん あし アメリカザリガニ おお なかで、いちばん前の2本の足が大きなハサミになっているグルー よ おお いけ かわ たんすい プがザリガニと呼ばれている。 ザリガニの多くは、 池や川などの淡水 す うみ す に棲むが、ロブスターのように海に棲むものもいる。 に ほん ほっかいどう とうほく きた もともと日本には、ザリガニは北海道と東北の北のほうにしかい ねん まえ か な がわけん かまくら なかった。ところが、いまから90年ぐらい前に、神奈川県の鎌倉 しょくよう ようしょくじょう えさ 食 用ガエル養 殖 場 が、ウシガエルの餌にするために、アメリカか つ えさ えら らアメリカザリガニを連れてきた。アメリカザリガニが餌に選ばれ いけ かわ アメリカザリガニは、池や川でよく み つ か 見かけるね。釣ったり飼ったりした ひと おお 人も多いだろう 1 た せいしつ たのは、オタマジャクシを食べないという性質があったからだ。 に だ に ほんじゅう ひろ ロブスター に ほん そのザリガニが逃げ出して、日本 中 に広がった。いま日本にいる に だ し そん ザリガニは、そのとき逃げ出したザリガニの子孫たちだ。 今日の1日1科学 ザリガニはハサミのあるエビ ひ 3 みつ エビのおいしさの秘密 にく さかな うみ ちが どくとく あじ エビやカニには、肉や 魚 と違った独特の味がある。 「だからおい ひと にが て ひと あじ しい」という人もいるし、 「だから苦手」という人もいるが、あの味 なに す 海に棲んでいるロブスターも、ザリ なか ま た ガニの仲間だ。食べると、とっても おいしいよね う は、何から生まれるのだろう? どうぶつ からだ みず しつ しつ 動物の 体 は、水とタンパク質でできている。タンパク質は、アミ さん しゅるい ぶっしつ くさり ノ酸という20種類の物質が、鎖 のようにつながってできている。 た もの あじ あま から にが こん ぶ 食べ物の味には、 「甘さ」や「辛さ」や「苦さ」のほかに、昆布やか ぶし かん みなもと つお節などで感じられる「うまさ」があるが、うまさの 源 になるの さん がアミノ酸だ。 にく さかな ひ とお しつ さん 肉や 魚 に火を通すとおいしくなるのは、タンパク質がアミノ酸に わ どうぶつ い 分かれるからだ。ところが、動物のなかには、生きているときから、 しつ いち ぶ さん わ タンパク質の一部がアミノ酸に分かれているものがある。そういう さかな にく さし み た 魚 や肉は、刺身で食べてもおいしい。 にく た さん かん さん かでも、うまさと甘さを感じさせる「グリシン」というアミノ酸は、 ばい や あ で食べても、焼いたり揚げたりして ふく エビやカニの肉には、このアミノ酸がたっぷり含まれている。な あま なま エビフライはとてもおいしいね。生 もおいしいのが、エビのすごいとこ ろだ ふく タイやヒラメなどの100倍も含まれている。このグリシンをはじ さん おお あじ ひ みつ めとして、アミノ酸が多いのが、エビやカニの味の秘密だ。 今日の1日1科学 あじ さん う エビやカニの味は、アミノ酸から生まれる 4 あ か エビは、ゆでるとなぜ赤くなる? や あか いろ エビやカニは、 ゆでたり焼いたりすると赤くなる。 おいしそうな色 あか だけど、なぜ赤くなるのだろうか。 から ぶっしつ ふく エビやカニの殻には、アスタキサンチンという物質が含まれてい ふく る。アスタキサンチンは、ニンジンに含まれるカロチンや、トマト ふく なか ま ほか むす に含まれるリコピンの仲間で、 他のものと結びついていないときは、 あか いろ 赤い色をしている。 から や あか ゆでたり焼いたりすると、エビは赤 しょくよく しつ むす エビやカニの殻では、アスタキサンチンは、タンパク質と結びつ くなる。 食 欲をそそる、とてもお いろ いしそうな色だよね! 2 ば あい あおむらさき ちか いろ や いている。その場合は、青 紫 に近い色になる。これをゆでたり焼 しつ さん か いたりすると、タンパク質がアミノ酸に変わるので、アスタキサン あか いろ チンだけになり、もともとの赤い色になるのだ。 今日の1日1科学 たんどく あか アスタキサンチンは単独では赤い ち 5 なに いろ エビの血は何色? にんげん ち あか ち あか 人間の血は赤い。では、エビやカニの血も赤いのだろうか。そう ち あお ではなく、それらの血はなんと青い! にんげん ち ぶっしつ はい 人間の血には、ヘモグロビンという物質が入っている。ヘモグロ てつ ふく さん そ むす さん そ はこ ビンには鉄が含まれていて、 これが酸素と結びつくことで、 酸素を運 やく め は ふ だん くろ み お あか いろ ぶ役目を果たしている。 ヘモグロビンは、 普段は黒味を帯びた赤い色 さん そ むす あざ あか にんげん ち はい さん そ くば だが、酸素と結びつくと鮮やかな赤になる。だから、人間の血は、肺 さん そ あざ あか ぜんしん から酸素をもらったばかりのときは鮮やかな赤で、全身に酸素を配 はい もど くろ あか って肺へ戻るときは黒っぽい赤をしている。 ち ぶっしつ ふく エビやカニの血にはヘモシアニンという物質が含まれる。ヘモシ えんだま しゅせいぶん どう ふく ふ だん とうめい アニンには10円玉の主成分である胴が含まれ、普段は透明だが、 さん そ むす あお ち あお 酸素と結びつくと青くなる。だから、エビやカニの血は青い。とき にく あお ち いろ どき、 エビやカニの肉が青くなっていることがあるが、 あれは血の色 なのだ。 今日の1日1科学 ち あお エビやカニの血は青い 6 タラバガニはカニじゃない? おう い さい 写真① 「カニの王さま」とも言われるタラバガニは、カニのなかでも最 こうきゅうひん い じつ なか ま し 高 級 品と言われる。だが、実はカニの仲間ではないことを知ってい あし ぽん ズワイガニは、脚が10本ある るかな。 みぎらん しゃしん しょうしんしょうめい しゃしん 右欄の【写真①】は 正 真 正 銘のカニであるズワイガニ、 【写真②】 けっていてき ちが がタラバガニだ。この2つには、決定的な違いがあることがわかる だろうか。 あし ぽん あし ぽん そう、ズワイガニの足は10本なのに、タラバガニの足は8本し かない! 写真② じつ なか ま 実は、タラバガニはヤドカリの仲間なのだ。ヤドカリもエビやカ おな じっきゃくるい じつ あし ぽん うし ニと同じ十 脚 類なので、実は足は10本あるのだが、いちばん後ろ あし ぽん み タラバガニは、脚が8本しか見え ない! 3 ぽん かいがら からだ こ てい みじか の2本は、貝殻のなかで 体 を固定するために、とても 短 くなって あし い ぽん いる。だから、タラバガニの足も、ハサミを入れて8本しかないよ み うに見える。 か ご しまけん よ ろんとう おきなわ とうなん す また、鹿児島県の与論島から、沖縄、東南アジアにかけて住むヤ なか ま シガニも、ヤドカリの仲間だ。 今日の1日1科学 なか ま タラバガニはヤドカリの仲間 やなぎ た り か お へんしゆうこう き 柳 田理科雄の編 集 後記 ぼく だい す す し と さい ご た 僕はエビが大好きです。お寿司でも、エビは取っておいて、いちばん最後に食 す ぜいたく ぼく こ べます。なかでも好きなのは、ちょっと贅沢ですが、イセエビです。僕が子ど こ きょう たね が しま と しょうがつ うみ べ ものころ、故 郷 の種子島では、イセエビがたくさん取れました。お 正 月に海辺 しんせき いえ い ぼく だ の親戚の家に行くと、僕にもゆでたイセエビがドンと出されました。そのボリ しっ ぽ て も す いま ュームたっぷりの尻尾を手で持って、かじりつくのが好きでした。今でもたま たね が しま し あ おく あたま あし に、種子島の知り合いからイセエビが送られてきます。 頭 はもちろん、足も しょっかく かんぜん ぶんかい た 触 角も、完全に分解してぜーんぶ食べます。 4
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