学術教養特集2 淑宏 平成15年5月号~平成15年12月号掲載 H15年9月号(2-5)データなし きんべこB.J.I ※ 間橋 学術教養特集2 間 橋 淑 宏 今回より8回シリ-ズで身体のバランスについて掲載いたします。簡単に言うと身体の歪みに ついて解剖学的見地から筋のバランス(特に腰部を中心に)をひもといていきます。 1,アライメントの形成と筋 アライメントは、姿勢を制御する抗重力筋や、普段の姿勢や癖などに代表される筋の働く傾 向によって、腹筋群と背筋群のような拮抗筋同士が相反性支配によって、お互い影響を与え合 うことによって形成される。特に、股関節や脊柱は筋の柔軟性から影響を受けやすいと言われ ている。例えば、股関節の腸腰筋はオ-バ-ユ-スでも廃用性でも萎縮すれば屈曲位となり、 拮抗筋である大臀筋が弛緩傾向になることで骨盤の前傾を助長する。 * アライメントとは個人の持っている身体の形態的特徴を示す言葉で、身体の支柱となる 骨格を形成している骨・関節の配列、形いった骨の形態のことを指す。 例 0脚、X脚、扁平足、外反母趾、脊柱側彎、外反肘、円背、骨盤の左右傾斜など。 2,チェック法 1.上からの水平面上のチェック:回旋方向での崩れをチェックする。 ・左右の耳孔、肩峰、腸骨棘、大転子を結ぶ線が平行かどうか 2.背面からのチェック:左右の崩れをチェックする。 ・頭部と頸椎の線と正中線の一致 ・耳孔の左右の高さ ・肩峰の高さ ・肩甲骨の高さ ・脊柱の鉛直性(側彎の有無) ・腕と胴の隙間 3.側彎症のチェックポイント ・肋骨の隆起 ・肩甲骨の隆起 ・肩の高さ非対称 ・腰部三角の非対称 (傾斜=中臀筋、内転筋群のバランス) 4.側方からのチェック:前後の崩れ ・耳孔と肩峰を結ぶ線 (頸椎のアライメント) ・肩峰と腰椎、大転子を結ぶ線 (胸椎と腰椎のアライメント) ・腸骨棘と恥骨を結ぶ線 (骨盤の前傾度) ・腰椎、股関節、膝関節、足関節までを結ぶ線 5.足関節のアライメント(内・外反性、足ア-チ) 6.膝関節のアライメント(Qアングル、内・外反性、内・外旋性) 7.骨盤のアライメント(左右の高さ、回旋の状態)など 参考文献 表-1 Training Journal 1999 No214、 2001 No263 日本リハビリテ-ション医学会と日本整形外科学会による関節可動域表示ならびに測定法(体幹測定) 部位名 運動方向 可動域 角度 屈曲(前屈) 60 基 本 軸 移 動 軸 測定肢位および注意点 肩峰を通る床へ 外耳孔と頭頂を 頭部体幹の側面で行う。 の垂直線 結ぶ線 原則として腰かけ坐位と する。 伸展(後屈) 50 左 頚 部 回旋 回 60 両側の肩峰を結 鼻梁と後頭結節 腰かけ坐位で行う。 旋 ぶ線への垂直線 を結ぶ線 右 回 60 旋 左 側屈 側 50 第7頸椎棘突起 頭頂と第7頸椎 体幹の側面で行う。 屈 と第1仙椎の棘 棘突起を結ぶ線 腰かけ坐位で行う。 右 突起を結ぶ線 側 50 屈 屈曲(前屈) 45 仙骨後面 第1胸椎棘突起 体幹側面より行う。 と第5腰椎棘突 立位、腰かけ坐位または 起を結ぶ線 側臥位で行う。 股関節の運動が入らない 伸展(後屈) ように行う。 30 左 胸腰部 回 旋 回 40 両側の上後腸骨 両側の肩峰を結 旋 棘を結ぶ線 ぶ線 坐位で骨盤を固定して 行う。 右 回 40 旋 左 側 屈 側 50 ヤコビ-線の中 第1胸椎棘突起 体幹の側面で行う。 屈 点にたてた垂線 と第5腰椎棘突 腰かけ坐位または立位で 右 側 50 屈 起を結ぶ線 行う。 学術教養特集2 間 橋 淑 宏 1,骨盤傾斜による影響 重心が偏ることで、立位等の荷重時に偏った筋の動員と過緊張が起こり、拘縮につな がることが多い。また、骨盤傾斜(左高位・右低位)によって、右脊柱起立筋の萎縮・ 硬化・過緊張・右外腹斜筋・左内腹斜筋の亢進が生じ脊柱が左斜めに斜傾してしまう。 このために、重心が左に傾くことになり、さらに骨盤の傾斜へといった悪循環となり、 筋バランスが崩れていく。 2,体幹のアライメント 1)骨盤に対する胸郭の位置関係での評価 体幹のアライメントは骨盤の安定性に大きく影響を受け、重心の位置に直接影響を及 ぼす。骨盤帯の水平性が保たれている場合、仙骨上に、脊柱が鉛直に配列されているの が理想的なアライメントとなる。 体幹の筋群のバランスは骨盤の安定性に大きな影響を受ける。例えば、立位での骨盤 が傾く(左高位/右低位)と、そのままでは脊柱が傾き頭部が仙骨上からズレてしまう ので、脊柱を左に側彎させ体幹と頭部を左に移して安定させようとする。このとき右外 腹斜筋、左内腹斜筋や右脊柱起立筋が動員され、長時間この状態が続くことで緊張が高 まって筋バランスが崩れ、骨盤が水平になっても脊柱が傾きアライメントが崩れたまま の状態になってしまう。このように体幹が左に傾いたままになると左足側に体重が多く かかってくることで重心の位置が崩れてくる。この荷重状態は運動性にも直接影響し、 結局は左脚の筋や関節への負担が増加してしまう。さらにこの状態が続くことで左右の 下肢バランスが崩れ、骨盤の傾斜を助長するという悪循環に陥りやすくなる。また、骨 盤から上の体幹の前傾・後傾は、腹筋群と背筋群の相対的な姿勢制御能力から影響を受 ける。背筋群に比べて腹筋群の方が弱くなると前傾しやすく、逆に背筋群の方が弱くな ると後傾しやすくなる。 しかし、体幹の筋バランスは骨盤が水平であっても崩れることがある。椅子に座って 字を書くときの傾いた姿勢や、重い物を持って歩くときに体幹を傾いた姿勢などを長時 間続けることでも崩れる。姿勢を保持しアイソメトリックス収縮のオ-バ-ユ-スを強 いられる側の筋群は硬化し、使われない側は筋力が低下しやすくなり、この状態が残る ことで前述の悪循環により陥りやすくなる。 3,大臀筋と中臀筋の相対的動員性 *相対的動員性:同じ股関節での大臀筋と中臀筋と左右それぞれの大臀筋・中臀筋を 比較した動員性。左右を比較した動員性の高い側を「優性」、低い側を「劣性」として 相対的動員性を表現する。 次 回 、大 臀 筋 と 中 臀 筋 の 相 対 的 動 員 性 に つ い て 、骨 盤 と 股 関 節 の ア ラ イ メ ン ト を 中 心 に 特集を組みます。 参考文献 Training Journal 2001 No,264 学術教養特集2 間 橋 淑 宏 1,骨盤傾斜による影響 重 心 が 偏 る こ と で 、立 位 等 の 荷 重 時 に 偏 っ た 筋 の 動 員 と 過 緊 張 が 起 こ り 、拘 縮 に つ な が る ことが多い。また、骨盤傾斜(左高位・右低位)によって、右脊柱起立筋の萎縮・硬化・過 緊張・右外腹斜筋・左内腹斜筋の亢進が生じ脊柱が左斜めに斜傾してしまう。このために、 重 心 が 左 に 傾 く こ と に な り 、さ ら に 骨 盤 の 傾 斜 へ と い っ た 悪 循 環 と な り 、筋 バ ラ ン ス が 崩 れ ていく。 2,体幹のアライメント 1)骨盤に対する胸郭の位置関係での評価 体 幹 の ア ラ イ メ ン ト は 骨 盤 の 安 定 性 に 大 き く 影 響 を 受 け 、重 心 の 位 置 に 直 接 影 響 を 及 ぼ す 。 骨 盤 帯 の 水 平 性 が 保 た れ て い る 場 合 、仙 骨 上 に 、脊 柱 が 鉛 直 に 配 列 さ れ て い る の が 理 想 的 な アライメントとなる。 体 幹 の 筋 群 の バ ラ ン ス は 骨 盤 の 安 定 性 に 大 き な 影 響 を 受 け る 。例 え ば 、立 位 で の 骨 盤 が 傾 く( 左 高 位 / 右 低 位 ) と 、そ の ま ま で は 脊 柱 が 傾 き 頭 部 が 仙 骨 上 か ら ズ レ て し ま う の で 、 脊 柱 を 左 に 側 彎 さ せ 体 幹 と 頭 部 を 左 に 移 し て 安 定 さ せ よ う と す る 。こ の と き 右 外 腹 斜 筋 、左 内 腹 斜 筋 や 右 脊 柱 起 立 筋 が 動 員 さ れ 、長 時 間 こ の 状 態 が 続 く こ と で 緊 張 が 高 ま っ て 筋 バ ラ ン ス が 崩 れ 、骨 盤 が 水 平 に な っ て も 脊 柱 が 傾 き ア ラ イ メ ン ト が 崩 れ た ま ま の 状 態 に な っ て し ま う 。 このように体幹が左に傾いたままになると左足側に体重が多くかかってくることで重心の 位 置 が 崩 れ て く る 。こ の 荷 重 状 態 は 運 動 性 に も 直 接 影 響 し 、結 局 は 左 脚 の 筋 や 関 節 へ の 負 担 が 増 加 し て し ま う 。さ ら に こ の 状 態 が 続 く こ と で 左 右 の 下 肢 バ ラ ン ス が 崩 れ 、骨 盤 の 傾 斜 を 助 長 す る と い う 悪 循 環 に 陥 り や す く な る 。ま た 、骨 盤 か ら 上 の 体 幹 の 前 傾 ・ 後 傾 は 、腹 筋 群 と 背 筋 群 の 相 対 的 な 姿 勢 制 御 能 力 か ら 影 響 を 受 け る 。背 筋 群 に 比 べ て 腹 筋 群 の 弱 く な る と 前 傾しやすく、逆に背筋群の方が弱くなると後傾しやすくなる。 し か し 、体 幹 の 筋 バ ラ ン ス は 骨 盤 が 水 平 で あ っ て も 崩 れ る こ と が あ る 。椅 子 に 座 っ て 字 を 書 く と き の 傾 い た 姿 勢 や 、重 い 物 を 持 っ て 歩 く と き に 体 幹 を 傾 い た 姿 勢 な ど を 長 時 間 続 け る こ と で も 崩 れ る 。姿 勢 を 保 持 し ア イ ソ メ ト リ ッ ク ス 収 縮 の オ - バ - ユ - ス を 強 い ら れ る 側 の 筋 群 は 硬 化 し 、使 わ れ な い 側 は 筋 力 が 低 下 し や す く な り 、こ の 状 態 が 残 る こ と で 前 述 の 悪 循 環により陥りやすくなる。 3,大臀筋と中臀筋の相対的動員性 * 相 対 的 動 員 性 :同 じ 股 関 節 で の 大 臀 筋 と 中 臀 筋 と 左 右 そ れ ぞ れ の 大 臀 筋・中 臀 筋 を 比 較 した動員性。左右を比較した動員性の高い側を「優性」、低い側を「劣性」として相対的動 員性を表現する。 次 回 、大 臀 筋 と 中 臀 筋 の 相 対 的 動 員 性 に つ い て 、骨 盤 と 股 関 節 の ア ラ イ メ ン ト を 中 心 に 特 集 を組みます。 参考文献 T r a in i n g J o u rn a l 2001 No,264 学術教養特集2 学術部 間 橋 淑 宏 1,骨盤と股関節の動きの6つのパタ-ン 1)骨盤傾斜-左高、右低→左大臀筋と右中臀筋が優性 2)骨盤傾斜-左低、右高→左中臀筋と右大臀筋が優性 3)両股関節が屈曲内旋位→左右中臀筋が優性。より内旋位側の大臀筋が劣 性となりやすい。 4)両股関節が外旋位→左右大臀筋が優性より外旋位側の中臀筋が劣性となりやすい。 5)右股関節が不安定→右大臀筋と右中臀筋が劣性 6)左股関節が不安定→左大臀筋と左中臀筋が劣性 2,骨盤の左側が前に回旋する場合 左股関節外旋(左外旋筋群優位) 右股関節内旋(右内旋筋群優位) 3,骨盤の右側が前に回旋する場合 左股関節内旋(左内旋筋群優位) 右股関節外旋(右外旋筋群優位) 表-2 内 、外旋位と大 臀筋、中 臀筋の動員性 右 左 特 徴 右利きパタ-ン 内旋位/中臀筋優位 外旋位/大臀筋優位 右利きに多い 左利きパタ-ン 外旋位/大臀筋優位 内旋位/中臀筋優位 左利きに多い 内旋パタ-ン 内旋位/中臀筋優位 内旋位/中臀筋優位 外反足、X脚となりやすい 外旋パタ-ン 外旋位/大臀筋優位 外旋位/大臀筋優位 内反足、0脚となりやすい 4,骨盤前傾の場合 座っている時間が多 いと、股関節の屈曲位 が続き腸腰筋は短縮し 、大臀筋は伸張して弛 緩し やすい状態となる。立位や歩行時にも骨盤の前傾が生じやすくなる。 *骨盤の前傾を招きやすい筋の動員性 ・大腿四頭筋>ハムストリングス>大臀筋 大腿四頭筋が過使用性拘縮し、股関節が屈曲位となりやすい。 ・ハムストリングス>大腿四頭筋>大臀筋 ハムストリングスが過使用性拘縮となりやすい。 このような状態は、 股関節屈筋群の拘縮が 、大臀筋への相反性抑 制となり弛緩しやすく 、膝 関節の伸展が強く行われ大腿四頭筋に負担をかける。また、骨盤の前傾によって、上体を支え るために脊柱起立筋群の緊張 を高め、腹筋群の緊張が弛みやすく、腰椎への負担を助長するこ とになる。 参考文献 Training Journal 2001 No,264 学術教養特集2 学術部 表-5 間 橋 淑 宏 歩行の偏りによって陥りやすい筋群の状態 着 地足 側 オ -バ - ユ -ス で 着 地足 側 活 動不 足 で 萎縮 蹴 り足 側 オ -バ - ユ -ス で 蹴 り足 側 活 動不 足 で 萎縮 硬 化し や す い筋 ま たは 弛 緩 しや す い 筋 ま たは 弛 緩 しや す い 筋 外旋筋群 硬 化し や す い筋 ● ● 内旋筋群 ● ● 外腹斜筋 ● ● 脊柱起立筋 ● ● 内腹斜筋 ● ● 腰方形筋 ● ● 大臀筋 ● ● 内転筋群 ● ● 腸腰筋 ● ● 大腿直筋 ● ● 中臀筋 ● ● 大腿二頭筋 ● ● 半腱・半膜様筋 ● ● 腓腹筋内側頭 ● ● 腓腹筋外側頭 ヒラメ筋 ● ● ● ● 長母趾屈筋 ● 前脛骨筋 短/長腓骨筋 ● ● ● ● ● * 大筋群がオ-バ-ユ-スまたは脆弱化することによって、代償作用の協働筋に負担がかかる。 表-6 関節の動き 体幹の関節の動きと筋の動員 主働筋 協働筋 補助筋1 補助筋2 補助筋3 頸板状筋 脊柱起立筋 頭と頸椎の屈曲 胸鎖乳突筋 長頭半棘筋 頭と頸椎の伸展 僧帽筋上部 頭半棘筋 頭板状筋 頭と頸椎の側屈 胸鎖乳突筋 頭板状筋 僧帽筋 頭と頸椎の回旋 胸鎖乳突筋 頭板状筋 脊柱起立筋 脊柱の屈曲 腹直筋 内外腹斜筋 大小腰筋 脊柱の伸展 脊柱起立筋 腰方形筋 半棘筋 脊柱の側屈 内外腹斜筋 多裂筋 腰方形筋 横突間筋 脊柱の回旋 内外腹斜筋 多裂筋 回旋筋 半棘筋 参考文献 Training Journal 2001 No,265 2002 No,267 多裂筋 脊柱起立筋 学術教養特集2 学術部 1. 長潜時反射 間 橋 淑 宏 Long latency reflex 一般的に伸張反射は筋が伸ばされる(筋伸張)→筋感覚センサ-(固有受容器)へ刺 激が加わる→感覚神経を信号が伝達する(求心性神経)→脊髄に到達→運動神経を信号が 伝達する(遠心性神経)→伸ばされた筋が収縮する(筋収縮)という経路で起こる。この 経路を脊髄反射とよぶ。これに加えて脊髄に到達した信号が、さらに脳を中心とする高次 中枢を介して脊髄に帰する経路も存在する。これは、脊髄反射よりも遠い経路を通るため に、刺激があってから筋への信号が送られるのに時間が長くかかる。すなわち、脊髄から 筋へ単純に送り出される信号と、高次中枢を介してから送られる信号の2系統があり、後 者が長潜時反射の系に相当する。 この長潜時反射が、反射後の随意動作をスム-ズに行うために一役買っている。筋が伸 ばされると脊髄反射に続いて長潜時反射が起こることによって、小さな筋張力が生まれる。 この張力がその後に起こる随意動作の妨げとなる場合、長潜時反射の成分を小さくするよ うな運動制御が起こる。例えば、拮抗筋に起こる反射的活動による張力は、主働筋の筋活 動に対する張力の゛抵抗勢力゛となるので、長潜時反射を小さくすると動作に有利となる。 逆に、反射的筋活動による張力が行おうとする随意動作に利用できる場合、長潜時反射を 大きくして、反射に続く随意的筋活動の助けとなるような運動制御をしようとする。また、 脊髄反射が脊髄レベルで制御されるのに対して、長潜時反射は高次中枢の複数のレベルで 制御されるので、運動制御に伴う変化が大きいことが示されている。 長潜時反射と運動パフォ-マンスの関係についてはいくつかの研究があり、動作との関 連では、反射が速い被検者群の長潜時反射は遅い被検者群よりも変化率が大きいこと(B onnet;1983,Woollacott;1984)などが報告されている。 報告者 齋藤 実・大妻女子大学 木塚朝博・筑波大学体育科学系 参考文献 2002;Training Journal No,272 学術教養特集2 学術部 間 橋 淑 宏 1,抗重力筋について 主として重力に対して姿勢を保持するために働く筋肉を抗重力筋という。すなわち、運動時や 静止時における様々な姿勢において頭部を常に一定に保とうと働き、それに伴い各神経・筋が共 同して作用しながら重力に抗する働きをしていく筋肉が抗重力筋で ある。 直立時には主に抗重力筋が働くが、前屈・後屈姿勢時等においては、他の抗重力筋以外の筋肉 のバランスが働き出すため、その時の状態や姿勢において常に変化するものであり、抗重力筋と 支持筋との関わり方、抗重力筋と運動筋との関わり方である。 1)立位時 直立:最も抗重力筋が働く。前屈、後屈、下肢屈曲等:抗重力筋とともに支持筋、運動筋が働 く。 2)坐位時 正座:上半身においては抗重力筋が働く。 椅子:下肢に対しては抗重力筋はあまり働かない。 3)歩行時 抗重力筋とともに支持筋、運動筋が働く。 4)背臥位時 抗重力筋としては働かない。 2,クイック伸張法 急激な伸張(クイックストレッチ)を用いると伸張反射を誘発することができる。 関節面を引き離す牽引と、逆に関節面を押しつける圧縮を交互に用いることは、関節面にある 固有受容性感覚器を直接刺激することになる。関節内の受容器は、関節構造の位置的変化に反応 するという特徴がある。したがって、この牽引と圧縮は、関節構造を支配する固有感覚の中枢を 刺激する方法として用いられるテクニックとなる。実際の場面において、牽引は運動を促進させ るために、圧縮は姿勢を安定させるために有効である。 参考文献 スポ-ツPNFトレ-ニング スパイラルバランス療法 大修館書店 田中 覚張 秀樹、矢野 信孝著 雅知著
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