中国およびアジア株式市場の見通し - マニュライフ・アセット・マネジメント

ご参考資料(投資環境レポート)
2015年8月31日現在
マニュライフ・インベストメンツ・ジャパン株式会社
中国およびアジア株式市場の見通し
 8月25日(火)に中国人民銀行(中央銀行)は政策金利と預金準備率の引き下げを発表しましたが、中国株式
市場は続落し、市場の混乱は世界の金融市場に波及しました。本レポートでは、今回の中国株式市場混乱の
背景と中国およびアジア株式市場の見通しについて、マニュライフ・アセット・マネジメント(アジア)の見解をご紹介
します。
■中国経済に対する信頼感の低下
足元の中国株式市場の混乱は、中国経済に対する投資家の信頼感の低下が拡大したことによります。6月中旬
に中国政府が過熱した株式市場を抑制させるため信用取引に対する規制強化を開始したことが契機となり、株式
市場の下落が始まりました。当初は中国株式市場の規制強化策はあくまで中国国内の問題であり、流動性に富
んだ中央銀行によって効率的に対処されるとみなしていた海外投資家は、予想以上の中国景気減速のニュース
を受けアジアや世界の経済成長のリスク要因になると考え、新興国市場への投資比率を下げ始めました。
■慎重さは必要だが、パニックになる時ではない
当面、金融市場では激しい値動きが続く可能性が高いと思われますが、1997年のアジア通貨危機や2008年の
世界金融危機の再来となる可能性は低いと考えています。
現在のアジア経済は、以前の通貨危機時と比べると域内の市場混乱を乗り越えるだけの体力を備えています。
アジア通貨の大半は固定相場制から変動相場制へ移行し、外貨準備高は1997年当時に比べ大きく積み上がり、
経済も総じて強くなっています。
今回の金融市場の混乱は、世界金融危機時のように切迫した銀行破綻といったシステミックリスクから生じたこ
とではなく、中国景気を巡る不透明感が発端となり、中国の景気減速が世界経済の成長に及ぼす影響を懸念し広
がりました。つまり、これまで上昇を続け、先延ばしになっていた株式市場の調整であると考えます。この株式市場
の調整が、世界経済の成長見通しの鈍化をどの程度織り込むのか、また投資家のリスク選好度合いが今後どの
程度戻るのか、これが現時点での課題であると考えます。
■中国金融市場を巡り想定される3つのシナリオ
基本シナリオ:中国政府が実体経済を健全な状態に戻す過程において、当面、市場は乱高下に見舞われると考
えています。前提は金融緩和でなく、景気対策の継続です。25日に中国政府は政策金利と預金準備率を引き下
げましたが、他の西側先進国と同様に中国でも既に潤沢な流動性があるにも関わらず、景気浮揚のための実質
的な財政支援が不足しています。例えば、大気汚染や水質汚染を改善させるような環境問題への取り組みに関
するインフラ投資や、都市化に向けた住宅の上下水道の整備などが挙げられます。また、近代化に向けて郊外の
教育や医療の改善などへの投資なども必要となります。
悲観的シナリオ:中国経済がハードランディングすることであると考えています。この場合、我々は中国政府が迅
速にシステミックリスクを食い止め、元の状況に戻すための施策を行うと信じています。
楽観的シナリオ:足元の経済指標が弱いにも関わらず、2015年の中国の経済成長率は7%を維持する見込みで
あり、十分な流動性を有し、金融政策は市場にとって支援的なものとなっています。投資家がこれらを認識するこ
とで、緩やかな上昇相場となる可能性があります。
とはいえ、短期的な市場の方向性は投資家心理によって定まるものであり、投資家は依然として混乱し、リスク
回避的であることから、悲観的シナリオと同様に楽観的シナリオも実現の可能性は低いと考えます。
当資料に関する留意事項については、巻末を必ずご覧ください。
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ご参考資料【臨時レポート】
■中国株式市場の見通し
中国経済に関する長期見通しに変更はありません。
中国経済は、過去30年超にわたり飛躍的に成長してきた結果、今や世界第2位の規模になり、急に方向転換は
できません。経済を持続可能な成長軌道に戻すには時間がかかり、その過程では新たに大きな市場混乱もありえ
ます。こうした状況を背景に、中国株式市場に対して慎重に見ており、売られすぎた堅実な企業を見つけ出し、慎
重に投資することが重要であると考えています。環境保護、産業自動化、住宅、ヘルスケアなど、政府の景気刺激
策の恩恵を受けるような企業が、引き続き長期的には有望であると考えています。しかしながら、現在の金融緩和
策による資金が刺激策により実体経済に流れ込むには時間がかかり、また、本格的に注入されたとしても、広範
な経済指標に改善が見られるまでには、さらに時間がかかるだろうと考えています。
■アジア株式市場(除く日本)の見通し
政情不安の中でマクロ経済の悪化が見られるマレーシアに対して、最も慎重に考えています。これは、急速なリ
ンギット安を安定させるために外貨準備が急減したことによります。インドネシアについては、政府が経常赤字など
の慢性的な問題を解決するための抜本的な対策をとり(2015年の第2四半期には‐2.5%まで縮小)、投資促進策
などを導入したことから、マレーシアに比べるとあまり懸念はしていません。
相対的に明るい地域は、米国の継続的な景気回復の恩恵を受ける韓国、台湾などの北アジアです。加えて、韓
国、台湾は、健全な経常黒字、雇用が堅調であることから、南アジアの国々に比べて良好なポジションに位置して
いると考えます。
大半のアジア株式市場では、現在、売られすぎの状態にあります。我々は、困難な経済環境においても成長す
る可能性のある業種の中で、強固なバランスシートと健全なキャッシュフローを有するビジネスに注力する銘柄に
投資機会があると考えています。全体として、中国での出来事は、アジア株式市場に大きな影響を与える一方で、
中長期の投資家にとって投資機会になり得ると考えています。
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