京都観光と「源氏物語千年紀」

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地域
第21回
シンクタンク便り
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京都観光と「源氏物語千年紀」
株式会社 京都総合経済研究所
常務取締役調査部長
自治体チャンネル+
平成
26
年 月号
20
7
中野 勝仁
21世紀は「交流の世紀」といわれる。我が国
このように、京都はその恵まれた観光資源を
においても“観光立国論”が唱えられ、観光振興
常に広く情報発信すると同時に、新たなイベン
への取組みが盛んであるが、観光は京都にとっ
トを企画、工夫し、京都の魅力の再発掘に努めて
ても経済活性化の重要な視点である。
きたのである。
●「京都ブーム」とその背景
●今年のテーマは「源氏物語千年紀」
京都は、我が国を代表する「国際文化観光都
なお、今年は紫式部の『源氏物語』が執筆され
市」として、
国内外から多くの観光客を受け入れ
てから、ちょうど千年目に当たる。そこで、今年
てきた。もっとも、いつも順風満帆であったわ
を「源氏物語千年紀」と命名し、源氏物語を軸に
けではない。バブル経済崩壊後しばらく低調な
伝統文化を再評価する機運を盛り上げ、京都観
時期があったが、2001年の米国多発テロを契機
光の目玉にしようと、さまざまな事業を展開し
に、京都観光が見直され価値が再認識されるこ
ているところである。
ととなる。こうした時期と相前後して、
「京都
ブーム」が盛り上がりをみせ始めるのである。
いくつか具体例をあげると、各種のシンポジ
ウムや「源氏物語千年紀展」などの美術展が賑わ
しかし、
今日の京都ブームは、
自然発生的に起
いをみせており、今後、国際フォーラム、記念式
こったものではない点に留意すべきだろう。現
典なども予定されている。あるいは、
「源氏物語
に、旅行会社や交通機関等とのタイアップのほ
を歩く∼ 10コース」の提案、デジタル音声観光
か、雑誌編集者らを京都に招き観光スポットを
ガイドの実施、さらに嵐山「宮廷鵜飼」
、観光バ
直かに体験し、京料理を食し、その神髄を理解し
ス特別コース「教科書にみる京都再発見」等々、
てもらう、といった取組みが長年なされてきた。
一年を通じ実に多彩な企画・イベントが用意さ
こうした行政をはじめ観光関係者の地道な努力
れ、人々の関心も高まりをみせている。
が、結実した結果といえる。
ところで、京都を訪れる観光客は、このところ
さらに、
新たな事業を次々と企画し、
観光客誘
毎年、過去最高を更新しており、年間観光客はす
致に成果をあげてきた。例えば、有名寺社等の
でに4,839万人に達している(2006年)
。京都市
夜間のライトアップや特別拝観、端境期対策と
では、2010年までに「入洛観光客5,000万人」を
して趣向を凝らした「夏の旅」
「冬の旅」
、京都東
展望している(この場合の京都市域にもたらさ
山や嵐山一帯の散策路を灯りと花で演出する
れる経済波及効果は 1 兆2,600 億円、雇用効果
「花灯路」事業も成功している。
「京都観光文化
は10万1,000人と試算されている)
。
検定」なども全国的に話題を提供している。ま
昨今の好調さから判断すれば、その実現はす
た、NHK大河ドラマの『新選組』や『義経』など
でに射程に入りつつあり、前倒しで目標達成さ
の放映効果も、巧みに活用してきた。
れる公算が大きいと思われる。