ON THE SPOT 現場から ●アスレティックトレーニング 中学生向けの講義 による発表である。 ●アスレティックトレーニング その後、山下氏が「スポーツ障害 の予防について」と題して講義を行 学生のための夏合宿 去る 7 月12日、横浜市立神奈川中 った。姿勢が悪いと力が出しにくく 8 月14 ~ 16日、千葉県で学生ト 学校(校長:鈴木英夫)にて、外部 なる、といったわかりやすい話をし レーナーが集まるイベントが行われ よりトレーナーを招き、全校生徒が ながら、どのようにして身体を動か た。帝京平成大学にはアスレティッ 講義を受けるという機会が設けられ すのがよいのか、簡単な解剖学的な クトレーナーを目指し活動している た。これは同校における学校保健委 知識とともにストレッチングの方法 チームTeikyo heisei Athletic Trainers 員会の催しとして行われたもの。招 や体幹部分への意識の方法、身体の (THAT)がある。このイベントは、 かれたのは山下貴士氏(神奈川大学 手入れについて具体的に教えていっ THATが主催するアスレティックト 健康科学スポーツセンター)である。 た。 レーナーを目指す学生のための夏合 副 校 長 とPTA会 長 に よ る 挨 拶 を 経 専門的な知識を、中学生の年代か 宿( 2 泊 3 日)である。今年で 5 回 て、生徒保健委員会が「スポーツ障 ら教えることによってケガの予防、 目となるこのイベントには、毎年 害予防について」というテーマで発 パフォーマンスの向上につながると THATのほかに帝京大学、法政大学 表を行った。プレゼンテーションの いう面があることはもちろんだが、 からも同じ志を持った学生が参加し 配布資料も用意され、スクリーンに 山下氏に聞いてみると、「神奈川大 ている。今年から、新たに東京スポ 映し出しながら発表を進めていっ 学としては地域貢献の一環」 と話す。 ーツレクリエーション専門学校から た。 「スポーツ障害は中学生のとき 積極的に地域の活動に関わることが の参加もあり、先生方やOB・OGの に多く発生し、その理由として骨が 貢献となり、大学にとってもイメー 方々を含め総勢120名を超える大き 柔らかい」ということが挙げられた。 ジ向上につながるのだという。この なイベントとなった。今年の合宿の 競技別にどのような部位にケガをし ように専門職が普段関わっていない テーマは「意識改革~ Be alert ~」 やすいか、またさまざまなスポーツ 年齢層に対して知識をわかりやすく とし、アスレティックトレーナーと 障害(野球肘やオスグッド・シュラ 伝えていく取り組みは、おそらく専 しての知識を深めること、多くの人 ッター病、シンスプリント、腰痛) 門職の側にとっても、認識を高め働 と交流を深めること、各個人が意識 が紹介され、原因や対処方法がスト く場を広げていくことにつながるだ を高めることなどを目標として行わ レッチングなどの実例を示しながら ろう。 れた。そして、この合宿は学生が主 解説していった。ここまでは中学生 中学生による発表 6 Training Journal November 2012 (浅野将志) 体となり準備、運営を行っている。 姿勢による違いについて実演する山下氏 現場から 学生による発表 合宿でのプログラムは講義形式だけでない 今回の合宿のプログラムとして先 持って合宿に臨んだ。その中で学校 生方の特別講義・学生発表・評価表 間の垣根を越えた混成チームを組 ングセミナーが開催され、約100人 の書き方・迅速な触診やスペシャル み、様々な課題に対して上級生から が参加した。これは今夏ジュニア選 ーマボルシア・ドルトムントコーチ テスト・AT関連のクイズなどをゲ 下級生までが自らの役割を考えて協 手を対象として東京および横浜で行 ーム形式でチームごとに競い、また 力し、チームワークを高めていった。 われた「プーマ ボルシア・ドルト ディスカッションなど、多くの人と 夜にはバーベキューを行い、チーム ムントジュニアキャンプ in ジャパ コミュニケーションがとれるような だけでなく他の先生方、先輩方と交 ン」と関連したもの。運営は株式会 プログラムを組んだ。 流することもできた。最後に、学生 社ファンルーツによる。ジュニアキ 先生方の講義は、普段学校で受け 同士で行うディスカッションでは ャンプが日本のジュニア選手向けに る授業とは一味違った内容となって 色々な人の考えや、現場での取り組 ドルトムントのコーチ陣が指導する おり、とても貴重なものであった。 み方を聴ける貴重な時間を過ごすこ ものであったのに対し、本コーチン 現場でご活躍されている12名もの とができた。そして、 3 日間が終わ グセミナーはサッカークラブの指導 先生方がTHATの夏合宿に参加いた る頃には最初から知り合いだったの 者への講義形式で行われた。ボルシ だき、ご指導いただけるということ ではないだろうかと錯覚してしまう ア・ドルトムントはドイツのサッカ は私たち学生にとってとても嬉しい くらい交流できていた。ここで得た ーリーグ、ブンデスリーガの強豪チ ことである。この合宿では先生方と つながりはきっと続いていく。この ームで近年では香川真司選手が所属 交流する機会が多々あり、学生たち 合宿も来年、再来年とさらに成長し することでも知られている。 は多くを学び吸収することができ ていく。今回参加した学生一人一人 セミナーでは、育成部門を担うコ た。学生一人一人の意識が変わった が多くのことを学び、感じ、得られ ーチたちが、それぞれの担当分野に のではないだろうか。先生方へ感謝 た3日間であった。この合宿を新た おいて、どのような指導を行ってい の気持ちを持ち続け、これからも活 なスタートに、これからも私たち学 るかを示すものとなった。たとえば かしていきたい。 生トレーナーは日々の活動・勉強に 試合の映像の様子を動画で紹介し、 学生発表は学生が参加させていた 励んでいく。(井戸里美、伊藤梨江・ 攻撃および守備をどのように行うべ だいたドイツ研修とプロ野球春期キ THAT合宿リーダー) きかについて解説した。ここでチー ムの方針として「アタッキングサッ ャンプ実習に関しての内容であっ た。全員が経験できないことを共有 ●サッカー指導 カー」 (攻撃的という意味)が示され、 し、視野を広げることができた。多 ボルシア・ドルトムント のコーチングを学ぶ それに伴うフィロソフィーが紹介さ だろうか。 去る 8 月18日、プーマブランドセ 選手が全力を尽くす、というもので 今回の合宿では一人一人が目標を ンター東京(東京都港区)にて、プ ある。攻撃時には、相手ディフェン くの人がいればいるほど多くを得ら れる、そんな場となったのではない れた。すなわち、リスクを負う、各 人がコミットメントする、すべての Training Journal November 2012 7 ON THE SPOT ジュニアを指導するコーチが集まった 質問に丁寧に答えるコーチ陣 スの準備が整う前に攻め込むよう、 あり、それを着実に理論立ててジュ 道での同学会の開催は初めてであ 縦に早く展開し、数的有利をつくり ニア期からの指導に活用していると り、 9 月11 ~ 13日の期間、アジア だすようにするという。またディフ いう印象であった。 のバイオメカニストが一堂に会し ェンスについては組織的に行う。こ 戦術・戦略に関する講義や身体面 て、活発な研究内容と交流が行なわ れらを機能させるために、「プレッ に関するトレーニングのほか、メン れた。 シャー」など選手間で通じる短い言 タル面を担当するコーチやスカウテ 今回のテーマは、「バイオメカ二 葉を決めておき、それが意味するこ ィング担当による講義もあり、実務 クスの現場応用」であり、 9 月11日 とを選手同士きちんと理解しておく に基づいた幅の広い内容のセミナー のシンポジウムでは、小林槻氏(北 必要があるという。 となった。 海道教育大学)が座長を務め、石毛 (浅野将志) 勇介氏(国立スポーツ科学センター) なお、育成年代では身体面の発達 とともに内面での変化も大きく、さ まざまな苦労があるようだ。そのよ うな状況において、コーチの役割は 選手を尊重すること、そして言葉を ●バイオメカ二クス 第 22 回日本バイオ メカ二クス学会 と森敏氏(東海大学)の 2 氏がシン ポジストとして講演が行われた。 石毛氏からの講演では、現在取り 組んでいるスポーツ種目である、ア 選んで使うことがポイントであると 8 月18日、 東 京 ビ ッ グ サ イ ト に ルペンスキーにおけるバイオメカ二 いうことも紹介された。 て、 北海道江別市にある北翔大学 クスの応用例が紹介され、現在の立 どのようなチームをつくり、どの において、第22回日本バイオメカ 場から、多岐にわたる実践内容や課 ような戦略・戦術で戦っていくのか、 二クス学会が開催された。同時開催 題が語られた。その中でも、バイオ すなわちドルトムントとはこういう として第 4 回アジアスポーツバイオ メカ二クスの歴史や伝統がある競技 サッカーをする、というのが根底に メカ二クス学会も開催された。北海 種目では、この分野の取り組みがコ シンポジウム「バイオメカ二クスの現場応用」 8 Training Journal November 2012 ポスター発表会場の模様 現場から ーチや指導者と進めやすい点や、伝 正が頻繁に行われる中において、そ バイオメカニストが「育つ」スポ 統が浅い競技種目では苦労があるこ のルールにうまく適応・対応してい ーツ現場の「場」とコーチ・指導者 とが語られた。スポーツにおける現 くことも、世界で日本チームが活躍 の理解が必要不可欠な課題であり、 象を見て、そこから動きのメカニズ していける選手を輩出できるかのポ それと同時に「雇用促進」にも目を ムに迫ることにより、その現象が解 イントであることが語られた。 向けることがより優れたバイオメカ 明されれば、競技力向上と共に障害 このほか一般研究発表・口頭発表・ ニストが育つことになるのではない 予防につながる専門分野であること ポスター発表が行われた。そして、 かと考えさせられ、各スポーツ競技 が語られた。 9 月13日の特別講演では、座長に、 種目団体、スポーツ現場、自治体、 森氏からの講演では、ソチ五輪に 日本バイオメカ二クス学会会長でも 教育関係、医療現場、企業の相互の 向けてのスキ―ジャンプナショナル ある阿江通良氏(筑波大学)がつと 理解が、より高い専門分野へと発展 チームコーチとしての活動内容など め、シンポジストには、矢内利政氏 していく可能性があると考えさせら が語られ、スキージャンプ種目での ( 早 稲 田 大 学 ) が「Deterministic バイオメカ二クス研究の歴史的背景 modelの活用法」のテーマで講演さ の説明が行われた。そしてこの種目 れた。矢内氏は、故JamesGHay氏 の競技特性や実際の競技局面では、 に師事し、「Deterministic model」 スタートから着地までには 4 つの局 の構築と活用を修得した研究者であ 面(助走局面、踏切局面、飛行局面、 り、その構築意義、作成方法、活用 着地局面)があり、その中でも踏切 方法を解説され、今後のバイオメカ 局面と飛行局面での研究が多いのが 二クスの学術分野の発展に多くのヒ 世界の動向であることと、ルール改 ントとなるものであった。 れる学会であった。 (辻本和広) on the spot欄では、学会やセミナー などへ参加していただいた様子を執筆 していただいたり、最近の話題をニュ ース記事としてお届けしています。下 記のメールアドレスへ情報提供をお願 いします。 [email protected] Training Journal November 2012 9
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