07 - 長崎女子短期大学

こどもの足アーチの発達について(1)-足底面からの観察○山崎純男(長崎女子短期大学).西澤 昭(長崎大学)
Ⅱ 方法
1.被検児は2年継続で経年観察できた園児児童196名を対象とした.
2.測定器具は自作のピドスコープを使用した(図1).
3.カメラはオリンパスデジタルカメラ c-760 Ultra Zoomを用いた.
4.画像解析はイノテック社製のpixes2000_proを用いた.
図1 撮影風景
図2 足底面(上;区画 下;面積)
5.測定部位
土踏まず,母趾角,足幅に対する
踵幅の3項目について測定した.
1)土踏まず
①土踏まず部 分(図2下;斜線部)と
土踏まず部分+接地部分の面積
比で土踏まずの形状を分類をした.
②区画1;土踏まずができている
区画2;土踏まずができつつある
区画3;土踏まずができていない 図3足底面(上;幅,下;母趾角・足長)
の3区画による土踏まずの形状の分類をした(図2上).
③足幅(図3上;線分B)に対する土踏まず最深部までの距離(図3;線分C)
の比率による土踏まず形状を分類をした
2)母趾角
母趾線と内側線のなす角(図3下;G)の経年変化を見た.
は左足で立つ」ということと関連があるのではないかと推測される.
2)区画と面積比の関係
表3 区画と面積比の関係の実数
件数
1
660
40% ∼ 20%
2
29
25% ∼ 10%
3
95
15% ∼ 0%
25
05
06
20
15
%
60
55
55
50
50
05
06
45
05
06
20
15
10
05
06
45
40
40
35
35
30
30
1
2
3
4
5
6
1
2
3
初年度年齢
平 均 値
2005
立位 左(% )
49.8
標準 偏差
立位 右(% )
50.1
10.61
5
6
11.11
図11 最深部/足幅 右 男女全
表5 最深部/足幅t検定 女児
平 均 値
2005
立 位左(%)
46.5
標準偏 差
*
平 均 値
52.5
52.4
標準 偏差
11.14
12.83
113
4
初年度 年齢
図10 最深部/足幅 左 男女全
表4 最深部/足幅t検定 男児
**p<0.01
*p<0.05
立位右(%)
45.4
14.31
17.17
**
2006
**
平 均 値
50.2
50.4
標準偏 差
14.41
15.83
人数
83
**p<0.01
以上の結果から,面積比,区画,最深部までの距離それぞれの測定
結果を有効に利用するのが.土踏まずの形成過程や形状をより正しく把
握するのによいと思われる.
2.母趾角
2
3
4
5
6
1
初年度年齢
2
3
4
5
6
初年度年齢
図4 土踏まず面積比(左)男女全
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
% 1.5
1.0
0.5
0.0
図5 土踏まず面積比(右)男女全
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
% 1.5
1.0
0.5
0.0
1才
2才
3才
4才
5才
6才
初年度年齢
図12
1才
2才
3才
4才
5才
6才
図7 面積比経年変化率 全左
表2 土踏まず面積比t検定 女児
立位左(%)
平均 値
22.8
2005
標準偏差
6.94
立位左(%)
平均 値
24.3
2005
標準偏差
7.14
*
平均 値
25.6
2006
標準偏差
6.96
人数
83
*p<0.05
23.5
8.06
2
3
4
5
9
8
7
6
5
4
3
2
1
05
06
1
6
2
立位右(%)
23.5
8.19
**
25.3
7.72
**p<0.01
1) 面積比を加齢の観点から見ると,土踏まずは加齢とともに「土踏まず
ができた」という状態になるということがわかる(図4・5).さらにそれを,
経年的な変化率で見ると,3歳まではそれが進行し,あとは緩やかにな
っている(図6・7).このことは,幼児の土踏まずは加齢とともに変化する
が,3歳児頃までにほぼ将来の形状が確定するのではないかということ
が推測できる.
加齢変化を男女別に見ると,男女ともに右足については明らかに有意
差が見られたが,左足については右足ほど顕著な差はなく,特に男児
左足については有意差はなかった.このことは,平澤(1960)による「ヒト
母趾角経年変化
2005 左
6.5
男 平均 値
112 標準偏差
4.45
女
84
平均 値
標準偏差
**P<0.01
5.7
4.60
0.2040
3
4
5
6
初年度年齢
初年度年齢
図6 面積比経年変化率 全左
表1 土踏まず面積比t検定 男児
平均 値
標準偏差
人数
113
05
06
1
初年度年齢
立位右(%)
22.5
7.53
**
23.9
8.24
**p<0.01
9
8
7
6
5
4
3
2
1
度
10
1
度
%
25
2.5 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5 30.0 32.5 35.0 37.5 40.0
60
人数
30
160
140
120
100
80
60
40
20
0
面積比(%)
2006
30
頻度
年齢男女の区別なく,区画別に延べ
人数を算出し(表3),それと面積比の 図8 土踏まず面積比の推移
関 係を調 べ た(図8・9).その結果,
70
区画1と区画2の境界には面積比40
区画1
60 区画3 区画2
頻
50 土踏まずが 土踏まずが 土踏まずが
%から25%のデータが交錯し,区画2
40 出来ていない 出来つつある 出来ている
と区画3の境界には15%から10%の 度 30
20
データが交錯する.それは,土踏ま
10
ず が 台 形 や三 角形等 さま ざま な形
10
20
30
40
土踏まず面積比(%)
状を呈するので,その影響によるも
のと考えられるが,境界を大きく越え 図9 面積比と区画の関係
て食い違うことはない.
3)足幅に対する土踏まず最深部までの距離の比率の加齢変化は土踏ま
ず面積比の加齢変化と酷似している(図10・11).経年変化にも明らかな
有意差が見られた(表4・5).
**
Ⅲ 結果と考察
1.土踏まず
2006
面積比の範囲
区画
%
目的
こども(1∼6才児)の1年間の足趾形態の変化から足アーチ形成の実
態を明らかにしようとした.
%
Ⅰ
男児
2005 右
6.2
4.21
**
4.4
3.81
0.0028
図13
母趾角加齢変化
2006 左
6.8
男 平均 値
112 標準偏差
3.82
女
84
平均 値
標準偏差
6.4
4.79
0.5835
女児
2006 右
6.0
4.28
6.0
4.70
0.9926
表6 母趾角男女比較2005年
表7 母趾角男女比較2006年
母趾角の加齢変化につい加齢による変化を明確に把握することはでき
なかった(図12・13).また,S.C.Wearingら(2004)による「外反母趾は男性よ
り女性の方に多く出現し,しかも幼児期からその兆候は見られる」という
調査結果に対して我々の測定では一致するデータは得られなかった(表6
・7).母趾角の経年観察については再検討の必要がある.
Ⅳ
まとめ
幼児の土踏まずは加齢ととも形を為してくるということについては誰も
異論を唱えないが,今回の調査ではその変化が3歳までは急速で,以後
緩やかになるというデータを得られたということが特徴的である.
このことは,もしある幼児が将来外反母趾や扁平足になる要因を抱え
ているとするならば,3歳までに何らかの訓練や矯正等の処置をするのが
よいということを示唆しているのではないかと思われる.