Chap 10(太陽電池)

§10太陽電池
10.1D-n接合
例えばシリコン材料中のシリコン原子のいくつかを燐原子で置き換えると、
燐原子の原子価電子は5個でシリコンより1個多いため、4個は周りのシリコ
ン原子との主として共有結合に使われ、燐原子は電子1個を保有するドナーと
なる(n型半導体)。
一方、シリコン原子のいくつかをホウ素原子で置き換えると、ホウ素原子の
原子価電子は3個であるから、シリコン原子と共有結合するためには電子が,
個たりず、ホウ素原子は正に帯電したアクセプターになる(p型半導体)。
室温では、これらの半導体において、ドナーの多くはドナー陽イオンとなり
伝導帯に自由電子を励起させている。アクセプターの多くは価電子帯(充満帯)
から電子を引き受けアクセプター陰イオンとなり、荷電子帯に正孔を励起させ
ている。
これらを接合させる。
一般に、層のフェルミ準位はP層のそれより高いから、n層からp層への電
子の移動が起こり、フェルミ準位が等しくなるまで続く。
ここで移動する電子は、層伝導帯の自由電子で、元は、層のドナー準位にあ
ったものであるから、移動した電子の数分だけ、層内にドナー陽イオンを分布
させる。ドナーやアクセプターの数密度は比較的小さいので、接合面から、ミ
クロ次元でみて非常に厚い範囲にわたって正に帯電した「空間電荷層」が形成
される。
さらにp層においては、移動してきた電子は価電子帯中の自由正孔と結合し
て消滅し負に帯電したアクセプターが残る。p層内にできたアクセプター員イ
オンの分布も非常に厚い範囲にわたっている。
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結局、接合面を境に、一定の厚い深さにわたって、n層側には正に帯電した
ドナーによる空間電荷層、p層側には負に帯電したアクセプターによる空間電
荷層ができる。この状態はいわゆる「電気二重層」であり、その中で電位は大
きく変化する。
半導体「表面」は、その末端構造のためさまざまなドナーやアクセプター準
位を形成し、「バルク」とは異なる'性質を持つ。仮に表面状態のフェルミ準位が
バルクのそれと異なれば電子は両者を一致させるよう移動するから、平衡状態
で両フェルミ準位は一致し、これに伴い、表面とバルク間に伝導帯や価電子帯
で代表されるバンドが曲げられる。表面付近ではフェルミ準位以上のエネルギ
ー準位で電子の存在確率が小さくなることを意味している。
n型半導体を金属と接合させたときの半導体の接合面の特殊性もこれに類似
している。接合前後で表面構造が変わらないとするならば、電子移動の結果、
半導体バルク、その表面とともに金属すべてのフェルミ準位が一致する。金属
側に移動してきた電子は表面に集中し、形成された表面電荷による電場は半導
体表面付近の正電荷でほとんど遮蔽されるから、半導体バルク深くの電場には
影響を及ぼさない。
一方金属側では、エネルギーレベルが無数あるから、深さ方向のエネルギー
バンドの歪みはなくただ表面に負電荷の電子が集中することになる。
結局、n型半導体表面のバンドが上にせり上がったバンド形状になり、あた
かも
に対するエネルギー「障壁」のように
なる。n型半導体中の電子が金属側へ流入するためにはこの障壁に相当するエ
ネルギーが与えられなければならない。この障壁の高さは主としてフェルミ準
位の差であるが、半導体表面準位の構造やその量によっても左右される。障壁
高さがフェルミ準位の差になる場合この障壁は「Schottky障壁」と呼ばれている。
従ってSchottky障壁高さは金属と半導体のフェルミエネルギーの差となり、
それはそれぞれの仕事関数(フェルミエネルギーから真空電位までのエネルギ
ー)○M、。sの差と等しい。
(1)qVD=EF葛一[FM=のM-のs
VD:拡散電界、q(>O光電子の電荷(<0)の絶対値
凸の
一方
はめM-えsであり、これ
はうエルミ準位と半導体の伝導帯エネルギー準位の差に等しい。
xs:電子親和力(伝導帯の底から真空電位までのエネルギー)。
さらに、金属と、型半導体とを接合させたこの系において、金属側を正、n
型半導体側を負として「順方向」に外部電圧vをかけるものとする。半導体側
に電子が供給されるため、半導体側のフェルミ準位が押し上げられる。従って、
(半導体側からみた)Schottky障壁の高さはqWD-V)と低くなり、半導体側
から金属側へ流れる電子流(従って電圧をかけた方向への電流)が増す。しか
し、n型半導体側を正、金属側を負として外部電圧Vをかけても(半導体から
みた)障壁の高さはq(VD+V)となる一方、金属側からの障壁は変わらない
から(電圧をかけた方向への)電流は大きくはならない。このようにして
「Schottkyダイオード」は整流作用を発現する。
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10.3太陽電池
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p型半導体と、型半導体とを接合し接合面付近に太陽光を照射すると、熱電
発電の場合と同様に、n型半導体側の接合面付近は電子が、P型半導体側では
正孔が過剰になる。これらは拡散によってそれぞれの端に移動するから、両端
に電位差が形成され、外部負荷をつなぐとP側端子を陽極、n側端子を陰極と
する「太陽電池」が構成される。
以上は単純な描像である。つぎのように考えても良い。
n層側接合面付近にドナー陽イオンが、P層側接合面付近にはアクセプター
陰イオンが分布する「電気二重層」が形成されその間に、側からP側に向かう
「内部電界」が生じる。「光励起」によって生成された電子・正孔対は「内部電
界(拡散電界)」によって分離され、電子は半導体内をP層側から、層側に、正
孔は、層側からp層側に流れる。光を照射し続けた状態で外部負荷を繋げば、
層側端子を陰極、p層側端子を陽極として仕事を取り出すことができる。
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さらにエネルギーバンドを用いて以下のようにも説明される。
n型シリコンの方がp型のそれよりもフェルミ準位が高いから、両フェルミ
準位が一致するまで電子が、層からp層に供給される結果、p層側から、層側
に滑り落ちるような形で、両者の伝導帯と価電子帯が接続する。接続条件は以
下のようである。
1)各半導体バルク、各接合面付近を通じフェルミ準位が一致する
2)遠方で伝導帯、フェルミ準位、価電子帯の相対関係は接合前と同じ
接合によって形成されるエネルギーバンドの形状は、電子にとって、n層側
の方がエネルギーレベルは低く安定である。エネルギー準位はあくまで電子に
対し描かれているので、正孔にとってはp層側に存在する方が安定である。
従って、接合面付近で光励起によって電子・正孔対が形成されると、p層側
伝導帯にできた電子は、伝導帯の傾斜にそっ‐
伝導帯にできた電子は、伝導帯の傾斜にそって滑り落ちるよZに、層側に移動
するであろう。一方、n層側にできた正孔は、
するであろう。一方、n層側にできた正孔は、価電子帯の傾斜にそって気泡が
浮き上がるようにp層側に移動するであろう。
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