北海道立食品加工研究セ ンター報告 No.82009[ノ ー ト] 55 北海道産亜麻 の搾油適性評価 お よび搾油残湾 の有効活用 中野敦博,清 水英樹 ,内 藤大輔 *,橋 本員 一 ** Evaluation of oil yieldandcompressibility of flaxseed fromHokkaido andutilization of residual flaxseed cake Atsuhiro]ヽ akano,Hideki Shilnizu,Daisuke Nitou*,Shinichi Hashirnoto** A negative correlation was observed between efficiency of a screw press and the moisture of flaxseed.The flax cultivars varied in lipid composition,with ACEmerson having higher a -linolenicacid content than Nolin. The low yield of flaxseed was improved by drying or by washing and drying. Eggs produced by hens fed on feed supplemented with flaxseed cake showed increased n-3 fatty acids and decreasedratio of n-6/n-3 fatty acids,with increasingaddition ratio of residual flaxseedcake. α― リノレン酸 の よ うな n-3系 脂肪酸は,血 中中性 脂肪 の低下など様 々 な生理作用 を通 じて生活 習慣病の予 防効果 を示す ことか ら12),摂 取量 の増加 を目指す栄養 3).亜 素 の一 つ にあげ られてい る 麻種子か ら採れる亜麻 仁油 には, この α―リノレ ン酸が豊富に含 まれてお り, 最近 の健康志向 ニー ズ を背 景 として,生 活習慣病 の予防 搾油率向上 を目的に,次 の 2つ の試験 区を検討 した。 亜 麻種子 を通風乾燥機 (70℃× 16時間)で 乾燥 す る区 に向けた亜麻仁油製品の需要が 高 まって い る.こ の よ う 分 (乾燥処理 区),亜 麻種子 を水洗 し,表 面 のぬめ りを な背景か ら,北 海道では亜麻栽培お よび亜麻仁油製造が 除去 した後,通 風乾燥機 (70℃× 16時間)で 乾燥 す る 区分 (洗浄 ・乾燥処理区)を 設定 した.こ れ らの試験 区 拡大 してお り,亜 麻仁油 の品質向上お よび製造技術等に 関す る研 究が必要 となってい る 46).こ の ことか ら本 麻仁油 を得た 亜 麻種子お よび搾油残澄 については,水 分 (赤外線水分計 による方法)お よび脂質 (ソックス レー 抽出法)を ,亜 麻仁油 につい ては,脂 肪酸組成 (ガス ク ロマ トグラフ法)を 測定 した. も同様に搾油試験 を行 って,搾 油率 を乾物換 算 して比較 研究 では,道 産亜麻の搾油適性 を分 析評価 し,亜 麻仁油 の 品質特性お よび搾油率向上 に影響 を及ぼす成分解析 を した. 行 った。 また,搾 油残澄の養鶏用飼料化 を検討 し,得 ら 2.産 卵鶏の給餌試験 と鶏卵の脂肪 酸組成 れる鶏卵 の高付加価値化 を検証 した。 成鶏用配合飼料 (トウモ ロコ シ 66%,米 糠 12%, カ ルシウム材 13%,そ の他 9%)に 亜麻仁油 の搾油残澄 を 1, 実験方法 1 . 亜 麻仁油の搾油試験および品質評価 地域 ・栽培者別 の亜麻種子 2 k g から, 小 型電動搾油機 3お よび 5%添 加 した 3試 験 区お よび無添加 の対照区の 計 4試 験 区を設け,4週 間にわたって給餌試験 を行 った。 (S100-200B,(株 ) サ ン精機) を 用 い て搾油 し, 得 られ 給餌試験 で得 られた鶏卵 をサ ンプ リング して,全 卵 につ い て個別の脂肪酸 を定量するために内部標準物 質 として た粗油 を減圧 濾過 ( 濾紙 N O . 5 A ) す るこ とに よ り. 亜 トリコサ ン酸 (C230)を 添加 した後 ,脂 肪酸分析 (ガ *株 式会社北国生活社 ( 〒0 6 3 - 0 0 6 1 札 幌市西区西町北 8 丁 目5 - 1 第 **有 限会社亜麻公社 ( 〒0 6 5 - 0 0 4 3 札 幌市東区苗穂 町 4 丁 目2 - 8 ) 事業名 : 民 間等共同研究 課題名 : 亜麻仁油 の品質向上技術 と搾油残澄 の有効活用技術の開発 一 イース トビル 3 F ) 中野 。他 :道 産亜 麻仁 油 の搾 油 に関す る研 究 56 表 1 亜 麻仁油 の搾油率及び脂肪酸組成 亜麻種子原料 栽培場所 品種 水分( % ) 脂 亜麻仁 油 質( % ) 搾 脂肪酸組成(%) 油率 ( % ) 16:0 18:0 18:1 18:2n-6 18:3n-3 1 ACEmerson 6.3 37.8 9.35 5.5 27 21.4 138 56.5 2 ACEmerson 7.0 365 8.77 57 2.8 26.6 142 50.6 20:0 0.1 0.1 3 Nolin 6.2 36.6 15.24 5.1 29 27.4 11.0 53.5 0.1 4 Nolin 5.9 35.5 13.98 52 28 34.0 119 46.0 0.1 5 Nolin 6.0 367 13.88 52 30 28.9 12.1 50.7 34 30.6 11.0 49.7 0.2 64.1 01 0.1 6 Nolin 5.3 36.3 15.25 51 7 ACEmerson 6.8 340 12.12 49 24 13.3 8 Nolin 7.1 375 5.90 53 3.4 24.6 123 54.3 9 ACEmerson 7.3 375 12.63 57 27 20.1 139 575 01 10 Nolin 5.8 371 16.91 50 3.3 23.5 12.2 558 02 28 14.3 637 01 2.9 26.4 513 0.2 11 ACEmerson 4.1 40.3 16.91 53 12 ACEmerson 5.4 362 13.45 57 15.2 13.8 13.5 0.1 T︶ 象K o R=-07121 s︶ ︵ 鯨郵尽僻 ^ 掛 票世 食︶ 掛 貿毀 水分 ( % ) 栽培場 所 N02 栽 培場所 N08 栽 培場所 N011 図 1 亜 麻 種 子 の 水 分 と搾 油 率 との 関係 □ 無処理区 ,□ 乾燥処理区 ,国 洗浄・ 乾燥処理区 図 3 乾 燥 処理 によ る搾 油率 の 向上 573 ACEmerson (n=6) ス ク ロマ トグ ラフ法) を 行 った. n l ︹ψ 問∈ 実験 結 果 お よび考察 1 . 地 域別 亜麻仁 油 の品 質評価 1 2 ロ ッ トの亜 麻 種 子 に つ い て搾 油 試 験 と亜 麻 仁 油 の 品 質 評 価 を行 って , 表 1 に ま とめ た。 搾 油 率 は, 濾 過 後 で 5 . 9 ∼ 1 6 . 9 % と原料 ロ ッ トに よって大 きな差 が あ っ 20 30 40 50 60 α―リノール酸 ( 組成比% ) 70 図 2 品 種別 α ―リノ レン酸 の組成比 図中の◆ と数値は,各 品種別 α―リノレン酸組成比の平均値. 80 た。搾 油 率 に及 ぼ す亜麻種 子の水 分 また は脂 質 の 影響 を 解 析 した ところ, 水 分 とは負 の 相 関が あ り ( 図 1 ) , 脂 ー 質 とは無相 関 であ つた ( デ タを示 さず ) . 品 種 別 の α ― 北海道立食品加工研究 セ ンター報告 No.82009 n-3系脂肪酸比 は減少傾 向 となった。 最近 の報告 では, 基 n-6/n-3脂肪酸 の摂取 バ ラ ンス は, 4が 適正 であ る と推 1)今 回の試験 で は, 5%添 加区で この適 曇 奨 されて い る 国目 α―リノレン酸 ヽこ 酬 佃饉 趨聖 68 一 0 0 6 0 0 5 と 正 値 に近 い鶏卵が得 られることが示 された (図4) と 以 上の結果か ら,亜 麻仁油 の搾油残澄 を養 鶏飼料 に添 0 0 4 加す るこ とで,n_3系 脂肪酸 を多 く含 む鶏卵 を開発 で き 0 0 3 ることが示 された。 0 。 2 要 約 0 0 1 0 亜 麻仁 油 の搾 油 適性 を分析 評価 した と ころ,搾 油 率 と 水 分 との 間 に負 の 相 関が あ り,品 種 別 の α ―リノ レン酸 対照( 0 % ) 1% 3% 5% 養鶏飼料中の搾油残澄の割合 の組 成比 は,ACEmersonの 方が Nolinよ りも高 か った. の亜 は 低搾 油率 麻種 子 ,乾 燥 処 理 また は水 洗 。乾燥 処理 図 4 鶏 卵 中の n‐ 3系 脂肪 酸 図 中の バ ー は, 各 測定値 の標準偏差. を行 う こ とに よ り,搾 油 率 を向上 で きた。 亜麻 仁 油製 造 時 に排 出 され る搾 油残澄 を養 鶏飼料 に添 加 して給餌 試験 を行 った ところ,搾 油残澄 の 添加 割合 が リノ レ ン酸 組 成 比 を解 析 す る と, A C E m e r s o n の 方が, Nolinよ りも組成比が高 いこ とが示 された (図2) 亜麻種子 を乾燥処理する ことによ り,搾 油率が向上する と報告 されてい る4).そこで亜麻種子 の前処理 を検 討 し, 結果 を図 3に 示 した。低搾油 率 で あった栽培 場所 NO.2 お よびNO.8で は,乾燥処理によって搾油率が増加 したが, 高 い ほ ど,鶏 卵 中 の n-3系脂 肪 酸 が増 加 す る と と もに, n-6/n‐ 3 系脂 肪 酸比 は減少 した 文 献 1)第 一 出版 編 集 部 ,n-3系 脂 肪 酸 ,厚 生 労 働 省 策 定 日本 人 の 食事摂取 基 準 (2005年版)第 1版 (第一 出版 , N011で は増加 しなかった。 この結果か ら,低 搾油率の 亜麻種子 は,通 風乾燥 などで水分 を減少 させ ることによ 2 ) 鈴 木和 彦 , 大 森 豊緑 , 川 村 悦 春 , α ― リノ レ ン酸 強 り,搾 油率 を向上で きる ことが示 された。洗浄 ・乾燥処 化 鶏 卵 摂 取 に よる ヒ ト血 漿 ω 3 / ω 6 1 旨 肪 酸 比 の変 理区では,乾 燥処理区よ りも搾油率が上が ることが示 さ れ,亜 麻種子表面のぬめ り成分 の 除去が有効であること が推 察 された. 2.搾 油残漬 による養鶏飼料の開発 東京 ),pp.54-56 (2005) 化 , 栄食誌 , 4 8 , 2 7 1 - 2 7 5 ( 1 9 9 5 ) . 3 ) 第 一 出版編 集 部 , 摂 取 量 の 増加 を 目指 す栄 養素 , 厚 生 労 働 省 策 定 日本 人 の 食 事 摂 取 基 準 ( 2 0 0 5 年版 ) , 第 1 版 ( 第一 出版 , 東京 ) , p p . 1 5 ( 2 0 0 5 ) . 給餌試験 の結果,搾 油残澄 を配合飼料 に添加す ること で,鶏 卵 中の脂肪酸組成 と含量が変化 す ることが示 され 4 ) 久 保 加 織 , 川 勝 聡 美 , 堀 越 昌子 , 石 永 正 隆 , あ まに た (図4).搾 油残澄 の添加濃度が高 くなるにつ れ,n-3 系脂肪酸 の総量 は増 加 した.n_3系 脂肪酸 の単 一 成分 に (2001). r.Dedio,and D.G.Dorrell,Factors Affecting the 5)ヽ ヽ 注 目すると,ド コサヘ キサエ ン酸 (C226n-3)は微増傾向, イ コサベ ンタエ ン酸 (c205n-3)は1.5∼2倍近 く増加 した. 特 に α_リ ィ レン酸 (Cl&3n-3)│ま図 4の 棒 グラフに示 した通 り顕著 に増加 し, 5%添 加 区では無処理 区 の 6.8 倍 になった。 また, 搾 油残澄 の添加濃 度が高 くなるにつ れ. n - 6 / 油 の 保 存 性 と食 品 の 利 用 , 家 政 誌 , 5 2 , 3 5 1 - 3 5 8 pressure extraction of Oil from flaxseedェ _4π. 0′′C力ιπ.Sοι.,54,313-315(1977). 6)M.Lukaszewicz,」 .Szopa and A.Krasowska, Susceptibility of lipids from diferent nax cultivars to peroxidatiOn and its 10、vering by added a n t i o x i d a n t s .θグC F θ力ιz な ′ ゎり8 8 , 2 2 5 - 2 3 1 ( 2 0 0 4 ) .
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