源氏物語ダイジェスト版 (イラスト版) 紫 式部作 源氏物語 イラスト・文・写真・創作布花 郡 佐代子 い 源 氏 物 語 ダ イ ジ ェ ス ト 版 第 九 巻 葵 よ り 目次 篆刻 中井 照子作 はじめに 6 華麗な平安朝廷の出来事 7 源氏誕生 8 桐壺帝と桐壺の更衣 9 光源氏 10 源氏の栄耀栄華 11 藤壺 12 輝く日の宮藤壺 13 葵の上 14 葵の上のはかない命 15 六条御息所 16 才色兼備の六条御息所 17 車争い(1) 18 牛車の種類 19 車争い(2) 20 車争い(3) 21 女性曼荼羅 22 源氏の晩年 23 おわりに 24 あとがき 25 参考文献 (1)岸徳平:校注者,“日本古典文学大系 14 巻源氏物語 1” , 岩波書店 (2)室伏信助他:校注者,“日本古典文学大系 2 源氏物語 1”, 岩波書店 (3)石田穣二他:校注者,“新潮日本古典集成源氏物語1”, 新潮社 (4)円地文子:校注者,“現代語訳日本の古典 5 源氏物語 ”, 学研 (5)吉岡常雄他:監修,“源氏物語の色”, 平凡社 5 はじめに 私が、園田学園女子大学入学時に情報コミュニケーション専攻を決めたのは、長 年愛読してきた源氏物語を違った角度で研究したいと思ったからだ。私が初めて源 氏物語に接したのは、娘の大学の教授のアメリカ人夫妻に会った20 年前の事であ る。子供のない夫妻は何匹かの猫を飼っていて、その中の美しい二匹に源氏物語の ヒロインの名前から藤壺、葵と名付けていた。翻訳された円地文子訳の源氏物語を 読でいたのである。私は、まだ源氏物語を読んでおらず、日本人として、とても恥 かしく思った。異国の人から教えられた。その後、当時本学の吉原栄徳教授の源氏 物語講座が始まり 3 年間「源氏物語」の講義を聴講した。 長年アートフラワーの指導業務に携わってきた私にとって講義の印象は誠に鮮烈 であった。そこで自分のひらめきを布花に託し作品「花の源氏物語」とし 1985 年に鶴見緑地で開かれた花の万国博覧会に大勢の人々の援助を得て、出展すること が出来た。その後本学の一谷メモリアルホールに、その作品を飾る機会に恵まれた。 2000 年の淡路花博には工芸部門に木彫で「源氏物語の花々」を作成し展示した。 長い年月を経て、源氏物語に導かれて本学の社会人入学を果たした。学習結果の 集大成として卒業論文は、源氏物語ダイジェスト版のデジタルコンテンツ化を「お り図イラスト」で作成することであった。そして今、大学に於いてその作品と古い 写真や資料を基に、創作絵本を作成する機会に恵まれた。私は本当に幸せ者だと感 じている。一冊の古典文学の本が、私の人生の後半に大きく関わり、まさに Make up of my life であると、つくづく思っている。 6 華麗な平安朝廷の出来事 源氏物語は千年もの昔、紫式部によって書かれた創作物語である。 京の都を舞台にした平安時代の華麗な王朝の出来事である。 7 源氏誕生 帝の寵愛を一身に集めた桐壺の更衣は、美しい皇子を生む。生まれ た皇子は天性の美貌とすぐれた才能の持ち主である。ほかの妃たちの 嫉妬と羨望の嵐の中での誕生だった。成長とともに息子の資質は、ま すます磨かれ、輝くばかりの美しさで、世間から「光源氏」と讃えら れた。 8 桐壺帝と桐壺の更衣 9 光源氏 桐壺帝の第二皇子で、物語の主人公。母(桐壺の更衣)と3才で死 別後、父帝は、源氏を臣籍に降下させ、”源氏”を名乗らせた。“光 る”とは、光りかがやく人(理想的な人)を意味し、”源氏”とは、 皇族出身という意味である。 光源氏は、12歳で元服し、葵の上(16歳)を正妻に迎えるが、 義理の母、帝に仕える藤壺と密通し、さらにさまざまな女性遍歴をく り広げる。 10 源氏の栄耀栄華 運命の展開は、かかわった女 性たちによってもたらされ光源 氏は最高の権力を得て栄耀栄華 を誇る。 11 藤 壺 亡き桐壺の更衣と似ているため、帝の愛を一身に受けた藤壺の宮 は、「輝く日の宮」といわれ人々から敬われていたが、やがて、源氏 との丌倫の恋に悩むようになる。帝に仕えながら源氏の子(後の冷泉 帝)を生む。 12 輝く日の宮藤壺 類いまれな美貌の亡き母に似て、さらに若く美しい藤壺宮。光源氏 にとって宿命の恋であつた。 13 葵の上 左大臣の長女、母は桐壺院の妹。光源氏より4歳年長で、気位が高 く、源氏とは打ち解けることができず、源氏の訪れも途絶えがちであ った。結婚9年目の春、懐妊。 御禊の物見に出かけた折り、従者達が六条御息所の一行と車の立ち 場所を争って相手方を片すみに追いやってしまった。その後、物の怪 (六条御息所の生霊)に憑かれて苦しめられた。ようやくのことで甴 子夕霧を出産するが、源氏や左大臣が宮中に参内した留守中に、物の 怪に襲われて急死する。 14 葵の上のはかない命 源氏の正妻で身分も高く、美しい葵の上は気位の高い女性で源氏と の結婚生活はうまくいっていなかった。甴子夕霧を出産するのち、六 条御息所の物の怪に祟られはかなく世を去った。 15 六条御息所 ある大臣の娘。東宮に参入し姫君を生むが死別。後の秋好中宮の 母。前東宮と死別後、六条京極に住んでいる頃、源氏が通うようにな っていたが、源氏の薄情さを嘆き、伊勢への下向を考える。新斎院御 禊の日、葵の上一行と車争いとなり、辱めを受けて苦悶。その魂は生 霊として妊娠中の葵の上に取り憑いて苦しめ、ついに葵の上を取り殺 す。その後、源氏との関係に絶望して伊勢へ下向する。 朱雀院譲位により斎宮退下。ともに帰京して六条の古い邸に住む が、発病して出家し、源氏に前斎宮の姫君の後事を託して、死去(享年 36歳)。美貌で教養、身分も高く世の甴性の憧れを一身に受けていた 女性であつた。 16 才色兼備の六条御息所 六条御息所は大勢の貴公子たちのあこがれの女性で身分高く美しく、 知的に洗礼されており和歌も秀いていた。しかし源氏にとって恋人し て重々しい女性であった。 17 車争い(1) 斎王が御禊をする日、行列のお供は、家柄も器量もいい貴公子が選 ばれることになっていた。源氏も選ばれた。当日は近郷近在から見物 人が大勢集まり、人と車でごった返していた。その中に目立たぬよう に女車に乗り、六条の御息所もひっそり息をひそめて馬上の源氏を仰 いでいた。都を捨てる前に源氏を一目見ておきたかったのである。 一方、葵の上も産み月が近く、気分がすぐれないまま、女房たちに せがまれて遅く見物に出かけた。 18 牛車の種類 上段 網代車 中段 びろう毛の車 上皇御料の唐車と車副 簡素な網代の牛車にのり、ひっそりと源氏を一目みようと忍んで見 物にきた六条御息所と、葵の上が乗った左大臣家のびろう毛に包まれ た豪華な牛車は見物の場所取りから争いになる。 日本古典文学大系 源氏物語より 19 車争い(2) 新斎院の御禊の儀に供奉する源氏の晴れ姿を見に来た六条の御息所 の車は、葵の上の車に割り込まれてもめる。 20 車争い(3) 車争いで恥をかかされた六条御息所の深い怨念は,生霊となって葵 の上にとりつき、苦しめ、取り殺す。源氏との関係に絶望し、斎宮に 決まった姫君とともに伊勢に下向する。 21 女性曼荼羅 源氏の愛した女性達は、上流、中流を問わず数知れない。のちに、 争わずして最高の権力を得、栄耀栄華を誇る。運命の展開は、かかわ った女性達によって、もたらされ、葵の上との政略結婚、藤壺腹の子 は帝になり、六条御息所の娘を養女にして、この帝の后とする。この ようにして最高の権力を得ていくが、源氏の晩年は憂事が見舞う。 女性曼荼羅、たかが女性、されど女性である。源氏物語の主役は女 性であり、紫式部は女性を愛し、彼女は、自分自身を一番愛したので はないか。 22 源氏の晩年 最高の権力を得て栄耀栄華を誇るが、人生は無常である。愛した女 性たちは出家し、亡くなり、時代は次の世代へ移っていく。 23 おわりに 世界中で翻訳され、世界中の多くの人々が読んできた名作源氏物語とこの大學に おいて出会った事をつくづく感謝している。16 年の年月を経て現在園田学園女子 大学の社会人学生として、情報コミュニケーション学科に身を置き、源氏物語で論 文を書き、おり図イラストを作成したこと、さらに創作絵本を製作したことは、私 の人生の集大成の活動である。その時その時に、生き甲斐を結んできた。人生の移 ろいも物語の移ろいも、それぞれのドラマがある。自分の志に向かって大學におい て方法を磨き達成できた喜びは、計り知れなく大きい。 私は人生において何事も何一つ無駄なものはないと、つくづく感じている。今後 は、ライフワークとして源氏物語 54 帖全巻のイラスト化とアニメーション化に挑 戦したいと考えている。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ このたびの製本作成に当たり、論文の終始に亖り御指示頂き、更に製本をお薦め 頂いた山本恒教授に心から御礼申し上げます。加えて、製本についてご指導頂きま した時枝志万子先生、印刷に際し、御尽力くださった高橋朋子先生に御礼申し上げ ます。 24 あとがき 篆刻・・・・色は匂へど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 作 中井 照子 花の万国博覧会出展作品ガイド P9・・桐壺帝と桐壺の更衣・・・ 1985年、鶴見緑地で開かれた花の万国博覧会 にアートフラワー布花作品「花の源氏物語」を 出展した時の案内状 P11・源氏の栄耀栄華・・・・・ 絶頂期の光源氏の華やかさを赤、白色を主にして 染色、作成した花々を五、三の桐の箱に入れて ディスプレーした P13・輝く日の宮藤壺・・・・・ 紫色に、染色し藤壺のイメージの高貴と豪華を考 えた P15・葵の上のはかない命・・・ 物の怪に取り憑かれ若い命を散らす葵の上を、桜 の花のはかなさで表現した P17・才色兼備の六条御息所・・ 物の怪となり源氏の正妻、葵の上をとり殺す女性 であるが、当代きっての和歌の読み手である。P 12の作品に和歌を加えた P19・牛車の種類・・・・・・・ 上段の牛車が六条御息所の網代車、中段が葵のが 乗ったびろう毛で作られた当時の高級牛車 P21・源氏の晩年・・・・・・・ 栄耀栄華を誇った源氏の一生も移ろい花も移ろう。 その様を白、黄色で染色し彼岸花を作成し源氏の 晩年を意図した 製本・・・・・・・・・・ 2007年3月 25
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