講習会・平成 2 7年度学校保健講習会 平成 2 8年 2月 2 1日開催 講演 電子メディアの子どもへの影響とその対応 佐藤和夫 1 ( 5 ) 学業成績低下:長時間視聴が学業成績の低 はじめに 下と関連する.わが国の全国学力・学習状況調 「スマートフォン(以下.スマホ)のアプリで 査(平成 26年度,文部科学省)でもインター r ネット(以下,ネット)・スマホの時間と学力低 赤 ん 坊 を あ や す 母 親J いつも i Padで遊んでい r て . 積 み 木 も ス ワ イ プ し て し ま う 2歳 児 J 公 下の強い相関が示されている. 園で友だちと携帯ゲームで遊ぶ小学生たち J rス ( 6 ) 行動・睡眠への影響:テレビやゲームの視 マホを手離せない女子中学生 J...・子どもた 聴時間と注意欠陥問題が相関するという報告が ちは,進化する電子メディアが溢れる環境の中 ある.また,長時間の視聴は睡眠時間を減少・ にいる.子どもにかかわる医師は“電子メディ 不規則にし,内容によっては睡眠の質にも影響 アが子どもの心身の健康に悪影響を及ぼす"こ する. とを認識し.メディアリテラシーを啓発するこ ( 7 ) 成人期の健康への影響:小児期の視聴時間 とが求められている. が成人期の運動不足・肥満・喫煙・高コレステ 1 ロール血症・高血圧と関連するというコホート 研究がある. 1 . メディアが子どもに影響を及ぼす機序 ( 8 )依存・ネットいじめ:オンラインゲーム中毒 I 電子メディアが子どもに与える影響 メディア接触が重要な活動の時間を奪ってし のような報酬系の依存(暗癖)に加えて, LINEを displacement白 e o r y ) と視聴 まうための影響 ( はじめとする SNS( s o c i a lnetworldngs e r v i c e ) 内容の影響 ( c o n t e n tt h e o r y ) がある. への依存(友だちとの連絡のために一時もスマ 2 . 小 児 期 へ の 影 響 1-3) ホを離せない)もある.思春期の子どもたちで (1)暴力・攻撃性:メディアで暴力シーンへの は後者の“つながり依存"が広がっており夜更 曝露が攻撃的行動を増大させ.暴力に対する罪 かしなど日常生活の乱れを引き起こしている. 悪感を麻癖させる. 誹務中傷や個人情報をばらまくなどネット上で ( 2 ) 運動不足・肥満:長時間の視聴は運動不足 のいじめは世界中で問題となっている. を助長し肥満の原因となり,体力低下を招く. ( 9 ) デジタル・デメンチア:神経細胞は筋肉細 ( 3 ) 性の問題:メディアでの早期からの過激な 胞と似て使わないと機能が低下する.考える時 性表現への接触が,性行動の低年齢化や問題を 間を奪われることによって思考力全体が低下す 引き起こす. ることが懸念されている. ( 4 ) 喫煙,飲酒,違法薬物摂取:映画やテレビ 3 . 乳幼児への影響 ドラマの中で繰り返し見ることで,その使用が 促されることが知られている. ー さとう・か?お:国立病院機構九州医療センター小児科 医長・周産期センターセンター長. 日医雑誌第 1 4 5 巻・第 3号/平成2 8 ( 2 0 1 6 )年 6月 乳幼児の場合,内容にかかわらず“メディア 接触が子どもの大事な時間を奪っていること" ( displacement出 e o r y ) が重要である. (1)言葉や発達に影響を及ぼす危険性:1歳 半 5 3 5 他診で.長時間悦l胞と発~m の遅れとの|則述を fd めている 長期間j 追跡縦断的 tU~ 1f: でも.乳児 ! U Iの干J V 即時[ 1 . 1 ]と 幼 児 J U Iの t ヨMt-認 知 発 述 の 負 の 中 日l 則が示されている.) ( 2 ) 生活 リ ズム ー 基本的 ~I:. iï~' J & I 忙I の形成に影 響 小 児 保 他 の 研 究で 十 Uii時 H ¥Jの長い幼児 は 。 就 寝l 時五I 1は起く 就以起床のリズムは不 規W Iで . 食1 司' K ' tや却l = f J ! g守 ' 1 ft は悲し、 u ことが報告 されているω I I 。 2 " " 院での子"ピ ピデコヲ 叫.隠;I~ミ.しs う Da l t Q J貴 司肺ゅのテレピ ピデ方のIlIC1afJa r J;しるう. 小児科医からの提言 D.べてのメディアヘ 11Mする.偽<眉早川.ること...で. 1021;同軍でを回11cぢ;l;t'O". 。 予と色白璽伝"テレピ ピデZ ヲ ハー 小 児 科 医 (' 1 1 本小児科医会 アメリカ小児科 ν7'レコンピコータ 告置。偉い ょうじじま".う 0'援問備と子どちでメアず ?U: fCむ..るルール~~<り,,, .う 学 会)が 干 ど も と メ デ ィ ア に │ 則して拠 言を行 っ ~メディ ア漬けの予防は乳幼 児から!~ ている 1 日本小児科医会の子どもとメディ アの 図1 ) 問 題 に 対 す る 提 言"( ① 2絞 ま で の テ レ ビ ピデオ'I J L J 隠は控えましょ っ @ 議録圃畠人目紳I I 師会 ②授乳中 食 事 中 の テ レ ビ ービ デ オ の 視 聴 は や 図 めましょう 1 日本小児科医会の啓発ポスタ ー ( h t t p :/ / j p a . u m i n . j p/ download/ media/ media凶!l ③ すべてのメ デ ィアへ接触する総時 I I Jを制限す ることが1Ti~ です 1E I 2時 H Hまで を 目 安 と 考 る 子 ど も が い る と き の 家 族 の視 l 徳も 彩 怨 する えます がある 可 能七l q;子 ど も 部 屋 に は テ レ ビ. ビ デ オ 。 パ ー ソ ナ ル 等で 2歳まではメディ 7 を制限すること.そし コンピューターを │ 泣かないようにしましょう て子どもにとって l 封 1 : 1 ' 1 な遊びこそ主要であるこ ③1~ 護者一と子どもでメディアを上手に利用する とを税に説明すべき"であると勧告している" 1 J レールをつくりましょう 1 1 1 2 アメリカ小児科学会の提言 ( 1 ) 1999" 1 ュの提言 では, 1 乳幼鬼の。 H 掃の発育 そ し て 附 緒 的 知 的 相 会 的 発 達 に と って 両 親あるいは保有してくれる人との・直に触れ合 うかかわり合い i 裂 で あ る 」 と強制 が非常に1T i と して. 汁、児 * 1 .1 玄は乳幼児健診 メ デ町 イアリテラシー 1 メディアリテラシーとは メディアリテラシ 読み解く力 • は f l i l 価する力 メディアを主体的に 活H Iす る 力 を 示 す 何も考えずに受け入れてしまうのではなく 批 し日小児科医は 2成 以 Fの 子 ど も に テ レ ビ を 見 判的に見たり せないように殺を税制すべきである。 要でないものは見ないようにしたりする能力で と述べて f 官報を発イ日する能力。そして必 いる η あるメディアが被れる現代においてはメディ ( 2) 2011" 1 ニの 12級 以 下 の メ デ ィ ア 使 用 」 に アリテラシーを養うことがきわめて i f i 裂となる 佐山を 当 て た 提言 で は。 2歳 ま で の メ デ ィ ア 使 2 家族でメディアリテラシー 用 が 有 益 で あ る証拠はなく 育 l t.教 子 ど も の 他L 発迷に対してむしろ 1f ~:!;: である可能位があ 5 3 6 子 ど も の 場 合 . 親 子 で メ デ ィ ア リテ ラシーを 尖践することが必要である 日医雑箆 第 1 4 5 巷 第 3号/平成 潤( 伺1 6 ) 年 6月 乳児には見せない食事 r l ' は見ない 見たい祁'~H だけ を見る : 2)再t れる 終 わ っ た ら 消 す 子 ど も と 一緒 に もげI す力 ⋮@⋮⋮⋮⋮ ( 1 ) 選 択 伽l 聞け る を育てる I(;~ ) ; , ' 1 刊i '・批 判 す る J t t 判したり 内容 に つ い て 共 感 し た り 家政で話題にする (4)工夫寸る 小さな子どもの場合はテレビ に カ バ ー を 掛 け る . コ ン セ ン トを抜 く 絞るI1Ii はじゃれっき遊ひ‘や本の読み 1 mかせをする ( 5)大 人 が 実 践 保 殺 者 自 身が て見せる こ と " が 大 切 で して I 言 うよりもし 子 ど も の記長Ti環境と 大人がメディアリテラシーを実践するこ とが豆裂である I r vスマホ時代の到来 1 ス マ ホ に よ る 子 育 て 9叫 f~'. :iiliに広まったスマホは子育ての rl:l に も入り 込んでいる 日本外来小児科 学 会 に よる 「子 ど 児科医会 も と メ デ ィ ア の E閥抗 J( 20' U 年 i) ' J)では乳 1 ' ' ) が スマホを利! F JL, 3; ' 1 ' ) が 幼 児 の 母 親 の 6-i; スマホを干 育 て に 使 って い る 現 状 が あ った 図 2 日本小児科医会の啓発ポスタ I h l l ρ/Ij p a . u耐 n . j p / d o w n l曲 d/ u p d a t e l 剖 四 回 pd f ) 干 ども をおとなしく させる目的でスマホをイ史うこ と ( 氾子 ベ ピ ー シ ア タ ー . f l l子おしゃぶりと利、 ある さ れ る ) は 親 子 の 触 れ 合 う 附 川 と子どもが我回 しなけ,'L(まならない する機会を狩ってしまい I v医師の役割 愛治や , , '制心がTfた な い 危 険 制 を 有 し て い る 日本 小 山手1 去会は「ス マ ホ に 子 守 り を さ せ な い で !Jというポスデー を 行 !ι し {~i却を I!C} らしている (図 2 ) 大人も含めて節肢を持ってスマホをf 史 J f J Hi: 子 メデ ィ 7 は子ど もの心身の発 i主に ~j(;轡す る ifI~ な ~ilri環境である 広m i l は すべての l 2 子育ての支援 「 子 どものあやし方 I しつけブ' J : が分からない」 小児科 医はもとより H I 子メディアが子どもの心身 の 他L J fに 思; i 怪物を及ぼす ことを f 王え 子ども という子育ての知織や技術の不足が ~IUfJ; t にあ と保税者にメディアリテラシ ー をt 出発する役I : ' I [ J る がある したがって メディアに 刺 らない子育て自 日本 I Q In i l i 会 の 1出先生には1: 1 本小児科 l 窓 体を支援することが並裂である 会のポスター C I 主1 1 . 2と もダウン ロード司)を 3 中高 生 の ネ ッ ト 依 存 待合室に判 示 す る こ と か ら 始 め て い た だ け れ ば 「 ネ ッ トイ配布一の rl:J7.',~ ~L:_が国内で111,計 .5 1 万 8 , 000 人」 幸いである という厚生労働科学 研究班の;品1~ 3'f. l l1 が示す ように。 ネァトイt ' 1 ' f(現者Eは ス マ ホ 依 存 が三仁) l I B起とな っている が学校でも I 学校だけでなく 相会全体でのメディア リ テラシー教育が必 ~Ji で 日医路島 第 1 4 5 巷 第 3号/平成 2 8( 2 0 1 6 ) 年 E月 文献 1)八 mcri c anAcadomyo rPc di a l l凶 s :C h i l d rc n .Adol c s・ c cn t s, and t h cM c d i a .J l e d i o( , r i c s 201 : 1 : -:1 32:958日7 961 . 2 )久里浜医療センターネット依存治療部門. h t 中: / l www. k町 i h a m a m e d . j p / t i a r / 3 ) マンフレド・シュピッツアー:デジタル・デメンチアー 子どもの思考力を奪うデジタル認知障害.講談社.東 京. 2 014;1ト 2 7 . 4 )加藤亜紀.高橋香代.片岡直樹:テレビ・ピデオの長時 問視聴が幼児の言語発逮に及ぼす影響.日小児会誌 2004:1 0 8 :1 3 9 1 1 3 9 7 . 5 ) 服部伸一.足立正.鴎崎博聞他:テレビ視聴時間の長 短が幼児の生活習慣に及ぽす影響.小児保健研 2 004: 63:5 1 6 5 2 3 . 6 ) 日本小児科医会「子どもとメディア j対策委員会:r 子 の問題に対する提雷.h t 旬: / / j p a . U I 凶n . どもとメディア J j p / m e d i a . h t m l e r i c a nAcademyo fP e d i a t r i c s . 7 )Mediae d u c a t i o n .Am C o m m i t t e e on P u b l i c Educa 世o n .P e d i a t r i c s1999; 日8 1 0 4 ( 2P t1 ):3 4 1 3 4 3 . 8 )R a d e s k yJ S . SchumacherJ .Z u c k e r r n a n B:M o b i l e andi n t e r a c t i v emediau s ebyyoungc h i l d r e n :t h e e d i a t r i c s2015; g o o d .t h eb a d .andt h eunknown.P 1 3 5 :1 3 . 9 )C o u n c i lonC o m m u n i c a t i o n sandM e d i a :Mediau s e e d i a t r i c s2011; byc h i l d r e ny o u n g e rt h a n2y e a r s .P 01 0 4 5 . 128:104 1 0 )佐藤和夫:子どもとメディア.吉永陽一郎副.総合小児 医療カンパニア乳幼児を診るー根拠に基づく育児支 援.中山書庖.東京. 2 015;1 4 01 4 5 . 1 1 )平成 2 4年度厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・結 尿病等生活習慣病対策総合研究事業「未成年者の喫煙・飲 酒状況に関する実態調査研究J ( 研究代表者:大井田隆). h t t p : / / w w w . m e d . n i h o n u . a c . j p / d e p a r t m e n t l p u b l i c _ ょにK I 2 . p d f h e a l t h l 2 0 1 2 日医雑誌第 1 4 5 巷・第 3号/平脱' 8 ( 泊1 6 )年 8月
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