高精度歯車成形技術確立 Establishment Of Injection Molding

ハスバ歯車の超高精度(JIS0級)化技術
2004年7月14日
ポリプラスチックス株式会社
テクニカルサービスセンター
文書管理番号:04T15714
1
プラスチック歯車
プラスチック歯車には、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート
などが使用されています。中でもポリアセタールは、耐薬品性・耐久性が良好で
あることから、もっとも広く活用されています。
ポリプラスチックスでは、歯車用樹脂材料の開発だけでなく、設計・成形・評
価技術の開発も行ってきました。
プラスチック歯車の特徴
・自己潤滑性があり、無潤滑でも使える
・振動吸収性が良好で騒音が小さい
・耐食性、耐薬品性に優れる
・軽量である
・生産性が高いため安価に量産できる
プラスチック歯車
2
ハスバ歯車
歯車を射出成形で作成すると、樹脂の不均一な収縮によってつづみ状の変形が
生じやすくなります。ハスバ歯車の場合は、斜めに刻まれた歯先が波状に変形す
ることから、高精度化は極めて困難とされていました。
歯車のつづみ状変形(断面図)
平歯歯車
ハスバ歯車の特徴
(外周部の歯が斜めに刻まれている)
・動力の伝達が円滑
・回転誤差の軽減に有利
・低騒音化が可能
ハスバ歯車
ハスバ歯車特有の波状変形
3
JIS等級の判定方法
理論値と実測値との差によって、0∼8等級・級外に分けられます。
μm
10
5
左歯面
右歯面
歯形チャート
歯形誤差
0
-5
歯形誤差
測定位置
-10
Root
μm
10
→
Tip
歯筋チャート
5
歯筋誤差
0
歯筋誤差
測定位置
-5
-10
Bottom
→
Top
JIS等級
0
1
2
3
4
5
6
7
8
歯形誤差 [μm]
3
4
6
8
12
17
24
33
47
歯筋誤差 [μm]
7
8
9
12
14
18
23
29
36
(JIS B1702 1976
今回の歯車サイズの場合)
4
歯車の緒元
材料
ジュラコン®JW-03
モジュールM
歯数Z
ネジレ角β
圧力角α
歯先円外径dk
歯幅 b
ウエブ:リム
:1
:28
:20°
:20°
:31.747mm
:15mm
:3mm:2.5mm
モジュール= ピッチ円直径 ×cos(ネジレ角)
歯数
ネジレ角:20゚
5
重要因子
金型
・軸精度
・キャビティ精度
・温調回路
適切なランナ・ゲート設計
成形収縮率の正確な推定
ネジレ角他の見込み補正
成形機
材料
・成形性
(流動性、固化速度、離型性)
ジュラコン® JW-03を選定
・特殊機能
・精密制御
成形条件の最適化
局部加圧の応用
成形手法
・射出速度/圧力多段設定
・圧縮成形
JIS0級
全ての要因を満たすことにより、JIS0級(B1702 1976)を達成しました。
6
局部加圧
スリーブ状エジェクトピンによる局部加圧(圧縮)によって、
「つづみ状変形」を解消しました。
局部加圧
加圧力
タイミング
ストローク
加圧時間
ウエブ
ボス
:120MPa
:射出開始後20s
:1.2mm
:8s
リム
エジェクトピン
エジェクトピンによる加圧箇所
局部加圧の効果
7
歯筋精度の向上
歯筋精度:金型で見込み補正できない
ネジレ角他:金型で見込み補正が可能
50
歯筋誤差 [μm]
40
↓
30
大幅な精度向上を達成
20
10
0
-1 0
-2 0
突出側 中央 ゲート側
ネジレ角の見込み補正例
50
50
40
40
30
20
10
0
→
金型補正
-1 0
-2 0
突出側 中央 ゲート側
歯筋誤差 [μm]
歯筋誤差 [μm]
↓局部加圧による「つづみ変形」の解消
30
20
10
0
-1 0
-2 0
突出側 中央 ゲート側
歯筋精度の変化(左歯面)
8
今後の予定
JIS等級
0
測定結果
平均値
最大値
歯形誤差 [μm]
3
歯形誤差 [μm]
3
4
歯筋誤差 [μm]
7
歯筋誤差 [μm]
4
7
(JIS B1702 1976
今回の歯車サイズの場合)
JIS0級に到達した高精度化技術を応用して、
①形状・大きさが異なる歯車の高精度化
②蓄積された技術の開示
・材料の選定法
・金型設計技術
・成形技術 (特に局部加圧成形法)
を推進します。
歯先の拡大写真
9