地理A、地理B

地理A、地理B
地理A、地理B
第1 高等学校教科担当教員の意見・評価
地 理 A
1 前 文
「地理A」は国際化の進展等社会の変化に伴って現代世界が抱えている課題を地理的に考察する
ことに重点が置かれている。そのために、作業的、体験的な学習を重視し地理的技能を高めること
や、今日的課題を日常生活と関連付けて取り扱い、生徒の興味・関心に配慮した内容や方法を工夫
したところに特徴がある。
平成 24 年度の大学入試センター試験(以下「センター試験」という。)は、志願者数、受験者数
とも昨年度より減少したものの、地理歴史科の受験者数は増加し 373, 351 人(追・再試験受験者を
含む)となった。教科全体としては 6, 058 人増加している。今年度より地理歴史科と公民科の選択
方法が変更となり、同一名称を含む科目の組合せを除き、両教科より最高2科目を選択できること
となった。そのため、地理歴史科から2科目の選択者を含む延受験者数は 389, 100 人となっている
が、地理歴史科・公民科からの2科目受験者数は 179, 217 人と昨年度より 51, 207 人と大幅に減少し
ている。
一方、B科目全体では 26, 115 人の増加に比し、A科目全体では逆に 4, 370 人減少している。中で
も「地理A」の延受験者数は 2, 696 人で、昨年度に比べ 2, 649 人の減少となり、増加率で見ると「地
理B」の 16. 6%、
「世界史B」3. 2%、
「日本史B」2. 9%、
「世界史A」- 18. 9%、
「日本史A」- 28. 6%、
「地理A」- 49. 6%となっており最も減少率が高かった。
A科目の受験者は 7, 697 人で、「地理A」の割合は 35. 0%を占めており、「日本史A」の 42. 9%に
次ぐ選択率であった。また、1科目目に受験した割合は 44. 8%であった。なお、「地理A」との組
み合わせは「現代社会」が多く 34. 2%、次いで「政治・経済」との組合せが 9. 3%となった。
本試験の平均点については、「地理A」47. 42 点・「地理B」62. 16 点と、昨年度と比較して「地
理A」は 5. 16 点下がり、「地理B」は 4. 24 点下がったが、A科目・B科目の中ではそれぞれ「日本
史A」、「日本史B」に次ぐ平均点となっている。また、「地理A」と「地理B」の平均点の差は、
昨年度の 13. 82 点から 14. 74 点に広がったが、その幅は「世界史A」と「世界史B」との差(17. 31
点)や、「日本史A」と「日本史B」との差(19. 18 点)より小さくなっている。A科目において
は、最高の「日本史A」と最低の「世界史A」の平均点の差が 5. 12 点であり、昨年度の最高の「地
理A」と最低の「世界史A」の平均点の差の 4. 16 点から広がった。地理歴史科、公民科の2科目
受験が多い現状の中で、地理歴史科はもとより公民科の科目も含めて、平均点の差により受験者の
有利不利が生じないように、更なる配慮をお願いしたい。
なお、試験問題の具体的な検討に当たっては、例年どおり次の視点から行った。
⑴ 高等学校学習指導要領の目標、内容等を踏まえているか。
⑵ 教科書や学習状況を踏まえた内容になっているか。
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⑶ 基礎的な知識や事項の解説並びに地図や統計資料などを分析、考察して処理する能力を測定
し、地理的な見方や考え方を問うことのできる内容になっているか。
⑷ 特定の分野や地域に偏ることなく、総合的な理解力を問う内容になっているか。
⑸ 問題文や選択肢の表現、難易度、形式、配点、正答率等に問題点や偏りがないように配慮され
ているか。
2 試験問題の内容・範囲等
今年度は平成 11 年告示高等学校学習指導要領による7回目の試験であるが、全般的に同要領の
目標や内容に沿った問題であった。
今年度の問題は、昨年度と同様に複雑な図表の読み取りは少なかったが、一部に「地理A」の学
習範囲で取り上げることが一般的でない事項や地域からの出題も見られる。出題分野については、
昨年度と同様に、全般的に地理的な見方や考え方及び地理的な技能を活用させる問題を中心に出題
されている。ただ、図表を読み取るだけで地理的知識がなくても容易に解答できる問題や、写真の
提示の仕方に工夫が必要な問題も見られた。
⑴ 出 題 分 野
第1問 地理の基礎的事項
第2問 国境を越えた世界の結び付き
第3問 中央・南アメリカ
第4問 地球的課題
第5問 静岡県大井川流域の地域調査
⑵ 内 容
第1問 地理の基礎的事項に関する問題。球面上の位置、小地形、植生、気候の特徴、地形図の
読図とその範囲、統計地図、新しい地図表現など基礎的事項が幅広く問われている。その反
面、設問間での系統性が弱く、各設問が単発的に出題されているという印象である。地図、写
真等の資料も読み取りやすく、取り組みやすい問題であったが、一部に「地理A」の学習範囲
で取り上げることが一般的でない事項の出題が見られた。
問1 メルカトル図法を用いて、北極圏の南限を示す線と北回帰線を判別する問題。球面上の
位置を問う基礎的な問題であるが、北極圏の南限を示す線を特定するのは難しい。
問2 世界の海岸地形についての問題。ナイル川が分かれば容易に判断できる。
問3 植生の基礎的事項が問われている。気候区分が分かれば容易に判断できる標準的な設問
である。
問4 世界の気候の特徴についての問題。温帯の気候区分が分かれば容易に判断できる。
問5 地形図に関する基礎的知識を問う問題。編集図については「地理A」の学習範囲でここ
まで詳しく取り上げていない場合が多い。
問6 2万5千分の1の地形図の読み取りについての問題。等高線の読み取りに関する標準的
な設問である。
問7 統計地図についての問題。統計地図の作り方について理解していれば、容易に判断でき
る。
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地理A、地理B
問8 GPSの特徴についての問題。一般的な常識の範囲で容易に解答できる設問である。
第2問 国境を越えた世界の結び付きに関する問題。「地理A」の学習では大きく取り扱われる
分野である。全般的に学習範囲を踏まえた出題ではあるが、一部に見慣れない問題があったた
め、難易度が高かったと思われる。
問1 日本の林産物の輸入についての問題。林産物の分類については、「地理A」の学習範囲
では見慣れない問題であり、難易度が高かったように思われる。
問2 アフリカ、中央・南アメリカ、ヨーロッパにおける石油の輸入総量に占める上位3位ま
での輸入先地域とその割合についての問題。アフリカと中央・南アメリカは、その特徴を学
習する機会が少なく、判別が難しい。
問3 3つの貿易品目の輸出割合についての問題。各国の産業の特徴から解答を導くという地
理的思考力を問う良問である。
問4 4か国の受け入れ留学生についての問題。植民地、英語圏、距離等の社会条件から解答
を導くという地理的思考力を問う良問である。
問5 4地域間における旅行者数についての問題。「地理A」の学習状況からすると、各地域
間の交流をここまで学習する機会は少なく、地理的思考力が問われる設問である。
問6 国境を越える交通機関や輸送手段に関する近年の状況についての問題。ハブ空港やコン
テナ輸送などの現在の輸送手段の状況から解答を導く標準的な問題である。
問7 日本企業による工業製品の地域別生産台数の割合についての問題。工業製品の国際分業
についての理解から解答を導く地理的思考力を問う良問である。
第3問 中央・南アメリカに関する問題。「地理A」の学習で取り扱われることが少ない地域で
あり、細かい知識を要する問題が見られ、難易度が高かったように思われる。
問1 中央・南アメリカの4つの地域・海域における自然環境と人間活動についての問題。各
地域・海域の特徴については、「地理A」の学習状況からすると難易度が高い。
問2 中央・南アメリカの4地点の景観についての問題。写真から各地域の特徴を読み取らせ
る良問である。
問3 南アメリカ低緯度帯の自然環境の垂直的利用についての問題。高山気候地域の人々の生
活について理解していれば解答は容易であるが、ただ「地理A」の学習状況ではここまで詳
しく取り上げていない場合が多い。
問4 中央・南アメリカの国・地域ごとの文化に関する問題。写真による資料であり、それぞ
れに説明文もあるため、地図上での位置を特定しやすかったように思う。
問5 中央・南アメリカの国々の主要な言語、宗教、人種・民族についての問題。中央・南ア
メリカの国々の言語や宗教などについての理解があれば解答は容易であるが、「地理A」の
学習状況では、ここまで詳しく学習していない。
問6 中央・南アメリカの国々がかかえる課題とその背景についての問題。大地形と自然災害
の関連を理解していれば解答は容易であるが、各国の社会背景を「地理A」の学習状況では
取り上げる機会が少ない。
問7 中央・南アメリカの4か国の輸出額の上位3品目の変化についての問題。各国の資源や
産業の様子が分かれば解答できる標準的な設問である。
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第4問 地球的課題についての問題。人口問題、貧困、医療、教育、国際協力などの幅広いテー
マが出題されている。地図や図表を使いながら、「地理A」の学習で培われた地理的な見方や
考え方を問おうとしており、難易度のバランスも取れた良問である。ただし、一部では「地理
A」の学習内容では難易度の高い知識が必要な問題も見られた。
問1 4地域における人口上位8か国の1人当たりGNIと平均寿命に関する問題。各地域の
経済状況や生活状況から正答を導き出す標準的な設問である。
問2 三つの感染症による人口 10 万人当たりの死亡率に関する問題。統計地図の読み取りか
ら解答させる標準的な設問であるが、HIV / エイズ、結核、マラリアなどの感染症の知識
は「地理A」では、詳しく学習していないため、難易度が高かった。
問3 3か国の5歳未満児死亡率と 1970 年と 2005 年の男女別初等教育修了率に関する問題。
統計資料を読み取りながら解答させる標準的な問題であるが、コンゴ民主共和国の自然条件
や課題について理解があれば解答が可能であり、問い方に工夫が必要である。
問4 「人間の安全保障」の考え方に沿って行われている国際協力の取組についての問題。一
般常識でも判断が可能である基礎的な設問である。
問5 日本の国際協力の取組みについての問題。「地理A」の学習内容にも配慮された基礎的
な設問である。
第5問 静岡県大井川流域の地域調査に関する問題。問題の構成は全問「地理B」と共通の問題
になっているが、「地理A」の学習内容にも配慮したものであった。内容としては、地理的な
見方や考え方及び地図や写真の読み取りなどを通じて、地理的な技能の習熟度を測るととも
に、地域の変容や人々の暮らし方を考察させる良問である。ただし、一部では「地理A」の学
習内容では難易度の高い知識が必要な問題も見られた。
問1 景観写真を読み取りながら、河川流域の地形を考えさせる問題。衛星画像から小地形に
関する理解を問う良問である。
問2 5万分の1の地形図の読み取りに関する問題。地形図の読み取りとして基本的な設問で
あったが、解答する上では、選択肢の文章に地形図から読み取れない内容が含まれており、
解答に時間を要したと考えられる。
問3 衛星画像、説明文、景観写真から大井川流域の農業の特徴を考察する問題。説明文に
「地理A」の学習では大きく取り扱われない知識があり、難易度が高かったと思われる。
問4 5万分の1の地形図による土地利用の変化の読み取りについての問題。架橋位置の差が
新旧の地形図では若干見分けづらく、難易度が高かったように思われる。
問5 三つの市町における産業別従業者割合に関する問題。三つの市町の産業別従業者割合と
地理的な位置から解答を導く良問である。
問6 川と人々の暮らし方に関する問題。20 万分の1の地勢図、景観写真、模式図を読み取
りながら、沖積平野の基礎的理解を問う設問である。写真3では土地の高低差が読み取りに
くく、解答しづらいため提示の仕方に工夫が必要であった。
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地理A、地理B
3 分 量・程 度
⑴ 問題の程度
本試験において、平均点が 47. 42 点となり、難易度は昨年度に比べてやや難化した。平均点が
上がらない要因として次のようなことが考えられる。
① 図表を読み取るのに「地理B」の細かい知識を必要とする問題があった。
② 「地理A」の学習の中では取り上げられることが少ない国や地域が多く見られた。
③ 組合せの解答が昨年の 13 問から大きく変化せず 12 問あった。
⑵ 設 問 数
設問数は、大問数については5問と変化はないが、小問数は 33 問で昨年より2問減少した。
60 分の試験時間の中でじっくりと解答する時間を持てることが望ましいが、高配点(4点)の
小問が生じたことについては後述する。
4 表 現・形 式
⑴ 形式・配点
小問の出題形式と解答方法は、下のグラフのとおりである。今年度については「文章のみによ
る出題」の増加が目立つ。
5
5
文章のみによる出題
地図と写真の使用
1
画像(写真)使用
0
昨年度
今年度
5
2
地図と図表の使用
一昨年度
7
4
3
3
1
1
12
図表使用
9
地図使用
13
12
12
9
グラフ1 出題形式
10
組み合わせて選択
12
文の選択
8
9
13
一昨年度
昨年度
13
今年度
13
13
13
語句・事項の選択
グラフ2 解答方法
なお、大問の形式については、小問集合(第1問)、図表を中心としたもの(第2問、第4問)、
―93―
地図を用いてテーマを示したもの(第3問)、地形図を用いてテーマを示したもの(第5問)と
バランスよく構成されている。
配点については第4問の問1を4点とし、そのほかは全て3点であった。基礎的な学力を測る
センター試験の趣旨から、難易度の高い問題を高配点とするよりは、低配点の基礎的な知識問題
を2題設定することが望ましいと考える。
⑵ 表 現
地図・写真に不適切なものは見られず、分かりやすいものであった。第5問の問6の写真3に
ついては、「舟形屋敷」の特徴(前面の盛土部分)が捉えやすいものであった方が、写真資料か
らも思考ができたと思われる。
5 要 約
「地理A」は受験者が少ない上に、幅広い層の生徒が受験するため、難易度の調整についてはか
なり難しいと考えられるが、今後とも適当な難易度の問題と、基礎的な出題内容、範囲、形式の作
問をお願いしたい。
今年度の本試験でも、「地理A」の高等学校学習指導要領で事項や事例を選択して扱うとされて
いる内容からの出題が見られた。センター試験でこのような出題があると、それに対応するため、
項目間選択や事例学習の趣旨が生かされなくなる。以上のことから、出題については、特定の学習
事項や地域の知識・理解だけを問うのではない出題をお願いしたい。
また、「地理A」、「地理B」の問題は、例年4択が日本史や世界史より少ない。今年度の本試験
の問題を見ても、4択の割合が「世界史A」、「世界史B」でそれぞれ 94%・92%、「日本史A」・
「日本史B」でそれぞれ 85%・89%であるのに対し、「地理A」、「地理B」はそれぞれ 76%・77%
となっており、昨年度のそれぞれ 63%・51%であったことを鑑みると改善された。4択が少ない
ことは地理的な見方や考え方を問うという科目の性質上やむを得ないことではあるが、教科間で大
きな差が出ることは、これから受験科目を選択する高校生に対し負担増になることにもつながるこ
とから工夫をお願いしたい。難易度も含め、これからも地理歴史科・公民科の出題者間で話し合い
を重ね、大きな差にならないような調整をしていただきたい。
今後の出題に際しては、一考をお願いしたい点を次に掲げる。
① 「地理A」では作業的、体験的な学習を重視し地理的技能を高めることが学習の狙いの一つ
である。「地理A」の履修者にとって、学習の範囲を超えるような細かな知識を問う設問は避
け、「地理A」の狙いや学習状況を踏まえた問題作成をお願いしたい。
② 単調な出題形式や単純な図表の読み取りにならないような工夫や、着眼点を導きやすいよう
な説明文を付ける工夫などをお願いしたい。特に、事項や事例を選択して扱う内容に関して
は、学習していない生徒でも他の地域や地理的事象から推察して解答できるよう、問い方の工
夫をお願いしたい。
③ 「地理A」、「地理B」の共通問題は、今年度は大問一つ(第5問)で出題された。昨年度と
同様「地理A」の生徒に対しても配慮がなされており、来年度以降も共通問題とした場合にお
いても、大問および小問について「地理A」にも配慮した内容や問い方にしてほしい。
センター試験が高校現場に与える影響は大きく、センター試験が知識偏重から思考力、判断力を
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地理A、地理B
求める出題を増やしたことで授業が変わってきている。また、今年度から受験の形態が変更された
こともあり、「国際社会に主体的に生きる日本人としての自覚と資質を養う」ことにつながる、「地
理A」独自の学習内容を強く意識した、質の高い出題をお願いしたい。最後に、今年度作問に当た
られた諸先生方の御努力に敬意を表したい。
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地 理 B
1 前 文
平成 24 年度の大学入試センター試験(以下「センター試験」という。)の受験者は、昨年度と比
べ 1, 567 人減少した。しかし、地理歴史科から2科目受験が可能となったことで、地理歴史科受験
者数(延受験者数)は昨年度に比べ 21, 640 人の増加となった。本年度の「地理B」受験者数は
132, 528 人で、昨年度より 18, 759 人の増加となった。「世界史B」は 2, 836 人の増加、「日本史B」
は 4, 402 人の増加であり、ここ数年では「地理B」の受験者数は最も増加している。
地理歴史科と公民科の2科目受験者数(以下は追・再試験含む)は、昨年度より 51, 207 人減少
した。本年度は「日本史B」と公民科の受験者数が 74, 480 人で最も多く、次いで「世界史B」と
公民科の受験者数が 42, 025 人、「地理B」と公民科の受験者数は昨年度より 36, 013 人減少し、
33, 516 人(全体の 20. 9%)となった。公民科との2科目受験者数は「世界史B」に抜かれ、昨年度
までとは異なる傾向となった。
「地理B」と科目別に見た2科目受験の組合せで最も多かったのは、例年と同様に「地理B」と
「現代社会」 の 25, 839 人であった。「地理B」を含む2科目受験者の 68. 9%が2科目目に 「現代社
会」 を選択したことになる。この組合せは昨年度も最も多かったが、受験者数は 32, 910 人減少し
ている。これらのことは、本年度から地理歴史科内で2科目受験が可能になったこと、地理歴史科
と公民科から第1解答科目を指定することになったことが要因と考えられる。
また、前述の通り、本年度は地理歴史科と公民科から第1解答科目を指定することになった。
「地理B」は第1解答科目としての受験者数が 86, 573 人となっており、実受験者数に対する割合は
31. 1%で、地理歴史科・公民科の中で最大であった。「地理B」全体の受験者の 65. 3%が第1解答
科目としており、「世界史B」の 40. 1%、「日本史B」の 46. 6%より高い割合であった。
平均点について、今年度の本試験「地理B」は 62. 16 点であった。昨年度と比べて 4. 24 点の下降
である。この結果、今年度の「世界史B」
(平均 60. 93 点)、「日本史B」
(同 67. 92 点)との差はそれ
ぞれ 1. 23 点、5. 76 点である。昨年度と比較すると「世界史B」ではその差は 4. 94 点から 1. 23 点へ
と縮小し、「日本史B」では 2. 29 点から 5. 76 点へと拡大した。「日本史B」の平均点が 3. 81 点上昇
したため、地理歴史科内の平均点の差異が 6. 99 点と拡大した。なお、公民3科目の平均点差も最
大 16. 91 点(「倫理」の 69. 01 点と「現代社会」の 52. 10 点)であり、昨年度(10. 45 点)に比べ 6. 46
点拡大した。今後とも公民科の各科目を含めて、平均点の差異による受験者間の有利不利が生じな
いよう、作問についての配慮をお願いしたい。
試験問題の評価については、昨年度に難易度と得点のちらばりを加え、次の7視点から行った。
⑴ 高等学校学習指導要領の目標・内容に合致し、教科書及び学習活動の実態を踏まえた内容に
なっているか。
⑵ 地図や図表・統計資料等を分析・考察し、処理する能力を測定する内容になっているか。
⑶ 特定の分野に偏らず、総合的に「地理的な見方や考え方」を問う内容になっているか。
⑷ 問題の分量や程度などに配慮しているか。
⑸ 問題文の表現や形式、配点などに配慮しているか。
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地理A、地理B
⑹ 問題の難易度や得点のちらばりなどが適正となるように配慮されているか。
⑺ 過去の問題に対する意見・評価などを考慮して出題されているか。
2 試験問題の内容・範囲等
本年度の問題も、全般的に現行の高等学校学習指導要領の目標と内容に沿った出題であった。出
題範囲も、昨年度とほぼ同様に、項目的には自然環境、資源と産業、生活文化と都市、地誌、現代
世界の諸課題及び地域調査の6分野から、また地域的には日本を含めた世界から、バランス良く出
題されていた。いずれも基本的な知識や理解を問う内容を中心に、図表や地図、画像(写真)、統
計資料の読み取りなど「地理的な見方や考え方」及び「地理的技能」を問う内容が適宜組み込まれ
ていた。このように、知識のみではなく地理情報の分析や思考、判断の能力を試す出題が定着して
いる。なお、本年度は昨年度以上に、衣食住の文化や宗教、世界文化遺産、地名、人種・民族など
日常生活に密着し、歴史的背景を考慮して思考させる設問も多く、結果的には平成 21 年告示の高
等学校学習指導要領の教育内容改善事項等に配慮した形となった。
出題分野は、次のとおりである。大問数は6題と現行の高等学校学習指導要領による平成 18 年
度の試験以降増減はない。また、小問数は昨年度と同様の全体で 35 題であり、「地理A」との共通
問題は「地域調査」のみの小問6題となり、昨年度より小問2題減少している。
⑴ 出 題 分 野
第1問 世界の自然環境と自然災害
第2問 世界の農牧業
第3問 都市と村落、生活文化
第4問 北アメリカ
第5問 現代世界の諸課題
第6問 静岡県大井川流域の地域調査
⑵ 内 容
第1問 世界の自然環境と自然災害に関する大問である。大地形、都市の気候区分、小地形、土
壌に加えて自然災害に関する設問が2題、出題されたことが特徴的である。一部には、細かな
知識が求められる設問もあったが、全体としては標準的なレベルであった。
問1 4つの地域・海域を説明した文に関する正誤問題である。プレートの境界に関する基本
的な知識があれば、容易に解答できる。
問2 ケープタウン、札幌、チュニス、レイキャビクにおける月平均気温と月降水量を示した
ハイサーグラフに関する選択問題である。ハイサーグラフの判別と、ケッペンの気候区分の
分布についての基本的な知識や理解があれば、容易に解答できる。
問3 写真に示された標高 3000 mを超える地点にある世界最大の塩原の位置に関する選択問
題である。塩原の存在を知らない受験者にとっては、戸惑ったであろう。しかし、問題文に
示された標高の高さや乾燥気候であることから判断して解答できる設問であった。
問4 4地点に共通する成帯土壌の特徴を説明した文に関する正誤問題である。成帯土壌に関
する基本的な知識があれば、容易に解答できる。ただし、地図上でヨーロッパ地域が分断さ
れているため、指定された地点の位置が捉えにくかった。今後は作図において配慮をお願い
―97―
したい。
問5 世界各地で発生した天候異変について述べた文に関する正誤判定の組合せ問題である。
エルニーニョ現象による天候異変の例として、アメリカ合衆国西部の多雨が教科書で取り扱
われることが少なく、戸惑ったであろう。
問6 日本列島とその周辺部を撮影した気象衛星画像と、発生が懸念される自然災害に関する
組合せ問題である。日本の気候の特色に関する基本的な知識があれば、容易に解答できる。
第2問 世界の農牧業に関する大問である。使用された図表にミスがあり、事前に訂正のプリン
トが配付された。解答には影響するものではなかったが、十分な校正をお願いしたい。農牧業
と自然環境との関係及びその文化的・社会的条件に視点を当てた設問であった。標準的な出題
内容であり、受験者には取り組みやすかったであろう。
問1 四つの農産物について北半球におけるおおまかな栽培可能な緯度帯を示した図に関する
選択問題である。緯度帯という一つの指標で判断しなければならず、戸惑ったであろう。た
だし、それぞれの農産物の栽培条件についての基本的な知識があれば、解答できる。
問2 四つの地域で見られる主要な農牧業について説明した文に関する正誤問題である。各地
域の自然環境の特徴とそこで営まれる農牧業の形態についての基本的な知識があれば、容易
に解答できる。
問3 世界の灌漑農業について述べた文の下線部に関する正誤問題である。四つの地域の灌漑
農業に関する基本的な知識があれば、容易に解答できる。
問4 牛肉生産量、牛肉輸入量、豚肉生産量、豚肉輸入量について、上位 10 か国とそれらが
世界に占める割合を示した図に関する選択問題である。豚肉生産国についての基本的な知識
があれば、容易に解答できる。
問5 小麦の生産量上位8か国について、農業従事者1人当たり農地面積と1 ha 当たり小麦
収量を示した図中の北アメリカ、西ヨーロッパ、南アジアの三つの地域に関する組合せ問題
である。三つの地域の経営規模や生産性についての基本的な知識や理解があれば、容易に解
答できる。
問6 遺伝子組換え作物を商業用に栽培している国とその作付面積の推移を示した図から、読
み取れる事柄とその背景について述べた文章の下線部に関する正誤問題である。与えられた
図を正確に読み取り、遺伝子組み換え作物についての基本的な知識があれば、容易に解答で
きる。
第3問 都市と村落、生活文化に関する大問である。昨年度と同様に設問がA、Bに分割されて
おり、Aは都市と村落の分野から3題、Bは生活文化の分野から3題が出題された。一部、細
かな知識が必要な設問が見られたが、全体的には受験者にとって取り組みやすかったであろ
う。
問1 イタリア、オーストラリア、トルコ、メキシコについて、人口規模の上位4都市におけ
る人口を示した表に関する選択問題である。首都が首位都市であるか否かや、それぞれの国
の都市の人口規模についての基本的な知識があれば、解答できるはずの設問であった。しか
しながら、トルコの都市についての認識度が低く、戸惑ったようである。
問2 シカゴ、パリ、モスクワの中心部から郊外にかけての都市景観を模式的に示した図に関
―98―
地理A、地理B
する組合せ問題である。都市景観についての基本的な理解があれば、容易に解答できる。
問3 東京の郊外地域に位置する埼玉県新座市野火止地区における 1935 年、1976 年、2010 年
の土地利用を示した図から、読み取れる事柄とその背景について述べた文に関する正誤問題
である。新田集落の特色や都市化についての知識と理解があれば、容易に解答できる。
問4 ヨーロッパにおける宗教の分布図から、異なる三つの範囲を切り取って示した図に関す
る組合せ問題である。昨年も同様の出題が見られたが、部分から全体を推測する力を試す良
問であり、カトリックやイスラム教の分布に基本的な知識や理解があれば、容易に解答でき
る。
問5 ウズベキスタン、スウェーデン、スリランカ、フィリピンのいずれかの国に存在する世
界文化遺産について述べた文に関する選択問題である。世界文化遺産をテーマに扱われてい
るが、各国の宗教、歴史、産業についての基本的な知識があれば、容易に解答できる。
問6 イタリア、イラン、インド、カナダについて、アメリカ合衆国を発祥とする世界最大の
ハンバーガー・ チェーン店の進出状況を述べた文に関する選択問題である。インドの宗教に
関する特色についての理解があれば、容易に解答できる。
第4問 北アメリカに関する大問である。北アメリカ地誌は平成 21 年度のカナダ地誌以来の出
題となった。今回は生活文化や歴史的な内容に関する比率がやや高く、さらに、地図や資料の
読み取り問題も教科書レベルを超えた細かな知識が求められ、難易度の高い出題であり、受験
者は戸惑ったであろう。
問1 四つの地域で典型的に見られた自然環境と文化の特徴について述べた文に関する選択問
題である。生活様式の違いに影響を与えている北アメリカの自然環境についての基本的な知
識があれば、解答できる。
問2 スペイン語、フランス語、ロシア語にちなんだ主な地名の分布を示した図に関する組合
せ問題である。北アメリカにおけるヨーロッパ人の移住に関する歴史についての基本的な知
識があれば、容易に解答できる。
問3 アジア系、アフリカ系、ヨーロッパ系、ヒスパニックについて、アメリカ合衆国の社会
経済的地位の現状を示した表に関する選択問題である。アジア系の移民が高学歴であること
や製造業及び農林水産業従事者の人種 ・ 民族構成についての細かな知識が必要であり、教科
書レベルを超えた難問である。与えられた表に示された数値が割合であり、その差もかなら
ずしも明瞭とは言えず、人種・民族の構成を判断させる指標として受験者にとって難解で
あった。
問4 アメリカ合衆国とその近隣諸国および日本における、1人1日当たりの食糧供給栄養量
(熱量)に関する選択問題である。大豆油に関しては教科書で取り扱われることは少ないが、
他の作物に関して基本的な理解があれば、解答できる。
問5 アメリカ合衆国(アラスカ州とハワイ州を除く)の各州における、金融・保険業の総生
産額を示した図から読み取れる事柄とその背景について述べた文の下線部に関する正誤問題
である。時間を要する設問ではあるが、図の読み取りができれば、解答できる。
問6 アメリカ合衆国における 1987 年と 2009 年の相手国別輸入額について、上位8か国を示
した表に関する選択問題である。メキシコが NAFTA の一員であることや近年の輸入相手
―99―
国の変化を理解しておくことが必要であり、戸惑ったであろう。
第5問 現代世界の諸課題に関する大問である。世界の人口動態、食料問題の解決をめざした緑
の革命、穀物生産状況、資源・エネルギー問題などについて、多面的、多角的に問う出題で
あった。かなり細かな知識を必要とし、資料を正確に分析する力も求められ、難易度の高い設
問が多かった。
問1 世界の国 ・ 地域別の出生率、死亡率、人口の自然増加率を示した図から読み取れること
がらやその背景について述べた文に関する正誤問題である。資料を読み取る問題で時間を要
したと思われるが、一人っ子政策の実施国の知識があれば、容易に解答できる。
問2 「緑の革命」について述べた文章中の下線部に関する正誤問題である。「緑の革命」につ
いての細かな知識や理解が必要であり、戸惑ったであろう。「化石燃料への依存」、「自給的
農業を営む地域」、「かたよって普及した」という表現をどのように捉えるのかが受験者に
とって分かりにくかったと思われる。
問3 アフリカ、東南アジア、南アメリカについて、穀物耕作面積、穀物生産量、穀物の単位
面積当たり収量を 1965 年から 2005 年の増減で示した表に関する組合せ問題である。1965 年
を 100 とした指数で示された数値を読み解くためには、地域別の穀物生産の推移に関する細
かな知識と理解が必要であり、受験者にとって難問であったであろう。
問4 四つの地域 ・ 海域で発生した資源 ・ エネルギーをめぐる問題について述べた文に関する
正誤問題である。南沙諸島をめぐる紛争国・地域について細かな知識が必要であり、教科書
レベルを超えた難問である。また、湾岸戦争は受験者の世代にとって、最早なじみのある時
事問題ではないことにも配慮していただきたい。
問5 カナダ、スペイン、ニュージーランド、フィンランドについて、再生可能エネルギーの
内訳と一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を示した図に関する選択問題
である。スペインの再生可能エネルギーについての基本的な知識があれば、容易に解答でき
る。
第6問 静岡県大井川流域の自然環境と人々の生活に関わる地域調査に関する大問である。この
出題分野は昨年度と同様に「地理A」との共通問題である。地勢図や地形図、写真、統計資料
など多様な資料を用い、それらを読み取る能力や、複合的に分析し、考察する能力が試され
た。大井川鉄道や歴史的なことがらを関連させながらの設問で工夫が見られた。ただし、地形
図の読図に関する設問が3題あり、第5問までも解答に時間を要する設問が多かったので、時
間に追われながら解答しなければならない受験者が多かったと思われる。
問1 島田、地名、奥泉の3つの地点における、大井川の特徴的な景観の写真に関する組合せ
問題である。地勢図(衛星画像)と景観写真から大井川流域の地形の基本的な特徴がつかめ
れば、容易に解答できる。
問2 千頭駅周辺の5万分の1地形図から読み取れる事柄を述べた文に関する正誤問題であ
る。地図記号に関する基本的な知識があれば、解答できる。
問3 倉平と牧ノ原地域の農業について述べた文とそのいずれかの地域の特徴的な茶畑を撮影
した写真に関する組合せ問題である。地形の特徴をつかめれば解答できるが、茶栽培の歴史
的な背景に関する知識も求められ、戸惑ったであろう。
―100―
地理A、地理B
問4 1895 年と 1997 年の5万分の1の地形図の比較から読み取れる事柄を述べた文に関する
正誤問題である。細かな地形や土地利用の変化を読み取るため時間を要し、戸惑ったであろ
う。
問5 川根本町、島田市、吉田町の三つの市町における産業別従業者割合を示した表に関する
組合せ問題である。それぞれの市町の地理的な位置や規模から産業の構成が理解できれば、
容易に解答できる。
3 要 約
⑴ 問題の程度
本年度も、基礎的・基本的な教科書レベルの問題から地理的知識を基にした考察力や思考力を
必要とする問題まで、幅広く出題されている。地形図、画像(写真)、表、グラフなど様々な資
料を分析し考察する能力を問う問題や、その地域の歴史的背景を踏まえて地域性を考察する問
題、時事的な知識を基に資料を読み取る力を試す問題など、「世界史」や「現代社会」の分野と
も関わる出題が見られ、より総合力を問われる内容だったと言える。ただし、文章の正誤判断や
図表の読み取りは細かな知識や理解を必要とするものが増え、解答を導くために必要な時間も長
くなり、昨年度よりも難易度が増した。教科書レベルを超えた現代世界の情報から考察する難問
も複数見られ、受験者にとっては高得点を取りにくい問題であった。
また、今回の出題では問題訂正のプリントが最初に配付された。実際には、幾つかの島が図か
ら落ちていたが、訂正箇所を指示する記述がなかった。どこに訂正があるのかという情報を的確
に受験者に知らせる必要があったと考える。受験者に余計な手間を掛けさせてしまい、問題を解
く時間を短縮させてしまったことは、今後十分配慮をお願いしたい。
今後の高等学校の授業においては基本的な地理的知識の習得を行いながら、「地理的な見方や
考え方」及び「地理的技能」を身に付けることが重要である。さらに、リード文など与えられた
条件を把握する力や「世界史」、「現代社会」をはじめ他の教科・科目と関連付けて様々な角度か
ら対象地域を理解しようとする取組が求められる。
⑵ 設問数・配点・形式等
設問数は大問数6題であった。第1問から第4問と第6問は六つ、第5問は五つの小問で構成
されており、全解答数は昨年度と同じ 35 題であった。
配点は、第1問、第6問で3点が四つと2点が二つの 16 点満点、第2問、第4問は全て3点
で 18 点満点、第5問も全て3点で 15 点満点、第3問は3点が五つと2点が一つの 17 点満点で
あった。
設問形式と出題形式は、右の表のとおりである。文章の正誤問題が倍増し、組合せ問題が減少
した。6択の組合せ問題が昨年度の 16 題から8題へ半減、4択の組合せ問題が昨年度の1題か
ら3題へ増加した。文章の正誤では、受験者世代になじみの薄い現代史や教科書レベルを超えた
ものがあった。また6択の問題が半減したことにより、小問で使用される文章や資料が三つから
四つに増えたため、読み取りや考察に時間を取られたと考えられる。選択問題や正誤問題も細か
な知識を問う設問が増え、難易度が上がった。
出題形式としては地図、図表、画像(写真)を用いて判断する問題が 35 題中 30 題と多数出題
―101―
され、昨年度と同様の傾向であり、多角
設問形式による分類
的に地理的知識や思考力を問う出題意図
が読み取れる。特に本年度は地図と図表
と画像(写真)の三つを用いて地理的な
技能を問う設問も見られた。より多くの
12
6
選 択
12
11
組合せ
11
18
平成 24 年
文章のみ
見られ、それに伴い解答を導くために時
平成 23 年
文章の正誤
出題形式による分類
資料から判断する問題が増加する傾向が
平成 24 年
平成 23 年
5
6
地図使用
8
15
統計図表については、順位を覚えている
図表使用
9
9
画像使用
1
0
地図と図表
8
3
地図と画像
3
1
図表と画像
0
1
1
0
だけでは解答できず、長期的な傾向や歴
史的背景との関わり、現代世界の動向を
踏まえて解答するものもあり、工夫され
地理的技能
間を要する設問が多かったと考えられる。
たものであった。
地図と図表と画像
⑶ お わ り に
例年、この「高等学校教科担当教員の
意見・評価」が問題作成によく反映され
※ 衛星画像を地図(地勢図)と判断した。
また、画像には写真を含む。
ていることは大変有り難く、引き続き御配慮をお願いしたい。今年度の本試験は、問題評価の7
視点から見て、多くの項目において目標を達成し得たものと判断できる。全体としては「地理的
なものの見方や考え方」を問う設問や作図の工夫がなされていた。
ただし、昨年に比べて問題の難易度がかなり上がり、受験者にとっては厳しい問題であった。
例年、地理は他の地理歴史科・公民科の科目に比べて高得点を取りにくい特性がある。今回のよ
うに平均点が昨年に比べて大きく下がると、更に高得点者層が減少する。地理歴史科全体で高得
点者層の割合を比較すると、「地理B」が極端に低い。前文で述べたとおり、「地理B」受験者数
は増加傾向にあり、第1解答科目の割合も高いことから、問題の難易度については十分な配慮を
お願いしたい。
「地理B」の学習は「地理的な見方や考え方」及び「地理的技能」の習得を目指しており、セ
ンター試験が高等学校における学習成果を測る物差しである以上、その力を問う出題でなければ
ならない。このような考え方に立って、様々に創意工夫を凝らして考察力・分析力を問う作問に
より、今後とも受験者の地道な努力が報われるような出題をお願いしたい。
―102―