VPDから子供たちを守ろう! はじめに 小児科 山﨑 俊夫 日本はVPDの輸出国?! 欧米などの諸外国に比べて接種率が低い日本 • 日本ではVPDにかかり、それが原因で重い後遺症に苦しんだり 命を奪われたりする子どもが後を絶ちません。2001年に 麻しんが流行した時は約30万人がかかり、80人くらいの死亡者が 出たとも推定されています。どうしてこんなに患者が多いのか というと、日本ではワクチンの接種率が欧米などの国に比べて 低いのです。それは、予防接種の必要性と安全性が国民にきちんと 伝えられていないために、安全性などワクチンに対する誤解が多いから だと思います。また、無料化しているワクチンの種類が少ないことも 関係します。 • 世界では、麻しんをはじめとするVPDの撲滅を目指して、 ワクチンの接種を積極的に行っています。WHO(世界保健機関)でも、 「拡大予防接種事業」を行って、世界各国でワクチンの接種を すすめています。 世界の同時接種 月齢 同時接種の例 ワクチン名(予防する病気) • • アメリカ 2か月 1)三種混合(ジフテリア+破傷風+百日せき) 2)ヒブ(ヒブ感染症) 3)小児用肺炎球菌(肺炎球菌感染症) 4)不活化ポリオ(ポリオ) 5)B型肝炎 6)ロタウイルス ドイツ 3か月 1)6種混合(ジフテリア+破傷風+百日せき +不活化ポリオ+ヒブ+B型肝炎) 2)小児用肺炎球菌(肺炎球菌感染症) 接種方 法 1)注射 2)注射 3)注射 4)注射 5)注射 6)経口 1)注射 2)注射 同時接種や混合ワクチンを用いた方が、子どもにとっても、接種に付き添う 保護者にとっても、負担が軽くてすみます。 日本では法律で皮下接種が決められていますが、他の国では大腿部に 筋肉接種するのがふつう。 米国では、大腿部であれば赤ちゃんでも片方に3か所くらいは接種できます。 VPDから子供たちを守ろう! ワクチンは必要? 小児科 多田 島岡 岡崎 VPDとは ●Vaccine("ヴァクシーン")=ワクチン ●Preventable(“プリヴェンタブル")=防げる ●Diseases("ディジージズ")=病気 VPDとは「ワクチンで防げる病気」のこと VPDの種類 VPDとVPDでないもの 突発性発疹 ヘルパンギーナ 手足口病 伝染性紅斑 咽頭結膜炎 とびひ マイコプラズマ肺炎 尿路感染症 ・・・・・その他 VPDでない感染症 ワクチンがない ↓ 予防が難しい感染症 麻疹 ポリオ ジフテリア 百日咳 おたふくかぜ インフルエンザ B型肝炎 ヒブ感染症 風疹 結核 破傷風 日本脳炎 水ぼうそう 小児の肺炎球菌感染症 A型肝炎 ロタウィルス胃腸炎 VPDの感染症 ワクチンがある ↓ 予防が可能な感染症 ワクチン接種したほうがいい? 時々お母さん方から、水ぼうそう や おたふく なんかは、自然に 感染してもいいんじゃないか? という声が聞かれます はたして、それでいいのでしょうか? 免疫の付き方 自然感染よりはるかに安全 • ワクチンは、自然感染と同じしくみで、私たちの体内に免疫を作り出す • 自然感染のように実際にその病気を発症させるわけではなく、 コントロールされた安全な状態で免疫を作り出す • 接種後に症状が出ず、たとえ症状が出ても大変軽いのが特徴 • 自然感染にくらべて生み出される免疫力は弱いため、1回の接種では 充分でなく、何回かに分けての追加接種が必要になることがある • 麻しんなどに自然にかかっても、終生免疫(一度感染すると 生涯その病気にかかることがない)ができないことが、わかってきている ワクチンの役割 ワクチンを接種する大切な目的 1.自分がかからないために 2.もしかかっても症状が軽くてすむために 3.まわりの人にうつさないために ワクチンはこわくない? • ワクチン接種した後の副反応について実際には、接種した場所が赤く腫 れたり、少し熱が出る程度の軽い副反応がほとんど • ワクチン接種は、国連のWHO(世界保健機関)を中心に世界中で推進 • ワクチンは、世界中多くの人に使用されている薬剤 (ワクチンも薬の一種)である • ワクチンほど接種した後の調査が行き届いているものはない 欧米では、多くの科学的な調査が徹底的に行われ、ワクチンの安全性が 証明されている ワクチンを接種した時に起こる副反応と、ワクチンを接種しないで その病気にかかった時の危険性をくらべると、ワクチンを接種しないで 重症になった時の方が、ずっとこわいということ 同時接種の必要性・安全性 日本の赤ちゃんが1歳前に接種する主なワクチンは6~7種類。 何回か接種するワクチンもあり、接種回数は15回以上にもなります。 また生ワクチン接種後は、4週間あけなければ次のワクチンが 接種できません。 同時接種の利点 • 同時接種は必要な免疫をできるだけ早くつけて子どもを守る • 保護者の通院回数を減らすことができる • 予防接種スケジュールが簡単になり、接種忘れなどがなくなる (接種率があがる) 予防という本来の目的を果たす意味で非常に重要 • 同時接種でワクチンの効果が減ったり、副作用が増える ことはない もしワクチンを接種しなかったら・・・? VPDにかかると、重い後遺症が残ったり、命が おびやかされることがあります。まさかと 思われるかもしれませんが、麻しん(はしか)や おたふくかぜのようによく知られた病気でも、 重い後遺症が残ったり、 命を落としたりすることもあるのです ワクチンで予防とVPDにかかるのと どっちがお得? 日本で接種できるワクチンは、定期接種と任意接種に分けられます 例えば、子どもが麻しん(はしか)にかかってしまったら… • 仕事を休むためにお父さん・お母さんが得られない収入(1週間から 10日程度) • 通院費用、交通費(タクシー代など) • 入院費用、個室差額料、付添者の食事代など • 兄弟姉妹にうつると、2倍、3倍の負担となる • 後遺症を残せば、一生通院や入院が必要となることもある • お母さんやお父さんなどおとなでも、うつると亡くなってしまうこともある そして何より、決してお金には換算できないことですが、お父さん、お母さん、 ご家族のみなさんの心理的損失は多大なものです。 受けにくい日本の予防接種 • 日本では接種にあたって、細かな決まりが多い 平熱が高くても熱が37.5度以上あったり、1日でも接種時期が遅れると 国の定期接種として認めない • 日本では、不活化ワクチンを接種した場合、次の接種まで中6日以上間 隔をあけなければならない 世界では、不活化ワクチンであれば当日でも翌日でも、期間の制限なく 他の種類のワクチンを接種できる 日本では実際接種率が低く、VPDにかかる人が絶えない 米国では「受けやすい体制をつくって、接種率を上げることが大切」 という考え方 VPDから子供たちを守るために • 医療者がVPD、ワクチンに対する 正しい知識をもつ。 • 保護者にVPD、ワクチン接種に対する 理解を深めてもらえるよう働きかけが必要。 ご清聴ありがとうございました
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