Title サル骨格筋からのカテプシンDの精製とその性質(II 博士 ・修士論文

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サル骨格筋からのカテプシンDの精製とその性質(II 博士
・修士論文要旨)
丹治, 雅夫
霊長類研究所年報 (1984), 14: 35-36
1984-09-29
http://hdl.handle.net/2433/163316
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
サル骨格筋 か らの カテ プシン Dの精 製 と
行った。このステップで糖蛋白のみが精製 される。
OOカラムクロ
得 られた按品 をセフ7デ ックスG I
その性だ
マ トグラフィーにかけると分子畠の大 きな蛋白質
丹治雅夫
が除かれ,大部分の爽雑物が除去 された。溶出液
序
に0.
8M酢酸ナ ト.
)ウム緩衝液 pH4.
0を1/ 7孟
カテプシンDは脊椎動物の様々な群か こ分布 し
ている。酸性 pH下で活性 を示す ことか らライソ
ゾーム中に局在 してい ると考えられていたが .抗
体を用いた研究か ら細胞内だけでな く,それを分
0とし,ペプスタチンセフ7ロースカ
加 えて pH4.
ラムでアフィニテ ィクロマ トグラフィーを行 った。
溶出は pH8.
2の 0.
1M炭酸水素ナ トリウム水溶液
を用いた。
泌する細胞の回 りや赤血球の膜にも結合 して存在
していろことが示 された。l)
結果 と考察
酵宗活性はヘモグロビン分解能を測定すること
このようにして得 られた精製標品は SDS(ド
によ り検出で きる。活性は pH3.
0で Ansonの方
を改良 した方法で測定 され,酢累活性ユニ ッ
法 2)
デシル硫酸ナ トリウム)変性下でのポ リアク リル
トで示 される。この酵素の特徴はペプスタチンと
00
/
Oで精製度は 2万倍
認 された。またその収率は5
程度であった。
いう放線蔚由来のカルポキルプロテアーゼ阻告剤
ア ミド磁気泳動によ り完全に精製 されたことが確
と l:1のモル比で結合 して持只的に活性を阻召
されることである。
本摂晶は分子血が 3万 と 1
.
5万の 2本鎖か ら成
るサブユニ ッ ト捕道をとっていた。両ユニ ットは
生体での作用は主に 3つに分けられる。第 1は
SDS変性の際メルカプ トエタノールで S-S結
細胞内でのタンパク質の消化で,ヘモグロビンや
)ルア ミド同気泳動
合を還元 しな くともポ 1
)アク T
ムコ多糖などの代謝経路で3
E要な役割を果たして
で分離 され るので S-S結合 によって結ばれた
いる。邦2は必要に応 じ前駆体岱白を特異的に切
断することによ り,キニン等の活性ペプチ ドをつ
ものではない。ヘモグロビン分解招性の至通 pH
は 3.
5であった。また.ペプスタチンと 1:1の
くり出す作用である。那 3は前者がでたらめに作
モル比で結合 して活性が完全に阻召 された。
用 した場合で,病気をひき起 こす.例 えばこの酵
素がキニンによく似たロイコキニンを生産すると
以上の性矧 ま従来和I
Bされて きたブタ解職等の
カテプシンDときわめてよく似ている。ア ミノ酸
股水貯留の原因になる。1)
分析を行った結米 もこれ ら一般的なカテプシンD
本研究は従来研究があま りなされていないサル
のカテプシンDに関す るものである。森山 らによ
とよ く一致 していろ。
骨格筋のカテプシンDはサブユニ ッ ト構造をも
っていたが,これに対し森山 らがサルの肺か ら精
るとこホンザルの各臓器 1g中に含まれるカテプ
.
9
3uni
t/g組織 ),肺
シンD活性は肺で高 く(0
製 したカテプシンD型の酵素は単一鎖であった。
0
/
0,肝臓で5
00
/
0,脳で3
00
/
0.心
臓と腎臓はその 80
臓で2
0
0
/
0,骨格筋では 60
/
Oであった.
3
)しか し肺の
活性は大部分はペプシンC型のカルボキシルプロ
カテプシンDについては従来 この両者のタイプが
報告 されてお り,2本鎖の ものは 1本鎖の ものよ
りプロテアーゼの作用をうけて生ずる ものと考 え
られる。
テアーゼによるものであったJ)
和製培晶を等T
t
I
点和気泳動にかけたところ. 7
材料と方法
柾のアイソザイムが pH5.
7- 7
.
5の範囲に検出さ
れた。 この うち主な ものは 3校であった。各アイ
ソザイムはそれぞれペプスタチンと 1:1のモル
本研究は骨格筋を材料 として行った。捕矧 ま特
にことわ らない限 り,0
.
01
Ml
)ン酸ナ トリウム摂
比で結合 して活性が阻害 され,また分子量 も同 じ
衝夜pH7
.
0を用いて 4℃で行った。材料のホモジ
ネー トを過心分離して上WJ
T
をとり,これを粗抽出
ことか ら互いにきわめて類似 した分子種であるら
0
%飽和になるように硫安を加
物 とする。これに4
しい。各アイソザイムは骨格筋の粗抽出物 を硫安
えしばらく放口後.迫心分離 して沈殿を得た。沈
分画 した後ただちに等電点電気泳動 して も同様に
殿から酢宗を抽出し.コンカナバ リンAセファロ
ースカラムで77イニテ ィクロマ トグラフィーを
検出 されたので精製の途中で生 じた ものではない。
アイソザイムの組成は動物によって異なるのが-
-3
5-
股的であるがサルの組成もブタ牌臓の組成とは異
いて
,「種の認知」 を問題にする生物学的意義が
なっていた。 これが種によって特有の ものか,ま
あると考 えられ る。 これまでにも,サルの種の認
た器官によって差があるのかは興味が もたれる。
知に関す る行動的研究はい くつかあろ。 しかし認
アイソザイム相互の差異が どのような ものか もま
知行動の対象 となる刺激を比較的少数 しか用いて
だ不明である。
いないので,結果が単にそれ らの少数刺激を弁別
した ものなのか,あるいは共通屈性 としての種 を
REFERENCES
弁別 したのか明 らかでない。そこで,多数の刺激
1) Ba
r
r
e
t
t
,
A.
∫
.(
e
d)(1
9
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7)Pr
o
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s
s
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spp.
20
9-
念形成の方法を用いて,種の弁別がで きるかどう
2
48
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h-Hol
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n dBi
a
oc
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m-
かを調べ るために,筆者は次のような実験 を行っ
i
c
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た。
2) Ans
on,M.L.
(19
3
9)J・Ge
n.Phys
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ol
・
3
2
.
79-89
.
を用いて,それ らの共通点を抽象させろとい う概
方法は,R.
∫.He
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r
ns
t
e
i
n達のハ トを用いた実
)-に屈
験に準 じている。すなわち 2つのカテゴ 1
3) Mor
i
ya
ma
,A.a
ndTa
ka
ha
s
hi
,
K,(
1
9
8
0)
J.Bi
oc
he
m.8
7
,7
3
7-7
4
3
.
す ると考 えられる多数の写真刺激を無作為なJ
凪事
で継時的に提示 し,各刺激に対する反応率 を測度
4) Mor
i
ya
ma,
A.a
nd Ta
ka
ll
a
S
hi
,
K.
(1
9
8
0)
J.Bi
oc
he
m.8
8
,6
1
9-6
3
3
.
とし,それ らの多数刺激が 2群に分拭 されるか否
かを検査する方法である。ここでは,アカケ竹 レ
の写
っている写真 (
S+)と,アカゲザルの写っていな
い写英 (S )を 2つのカテゴ リーとして用いた。
ア カゲ ザ ルに お け る,概 念 形 成 を用 いた
被験体は 8頭のアカゲザルで,いずれ も行動実験
種 の認知
の先行経験はない。実験は.接待訓練.般化テス
ト.分校テス トの 3段階よ り成 り,各段階で各カ
舌久保真一
テゴ T
)一に屈す る写真刺激の内容が班作 された。
マカク屑のサルのよ うに,社会的構造を持った
+とS の分類基準を学習させるもの
疫得訓練は S
染田生活を営んでいる生物袋田においては,集団
枚ずつ計80
枚の刺激を用いた。学習
であ り,各40
の秩序 を保つために様々な場面において適切な行
基準に遜す る速度 に個体差が見出されたが. 3頭
動 をしなければな らない事は明らか と思われる。
+とS の間に反応率の有意な差を示し.何 ら
共S
適切な行動 をす るためには,各個体が相手 と自分
かの分損基準を控得 した もの と考えられた。次に,
の関係 を正 しく認知す る事が必要であろう。その
.「種の認知」の
その分頬基準が どのよ うな ものかを知 るために般
よ うな認知の問題の一つ として
一回を増す毎に新 しい刺激を
化 テス トを 4回行い,
問題 をマカク屈のサルについて考 えてみる事は興
追加 した。 この際 S にはマカク屈を除いた他の動
味深い郡のように思われる。 これまでに得 られた
物の写実 も含まれている点が,撞得訓練とb
q
・
なる。
:
れば,マ
マカク屈に関す る集団遺伝学的資料にJ
1回めのテス トでは. 1頭を除 き,
S+とS の間
カク屈の柱間の遺伝的分化は,種 として分離 して
の反応率の差は見出されなかった。 しか し,4回
考 えるには未分化な状態と考 える事ができる。ま
目のテス トまでには 3頭共 .新 しい刺激を正しく
・
た,マカク屈の別種 とされる種問に雑種がで き,
さらにその雑種に も妊性があ るとい う串が報告 さ
分類する串がで きた。1回 目か ら分校で きた個
体は,接待訓練で最 も早 く学習基準に適 した個体
れている。 しか し一方で,同所的に放球のマカク
だった。 これらから考 えると,その 1頭を除 く2頭
屈が生息 している地域で,それ らが雄種を形成 し
は.分校基準を用いて分類 していたというよ りも.
て混 じり合 って しまったという事実はないようで
1
0
0枚近 くになる刺激を記憶 していた可能性があ
ある。 これ らか ら考 えれば,マカク属の種は,お
る。 しか し,記憶 しなければな らない数が増すに
互いに遺伝子プールを共有す る可能性 と能力を持
つれて,刺激の共通性による分頬に移行 した と思
ちなが ら,何 らかの仕組でそれを拒んでいる。い
われる. これ ら分頬基準 を持 った個体が,アカゲ
わば現在ダイナ ミックに種分化が進行 している生
ザル とニホンザルを分充で きるかを調べたのが分
物袋田ではないだろ うか。 ここに,マカク屈にお
類テス トである。 4回のテス トを行い,特 に4回
- 33-