省エネ・環境&生産管理 すぐに役立つ省エネ・環境保全&生産改善 −第12回− すぐに役立つ環境保全(その3) −Recycle (リサイクル) :再利用−生ゴミのリサイクル− (社)日本技術士会 茨城県技術士会 環境問題解決プロジェクト 丹 左京(建設環境) ・渋谷 貞雄(経営工学) はじめに これに使われる税金は、国民一人当たり年間 近年、循環型社会でのリサイクルが叫ばれ、 17,800円です。生ゴミの発生量は一般廃棄物 分別回収・再生利用が進められております。 の約30%、その殆どは焼却・埋立処分され、 生ゴミのリサイクルには、堆肥、家畜類の餌、 リサイクル率はわずか9%です。 メタンガス化等、いずれもバイオによるものが 平成12年度一般廃棄物の中間処理で、直接 大半です。簡単な方法には、生ゴミを土に接触 焼却された割合は77.4%、焼却以外は16.7%、 させ土中の微生物やミミズなどの働きによるも 最終処分量は年に1,051万トン、現状は量の増 のがありますが、処分量、分解時間、生ゴミ特 大・質の多様化、最終処分場の残余容量のひっ 有の悪臭、分別回収等が課題になっております。 迫等が生じています。また、市町村の資源化と しゅん せつ そこで廃棄処分に困っている浚 渫・浄水土 住民団体の回収を合わせたリサイクル率は 等の資源と生ゴミをバイオの力で、生ゴミ土化 14.3%、年々上昇していますが、依然低レベ と団粒化技術による“自然の再生”リサイクル ルにあります。 を提案します。これはリサイクル効果だけでな 2. NPOを核としたコミュニティビジネス く、安全で美しい郷土づくり、市民参加による 生ゴミの処理方法には、バイオマス等があり 地域経済の活性化、NPO(Nonprofit ますが、ここではバイオと化学反応を応用した Organization)を核としたベンチャービジネ システムを紹介します。 スの創出等、経済活性化の効果が期待できます。 これを進めるには次の手順により、PDCA (Plan Do Check Action)で定着させます。 森林 美しい自然の再生 自然循環 災害・開発による裸地化 表土の再生 コミュニティビジネスの進め方 表土の流出 ①NPOが提案・自治体(農林・土木)が採用 生活循環 ②自治体・地域企業が支援 ダム・港湾に堆積 緑化材料として自然循環に戻す 生ゴミの分別収集 ③地域住民が生ゴミを分別 浚渫処理土(浄水・下水) 図1 生ゴミによる循環型社会の構築 ④市・町・村の収集による生ゴミ土状化 1. 廃棄物・リサイクルの現状 ⑤国・県・公社による流失表土の浚渫選別 わが国のゴミ総排出量は、平成12年度 ⑥NPOが再生資源化(生ゴミ土+浚渫土) 5,236万トン、ここ数年横ばい傾向にあります。 ⑦地元企業の還元表土作りと緑化工 皆さんが毎日捨てるゴミの量は、1人1日当 ⑧安全で美しい郷土作り り約1kg、4人家族で毎日4kgとなります。こ のゴミを処理するのに日本全体で年間約2兆 7,000億円、これは茨城県の平成16年度予算 額(1兆29百億円)の約2倍に相当します。 WING 21 いばらき 2005.3 8 省エネ・環境&生産管理 3. リサイクルのシステム に生まれ変わり、安全で美しい緑になります。 Ⅰ.NPOが提案・自治体(農林・土木)が事業 4. 自然の表土 に採用、地域住民の協力で生ゴミを分別回収し、 収集と同時に土状化します。 表土は生から始まる生命を育む森林土壌で す。生の落葉が小動物・微生物など多様な土壌 生物の餌となり、砂や粘土、植物や小動物の死 骸による腐植等、様々な物質が複雑に絡み合い、 図2 生ゴミと収集車 高次団粒構造を形成しています。 Ⅱ.収集車で生ゴミ粉砕と汎用活性改良材(カル A0層(落葉層) シウムとケイ素を団粒結合させ、ポゾラン反応 A層 (表土) で安定強化)を混合します。超微粒子にするこ BC層 D層 とでゴミの表面積が広がり、汎用活性改良材が、 まんべんなく水分を吸着、効果が倍増します。 図4 森林土壌の高次団粒構造概念図 例えば、1cmの立方体を1mm毎に分割すると表 表土は生態系を蘇らせ、多様な生命を育む食 面積は10倍になり対数的に増加します。 1cm×1cm×6面=6 物連鎖の出発点です。生ゴミは養分が多いので 0.1cm×0.1cm×6面×1,000個=60 微生物が即利用でき活性化を促進させ、より早 さらに好気的環境を作ることで、たんぱく質 く自然が蘇ることができます。 おわりに や炭水化物などの有機成分を高活性の好気性菌 により炭素、酸素、窒素、水素などの化合物に 平成13年に食品リサイクル法、平成14年に 分解されて生ゴミを減容化、臭いの少ないさら 建設リサイクル法等が施行され、分別解体や再 さらのソイルになります。 資源化などが義務付けられました。乱れるとゴ Ⅲ.汎用活性改良材と生ゴミの混合比は、製造 ミですが、整えると資源になります。 されるソイルの視・嗅・触覚に関する実証試験 「バイオマス・ニッポン」の実現へ向け、生 を行い、含水率50%を境に物性が変化するこ ゴミと流出土などの眠る資源を再生し、循環型 とを確認して混合管理します。 社会の構築と共にコミュニティビジネスによ り、地域経済を活性化して、安全で美しい郷土 をつくりましょう。そのためには、関係行政機 関と連携しつつ、NPOと市民参加によるベン チャービジネスの創出が必要です。 プロフィール ──────────────── 図3 汎用活性改良材の使用量と含水率 しゅん せつ ど Ⅳ.ソイル(生ゴミ)と浚 渫土・浄水土(流出表土) 丹 左京氏 (社)日本技術士会 茨城県技術士会 理事 で還元培土(緑化材)ができます。浚渫・浄水土 茨城県SF工法協会事務局 主席研究員 や発生土等は失われ足りないものを補います。 渋谷 貞雄氏 Ⅴ.自然と生活の循環資源が、汎用活性改良材 渋谷技術研究所 所長 と高次団粒化技術による吹付工で、自然の表土 (社)日本技術士会会員 ご意見、ご感想、ご質問等をお寄せ下さい。 joho@iis-net.or.jp WING 21 いばらき 2005.3 9
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