勤労者退職給与保障法の改訂法律

[10]The Daily NNA 韓国版(Korea Edition) 第 03122 号
2011 年(平成 23 年)8 月 25 日(木)
勤労者退職給与保障法の改訂法律
第3回
者が、年金受給開始年齢である 55 歳以前に退職する場
合、これまでは退職年金加入者の選択に従い個人退職
今年6月 30 日、勤労者退職給与保障法全部改訂法律 口座への支払いを受けられましたが、改訂法律では原
案(以下「改訂法律」)が国会本会議を通過しました。 則として、個人型退職年金制度の口座に移転するとし
これは7月 25 日に公布され、交付後1年が経過した日 ました。
(来年7月 26 日)から施行される予定です。今回は、 また、 改訂法律は、個人型退職年金制度を拡大適用
改訂法律の主な内容について紹介します。
しました。追加的な老後の財源を必要とする勤労者や、
改訂法律では、まず、退職前の退職金中間精算支給 所得基盤の選択の余地のない自営業者なども、退職年
要件を強化しました。現行制度では、勤労者の要求が 金制度の趣旨に照らして安定的な老後の財源を確保で
あれば、使用者は勤労者が退職する前であっても、勤 きるような制度的な支援が必要となります。これにつ
労期間に対して退職金をあらかじめ精算し支給するこ いて改訂法律では、
(1)退職給与制度の一時金を受領
とができます。しかし、その事由に何の制限もなかっ した人だけでなく、
(2)退職年金制度に加入した勤労
たため、退職給与制度が老後に備えるための制度とし 者として自らの負担で個人型退職年金制度を追加で設
ての役割を果たさないケースが多々見られました。そ 定しようとする人、
(3)自営業者など、安定的な老後
のため、改訂法律は退職金を中間精算して支給する際 の所得確保が必要な人――なども個人型退職年金制度
には、住宅購入など、大統領令で定める事由が存在し を設定し、自らの負担で負担金を納め、老後の財源を
なければならないという要件を追加し、この場合に限 運用するようにしました。ただし、自営業者等の個人
り勤労者の要求による退職金の中間精算を可能にして 型退職年金制度への加入は、改訂法律施行後 5 年間の
います。退職金の中間精算支給を可能にする大統領令 猶予期間が適用されます。
についてはまだ定められていませんが、退職年金の中 これからの使用者は、このような主な変更を含む改
途引き出しに準ずる事由(無住宅勤労者の住宅購入、 訂法の変更内容について、より正確に理解した上で、
療養費等)に制限されるものと思われます。
改訂法律が該当企業の退職金および退職年金制度なら
今後、改訂法の施行により、新設法人等は以前の退 びに労社関係について、どんな影響を及ぼすかを分析
職金制度ではなく「退職年金制度」の採用が義務づけ し、適切な対応方案を講ずる必要があります。
られます。今年4月現在、全事業場の正規勤労者のう
ち、退職年金制度に加入している勤労者は約 30.5%の
<筆者紹介>
みです。このような現状を鑑みて、改訂法律では、原
法務法人
律 村 ( ユ ル チ ョ ン ) < http://
則として改訂法律の施行日以降に成立された事業場の
www.yulchon.com/ycindex.htm >
使用者は、その規模にかかわらず事業成立後1年以内
韓国の六大法律事務所といわれる大手法律事務所
に確定給与型または確定寄与型退職年金制度を採らな
の一つ。「志を同じくする者達が力をあわせて法律
ければならないと規定しています。
家の村を作ろう!」との意味を込めて設立された。
また、改訂法律により、退職年金制においても設計
韓国国内外の顧客に対し、あらゆる分野の法律サー
の柔軟性が強化されました。現行制度では、勤労者は
ビスを提供している。
退職年金制度のうち、確定給与型と確定寄与型のどち
今回の担当:趙サンウク弁護士
らか一つのみに加入することができましたが、改訂法
70 年生まれ。96 年第 38 回司法試験合格。ソウル大
学法学部卒業。米国コーネル大学法学大学院法学修
律では勤労者の選択の幅をより広げるため、退職年金
士 (LL.M.)。 米国ニューヨーク州弁護士。労
加入者に確定給与型と確定寄与型を混合した退職給与
働法理論実務学会非常任理事歴任。主な専門分野は
制度が設定されます。
労働、企業一般、M&Aなど。99
年律村入所。
さらに、改訂法律では、退職年金制度の連続性も強
電話番号:+ 82-2-528-5355・5709(直通)5200(代
化しています。勤労者の平均勤続期間が 5.7 年にすぎ
表)
ない労働市場において、老後の財源確保といった退職
給与制度の趣旨を生かすためには、退職年金制度間の
連続性が保証されなければなりません。退職年金加入
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