B 組 第一篇 い 生きる たにがわしゅん た ろう 谷川 俊 太郎 い 生きているということ い いま生きているということ それはのどがかわくということ こ も び 木漏れ日がまぶしいということ あ おも のど⇒喉嚨 かわく(渇く)⇒渴 まぶしい(眩しい) ⇒刺眼 だ ふっと或るメロディを思い出すということ ふっと⇒忽然地 くしゃみをすること くしゃみ⇒噴嚏 て あなたと手をつなぐこと つなぐ(繋ぐ)⇒牽 生きているということ いま生きているということ それはミニスカート それはプラネタリウム それはヨハン・シュトラウス それはピカソ それはアルプス うつく で あ すべての 美 しいものに出会うということ そして あく ちゅういぶか かくされた悪を注意深くこばむこと 生きているということ いま生きているということ な 泣けるということ わら 笑えるということ かくされた(隠された) ⇒被隱藏 こばむ(拒む) ⇒拒絶 おこ 怒れるということ じゆう 自由ということ 生きているということ いま生きているということ とお いぬ ちきゅう まわ ほ いま遠くで犬が吠えるということ いま地球が廻っているということ うぶごえ いまどこかで産声があがるということ へいし きず いまどこかで兵士が傷つくということ いまぶらんこがゆれているということ いまいまがすぎてゆくこと 産声があがる ⇒出生時的呱呱聲 ぶらんこ⇒鞦韆 ゆれている⇒搖晃著 すぎてゆく(過ぎてゆく) ⇒(時間)過去 生きているということ いま生きているということ とり 鳥ははばたくということ うみ 海はとどろくということ w a h a かたつむりははうということ ひと あい 人は愛するということ て あなたの手のぬくみ いのちということ はばたく(羽ばたく) ⇒展翅飛翔 とどろく(轟く) ⇒轟鳴 かたつむり ⇒蝸牛 はう(這う) ⇒爬行 ぬくみ(温み) ⇒溫暖 いのち(命)⇒生命 B 組 第二篇 さくら りこうな 桜 んぼ かねこ 金子みすず りこうな(利口な) ⇒聰明伶俐 さくら とてもりこうな 桜 んぼ、 ひ は かんが ある日、葉かげで 考 える。 ま わたし あお 待てよ、 私 はまだ青い、 ぎょうぎ とり こ 行儀のわるい鳥の子が、 いた つつきゃ、ぽんぽが痛くなる、 しんせつ かくれているのが親切だ。 は うら そこで、かくれた、葉の裏だ、 とり み つつきゃ(突いてしまったら) ⇒被啄的話 ぽんぽ⇒肚子 かくれている(隠れている) ⇒躲起來 ひ 鳥も見えないが、お日さまも、 そ のこ みつけないから、染め残す。 う さくら やがて熟れたが、 桜 んぼ、 は かんが またも葉かげで 考 える。 ま わたし そだ 待てよ、 私 を育てたは、 き き そだ この木で、この木を育てたは、 とし ひゃくしょう あの年とったお 百 姓 だ、 とり と 鳥に取られちゃなるまいぞ。 ひゃくしょう かご そこで、お 百 姓 、籠もって、 と き さくら 取りに来たのに、 桜 んぼ、 お百姓⇒農民 取られちゃなるまいぞ ⇒不要被(鳥)啄走 と のこ かくれてたので取り残す。 こども ふ た り き やがて子供が二人来た、 かんが そこでまたまた 考 える。 ま こども ふたり 待てよ、子供は二人いる、 わたし ひと それに 私 はただ一つ、 けんかさせてはなるまいぞ けんかさせてはなるまいぞ、 お しんせつ 落ちないことが親切だ。 お (喧嘩させない) ⇒不要讓他們吵架 よるよなか そこで、落ちたは夜夜中、 くろ おお くつ き 黒い巨きな靴が来て、 さくら ふ りこうな 桜 んぼを踏みつけた。 踏みつけた⇒踩踏 B 組 第三篇 せかい いっさつ ほん 世界は一冊の本 おさ だ ひろし 長田 弘 ほん よ 本を読もう。 ほん よ もっと本を読もう。 ほん よ もっともっと本を読もう。 か も じ ほん 書かれた文字だけが本ではない。 ひ ひか かわ おと ほし またた とり こえ 日の光り、星の 瞬 き、鳥の声、 ほん 川の音だって、本なのだ。 はやし しず ブナの 林 の静けさも、 しろ はなばな ハナミズキの白い花々も、 こどく き ほん おおきな孤独なケヤキの木も、本だ。 ほん 本でないものはない。 せかい ひら ほん 世界というのは開かれた本で、 ほん み ことば か その本は見えない言葉で書かれている。 ウルムチ、メッシナ、トンブクトゥ、 ち ず いってん 地図のうえの一点でしかない はる くにぐに はる まちまち ほん 遥かな国々の遥かな街々も、本だ。 す ひと ほん まち そこに住む人びとの本が、街だ。 じゆう ざっとう ほん 自由な雑踏が、本だ。 よる まど あ ひと ひと ほん 夜の窓の明かりの一つ一つが、本だ。 さきものしじょう すうじ ほん シカゴの先物市場の数字も、本だ。 さばく すな 砂あらし(砂嵐) ⇒沙塵暴 ほん ネフド砂漠の砂あらしも、本だ。 あめ かみ と ふた め ほん マヤの雨の神の閉じた二つの眼も、本だ。 じんせい ほん ひと むね だ 人生という本を、人は胸に抱いている。 いっこ にんげん いっさつ ほん 一個の人間は一冊の本なのだ。 きおく ろうじん ひょうじょう ほん 記憶をなくした老人の 表 情 も、本だ。 そうげん くも かぜ 草原、雲、そして風。 だま し ほん 黙って死んでゆくガゼルもヌーも、本だ。 けんい そんげん 権威をもたない尊厳が、すべてだ。 おくこうねん ちい ほし 200億光年のなかの小さな星。 い どんなことでもない。生きるとは、 、、、、、、、、、、、、 かんが 考 えることができるということだ。 本を読もう。 もっと本を読もう。 もっともっと本を読もう。 もたない(持たない) ⇒沒有擁有
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