「タンポポは知っている」 過日の北海道新聞にワッカ原生花園のエゾタンポポ保護について載っていたが、その話 ではない。前任校で地域同好会の皆さんとともに学校庭園の剪定作業に励み、一休みして いた時のことだ。一人のお年寄りが芝生のタンポポを指差し、話してくれた。 「この学校の 用務員さんは、よく働くね。タンポポの丈が短い・・・」そのタンポポをよく見ると、驚 いたことに茎が1センチくらいで、もう花を咲かせている。さらに、周りを見るとその高 さで綿毛になっているものさえある。お年寄りの話では、ここのタンポポは、早く花を咲 かせて綿毛を飛ばさなければ子孫を残せないことを知っているのだそうだ。つまり、どの くらいのサイクルで草刈りが行われるか知っているのだそうだ。 丈の短いタンポポは、用務員さんの計画的でまじめな仕事ぶりを知らせてくれた。お年 寄りは、そのタンポポの姿から用務員さんの仕事を知ることを教えてくれた。その日は、 夏の暑い一日だったが、 「またひとつよい勉強をした」といい気持になったことを覚えてい る。 その年の秋、背丈 10 センチで花を咲かせているコスモスを見つけた。こんな小さなコ スモスを見たのは初めてだった。どうしてかは分からないが、種が落ち季節外れに発芽し てしまったのだろう。このコスモスは間もなく冬が来ることを知っていた。 植物の動きは遅く、じっと見つめていても動いているのが分からない。しかし、翌日に は、わずかではあるが成長していることが分かる。こうして彼らは、種が落ちてから次に 種をつくるまでしたたかに生き続ける。見えなくても毎日成長し、気温・湿度・日照等か ら季節の動きを察知し、さらには、タンポポのように長年かけて環境に適応しながら生き ている。人によって摘芯されるとその下の脇から新たな芽を出し、花を摘まれると次々と 別の花を咲かす。人は、この営みを利用して食料を得、美しい花を観賞する。
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