技術文書の品質チェックを自動化~ 要求仕様の一貫性

研究題名
分野:情報・通信
~技術文書の品質チェックを自動化~
要求仕様の一貫性検証支援ツール
位野木 万里
情報学部 コンピュータ科学科 准教授
キーワード: ソフトウェア工学,要求工学,要求仕様書,一貫性検証,自動化
概要
製品ソフトウェア開発において,その製品が何を実現するのかを示す要求仕様書に不備があれ
ば,開発者に仕様が適切に伝わらず,魅力ある製品開発の妨げになる.本技術開発では,要求仕
様の品質特性である「一貫性」に着目し,ベテラン技術者が経験的に得た検証知識を検証ルール
として整理し,同ルールに基づく要求仕様の一貫性検証支援ツールを実現した.
本ツールにより,初級者にありがちな,用語の表記ゆれやあいまい用語の使用箇所を自動的に
検出する.実製品開発で用いられた要求仕様書に対して,人手による検証結果との比較実験を行
い,再現率:95%,適合率:90%の結果を得た.
アピール
ポイント
「アクター」,「データ」,「画面」,「振る舞い」などの設計要素が,要求仕様書内で一貫した定義で
記述されていることを確認するための検証知識を,検証ルールと辞書として定義し,自然言語解析
エンジン,検証エンジンとともに,一貫性検証支援ツールとして実装した.本ツールは,要求仕様書
を入力すると,表記ゆれや曖昧用語に関する指摘事項を示した検証レポートを自動生成する.プロ
ジェクト管理者や技術者は,検証レポートに従って要求仕様書を改善することにより,高品質な要
求仕様書を効率的に作成することが可能になる.辞書や検証ルールを拡張することで,様々な分
野の技術文書に応用することが可能である.
関連論文
利用・用途
応用分野
p
•
•
•
•
提出前の要求仕様書/提案書のセルフチェックや管理者による品質チェック
検証レポートを用いた要求仕様書のレビュー
検証ルールや辞書による検証知識の共有と知識継承
様々な技術文書や規約規定類の品質チェック
調査範囲
拡張
企業A
インタビュー/形式知化,
企業C
ルール一般化と構造化
企業B
【従来の方法[Kimura2014]】
インタビュー/
形式知化 一貫性検証システム 一般化
要求定義の
有識者
成功事例の
要求仕様書
関連情報
要求仕様の一貫性検証支援ツール
F1
F2
F3
F4
F5
定義漏れ
検証
用語
不一致
検証
用語定義
完全一致
検証
NG
ワード
検証
シナリオ
自動補正
拡張
定義漏れ 用語不一致
検証ルール 検証ルール
文書診断技術
検証エンジン
検証ルール
検証ルール
検証ルール
検証ルール
ルール実行エンジン
検証ルール
検証ルール
検証ルール
辞書
形態素解析エンジン
●関連論文 = [Kimura2014] 木村隼人, 北川貴之, 位野木万里: 要求仕様書の品質向上に向けた活動報告 ~一貫
性検証の形式知化および自動化~, 情報サービス産業協会 技術シンポジウムSPES2014SPES事例
研究(経験報告)要求工学S4a, http://www.jisa.or.jp/public_info/tabid/1515/Default.aspx, 2014.
= [Inoki2016] 位野木万里: 要求定義の高品質化のための要求仕様の整合性の検証知識の形式知化
と一貫性検証支援ツールの開発, 独立行政法人情報処理推進機構, ソフトウェア工学分野の先導的
研究支援事業, http://www.ipa.go.jp/sec/rise/#01-9, 2016.
●関連 URL = シナリオの一貫性検証支援ツールの紹介, http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwa1076
●その他
= 本研究は, 独立行政法人情報処理推進機構技術本部ソフトウェア高信頼化センター(SEC: Software
Reliability Enhancement Center)が実施した「2015 年度ソフトウェア工学分野の先導的研究支援事業」
の支援を受けたものである.
工学院大学
研究戦略部 研究推進課
東京都八王子市中野町2665-1 〒192-0015
TEL:042-628-4940 FAX:042-626-6726
E-Mail:[email protected] URL:http//www.kogakuin.ac.jp
研究題名
分野:情報・通信
要求仕様の一貫性検証支援ツール
検証ルールと辞書による品質チェック
位野木 万里
情報学部 コンピュータ科学科 准教授
キーワード: ソフトウェア工学,要求工学,要求仕様書,一貫性検証,自動化
構成
実システムの要求仕様書に対するベテラン技術者の検証ノウハウを抽出し,ルールおよび辞書
として形式知化し,要求仕様の一貫性検証支援ツールに組込んだ.
要求仕様の一貫性検証支援ツールのルール構成と機能実施例
一貫性
検証ルール
未定義
F1 定義漏れ検証
定義漏れ
検証ルール
設計要素
識別ルール
用語不一致
検証ルール
アクター
識別ルール
アクター
識別辞書
データ
識別ルール
データ
識別辞書
画面
識別ルール
振る舞い
識別ルール
関連論文
適用評価
用語定義完全一致
検証ルール
画面
識別辞書
NGワード
検証ルール
No.
×
NGワード
辞書
p
振る舞い
識別辞書
アクター定義
×
(仕様書)
1. ユーザは,レジに購入したい商品を
持参し,ポイントカードを提示する.
2. レジ係は,商品情報およびポイント
カード情報を端末・・・
F2 用語不一致検証
表記ゆれ
識別辞書
ユーザ(管理者)
2
ユーザ(担当者)
3
オペレータ
アクター定義
×
(仕様書)
1. ユーザは,レジに購入したい商品を
持参し,ポイントカードを提示する.
2. レジ係は,商品情報およびポイント
カード情報を端末・・・
表記ゆれ
識別ルール
アクター定義
1
No.
アクター定義
1
ユーザ(管理者)
2
ユーザ(担当者)
3
オペレータ
表記ゆれ
プロジェクト管理者やシステムエンジニアなどの技術者からなる有識者によりツールの評価を実
施した.評価により,人手による品質チェックと比較し,効率的に用語の定義漏れや表記ゆれの
チェックが可能なことを確認した.
要求仕様の一貫性検証支援ツールの適用評価例
仕様書(機能定義部分の抜粋)
交付決定情報登録
・国は登録された交付申請情報を基に
交付額を 決定し、交付決定情報を
登録する
・国は交付決定通知依頼書を出力する
・・・・・・
データ(エンティティ)定義
No.
エンティティ名
1 交付金申請・決定情報
2 国庫負担金所要額調書情報
3 国庫負担金精算額情報
今後の展開
検証レポート(抜粋)
データの用語不一致検証
ツールによる検証
交付申請情報登録
・市町村が前年度実績額等を基に
交付申請情報を 登録する
(画面から登録)
・市町村は所要額調書を出力する
交付申請情報
訳書
交付決定情報
交付決定通知依頼書
交付決定通知書
変更交付申請情報
変更交付決定情報
変更交付決定通知依頼書
変更交付決定通知書
事業実績情報
交付金精算書
交付額確定情報
交付額確定通知依頼書
・・・・・
3
3
1
2
1
1
1
2
1
2
1
1
2
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
不一致
仕様書中の「交付申請情報」は
エンティティ定義に未定義のため
不一致として検出
要求仕様の一貫性検証支援ツールを公開し適用展開中である.検証対象の拡張のため,検証
ルールと辞書の充実ならびに,ツールの操作性向上のための拡張に対応中である.
工学院大学
研究戦略部 研究推進課
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