「全校合唱の勇姿をカメラにおさめるには ~円周角の定理を用いて~」

数学
単
元
名
第3学年
世羅町立世羅中学校
指導者
三次 伸弥
.
「全校合唱の勇姿をカメラにおさめるには ~円周角の定理を用いて~」
本単元で育成する資質・能力
自らへの自信,主体性,思考力・表現力
1 単元について
(1)生徒観
平成 27 年度標準学力調査の結果を見ると,3年生全体の傾向としては,領域別では,
「数と式」
において全国平均と比べ正答率は若干上回るのに対して,
「図形」の領域は全国平均に比べ 6.8%低
い結果となった。
(左下図参照)
「図形」の領域内(右下図参照)で見ると,角の大きさを求める等の計算領域はほとんどの生徒
ができているものの,三角形の合同を証明する問題に関しては逆に全国に比べ,-25.4%とかなり
低い結果となっている。また,角の大きさを求める問題では無回答が 2.9%に対して,証明問題で
は無回答が 32.4%に及んだ。このことから,計算に関しては理解して学習しているのに対して,証
明等の言葉による論理的表現が必要とする問題を苦手としていると考えられる。また,本学級は,
意欲的に発表を行う生徒もいるが,数学的な根拠をもとに自分の思いや考えを伝えることを苦手と
している生徒が多いことも課題である。
H27 標準学力調査(領域)
校内平均(%) 全国平均(%)
数と式
67.7
66.7
図形
53.3
60.1
関数
45.1
51.1
資料の活用
56.8
58.0
H27 標準学力調査(
「図形」内の問題)
内角・外角の和から角
の大きさを求める
三角形の合同を証明
する
校内平均
(%)
全国平均
(%)
82.4
66.4
24.3
49.7
(2)単元観
本単元は,学習指導要領「B図形(2)
」及び「内容の取扱い(4)」の次の内容を受けて設定し
ている。
(2)観察,操作や実験などの活動を通して,円周角と中心角の関係を見いだして理解し,それ
を用いて考察することができるようにする。
ア 円周角と中心角の関係の意味を理解し,それが証明できることを知ること。
イ 円周角と中心角の関係を具体的な場面で活用すること。
(4)内容の「B図形」の(2)に関連して,円周角の定理の逆を取り扱うものとする。
円は,直線とともに最も身近な図形の一つである。円を数学的な見方でとらえることは小学校か
ら学習している。例えば,小学校算数科においては,円の中心,半径及び直径,円周率,円の面積
を学習してきている。中学校数学科においては,第1学年で円の接線について学習している。
本単元では,数学的に推論することによって円周角と中心角の関係について考察し,円の性質の
理解をより深めるとともに,円周角と中心角の関係を具体的な場面で活用することをねらいとして
いる。
(3)指導観
指導に当たっては,円周角と中心角の関係について考察することから始まり,円の性質の理解を
より深め,円周角と中心角の関係を具体的な場面で活用する力をつけていく。
そのために,まずは第1学年での円の概念の学習及び,本単元で学習する円周角と中心角の関係
をしっかり習得させ,既習事項と関係付けて考えさせる。手立てとしては,基本的な計算問題を中
心とした宿題プリントでできる自信を持たせるとともに,導入時では,パワーポイントをフラッ
シュカード形式で活用し,円周角の定理を利用して角度を求める問題を取り入れ,視覚的な理解を
図る。
- 40 -
また,一人一人の課題により細やかに対応していくために,発表だけでなく,生徒のつぶやきも
大切に扱っていきたい。根拠を明確にして論理を構成できるよう接続詞を意識させて,条件,性質,
結果を区別させた表現を指導する。
2
単元の目標
①観察,操作や実験を通して円周角と中心角の関係を見いだし,それが証明できることを理解する
ことができる。
②円周角と中心角の関係を具体的な場面で活用することができる。
3
単元の評価規準
ア
学習活動
における
具体の
評価規準
4
イ
数学的な見方や
考え方
ウ 数学的な技能
エ 数量や図形など
についての知識・理解
①円周角と中心角に ①円周角と中心角の ①円周角と中心角 ① 日 常 生 活 の 中 で 円
関心をもち,それら
関係や,同じ弧に
の関係を用いて, 周 角 と 中 心 角 の 関
の関係や性質を見
対する円周角の性
角の大きさを求
係を利用している
いだしたり,その証
質を見いだすこと
めることができ
場面を理解してい
明にどのような図
ができる。
る。
る。
形の性質が用いら ②円周角と中心角の ②円周角と中心角 ②円周角の意味,円周
れているのかを考
関係を読み,どの
の関係や,
同じ弧
角と中心角の関係
えたりしようとし
ような図形の性質
に対する円周角
及び同じ弧に対す
ている。
が用いられている
の性質などを記
る円周角の性質の
②円周角と中心角の
かを考えることが
号を用いて表し
意味を理解してい
関係を用いて具体
できる。
たり,
その意味を
る。
的な事象を捉える ③与えられた図形の
読み取ったりす ③ 円 周 角 と 中 心 角 の
ことに関心をもち, 中に円を見いだし
ることができる。 関 係 が 証 明 で き る
問題の解決に生か
たり,日常生活の ③円の外側にある
ことを理解してい
そうとしている。
場面で対象を理想
1点から円に接
る。
化や単純化するこ
線をひく作図や, ④ 円 周 角 の 定 理 の 逆
とで円と見なした
長方形を使って
の意味を理解して
りして,円周角と
円の中心を求め
いる。
中心角の関係を用
ることなどがで ⑤ 円 の 外 側 に あ る 1
いることで図形の
きる。
点から円に接線を
性質などを考える
ひく作図の方法や,
ことができる。
長方形を使って円
④円周角と中心角の
の中心を求める方
関係を用いて考え
法などの手順を理
た結果が適切であ
解している。
るかどうかを振り
返って確かめるこ
とができる。
本単元において育成しようとする資質・能力のかかわり
思考力・表現力・思考スキル【関係付け】
①三角形の性質を関係付けて考えている。
②円周角と中心角の関係を関係付けて考えている。
・表現スキル【理由】
①円周角と中心角の関係を根拠に説明する。
主体性
5
数学への関心・
意欲・態度
数学的な根拠をもとにして自分の考えをもち,表現している。
自らへの自信
自らが数学的に推論し,証明できたことに自信を持つ。
単元の指導計画( 本時 8/9 時間 )
- 41 -
時
関
・ 考
意 え
・ 方
態
学習内容
技
能
知
識
・
理
解
評価規準
(評価方法)
資質・能力
の育成
情報の収集
1
・円周角の定理や円周角の定理の逆を体
験的に理解する。
◎
ア①(行動観察)
○ エ①(ノート・発表)
整理・分析
2~
4
・円周角と中心角の関係を見いだし,既
習の三角形の性質などを基にしてそれ
が証明できることを理解する。
・円周角と中心角の関係を用いて角の大
きさを求める。
・等しい弧と円周角の関係を理解する。
○
イ①(ノート・発表) 思考力
◎ エ②③(ノート・発表) 【関係付け】
①
◎
ウ①(ノート・発表)
◎
ウ②(ノート・発表)
課題の設定
5
6
・円周角の定理を用いて,図形の性質を
証明する。
◎
イ②(ノート・発表)
・円周角の定理の逆が成り立つことを理
解する。
○
イ③(ノート・発表)
◎ エ④(ノート・発表)
思考力
【関係付け】
②
創造・表現
7~
8
9
・円周角の定理を活用して,円外の 1 点
から 円に接線 を引く作図の 方法を 調
べ,それを説明する。
・円周角の定理を活用して,日常生活の
問題を説明する。
○
(本時2/2)
ウ③(ノート・発表)
◎ エ⑤(ノート・発表)
◎
ア②(行動観察)
イ④(ワークシート)
◎
イ③(ワークシート)
ふりかえり
表現力
【理由】①
主体性
自らへの自信
・単元のまとめを行う。
6
○
本時の学習
(1)本時の目標
円周角の定理を用いて,日常生活の問題を説明することができる。
(2)観点別評価規準
円周角と中心角の関係を用いて,具体的な事象を捉えることに関心をもち,問題の解決に生
かそうとしている。
円周角と中心角の関係を用いて考えた結果が適切であるかどうかを振り返って確かめるこ
とができる。
(3)資質・能力の育成
主体性 円周角の定理や円周角の定理の逆をもとにして自分の考えをもち,表現している。
(4)準備物
パソコン,ワークシート,三角定規,分度器,コンパス,振り返りシート
(5)学習過程
- 42 -
学
習
活
動
・既習事項の確認を,フラッシュ
カードを用いて行う。
導
入
指導上の留意点(・)
配慮を要する生徒への支援(◆)
・前時までの学習内容を振り返り,円周角
の定理や,弧と円周角の定理,円周角の
定理の逆などを確認することで,既習内
容と本時の学習のつながりを意識させ
る。
・定理を用いて角度を求める問題を,パワー
ポイントを利用して,視覚的に理解させ
るとともに,フラッシュカード形式で
次々と問題を課すことでテンポよく,ま
た効率よく行う。
(1) 課題設定
全校合唱の勇姿を写真におさめるには…
展
開
【課題】
全校合唱の様子を撮影する
ために,体育館の合唱台全体が
入る位置から写真を撮影しよ
うと思う。
リハーサルの時,右の図の点
Pの位置なら合唱台全体が
ぴったり入ることを確認した。
しかし,当日図の点Pの場所に
はいすが置かれるうえに,保護
者で埋め尽くされるので,カメ
ラを設置できない。
右の図の点Pの位置と同じ
ように,合唱台全体がぴったり
入って撮影できるのはア~エ
のどの位置のときか。記号を選
び,理由を答えなさい。
P
B
A
・課題設定の都合上,カメラに倍率を変更
する機能がついていないことを確認する。
・生徒が課題解決を自主的に行うことを促
進する教具として,日常生活(学校行事)と
関連させた課題を提示する。
・三角定規,分度器,コンパスを適宜用い
てよいことを指示する。
- 43 -
評価規準
教科の指導事項(○)
資質・能力(★)
(2) 個人思考
書く活動
・上の問題を個人で考え,ワーク
シートに記入する。
創造・表現
・生徒の思考を援助するために,導入で復
習した内容が課題解決の手助けとなるこ
とを確認する。
・早くできた生徒には,他の説明を考えさ
せる。
◆机間指導を行い個別に支援する。
◆補助線を引くことで,角の大きさに注目
させる。
○ア②
B:円周角と中心角
(3) 集団思考
の関係を活用し
・小グループ内で一人ずつ考え方 ・次の根拠が説明できているか,確認する。
ようとしている。
を発表し確認する。
①円周角の定理より,一つの弧に対する円 A:円周角と中心角
展
周角の大きさは等しい。
の関係を活用す
開
・指名発表により,解き方の説明 ②選んだ記号と,∠APBの角の大きさが
ることに気づき,
を全体で共有する。
等しい。
解決しようとし
ている。
予想① ㋐
予想② ㋑
AB に対して,点 P と平行な位置
点 A 点 B と線を結んだ角度が,∠APB
★主体性
にあるから。
と同じ大きさだから。
円周角の定理や円
周角の逆をもとに
予想③ ㋑と㋓
して,自分の考えを
点 A 点 B と線を結んだ角度が,∠APB と同じ大きさで,円周角の定理より,一
もち,表現してい
つの弧に対する円周角の大きさは等しいので円周上にある㋑と㋓は合唱
る。
台がぴったり入る。
・実際の写真を見せることで,数学と実生
活との関連付けを行う。
(4) 個人思考
書く活動
・練習問題を解く。
展
開
【問題1】
S君は,他にも合唱台全体が
ぴったり入る場所がないかと
思い,次のように考えた。それ
は,∠APB=57°となる点は
右の図のように,2 点A,Bを
通り,弧ABに対する円周角が
57°となる円Oの円周上にあ
るということである。そして,
中心Oを求めるために,ABを
底辺として,底角が 33°の二等
辺三角形をかいた。なぜ,S君
はこのような二等辺三角形を
かいたのだろうか。その理由を
説明しなさい。
P
B
A
・練習問題が完答できたら,プリントを解
くよう伝える。
(5) ま と め
ま
と ・今日の学習をまとめる。
め
・振り返りシートを書く。
・全体で確認させる。
・振り返りを発表する。
- 44 -
○イ④
B:円周角と中心角
の定理について
の気づきを用い
て説明している。
A:円周角と中心角
の関係に気づき,
円の中心を求め
ることの説明が
書けている。