真穴中学校「校長室だより」No.6 チーム真穴 ~雨の日には雨の中を 平成 28 年7月1日発行 風の日には風の中を~ 先週からの大雤による地滑り災害で、避難指示が出されていた真網代地区の皆さ んは、慣れない避難場所での生活で、疲労度がピークに達しておられるのではない かと心配いたしております。昨夕、避難指示が解除となり本当によかったと思いま すが、今後も十分気象情報には気を付けられ、安全な生活をしていただけたらと思 います。学校としましては、これからも子どもたちの生活が落ち着いた状態で、元 気に学習ができるように、学校での声かけや確認をいつも以上に行っていきたいと 考えています。お家の方で何か困っておられることや学校でできることがありまし たら、遠慮なくお申し付けいただければと思います。一日も早く梅雤が終わり、市 による対策がなされることを教職員一同祈りたいと思います。 先生、ちょっと待っていてください 「校長先生、ちょっと待ってやんなはい。おりますけん。」 29 日に発令された避難指示で、結局7名の中学生が親戚や 避難施設で一夜を過ごしました。その内の一人、松浦さんが 日土のおじいちゃんの家に泊まっていることは、前日から知 っていました。おじいちゃんのお家は、私の通勤途中にあり ます。 「どうかなあ、いるかなあ。今朝は学校まで大丈夫だろ うか。」と思いながら車を走らせていました。おじいちゃんの 家が近づいてきたとき、偶然ですが、お家の玄関から少し離れたところにおじいち ゃんが立っておられるのが見えました。 「おはようございます。亜優さんは学校大丈夫ですか。なんだったら・・・。」 そう言いかけた時、おじいちゃんは私に上の言葉をかけて、玄関に向けて走って 行かれたのです。 「お~い、亜優~。校長先生ぞ~。」玄関の前まで車を走らせると、 もう登校の準備ができた亜優さんがそこに立っていました。 「大丈夫?お母さん行け るかな?」 「はい、大丈夫です!」と満面の笑み。そうしている内に、奥からお母さ んの姿も。玄関には三人の姿がありました。 私を見かけて亜優さんを呼びに玄関まで走って行かれたおじいちゃん、笑顔であ いさつをしてくれた亜優さんとお母さん。朝から何かほんわかとする光景に出会え て、気持ちが温かくなりました。ありがとうございました。 そんな光景を見ながら、ふと思い出したことがありました。二十数年前、私が愛 宕中学校に勤務していた頃、生徒会を担当していた私は、夜遅くなった生徒会役員 の数名を車で送り届けることが時々ありました。ある日、向灘の勘定地区のさらに 奥にある通称殿勘定(とのかんじょう)と呼ばれる地区から来ていた男子生徒を送 ったことがあります。近くの生徒から順に降ろしていって、最後は一番遠い彼一人 となりました。彼の家は、車が通る道からさらに奥に歩いて入らなければならない ところにありました。彼は、車を降りるとき私にこう言いました。 「先生、ちょっと 待っていてください。」そう言いながら、暗闇の奥へ走って行ってしまったのです。 「いいよ。」と返事はしたものの、彼がなぜ待ってほしいと告げたのか、その時私は 分かりませんでした。3分ほど待ったでしょうか。暗闇の 奥から走って近づいてくる二人の人影が見えました。そこ には、なんと彼と彼のお母さんの姿があったのです。息を 切らせながら、 「先生、わざわざこんな遠くまで送ってくだ さってありがとうございました。本当に助かりました。」お 礼を言われるお母さんの横でペコンと頭を下げる彼の姿も ありました。 その日、お母さんをわざわざ家まで呼びに行ってくれた彼と走ってお礼を言いに 出てきてくださったお母さんの姿に触れ、学校へ戻った私の中になんとも言えない 気持ちがこみ上げてきたことを覚えています。今、あらためて自分の教員生活を振 り返ってみたとき、私自身の教育観や生き方が少しずつ変わってきたのは、ちょう どこの頃からだったように思います。 人の温もり、家族のつながり、寄り添う思い、感謝の念、そして、それぞれの愛 の形。そんな人が織りなす一つ一つの姿が、私自身を少しずつですが「人間」にし てくれているのだと思います。 自然な人のしぐさの中にある人間愛や家族愛。そんな愛に触れたとき、人は人と して優しく大きくなれるのかもしれません。 矢野君の提案 中江さんの再提案 真穴中の生徒会では、朝のあいさつ活動を積極的に行って います。ハイタッチと元気なあいさつ。子どもたちは、その 日一番さわやかで気持ちのよいあいさつができた人を、反省 会で決めます。昨日もその反省会が行われていました。昨日の班長は、3年生の矢 野君でした。みんな悩んでいると、矢野君が「○○君と○○君がよかったような気 がしますが、それでいいですか。」と尋ねました。こういう場面はよく見る光景で、 「いいです。」と周りの者が返事をして決まるというパターンが多いように思います。 ところが、昨日は2年生の中江さんが矢野君の提案後すぐに手を挙げました。 「私は、 ○○さんのあいさつの方が、大きくすばらしかったと思います。」その言葉に、周り の3名が「ああ~」と思い出したように首を縦に振りました。矢野君の班長として のクリアな提案。そして、それに対して正直に自分の気持ちを示した中江さんの再 提案。周囲のうなずき。 ちょっとした朝の活動なのですが、単にあいさつをして終わるという活動ではな く、 「対話的な」活動として成り立っています。物事が、ある一人の「鶴の一声」で 決まってしまう。それでいいときもありますが、やはり互いの意見を尊重し合う「対 話的」活動が、教育活動の場では大切だと思います。 ほのぼのおばあちゃんの巻 毎週日曜日に来る息子さんの面会を楽しみにしているおばあちゃん。 「息子とはそう話すことはないけど、顔を見るだけでいいんよ。」と、しんみり。
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