安曇野市アウトソーシングに関する指針 平成 18 年 12 月 15 日 市長決裁 【平成 27年8月一部修正】 本市は、平成 17 年 10 月1日に新設合併し安曇野市となったが、合併関係5町村においても、 行政改革を「尽きることのない行政課題」として、それぞれに努力を積み重ねてきた。特に、行財 政改革の重点取り組み項目として、経費の縮減とサービスの向上を図るため、積極的にアウトソー シングを進めてきた経過がある。 しかしながら、人口減少・超高齢化社会の到来など本市を取り巻く社会経済環境は厳しい状況に あることから、これまで以上の行財政運営の効率化と、 『安曇野市まちづくり計画』 (新市建設計画) を実現するための『安曇野市行財政改革大綱』並びに『行政経営改革プラン』を着実に進めていく ことが求められている。 一方で、規制緩和の進展により民間企業はもとより、地域自治組織や NPO 法人等も公共サービ スの新たな担い手として期待されている。 また、 「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」 (以下、公共サービス改革法という。) が、平成 18 年6月2日に公布、同年7月7日に施行され、国、自治体が自ら実施する公共サービ スに関し、民間事業者の創意と工夫の反映が期待される一体の業務を選定して、官民競争入札又は 民間競争入札に付することができることとされた。 政府は、住民の立場からこれを積極的に実施することが望ましいとの立場を示しており、今後、 民間事業者に行わせることを可能とする「特定公共サービス」の拡大について関係省庁と協議し、 整ったものから順次追加・拡大を図る予定であることから今後も注視していく必要がある。 以上を踏まえた中で、適切な行政サービスの提供と新たな市民ニーズに的確に対応していくため には、計画的・戦略的にアウトソーシングを活用していく必要がある。 そこで、以上を背景として、ここに「安曇野市アウトソーシングに関する指針」を策定する。 1 1.アウトソーシングの定義 アウトソーシングとは、「従来内製していた、または新たに始める機能や業務について、外部の 経営資源(人材・財源・知識・技術力等)に委ねること」、すなわち「外部に資源を求めること」 であり、従来型の第三セクターや民間企業等への「外部委託」よりも幅広い意味合いを持つ。本指 針ではより効果的、効率的に行政サービスの提供や行政運営を行うため、業務を広く外部(民間企 業、NPOやボランティア等)に委ねることをいう。 2.基本的な考え方 (1)行政組織のスリム化を積極的に推進するため、行政がなすべきことを明らかにし、 「民間でで きることは民間に委ねる」を基本として、行政が直接執行すべき業務を除き、積極的にアウト ソーシングを推進する。 (2)経費の縮減、事務処理の効率化だけでなく、行政サービスの充実・向上の観点からアウトソ ーシングを推進する。 (3)地域自治組織、NPO 等を公共サービスの有力な担い手として位置づけ、その特性を活かした アウトソーシングを推進する。 (4)官民競争入札又は民間競争入札の対象とする特定公共サービスを適切に選定するものとし、 必要な環境等を整備した上でこれを実施する。 3.アウトソーシングを推進すべき業務の選定 「民間でできることは民間に委ねる」を基本として、全ての業務を検討の対象とするが、業務 内容、実施効果からアウトソーシングに適した業務を選定する。 (1)アウトソーシングになじまない業務 ①法令等の規定により市が直接実施しなければならないもの ②許認可等の公権力の行使に当たるもの ③政策・施策等の企画立案・調整・決定などのうち、行政自らが判断する必要があるもの ④公正性や公平性の確保、個人情報保護が特に必要であり、行政自らが実施すべきもの (ただし、契約において守秘義務等を明記することにより問題を回避できる場合は除く) なお、法令の規定等が阻害要因となっている業務については、今後、国の法改正や規制の見直 しなどにより民間事業者が担えることとなった場合には、その業務のアウトソーシングについて 検討する。 (2)アウトソーシングに適した業務 ①定型的業務 マニュアル等により誰が行っても同じ結果が得られるなど、業務が定型的なもの、あるいは 大量に発生する業務 ②専門的業務 高度な技術、専門的な技術を必要とし、民間等の専門的な知識、技術、設備等の活用が期待 できる業務 2 ③企画運営業務 各種イベント、研修会、啓発冊子の製作など、民間の企画・構想力・ノウハウを活用して効 果的な運営が期待できる業務 ④施設の管理運営業務 公共施設の管理運営など、民間等の自主性の発揮により弾力的・効果的な運営が期待できる 業務 ⑤現業的業務 管理的な事務でなく定型的な現場業務 上記業務の具体的な例示は、 【別表】のとおり。 4.アウトソーシング導入の判断 アウトソーシングの導入に当たっては、実施効果を十分に検証し、行政内部で蓄積してきた知 識・技術・ノウハウの継承や人材育成のあり方なども踏まえ、総合的に判断する。 (1) 経費の検証 人件費、事業費等の経費が削減できるかどうか検証する。 (2) 効率性とリスクの検証 事務処理の迅速化や専門的な業務への対応など、事務の効率化が図れるかとともに、リスク についても検証する。 (3) 市民サービスの検証 市民ニーズに柔軟に対応し、サービスの維持・向上が図れるかどうか検証する。 (4) 市民との協働の検証 市民の自主意識の醸成と自治意識の高揚につながるかどうかの検証 5.取り組みに当たっての留意事項 (1) 業務を細分化、或いは集約化することにより、アウトソーシングが可能となるかを検討する こと。 (2) より効果・効率を高めるため、共通・類似業務の集約や一連のプロセスを含める横断的・包 括的なアウトソーシングを検討すること。 (3) 他市等で、同種の業務についてアウトソーシングが行われているものについては、積極的に 検討すること。 (4) 民間でも同種のサービスが提供されている業務については、民営化も含めて検討する。 6.部局の責任 (1) 毎年度、行政評価などにより事務事業を点検し、アウトソーシングの積極的な推進を行うこ と。 (2) 実施にあたっては、具体的な課題整理と準備作業、時期等を明確にした実施計画を策定する とともに、市民生活に密接に関わる分野については、説明責任の履行に努めること。 3 アウトソーシング先の選定等 (1) アウトソーシング先の選定にあたっては、競争原理、公平性、透明性、適格性、守秘義務を 確保すること。 (2)業務内容に応じてプロポーザル方式など価格以外の要素も評価の対象とする選定方法を検討 すること。 (3) 明確な積算根拠に基づき委託料を算出するとともに、経済環境に留意し委託内容の精査を行 い、経費の縮減に努めること。 7.適正管理 (1) 契約書、仕様書、報告書、指示書等により委託内容、指示事項を明確にし、厳正に業務執行 の管理・点検・検収を行うこと。 (2) 業務完了後、経済的効果、サービスの向上など、効果や実施にあたっての留意事項について 事後評価を行い、見直しや改善に努めること。 9.実施に当たっての留意事項 アウトソーシングの実施にあたっては、社会情勢、市民ニーズを的確に把握し、適法性、効率 性、サービスの質と安全の提供、行政責任の確保などの観点から、問題点や懸念されるリスクを 十分検討すること。 (1) 法令等による基準、制約などの規定に適合していること。 (2) 施設の保守点検等が十分行われ、安全確保が図られること。 (3) 現状と比較して、経費の縮減や効率的な執行が図られること。 (4) サービスの低下を招かないこと。 (5) サービスの提供が長期的かつ安定的に提供されること。 (6) 行政の指揮・監督が担保され、行政と相手方の責任分担が明確にされること。 (7) 個人情報等の守秘義務が確保されること。 (8) 一連の行為に関して公平・透明性が確保されること。 10.その他 本指針は、法制度の改正や社会経済環境等の変化を踏まえ、必要に応じ的確な改正を行うもの とする。 4 【別表】 業務の類型 定型的業務 マニュアル化等により誰が行っても同じ結 果が得られるなど、業務が定型的なもの、あ るいは大量に発生する業務 例 ◆電算入力・集計処理業務 ◆データベースの構築、データ管理・台帳整備 ◆定期的な調査・統計事務 ◆窓口サービス業務(各種受付、証明書発行) ◆給与・手当の計算・支給事務 ◆文書・資料の整理保存業務 ◆文書の収受・発送業務 ◆備品等の調達管理 ◆福利厚生業務 専門的業務 高度な技術、専門的な知識を必要とし、民間 等の専門的な知識、技術、設備等の活用が期 待できる業務 ◆公共事業関連業務(測量、設計、地質調査) ◆技術指導・相談業務(技術指導、経営指導、各種 相談業務) ◆用地買収等関連業務(移転登記等) ◆調査研究・分析・検定業務 ◆情報化関連業務(システム開発、電算システム運 用管理、ネットワーク管理等) ◆健康診断 企画運営業務 各種イベント、研究会、啓発冊子の作成など、 民間の企画・構想力・ノウハウを活用して効 ◆広報紙・ホームページ・啓発パンフレットの作成 ◆各種イベント企画全般 ◆研修、講座等開催業務 果的な運営が期待できる業務 施設の管理運営業務 公共施設の管理運営など、民間等の自主性の 発揮により弾力的・効果的な運営が期待でき ◆公共施設の管理運営業務 ◆庁舎等の維持、管理業務(施設の警備、清掃、機 器の保守点検、修理等) る業務 現業的業務 管理的な事務ではなく、定型的な現場業務 ◆保守業務 ◆公用車の運行 ◆給食調理業務 ◆施設の用務 5 参 考 アウトソーシング手法の選択方法と様々な制度の整理 ①職員の種別や委託形態の違いとメリット、デメリット ・直営、委託それぞれにも、いろいろな形態や違いがあることから、業務の専門性、守秘義務の確 保、雇用の継続性、法的制約等を総合的に勘案し、個別の業務内容に応じた最適で安価な方法を 組み合わせていく必要がある。 ②コストを含めた業務実施手法の考え方の整理 ・コストを含め、それぞれの実施手法の考え方を整理すると、次のようになる。 ◇常勤職員 職員がすべての業務を直接担うことは、行政の継続性、専門性、守秘義務の確保等からは大変 好ましいが、経費面からは最も高くなる。したがって、職員は「職員でなくてはできない業務」 や「職員の専門性が生かせる業務」 、つまり、公権力の行使や政策形成に特化していく必要があ る。また、プラン、ドゥ、チェック、アクションというマネジメント・サイクルのうち、ドゥ は極力、安価な資源を用い、職員はプラン、チェック、アクションにシフトしていく。 ◇一般職非常勤職員 一般職非常勤は、正規職員に比べ、経費面で経済的であることから、非常勤一般職や専門技術 職の補助的役割を担う者として採用されてきた。基本的には、単年度契約ではあるが、勤務状 況又は履行内容が良好な場合には継続雇用してきた。今後は、事務事業の見直し及び事務改善 を検討し、所管課等の職務内容及び事務量に応じた非常勤職員等の配置方針を明確にしていく。 ◇再任用職員 年金支給開始年齢の引き上げに伴い、定年退職した職員等を再度任用(雇用)する制度で、週 30 から 31 時間の短時間勤務と、一般職員と同じ週 38 時間 45 分勤務がある。任用期間は 概ね3年間であるが、今後は年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられることに伴い、最終 的には5年間(65歳)まで延長される。再任用職員にはそれまでの勤務で得た知識と経験を 生かし、後輩の手本となるような業務遂行が求められる。 ◇特別職非常勤職員 地方公務員法が適用されない任期職であり、本来的には日常的な業務には従事すべきでない職 である。個々人の専門性を生かし、独立して調査・検討する業務にのみ従事させるべきであり、 これ以上の業務拡大は困難である。 ◇人材派遣 経費的には、正規職員と一般職非常勤職員の中間に位置し、専門性が高く、活用業務次第では 即戦力として期待でき、労務管理も要しない。しかし、地方公務員法が適用されず、一般事務 等は雇用期間が1年までで、継続する場合は 3 ヶ月のクーリング期間が要る等のデメリットも あり、期間限定の業務にしか活用できないため、選挙等、短期・臨時的な業務及び労働者派遣 法で例外規定のある特例業務にのみ活用していく。 (秘書、電算処理など、政令で定められた特 6 例業務は、1年契約を3年まで更新することや、派遣労働者が交代すれば、更に継続して委託 することが可能) ◇業務委託 業務委託は、民間企業の専門知識や技術の活用、効率的な業務運営等のため、これまでもあら ゆる部門で活用してきた。行政が直接担うべき業務とボランティアやアドプト制度等により、 市民や地域に委ねる業務を整理した上で、職員が直接実施しなくてもよい部分は、職員数の減 少に応じ、委託を拡大していく。特に、人材派遣と違い、契約期間の限度がない業務委託にな じむものは、安全対策やサービス低下を招かないような万全の措置を講じたうえで、NPO も 含め効果的な活用を推進していく。また、地方自治法の改正により、指定管理者による総合的 な管理運営が可能になったことから、この制度を積極的に採用していく。 なお、各種計画書等の策定については、職員が検討し(委員会の運営等を含む。 )策定すること を基本とし、業務委託をしないものとする。 (策定に必要なアンケート調査の実施や集計、計画 書の印刷製本等については、業務委託を可能とする。 ) ③一般職非常勤職員や人材派遣等活用上の課題 ・一般職非常勤職員や人材派遣等の活用は、専門職を含む一時的な事務量の増加や職員の欠員への 対応を前提としたものであることから、誰でも同じ処理ができ、引継ぎがきちんと行えるよう、 マニュアル等を整備する必要がある。また、職員数の減少に応じ、段階的な活用が望まれること から、職員が直接担うべき専門性が高い業務と外部の人材でも担える業務の区分けを明確にして いく必要がある。 ④市として保有・蓄積すべき専門知識やノウハウ ・アウトソーシングにより、市民サービスを低下させず、経費の効率化を図り、或いは民間の専門 知識や技術を活用して、市民サービスの質的向上を図れたとしても、サービス供給主体はあくま で市であることから、行政としての責任を果たしていくためには、行政がそれらを企画立案し、 実施を指揮監督し、結果の評価ができる能力を有していなければならない。 ・したがって、行政の守備範囲である業務については、それぞれの実施主体として、組織的に専門 知識や技術を保有し、時代の変化や技術革新にも対応して、基本的なノウハウが蓄積されていか なければならない。このため、企画立案、評価等までを含めたすべてをアウトソーシングするこ とは無理であるし、職員の定年退職や不慮の事故等があったときにも、他の者が継続できる程度 の人員とノウハウは確保しておかなければならない。 ・これらに該当する業務とノウハウの内容及びそれに該当する職種と必要人員等を整理し、基本的 な業務の処理方法は、マニュアル化していく必要がある。 ⑤「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」について ・この法律は、国の行政機関等又は地方公共団体が自ら実施する公共サービスに関し、その実施を 民間が担うことができるものは民間に委ねる観点から、これを見直し、民間事業者の創意と工夫 7 が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札に付するこ とにより、公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を図る改革(競争の導入による公共サー ビスの改革)を実施するため、その基本理念、公共サービス改革基本方針の策定、官民競争入札 及び民間競争入札の手続、落札した民間事業者が公共サービスを実施するために必要な措置、官 民競争入札等監理委員会の設置その他の必要な事項を定めたものである。 ・既に、国の法制度が民間の参入を妨げていた戸籍謄抄本、住民票の写しの交付、地方税の納税証 明書など市町村が行っている窓口業務の一部も自治体の判断で官民競争入札又は民間競争入札の 対象とする方針が打ち出されているが、政府の官民競争入札等監理委員会では、自治体への拡大 策や課題を検討する「地方公共サービス部会」を設置し、地方税をはじめとする公金の収納・徴 収や、窓口業務の対象拡大など、自治体から寄せられた民間開放を求める項目について、実施上 の法制度面の課題についての検討を実施しており、この動向にも注視する必要がある。 ・今後は、法令の規定に基づき、地方自治体の判断により、地方公共団体の特定公共サービスに関 し、官民競争入札又は民間競争入札を実施することができるようになったが、この場合において は対象とする特定公共サービスを適切に選定する必要がある。 ※「特定公共サービス」とは、官民競争入札等の結果、民間事業者が公共サービスを実施する場合 に必要となる法律の特例(参加資格、監督上の措置、規制の緩和等)が適用される業務を意味す る。 例えば、ある公共サービスの担い手が法律によって公務員に限定されている場合などでも、公共 サービス改革法に当該法律の特例(民間事業者も担い手となれるようにすること)を設けること により、官民競争入札等を行うことが可能となる業務のことを指す。 ※地方公共団体の窓口業務の特例 ・住民異動届の受付に関する業務 ・戸籍の各届出の受付に関する業務 ・地方税法に基づく納税証明書の交付に関する業務 ・中長期在留者に係る住居地の届出に関する業務 ・特別永住許可等の申請、住居地等の届出及び特別永住許可書等の交付に関する業務 ・転入(転居)者への転入学期日及び就学すべき小・中学校の通知(教育委員会から市町村に事務委 されている場合)に関する業務 ・埋葬・火葬許可申請書の受付に関する業務 ・国民健康保険の各種届出書・申請書の受付及び被保険者証等の交付に関する業務 ・後期高齢者医療制度関係の各種届出書・申請書の受付及び被保険者証等の交付に関する業務 ・介護保険関係の各種届出書・申請書の受付及び被保険者証等の交付に関する業務 ・国民年金関係の各種届出書・申出書・申請書・請求書の受付に関する業務 ・妊娠届の受付及び母子健康手帳の交付に関する業務 ・飼い犬の登録に関する業務 ・狂犬病予防注射済票の交付に関する業務 ・児童手当の各種請求書・届出書の受付に関する業務 ・精神保健及び精神障害者福祉に基づく精神障害者保健福祉手帳の交付(市町村の経由事務)に関 する業務 8 ・身体障害者福祉法に基づく身体障害者手帳の交付(市町村の経由事務)に関する業務 ・療育手帳の交付(市町村経由事務) ・自動車臨時運行許可に関する業務 等 法律では、上記業務について、個人情報の保護等に十分配慮したうえで、民間事業者への委託が 可能となるよう、特例措置が盛り込まれている。 ◎詳細については下記URLより参照 http://www5.cao.go.jp/koukyo/chihou/tsuchi/madoguchi/pdf/24.pdf ⑥直営に戻すべきものの検討 ・以上で検討してきたように、行政として必要な専門性やノウハウ、職員が直接担うべき業務を整 理するためには、単に新たにアウトソーシングすべきものを検討するだけではなく、逆にこれま でアウトソーシングしてきた業務の中で直営に戻すべきものがないかどうかも、合わせて検討す る必要がある。 ⑦他の手法の検討 ◇PPP・PFIの活用 ・PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)は、行政と民間がパートナーを組ん で事業を行うという官民の連携体制であり、水道やガス、交通等の従来地方自治体が公営で実 施していた事業に民間の事業者が事業計画段階から参与し、設備は行政が保有したまま、設備 投資や運営を民間事業者に任せる民間委託などを含む手法である。 ・PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)は、民間活力の活用手法として、第 3セクター破綻の教訓を生かし、新たに導入された手法であり、平成 11 年9月に「民間資金 等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(いわゆるPFI法)が施行された。 公共施設等の建設、維持管理、運営等に民間の資金、経営能力及び技術的能力を生かし、自治 体が直接実施するよりも、効率的かつ効果的に施設整備や公共サービス提供を行おうとするも ので、国の補助制度や支援措置も活用できる。 ・PFIの一つに、民間事業者が行政から公共施設等の運営権を取得し、自ら建設・資金調達を 行い、公共サービスに一定期間従事する、コンセッション方式があり、PFI法第2条におい て列挙されている「公共施設等」 (インフラ)がその対象となり、 「道路、鉄道、港湾、空港、 河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の公共施設」、 「賃貸住宅及び教育文化施設、廃棄物 処理施設、医療施設、社会福祉施設、更正保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設」などが 含まれる。 ・PPPとPFIは、PPPは事業の企画段階から民間が参加するなど、より幅広い範囲を民間 に任せる手法に対し、PFIは国や地方自治体が事業計画をつくり、実行する民間企業を入札な どで募る方法を指すという違いがある。 ・メリットとしては、民間ノウハウの活用や競争原理により、サービス水準の向上やコスト縮減 が図れるとともに、初期投資を押さえ、施設のライフサイクル全般を通じた財政支出が平準化 できることなどが挙げられ、デメリットとしては、専門のコンサルタントにアドバイザー契約 9 を委託し、 事業の成立性や採算性を検討させるなど、 募集から契約までの手続きが大変複雑で、 これに多額の経費や時間が必要になること、企業の参入希望の有無が不安定であること、地元 企業の参入が難しいことなどが挙げられる。 ・今後の施設整備においても、時間的な問題や事業成立性の問題、リスク分担等、クリアすべき 課題は多いが、官民双方の利益になる点もあり、導入について更なる研究と検討を要するべき と考えられる。 ◇独立行政法人の検討 ・独立行政法人は、国や自治体の組織のうち、具体的業務の執行を行う機関を分離・独立させ、 これに一定の裁量権を与えることにより、行政の効率化とサービスの向上を目指すもの、つま り PLAN(プラン)と DO(ドゥ)を分離し、小さな政府にしていくことを目的に、平成 12 年 12 月策定の国の「行政改革大綱」で新たに位置付けられたものである。 ・国においては、国立大学や国立病院をはじめ、各種の研究機関などがその検討対象とされてお り、本市においても、文化、教育、学術の分野で連携協力するため、信州大学人文学部との間 で協定を締結している。 ・他市では、他分野における協定締結が進められていることから、今後、本市においても、他分 野への拡大も視野に入れてく必要がある。 ⑧市民との役割分担の見直し ◇区等の地域自治組織との関係 ・区等の地域自治組織は、住民自治組織として自然発生的に発達してきた側面と、行政の末端機 構として組織化された側面をあわせ持ち、 時代の変遷を背景として、 そのあり方や形態を変え、 現代では、住民相互の連絡、集会施設の維持管理、清掃、美化、行政に対する要望等、盆踊り、 敬老会等の各種行事を行い、地域の公共的機能及び行政補完機能を果たしている。 ・安曇野市「区」マニュアルにおいて、市と区は「対等なパートナー」として位置づけられており、 区(区の中の常会や小さなコミュニティ組織を含む)と市は、お互いが対等で自立した立場をと り、市民(区民)のあらゆる生活の向上と地域の課題を解決したより良い地域づくりのために、 協力・協働する関係となる。 現在、市から区へ依頼する事項は、文書配布(回覧文書)、各種委員会や市との連携に必要な委 員などの人選(推薦など)、募金の収集などであり、また、区などの安全・安心な地域づくりや 良好な環境整備などを目指して、区長を通じた地域要望の取りまとめなども依頼している。 区と市の関係は、市民がより良い生活を送るためのあらゆる環境づくりのため、お互いのやる べき役割を果たし、不足部分を補う(補完性の原理)ことが必要で、まず役割分担を明確にする ことが重要である。 ◇アドプト制度の活用 ・補完性の原則により、市民や地域でできるものを市民や地域に委ねていく方法の一つとして、 注目されているのがアドプト制度である。 ・アドプトは直訳すると「養子にする」という意味であり、公共施設の管理を市民や民間企業に 10 委ね、行政の効率化を図るものであり、併せて、地域コミュニティの醸成や郷土愛護精神の涵 養にもつながることから、最近、特に大きな期待が寄せられている。 ・本市では、穂高地域豊里地区において、県道拡幅工事にあたり、計画策定段階から住民が参画 し、歩道(植栽)の管理についてアドプト制度が導入されている。 ・今後は、都市公園等をはじめ、道路や河川などの清掃や日常点検については、地域・地域住民 への積極的な働きかけを行い、アドプト制度を拡大していくことが望まれる。 ◇NPOの充実 ・NPOの本来の活動は、行政サービスの受託ではなく、自らの意志や存在目的に応じ、自ら企 業や市民から収入を得て、自主活動を展開することにある。 ・今後、市内 5 地域に設置を計画している市民活動センターでの支援をより効果的なものとし、 これまで行政が担ってきた公共分野のサービスを自主的に担い得るようなNPOに成長しても らうことにより、行政の効率化を図っていく。 ・また、経済的効果だけではなく、当事者団体以外の市民参加の拡大や、より身近なところで地 域ニーズに即したサービスの提供が実現されることから、市民との協働につながるような成果 も期待できる。 ◇企業・団体等との連携 ・本市においては、平成 18 年度、市内郵便局及び安曇野市建設業災害対策協議会との間に、災 害時における相互協力を目的に、協定を締結した。 ・こうした協定を、アウトソーシングと捉えるかどうかは、議論すべきところであるが、今後、 不法投棄や道路の破損箇所などの通報等について、その範囲を広げていくことも視野に入れて おく必要がある。 11
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