また崇高

校内研究・研修の基本的な考え方
第2章
Ⅰ
校内研究・研修の概要
1 校内研究・研修実施の3側面
1 校内研究・研修実施の3側面
校内研究・研修を進めるに当たっては、その位置付けについて、
全教員が共通理解を図ることが大切です。
本章において「研究」と
「研修」を次のように区別
しています。
研究・研修は教員の義務として行うものであり、社会の変化や要
請に応じた教育を模索するために行うものです。また、学校教育を
つかさどる教育者の使命として、子どもたちによりよい教育を提供
していくために行うものでもあります。
まずは、このような研究・研修の位置付けを認識することが、よ
りよい校内研究・研修を行うための前提となります。そのことを踏ま
え、
「義務的側面」
「社会的側面」
「使命的側面」から校内研究・研修
の位置付けについて整理します。
【研究】
主題を設定し、その実現
のためにはどうすべきか
を探究すること。
【研修】
知識、技能を身に付ける
ことや、情報を交流・共有
すること。
(1) 義務的側面
平成 18 年に改正された教育基本法で「法律に定める学校の教員
は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、そ
の職責の遂行に務めなければならない。」(第9条)という条文が加
えられました。また、教育公務員特例法でも「教育公務員は、その
職責を遂行するために、絶えず研究と修養に務めなければならな
い。」
(第 21 条)と定められています。つまり、教員の研修に対する
努力義務が法的にも明らかになっており、ここに学校づくりにおけ
る研究・研修の位置付けが明記されているといえます。
(2) 社会的側面
現代社会はその発展に伴い多様化が進み、教育が果たすべき役割
は大きくなっています。社会の要請に応じた教育を模索していくこ
とも教員の大きな役割となり、教員に求められる資質・能力も多様
化しています。それに応えるためには、互いに情報を交流・収集し
ていく場を設定する必要性があります。
加えて、多様化が進む社会において、児童生徒を取り巻く環境も
多様化し、児童生徒や保護者が様々な問題を抱えるようになってい
ます。児童生徒一人一人の抱える問題を理解し、適切に対応するた
めにも、教員の指導技術の向上とともに、様々な情報を交流・収集
《解説》 改正教育基本法
「我が国の教育をめぐる
諸情勢の変化にかんがみ、
改めて教育の基本を確立
し、その振興を図るため、
現行法の普遍的な理念は
大切にしながら、今日、極
めて重要と考えられる理
念等を明確にする。」とい
う趣旨のもと、平成 18 年
12 月制定されました。こ
れを受けて、「学校教育法
の改正」、
「 地方教育行政の
組織及び運営に関する法
律の改正」、
「 教育職員免許
法及び教育公務員特例法
の改正」
(いわゆる、
「教育
3法の改正」)が成立しま
した。
していく中で、適切に判断することが必要となります。そのような
社会的側面からも、校内研究・研修の必要性は高く、今後より一層
充実させていく必要があるでしょう。
校 内 研 究 ・ 研 修 の 手 引
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校内研究・研修の基本的な考え方
第2章
Ⅰ
校内研究・研修の概要
2 校内研究・研修を進める上での教員の意識
(3) 使命的側面
学校教育は、将来、子どもたちが知識基盤社会の中でたくましく生
きていくために必要な資質や能力を育むものでなくてはなりません。
そのような学校教育の実現に向け、理想の児童生徒像や学校像を描き
教育実 践を 行って いく ことは 、教 員一人 一人 の果た すべ き役割 であ
り、使命であるといえます。
理想の実現に向けて、個々の教員が研鑽を積み、資質・能力を向上
するために、研究・研修は欠かすことができません。そして、個々で
磨いた資質や能力を、研究授業や研修会という場を通して、互いに交
流し力量をさらに高め合うことも大切です。教員としての使命感をも
ち、その実現に向けた実践を進めるためにも校内研究・研修は必要と
なるでしょう。
2 校内研究・研修を進める上での教員の意識
校内研究・研修を実りあるものとするためには、全教員が研究・研
修に向かう意識を高め、協働して取り組むことが大切です。研究・研
修に向かう意識とは、研究・研修を行うことが教員自身の成長につな
がると とも に、児 童生 徒のよ りよ い成長 にも つなが ると いう意 識で
す。この二つの意識の差が教員間にあると、協働して校内研究・研修
を進めていくことは難しくなります。校内研究・研修が充実している
学校では、全教員が共通理解のもと、高い意識をもって研究・研修に
取り組んでいる様子が見られます。研究・研修に向かうべき意識を全
教員で確認すること、そして、教員間の意識の差を縮めていくことが、
より充実した校内研究・研修へとつながっていきます。
(1) 教員自身の成長につながるという意識
研究・研修を進めることで、自分の実践を振り返ったり、他の実践
から学んだりすることができ、それは教員自身の教科経営・学級経営
等における指導力の向上につながっていきます。研究・研修の場は、
校内はもちろん、校外においても行うことが可能です。意識を高くも
つことで、より自分の課題に応じた研究・研修の機会は得られること
になります。そのことが、教員自身の成長につながることになります。
(2) 児童生徒の成長につながるという意識
研究・研修を進め深めていくことで、教員の教科指導・学級指導の
力量を向上させることができます。そのことで、児童生徒が安心して
学校生活を送ることができ、また、児童生徒が意欲的に学習に取り組
校 内 研 究 ・ 研 修 の 手 引
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校内研究・研修の基本的な考え方
第2章
Ⅰ
校内研究・研修の概要
3 校内研究・研修を進める上で大切にする視点
み、自分のよさを表出し、自己実現へと向かう環境・場を築くことに
つながっていきます。
また、校内研究・研修を進め深めていくことで、校内の全教員の指
導の方向性を一つに定めることができます。このことで、一本の柱の
ある学校教育の実現へと向かい、その結果、児童生徒の成長に大きく
寄与するものになります。
3 校内研究・研修を進める上で大切にする視点
校内研究・研修については、
「研究・研修が教員自身の成長につなが
るという意識」と「児童生徒の成長につながるという意識」という二
つの意識の大切さについてこれまで述べてきました。ここで大切なこ
とは、 いか にして その ような 意識 を個々 の教 員がも てる ように する
か、あ るい は意識 をさ らに高 めて いける よう にする かと いうこ とで
す。
研究・研修に向かう意識を高めるためには、研究・研修を行うその
ねらいが明確であり、実際に研究・研修に取り組んだ成果や有効性が
実感できることが大切です。言い換えると、研究・研修を進めること
で、自己の指導の向上や、児童生徒の理解や関係性が深まるという経
験ができれば、研究・研修に向かう意識が高まるといえます。
研究・研修に向かう意識をもてるようにすること、あるいは高める
ためには、その目標・目的をはじめとし、研究組織等を吟味し、より
充実した校内研究・研修にする方策を考えることが校内研究・研修を
進める上で大切な視点となります。
(1) 目標・目的の明確化
校内研究・研修はともすると「研究のための研究」となり、研究や
研修をすることそのものが目的と化してしまう場合があります。そう
ならないためにも、
「何を目指すのか」
「何のために行うのか」という
ここでは、①研究の目
研究・研修の目標・目的を明確にしておく必要があります。
標、②研修の目的の設定
目標の設定に当たっては、学校や児童生徒の実態に合わせた目標を
設定することが大切です。学校や児童生徒の現状を十分に分析・把握
における留意点を説明
します。
して目標を設定し、その達成に向けて地道に取り組み続けることが、
研究・研修を進め深めることにつながるといえます。
また、研究・研修は最終的には児童生徒の成長につながっていきま
す。そうした前提に立てば、おのずと目標は児童生徒の成長につなが
るものになるはずです。「求める児童生徒の姿」を明確にした目標を
校 内 研 究 ・ 研 修 の 手 引
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第2章
Ⅰ
校内研究・研修の概要
3 校内研究・研修を進める上で大切にする視点
設定する必要があります。
目標を達成できたかどうかを検証することは、校内研究・研修を更
に深めていくことにつながります。言い換えると、達成状況を検証で
きない校内研究・研修に、進化や深化は望めません。また、目標の達
成度を検証することは、研究・研修の成果を実感することにつながり
ます。そこで、目標は達成状況を検証できるものにすべきであり、同
時にその検証方法も十分に検討する必要があります。
研修の目的設定についてですが、いつの時代にも求められる資質能
力や、これからの時代に求められる資質能力など、状況に応じて必要
と思われる資質能力を向上させることが研修の目的となります。学校
や児童生徒の状況は絶えず変化しています。その状況を共通理解し、
対応を検討することが研修の目的となります。
(2) 組織と方法の確立
校内研究・研修の目標・目的が定まれば、次は目標をどのように実
現するのか、目的をどのように達成するのか、具体的な「方法」を考
える必要があります。また、その「方法」を実行するための「組織」
も必要となります。
校内研究・研修は全教員が同じ目標に向かって取り組み、成果を共
ここでは①全員参加型
の組織、②継続性のある
方法について説明しま
す。
有すべきものです。そのためにも、全教員が参加しやすい体制を組織
しなくてはならないでしょう。教科や学年などの小グループを活用す
るのも有効ですし、研究・研修担当者を中心に、校内研究・研修内容
にあった組織を、学校体制として確立する必要があります。
また、校内研究・研修は常に継続されていくべきものです。一つの
校内研究・研修に区切りがついたとしても、さらによりよい教育を目
指して向上していくことが次の校内研究・研修につながります。した
がって、校内研究・研修は成果を積み重ねることこそが重要です。そ
のためには、校内研究・研修の方法が継続される必要があります。
(3) 時間と機会の保障
教員の仕事は多岐にわたり、また校内研究・研修に割ける時間には
限りがあります。教員に見通しをもたせ、また時間と機会を保障する
ことで、より充実した研究・研修の時間となります。
①年間計画における位置付け
限られた時間を有効に使うためにも、見通しをもって計画的に取
り組む必要があります。全教員が無理なく取り組めるように、年間
計画に研究・研修の機会を位置付けておきます。
校 内 研 究 ・ 研 修 の 手 引
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第2章
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校内研究・研修の概要
3 校内研究・研修を進める上で大切にする視点
②時間の効率化
貴重な時間を使っているという意識を常にもち、いかに短時
間で効果的な校内研究・研修を行えるかを考える必要がありま
す。
「個人がするべきこと」、
「担当者がするべきこと」、
「全員で
すべきこと」を区別し、できるだけ無駄を省いた校内研究・研
修にすることが必要です。また、貴重な時間を使うだけの価値
ある校内研究・研修とするための企画、運営をしていくことが
も大切になるでしょう。
③校内研究・研修を評価する場面の設定
研究・研修は積み重ねられていくべきものです。校内研究・
研修を次につなげていくためには、校内研究・研修そのものを
評価することも大切です。年度の終わりには全教員でその成果
を共有する場面を設定することで、次の研究・研修への第一歩
とする必要があります。
校 内 研 究 ・ 研 修 の 手 引
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