校内研究・研修の基本的な考え方 第2章 Ⅱ 校内研究の考え方 1 校内研究を進めるための手順 この項でいう「校内 研究」とは、「校内に 1 校内研究を進めるための手順 校内研究をより充実したものにするためには、研究の全体像をつ かんでおく必要があります。校内研究のおおよその全体像を次の図 で示し、手順について例を示しながら説明していきます。 おける主題研究」を指 します。児童・生徒の 変容を目指した授業 実践中心の、実証的な 研究について説明し 研究組織づくり (1)研究主題・副主題の設定 (2)研 究 仮 説 の 設 定 (3) 研 究 の 視 点 (4) 研 究 構 想 の 確 立 (5) 授 業 実 践 Plan(計画) Action(改善) Do(実施) ます。 ○研究主題・副主題・ 研究仮説を学校の 実態に則して検討 します。児童の実態 や学校研究の流れ によって、副主題や 仮説を設定しない こともあります。 ○研究構造図を示し、 研究の全体像の共 通理解を図ります。 ○教科部会やブロッ ク部会で指導案を 検討、授業実践を行 います。 究 の 検 めの手順 (1) 「研究主題・副主 の設定について」 P19~P20 (2) 「研究仮説の設定 について」P21 (3) 「研究の視点につ いて」 P21 (4) 「研究構想につい て」 P22 (5) 「授業実践につい て」 P23 (6) 「研究の検証につ Check(評価) (6) 研 校内研究を進めるた 証 いて」 ○子どもの変容やア ンケート等をもと に研究の検証を行 います。 P23 事例) 小学校の校内研究 2 3章 校内研究を進める上で留意すべきこと P31~P36 (1)研究主題・副主題の設定について 研究主題は、学校としての課題を明確にし、研究の方向性を示すも 中学校の校内研究 3章 のであり、全教職員の共通理解を得られることが望まれます。研究主 P37~P42 題を設定するときには、次のような点を踏まえることが大切です。 特別支援学校の校内 ○学校の教育目標、本年度の重点目標から検討する。 ○児童生徒の実態や地域の実態を把握する。 研究 3章 P43~P46 ○昨年度の研究の成果と課題から、深化・発展させる。 ○今日的な教育課題に応える。 校 内 研 究 ・ 研 修 の 手 引 19 校内研究・研修の基本的な考え方 第2章 Ⅱ 校内研究の考え方 2 校内研究を進める上で留意すべきこと 研究主題例 研究主題設定の背景 例 「進んで関わりを深め、学びをつくりだす子ども」 この研究主題の設定には、次の4点を背景としています。(小学校) 関連) 1章 P2~P5 研究主題の現状 (小学校・中学校) ○今年度の学校の重点目標から 「分かる授業の実践と心の教育の推進」が今年度の重点目標である。 ○児童の実態から 学習への取組は意欲的であるが、友達と関わり合いながら、新たな 価値を獲得していく取組は苦手である。 ○昨年度の成果から 小交流の場を設定することにより、積極的に関わり合う姿が見られ るようになった。引き続き、関わり合いや交流を研究の課題にして いくことが必要と考える。 ○今日的な教育課題から 言語力、コミュニケーション能力の育成が求められている。 研究主題を具現化するために、研究の副主題を設定することもあり ます。研究主題と副主題により、研究の様相が明らかになります。研 究の主題と副主題の関係は、学校によって様々ですが、次のような関 係が考えられます。 主題 と 副主題 の関係 ○ 主題 が目指す子ども像、 副主題 は具現化するための授業像 例1)主題 副主題 例2)主題 副主題 豊かにかかわり、自ら学びを高めていく子ども 子どもの居場所がある授業 やる気と自信をもてる子ども 進んで自分を表現し、学ぶ楽しさを実感する授業 ○ 主題 が授業像、 副主題 が目指す子ども像の実現を目指す 例1)主題 副主題 例2)主題 副主題 豊かな心と確かな学力を育む授業づくり 主体的な学び合いを通して自己を高める子どもの育成 生きる力を育む授業の創造 自然と豊かに関わり、自ら学びを追求する子の育成 ○ 主題 が目的、 副主題 が主題を達成するための手法 例1)主題 副主題 例2)主題 副主題 自分の成長に手応えを感じるカリキュラムの編成 「あれ?」から単元構成へ 自分の考えをもち、生き生きと表現する子の育成 言語活動の充実を通して 校 内 研 究 ・ 校 内 研 修 の 手 引 20 校内研究・研修の基本的な考え方 第2章 Ⅱ 校内研究の考え方 2 校内研究を進める上で留意すべきこと (2)研究仮説の設定について 研究仮説とは、研究の見通しや研究結果の予測に当たるものです。 主に研究主題に迫るための考え方や方法を示します。研究仮説は次の ように表現されます。具体的な手だては研究の視点(後述)で示され るので、やや抽象的な表現となる傾向にあります。 関連) 1章 P6~P8 研究仮説の傾向 (小学校・中学校) ~を~することで(研究の重点や手だての方向性)、 ~となる・~できる(研究結果の予測) 研究仮説 例 例1)子どもたちの意欲を高め、他者との交流や関わりを通しな がら追究を深めていくことで、 「自ら進んで考え、生きる力」 を身に付けることができる。 例2)基礎・基本を大切にした学習活動をすることによって、子 どもは生き生きと課題に取り組んだり、自分を表現したり することができる。 より精度の高い研究仮説を設定するためには、先行研究や他校の研 究の成果を参考にすることも大切です。また、研究の広がり、深まり に合わせて見直しを図っていくことも必要です。 関連) 1章 (3)研究の視点について 仮説を検証し、研究の内容をより具体化するために、研究の視点を 設定します。具体的な手だてを設定しておくことで、研究の方向性が P6~P8 研究の視点の傾向 (小学校・中学校) 明らかになり、教員同士の共通理解を深めることにつながります。授 業づくりの要素となる教材化や教師の関わり、評価などに着目した視 点を設定している研究が多く見られます。 研究の視点 例1)視点1 視点2 例2)視点1 視点2 例 意欲をもち、追求し続けるための教材化 個々の思いを伝え合うための教師の関わり 話し合う必要感を生む単元構成 話し合う力の高まりを実感できる支援・評価 (4)研究の構想について 校内研究の共通理解を図るために、研究の全体構造図を示すことは 効果的です。全体構造図は、研究主題設定の経緯や主題解明の方法な どを分かりやすく示すことに配慮して作成します。 (研究の全体構造図の例参照:次ページ) 校 内 研 究 ・ 校 内 研 修 の 手 引 21 校内研究・研修の基本的な考え方 第2章 Ⅱ 校内研究の考え方 2 校内研究を進める上で留意すべきこと 研究の全体構造図 学 校 教 (進んで学ぶ心 重 育 例 目 標 豊かなたくましい子) 点 目 標 (自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、 よりよく問題を解決する能力を育てる) 研究主題 (自ら学ぶ子どもの育成) 副主題 (一人一人の思いを高め合う授業作り) 研 究 仮 説 (一人一人が課題に向き合い、共に高め合う交流の場を構成する ことによって、自ら学ぶ子どもを育成することができる。) 視点1 問題意識を生む教材化 授 視点2 業 実 交流場面での教師の関わり 践 低・中・高の3ブロック体制で授業作りを行う。 部内研は全員実施、校内研はブロック1本実施とする。 実践授業の成果と課題をまとめる。 研究推進には、その研究体制(組織)づくりも含まれます。校内研究が 全員参加のものとするために、研究体制を整えることが大切です。例えば、 小学校では、ブロック体制や研究教科部を組織することもあります。低学 年・中学年・高学年のブロック体制で授業づくりを行うことで、児童の発 達段階に即した授業実践を行うことができます。また、研究教科を限定し、 ある教科を窓口として主題に迫る場合は、教科の専門性がより重視され、 系統的に児童の変容を見取ることができます。 小学校の研究体制は、視点の内容によって様々な形態が考えられます。 一方、中学校では、教科会や学年会を足場にして授業づくりが行われます。 また、特別支援学校では、児童生徒の多様性に対応し柔軟な研究体制とな っています。 校 内 研 究 ・ 校 内 研 修 の 手 引 22 校内研究・研修の基本的な考え方 第2章 Ⅱ 校内研究の考え方 2 校内研究を進める上で留意すべきこと 関連) (5)授業実践について 4章 P2~P5 研究仮説に沿って日々の研究を進めて行きますが、ここでは、校内での公 研究討議を活性化さ 開を前提とした研究授業について説明します。校内研究は、PDCA のマネジ せるための2つの方 メントサイクルに基づいて行われますが、それぞれの研究授業でも PDCA の 策 サイクルに従って考えるとよいでしょう。 《Plan(計画)》 研究の視点に沿った単元構成や本時案を考えます。目指す 児童生徒の姿を明らかにし、変容を促す手だてを指導案に記載し、主張の見 える授業をします。また、研究部会等で授業案を検討します。 《Do(実施)》 校内の多くの先生方に参観してもらえるように、体制を整え ます。参観者は授業記録をとり、授業検討会で活用します。授業記録者は、 教師の発問と子どもの反応を記録したり、座席表を使って個々の学習状況を 記録したり、ビデオ撮影したりします。方法は様々ですが、研究テーマに合 わせて分担して行います。 《Check(評価)》 研究全体会等で、授業後の検討を行いますが、全員参加の 話合いをもてない場合もあります。その場合、ブロック単位での検討や、参 観者から感想カード等で意見を集めたりすることもあります。あらかじめ評 価の視点を明確にしておくことで、視点に沿った授業実践にすることが可能 となります。 《Action(改善)》評価をもとに、再構築して他のクラスで実践することも考え られます。最も大切なことは、研究授業が日々の教育活動と結び付き、授業 改善につながることです。 (6)研究の検証について 年度末には、研究の成果と課題を明らかにし、次年度に向けて研究の方向 性を定めます。評価の方法は、教員へのアンケートや児童生徒への意識調査 などがありますが、授業実践の記録や日々の児童生徒の変容などから成果と 課題をまとめていくことが基本となります。 年度末研究評価の視点 例 ○主題・副主題は学校の実態に即し適切であるか。 ○視点は仮説を検証する手だてとなり、授業改善につながるものとなって いたか。 ○授業研究により、子どもの変容が見られたか。 ○適切な研究推進計画が立てられ、協働研究となる体制がとられていたか。 校 内 研 究 ・ 校 内 研 修 の 手 引 23 校内研究・研修の基本的な考え方 沿 第2章 Ⅱ 校内研究の考え方 3 校内研究計画の立案 3 校内研究計画の立案 研究は、その成果を継続的に積み重ねることにより進められなくてはな りません。中・長期的な展望をもった研究計画を立てる必要があります。 (1)年次計画 研究の年次計画については、研究主題や学校の実態に合わせ3~5か年 といった長期的な展望のもとで計画を立てていきます。研究主題に迫るた めの大切な計画となります。 年次計画 〈1 年次〉 例 〈2年次〉 基盤づくり 〈3年次〉 深化・充実 発 ・新テーマ策定 ・新テーマ確定 ・研究体制の確立 ・研究の重点確認 ・仮説や視点の理解 ・授業協力者を招き ・授業実践 展 ・実践発表会開催に よる外部の評価 授業実践 ・研究のまとめ ・主題・副主題・視 ・成果と課題の共有 ・実践の積み上げ ・次年度重点の明 確 ・成果と課題の共有 点の見直し ・年次研究の立案 化 (2)年度計画 長期的な年次計画のもと、本年度、何をどの時期に行うのか具体的な研 究計画を立てます。学校行事等との関連を図りながら、教員の負担となら ないよう、また、より充実した内容となるよう配慮し計画を立てます。こ れは、年度当初に研究・研修部により示され、全教員の共通理解のもと、 研究を進めていきます。 年度計画 1学期 2学期 例 ・研究内容と体制の確立 ・研究部提案授業 ・学力テストの分析 ・研修会実施 ・研究授業検討 ・部内研、全校研実施 ・授業実践の検証 3学期 ・研究のまとめ ・次年度研究の計画 ・研究集録作成 校 内 研 究 ・ 校 内 研 修 の 手 引 24
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