自殺とうつ - なやクリニック

自殺とうつ
脳損傷になった人は、回復過程のどこかの段階で、自殺の危険にさらされます。
脳損傷を負ったということは、思考回路に突然に変化が起きることで、しかもそれは長く続
くのです。変化が起きるのは、状況に対する反応であったり、仕事や人間関係においてなどで
す。後天性脳損傷を経験した人は、ストレスが増し、人間関係が難しくなり、自分の感情を処
理するのが困難になる一方、こうした問題を解決する技能は低下しています。
本人は、昔と変わっていないように思えるかもしれませんが、自分は何者かという感覚が変
化をしており、とても心が混乱しているのです。彼等はより衝動的であるかもしれませんし、
別な角度から物事を見たり、違ったふうに考えることができないかもしれません。適切な支援
がないと、彼等は孤立し、無力だと感じるでしょう。
こうしたことなどが原因となり、脳損傷者は抑うつ的となって、自殺をする危険性が大きく
なります。自分の命を絶とうと思っている人にとっては、自殺だけが問題解決の答えだと思え
るのです。この選択は、絶えることのない苦悩や無力感といった状況を考えると、より良く見
えるのです。こうしたことを本人は死ぬことよりも恐れているからです。
家族や友人など、周囲にいる人にとって、危険な兆候を知ること、助けになる方法を知るこ
と、それにアドバイスを得たり紹介できる人を知っていることは特に重要です。
最初の兆候を見つけること
自殺は、突然衝動的に決心して起こることはほとんどありません。むしろ、初めて自殺を考
えるときから自殺の決行まで、連続した段階のように移動していくのが普通です。この段階は、
2つの方向性を持っているでしょう(つまり、先に進んでみたり、元の段階に返ったり、ある
い は 選 択 肢 に 自 殺 は 考 え な く な る こ と も あ る で し ょ う ):
・計画
・手段の獲得
・自殺の決行〈意図的もしくは半意図的〉
・自殺
自傷行為におよぶこともあります。これは実際の目的は自殺でなくても、死に至る可能性を
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堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」
持っています。自殺を考えているのではという兆候に注意する必要があります。注意する事項
としては:
・死んだ方が良かったというようなことを言う、あるいは自殺をしそうな兆しを示す場合
・極度に引きこもったり、抑うつ的になった場合
・以前に自殺企図があった場合には、特に兆しに注意をして、専門家の援助を求めるように勧
めましょう。
高い自殺の危険性を示す多くの因子があります。脳損傷の生還者は死に至る手段を手に入れ
ることができるでしょうし、何らかの計画を考えるかもしれません。比較的軽いストレスにも
極端な行動やとんでもない反応を示す薬物中毒者は危険因子を高いものにします。何らかの危
機が促進的な出来事となることもあります。
どうすれば助けることができるのか
絶望的に自殺を考えている人は、他の人が心配しているということを知ることが必要です。
支援するためのいくつかの提案は以下のとおりです:
・本人と一緒に居るだけでもよいことがあります。話をしなくてもいいのです。
・支援ができる他の人に相談します。
・彼等自身や人生について、話すことを聞いてあげましょう。
・「 生 き て い る こ と に 感 謝 す べ き だ 」 と か 「 そ の う ち 良 く な る よ 」 な ど と い う の は 避 け ま し ょ
う。
・あなたはいつでも話をする気持ちがあること、同じように心配している人がいることを伝え
ましょう。
・友人との連絡を続けるように、あるいは新たに連絡をしてみるように勧めましょう。
・かかりつけ医につながっているように気をつけましょう。
特に危険が高い人への介入方法
・危機介入〈即時的な支援、たとえば電話でのカウンセリングや精神科医への紹介、本人の注
意深い観察、あるいはよりストレスの少ない環境に移すといったいくつかのレベルが考えられ
ます〉
・医学的/精神医学的治療〈服薬を含む〉
・入院
・心理療法
・精神保健ケースマネージメント
・支援組織とつなぐ〈たとえば家族会や地域組織〉
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堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」
具体的な危機介入法
一般的な目標は、死ぬ可能性を低くすること、あるいは次のようにして自殺の可能性を低減
することです:1)心理的な意味で、可能性のある選択をしているという感覚を高めること、
2)こころの支援が得られているという感覚を高めること。
方法は次のようなものです:
・関係を作ること、たとえば「私は聴いていますよ、助けたいと思っていますよ」
・危険の感じ方を調べる。
・現在から直前の過去(最近の大事な出来事や問題)や直近の未来に焦点をあわせること。
・選択肢を考えて、行動を計画する。本人ができそうな選択肢を増やし、支援してくれる人を
増やす〈専門家や家族〉
・可能性のある自殺の手段を除くよう気を配る。
・頼れる機関や人を含んだ、直近の計画を立てるように促す。
・小さいけれども意味のある活動〈たとえば家事や庭仕事〉をすることで、本人の将来への見
通しを向上させる。
・彼等の心の状態を観察して、フォローしていく予定を立てる。
・通常の支援のシステムに、適切な人に入ってもらうように試みる。
効果的な意思疎通
苦悩する人を支援する場合に次のような方法は避けたほうが良いでしょう:
・うその慰め、たとえば「すべてうまく行くよ、心配しないで」
・事実の不適切な提示、たとえば「1年以内には、脳損傷は良くなるよ」
・やり込める、たとえば「そろそろ二度と歩けないということは受け入れるべきだ」
・ 本 人 の 感 じ て い る こ と を 軽 視 す る 、「 い い 加 減 に し て 、 そ ん な に ひ ど い こ と な い よ 」
・追求型の質問、たとえば「あなたの恋人が去って行ったのは、なぜだと思うんだ」
支援していくためには、次のような方法の組み合わせが使えます:
・ 積 極 的 な 傾 聴 、 う な ず き や 、「 え え 」 と か 「 そ う で す ね 」 と い っ た 最 小 限 度 の 反 応
・理解しているという意味で目と目を合わせることや支持的な身体言語
・ 感 情 を 言 い 直 す 、 た と え ば 「 本 当 に 驚 い た み た い で す ね 」、「 が っ か り し た ん で す ね 」
・内容を言い直す、たとえば「家族にもっと広い部屋をくれるように言いたいのですね」
・ 言 い 換 え た り 、 要 約 し た り す る 、 た と え ば 、「 今 の と こ ろ 、 ど う し よ う も な い と 感 じ て い る
のですね」
・許可を求める。たとえば「力になりたいんです、ここに座ってもいいですか?」
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堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」
支援者のための支援
自殺の可能性のある人のために働くこと、あるいは近くにいることは、とてもストレスにな
るものです。こうした人は彼等自身もサポートを受けたり、自らの心の平静を心配することが
大切です。大変な状況にある人と関わっている人は、他の専門家からのコメントをもらうとい
うサポートがありえます。家族や友人は、専門家に彼等の感じていることを聞いてもらったり、
アドバイスを受けると良いでしょう。
もしあなたが自殺を考えているのなら
もしもあなたが脳損傷を受けた人で、自殺を考えているとしたら、次のようなことを知って
ください:
あなたは一人ではありません。
誰しも自殺を考えることは一度や二度はあるでしょう。自殺を考えるということが、すぐさ
ま事態は決してよくならないということを意味しません。
あなたの後天性脳損傷によって、身体的な問題があるかもしれません。
この身体的な問題が、あなたの悪い感じ方の原因であるかもしれません。専門家や医師に、
こうした身体的問題にどう対処したらいいかというドバイスをしてもらいましょう。
危機は去っていくでしょう。
時として、問題は耐え難いと思えるでしょうが、しかしいつもあなたや他の人ができること
があるのです。もし脳損傷になったのなら、いろいろな問題を切り抜ける道を見つけるのは特
に難しいかもしれません。だからこそ、助けることができる人に問題を相談することが大切な
のです。
他の人も心配しています。
あなたがあなたの問題を切り抜けられるように助けようとしている人がいつもいるものです。
助けを求めることを怖がらないでください。家族や友人、あなたのかかりつけ医などの専門家
に、あなたの感じていることを告げましょう。
24時間サービスがあります。ライフラインでは電話でカウンセラーに話をすることができ
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堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」
ます。あなたの近くの救急病院に行きましょう。あるいはあなたの地域の脳損傷協会に電話し
ましょう。
後 天 性 脳 損 傷 訪 問 サ ー ビ ス 〈 ABIOS〉 に 感 謝 し ま す 。 こ の 情 報 は 、 同 サ ー ビ ス の 冊 子 か ら 許
可 を 得 て 採 用 し ま し た 。 こ こ の ウ ェ ブ サ イ ト : www.health.qld.gov.au/abios
( ク イ ー ン ズ ラ ン ド 脳 損 傷 協 会 フ ァ ク ト シ ー ト よ り 許 可を 得 て 翻 訳 転 載 )
●参考
関西いのちの電話
06-6309-1121
自殺防止センター 06-4395-4343
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(24時間)
http://www.kaind.net/
(24時間)
http://www.spc-osaka.org/
堺脳損傷協会「脳 損傷の知識」