SHR mini No.3 滋賀大学保健管理センター〔 2004.3 〕 「精神科? 心療内科? カウンセリング? 学生相談?」 れていますが、残念ながら実情が一般の教 官・職員の方々に充分伝わっていないのが現 状です。保健管理センターでは少しずつメン メンタルヘルス(精神衛生)とは私たちの タルヘルスへの理解を広めようと努めていま 精神的問題に関わる領域を総称する用語です すが、今回は皆さんからよく受ける質問を取 が、世間一般では“ストレス対策”などの日 り上げたいと思います。それは、表題にある 常問題のみに限定してイメージすることが多 “精神(神経)科”、“心療内科”、“カウンセリ いようです。ところが実際には、精神病・ア ング”、 “学生相談”の4つがどのように違い、 ルコール依存症などの治療、虐待・家庭内暴 どう区別して利用すれば良いのかということ 力への対応から、精神疾患の脳内メカニズム です。以下、順に説明してゆきます。 についての研究に至るまで、メンタルヘルス 私たちの精神的問題の原因を考えた場合、 は精神的な病(やまい)に関連した専門領域 生活の中で生じた出来事や家族・知人との間 すべてを含むことばです。例えば、アメリカ に生じた葛藤などの心理的負担(“心の問題”) 合衆国には National Institute of Mental をまず挙げることができます。このような原 Health(国立精神衛生研究所)という機関が 因で不眠や抑うつ等の症状が現れた場合、そ 設置されており、米国政府から巨額の予算を の問題を“心因性”と呼びます。心因性の問 受けて、精神障害に関する社会問題、薬物の 題を専門的に扱うのは、精神科医と心理カウ 治療効果、脳内セロトニン(神経伝達物質の ンセラー(臨床心理士・学校心理士など)で 一種)と不安・自殺との関連から脳機能を調 す。ただし、心因性の問題であっても、症状 べる動物実験まで、広汎多岐にわたる研究調 が重い場合、精神安定剤や抗うつ剤を用いる 査を実施・支援しています。一見無関係にみ ことがありますが、その時は精神科医の診察 えるこれら多様な研究活動も、実はすべて現 が必要です。 実の社会的ニーズに基づいて行われていると 言えます。 大学のキャンパスで起きる問題に占めるメ 精神的問題の第 2 の原因として、脳機能の 異変に由来することがあります。例えばよく 知られた病気として統合失調症(精神分裂病、 ンタルヘルス関連の割合は驚くほど大きく、 100 人に1人程度)がありますが、脳のドー 滋賀大学も例外ではありません。保健管理セ パミン神経の機能不全により症状が現れる病 ンターは、そのような問題の対応に日々追わ 気です。それ以外に、生まれつき対人的問題 の理解が困難なために社会的不適応を来たし 精神疾患や心理的問題とは別の大学関連事項 やすいアスペルガー障害(生得的疾患、100 が学生相談の対象であり、彦根キャンパスで 人に1人程度)、不注意・落ち着きのなさや衝 は経済学部が、平成16度から“キャンパス 動性が目立つ注意欠陥・多動性障害(略名 ライフ相談室”を設置して相談に応じていま ADHD、100 人に3人程度)などがあります。 す。 脳機能に原因のあるケースは、実は非常に多 最後に、 “カウンセリング”は対話を通じて く、よく調べると一般人口の数パーセント近 の相談一般を指していますが、学校関係者の くに上るのではないかと推測されます。実際、 間では“心理療法的面接”を意味することが 滋賀大学での相談件数のうち3∼4割がこの あります。保健管理センターでは、大学の現 問題です。このタイプの問題は、必ず精神科 状に充分対応できるように、カウンセリング 医の診察を受けないといけません。心因性の にとどまらず、精神科医による診察や精神保 場合とは違って、医学的対応が必須であり、 健相談を積極的に行っています。さらに、必 薬物療法を必要とすることが少なくありませ 要に応じて非常勤の精神科医および臨床心理 ん。脳機能の問題は、深刻な事態に発展する 士が相談に応じています。早期に相談開始す ことがあるため、正しい対処が欠かせません るほど解決がスムーズとなるので、 “あれっ” が、しばしば“心の悩み”、性格・気持ちの問 と思った時点で一度、保健管理センターに相 題として見過されすいので、注意が必要です。 談に来てください(自分のことでも、友人・ 心療内科については、それ程はっきりした 家族の相談でも構いません)。相談内容やプラ 定義はありませんが、 「心理的・精神的問題を イバシーは厳重に守秘されます。 背景とする体の病気・症状を扱うところ」と 考えて差し支えありません。例えば、 “仮面う 保健管理センター(彦根地区)0749-27-1024 つ病” (外見上は胃潰瘍や過敏性腸炎などの内 保健管理センター分室(大津地区)077-57-7709 科疾患にみえる)、 “無月経” (実は拒食・過食 症)、 “心悸亢進” (実はパニック障害による不 安発作)などがそのような病気にあたります。 これらはすべて精神科医が専門とする領域で すが、体の症状に焦点を当てた治療を受けた いなら心療内科を受診するのも一法です。た だし、実際の診察に当たる医師の専門は病院 によって異なり、内科医、婦人科医、精神科 医などと様々です。従って、必ず一度は精神 科医を受診して確定診断してもらっておく方 が良いでしょう。 次に、学生相談とはキャンパスライフにお ける種々の問題(進路選択、学業や学務など) に関するアドバイスや支援を指しています。
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