Gard Alert:東南アジア海域で増加する海賊行為と燃料の窃盗 Piracy

Gard Alert:東南アジア海域で増加する海賊行為と燃料の窃盗
東南アジアでは、海賊による海上襲撃の件数が 3 年連続で減少する一方で、武装集団による小型タンカ
ーのハイジャックが増加しています。
こちらは、英文記事「Gard Alert: Piracy and fuel theft on the rise in Southeast Asian waters」
(2014 年 1 月 2 日付)の和訳
です。
東南アジアでの海賊行為は、アデン湾や西アフリカ沖で発生している海賊行為ほど広域ではないものの、
極めて大きな懸案事項となっています。2014 年には、12 月 15 日までに 177 件の海賊事件が東南アジア
で発生しています。同期間のギニア湾とインド洋での発生件数は、それぞれ 87 件、38 件でした。東南
アジア海域での襲撃の多くが軽窃盗であり、ほとんどの場合、それほど激しいものではありません。し
かしながら、武装集団による小型内航タンカーの襲撃やハイジャックの件数が増加していることは、憂
慮すべき兆候です。
2014 年の第 3 四半期に世界各地でハイジャックされた 6 隻の船舶のうち、5 隻は東南アジア海域で襲撃
されたものです。ナイフや銃で武装した強盗集団が活動する同地域は、軽油や船舶用ディーゼルオイル
などの製品を輸送する小型タンカーにとってますます危険な場所となりつつあります。海賊の手口は、
海上で船舶に侵入し、乗組員らを人質に取り、短時間に積荷を強奪するというものです。東南アジアで
のこうした小型タンカーに対する襲撃と、南シナ海での襲撃の過激化は懸念すべき事項です。国際海事
局海賊情報センター(IMB Piracy Reporting Centre [IMB-PRC])、ドバイの Inchcape Shipping Services(ISS)、
アジア海賊対策地域協力協定情報共有センター(Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and
Armed Robbery against Ships in Asia Information Sharing Centre [ReCAAP ISC])では、こうした問題に関す
る警戒警報、統計、推奨ベストプラクティスを公表しています。
事件の種類
統計によると、小型プロダクトタンカー、入港中または停泊中の船舶、タグ・バージといった 3 つのカ
テゴリーの船舶が特に襲撃を受けています。2014 年 7 月~9 月に発生した燃料・オイルの強奪事件の件
数は減少を示してはいるものの、本質的に重大な懸念であることには変わりません。
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小型プロダクトタンカー
2014 年 1 月~12 月にアジアで発生した船舶の燃料・オイルの強奪事件の件数は増加しており、9 件中 8
件はインドネシア、マレーシア、シンガポール付近の南シナ海で発生したものです。小型プロダクトタ
ンカーは、小型で比較的低速であること、積載中に乾舷が低くなることから、襲撃に対して特に脆弱で
す。
小型プロダクトタンカーを数日間ハイジャックし、その間に積荷(多くは船舶用軽油)を他の船舶に移
し替えるという手口の事件が複数発生しています。いずれのケースも、武装した犯人がエンジン付ボー
トやスピードボートを使ってタンカーに侵入し、現金や乗組員の所持品を強奪し、航海計器や通信機器
を損壊しています。乗組員の負傷者は発生していません。こうした集団は、積荷の燃料の種類や、その
処理方法に関する知識を備えているとみられます。特に小型タンカーについては、同海域での警戒を継
続し、襲撃や不審な動きがあればすべて報告するようにしてください。
入港中または停泊中の船舶
インドネシアの港や停泊地での状況はかなり改善されています。2013 年 1 月~9 月には 62 件の事件報
告があったのに対して、2014 年の同期間の発生件数は 41 件に止まっています。しかしながら、マラッ
カ海峡、シンガポール、南シナ海、バングラデシュ、インドにおいて、入港中または停泊中の船舶が遭
遇した事件の件数は、過去 4 年間よりも増加しています。南シナ海のビンタン島の北東部で停泊中に襲
撃された船舶の数も増えています。
タグ・バージ
2014 年にバージを曳航するタグボートに対する事件発生件数は減少しました。マラッカ・シンガポール
海峡で発生した 26 件のうち、タグボートに対するものは 6 件のみでした。
タグ・バージは、小型で低速であることから、襲撃に対して脆弱です。タグ・バージに対する事件は、
船舶や乗組員の現金や貴重品の強奪が中心ですが、ハイジャック事件も発生しています。バージは奪回
可能なケースが多い一方で、タグボートについては奪回に失敗するケースも発生しています。マラッカ・
シンガポール海峡の分離通航方式(Traffic Separation Scheme [TSS])の西航路を航行中の船舶やバージ
から、エンジンスペア部品、エンジン用品、スクラップを窃盗するという事件も増加しています。
助言
航行中の監視のみならず、特に停泊中も海賊対策のための効果的な監視を継続することの重要性につい
て、今一度ご認識ください。とりわけ小型タンカーについては、これらの海域での警戒を継続し、襲撃
を受けた場合や襲撃の試みに遭遇した場合には、ボート等の不審な動きを含め、すべて現地当局や沿岸
国に直ちに報告し、適時の支援提供を受けられるようにしてください。また襲撃や不審な活動について
は、クアラルンプールの 24 時間対応のIMB PRC1とReCAAP ISCに報告してください。
また、次の事項も実施するようにしてください。
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リスク評価を実施して、脅威の特性や予定航路の見直し、船舶の脆弱性や防衛手段の検討、乗組員の
能力や訓練レベルの診断を行うこと。
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IMB PRC は、事件の報告を受け次第、直ちに、当該事件情報を現地のすべての法執行機関に通知し、また、その海域のす
べての船舶に連絡発信を行います。
ハイジャックや船員が負傷する事件など危険性の高い事件については、
IMB PRC が CSO、
DPA、その他海運業関係者に対し、電子メール送信も行います。現時点での受信者リストは 750 名にのぼっています。海
賊行為の危険性が高い海域で交易を行う場合には、この無償サービスを活用されることを推奨いたします。
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懸念される海域を航行する際には、警戒をさらに強め、監視を厳重にして怠らないこと。海賊や強盗
の船舶への侵入を防ぐには、特に夜間の乗組員による警戒と対応準備を行うことが依然として重要で
す。強盗は、大抵の場合、乗組員に気付かれると侵入を断念します。
停泊中および夜間には
o 船舶の周囲を十分に照らし、投光照明の電源を入れておくこと。
o 小型漁船に対する警戒や、船舶に接近してくるボートに対する警戒を怠らないこと。見張りの
ため追加の甲板員(通信支援用具を所持させる)を配置すること。
o 船首側の保管庫は厳重に二重の施錠をするよう徹底し、消火ノズルなど真鍮の器具は、できれ
ば船舶の主要保管庫や居住区の保管庫などの安全な場所に保管すること。
o すべての事件について、港湾局または沿岸警備隊に対して、それぞれには VHF 経由、チャネ
ル 16 経由で報告し、IMB PRC にも報告すること。
部外者への情報漏洩を防ぐための業務手順を見直すこと。乗組員が窃盗共謀の容疑がかけられている
事件もあります。
また、ベストマネジメントプラクティス(BMP4)を導入することにより、安全水準の向上・維持と、不
要なリスクの回避が図れるようになります。マラッカ・シンガポール海峡で発生した半数以上の事件に
おいて、乗組員に気付かれた強盗は何も盗らずに退散したことが報告されています。
報告および追加情報
海賊や強盗の手口に対する理解を深め、必要かつ適切な海賊対策を講じることができるように、情報の
共有に努めていただくことを強く推奨します。海賊行為や武装強盗事件に遭遇した場合は、ボートやス
キフの不審な動きを含め、必ず下記に報告してください。
•
IMB-PRC の 24 時間対応海賊対策ヘルプライン
Tel: + 60 3 2031 0014. Tel: +60 3 2078 5763/ +60 3 2031 0287 / +60 3 2031 3106, Fax: +60 3
2078 5769, E-mail: [email protected] / [email protected],
Web: https://icc-ccs.org/piracy-reporting-centre
•
ReCAAP ISC
Tel: +65 6376 3063, Web: http://www.recaap.org
予防策に関する詳細情報については、ReCAAP ISC の特別レポート「Incidents of Siphoning of Fuel/Oil at Sea
in Asia(アジア海上での燃料やオイルの抜き取り事件)(英文)」(2014 年 7 月)を参照してください。
ReCAAP と BIMCO は、海賊対策に役立つポスターを共同で制作しています。
BMP4 を含むその他の情報は、Gard ウェブサイトの Topics ページ内の「Trading area risks」でご覧いただ
けます。
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ますが、Gard は本情報に依拠することによって生じるいかなる種類の損失または損害に対して一切の責任を負いません。
本情報は日本のメンバー、クライアントおよびその他の利害関係者に対するサービスの一環として、ガードジャパン株式会社により英文
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の点において原文である英文の完全な翻訳であることを証するものではありません。したがって、ガードジャパン株式会社は、原文との
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